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第二章 氷狼騎士団長の秘密
<1>到着
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久しぶりの祖国の地を踏んだ俺は、その変わりように戸惑いを隠せなかった。
(どうなってんだよ……これ)
泥水をぶちまけたような曇天のせいか、王都全体が暗く淀んで見える。街や広場を美しく彩っていた草花がほとんどない。
異様にも思える光景の中、俺たちを乗せた馬車は王宮にほど近い場所にあるヴァンダービルト邸に到着した。
馬車を降りると、左右にずらりと揃いの制服を着た使用人たちが並んでいる。その数はラムズデール家の比ではない。
「すごい数ですね」
背後からリアムが囁く。俺は無言で頷くと堂々とした態度に見えるよう、正面をしっかり見据えた。
「ようこそいらっしゃいました、エリス様。わたくしはレヴィ様の補佐官のマーク・ケンジントンと言います」
切れ長の藍色の目をした濃紫の髪の青年が恭しくお辞儀をする。背が高く細身で、いかにも切れ者という印象を受ける。
(こいつは見覚えがないな……)
俺は注意深く観察しながらにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。俺はエリス・ラムズデールです。彼は乳兄弟で腹心の友であり従者のリアムです。これからよろしくお願いしますね」
だがマークはにこりともせず、軽く頭を下げたただけだった。
「では、こちらに」
マークの後をついて屋敷の中に入る。長い廊下を歩き、階段を登って辿り着いたのは白と薄いピンク色で彩られた扉の大きな部屋だった。
「エリス様の私室としてこちらを準備させていただきました。本来であれば、これからレヴィ様にお会いしていただく予定だったのですが、ギルドフォード帝国との国境で小競り合いが起きてしまい、お戻りは明日の夜になられるそうなのです」
「そうですか」
すぐに会えると思っていたせいか少し残念だ。
「明日の夜といっても、おそらくかなり遅い時間になることが予想されます。お会いしていただくのは明後日に昼頃になるでしょう」
「そうですか。残念ですがあと少し楽しみに待つことにします」
マークとリアムが戸惑った表情で俺を見ている。しまった、顔も明かさない恐怖の騎士団長に会うのを楽しみなんて怪しまれてしまう。
「あは、はは……」
かっこ悪すぎる愛想笑いでごまかす。
「……レヴィ様がお戻りになられるまでこちらでゆっくりお過ごしくださいませ。夕食もお部屋に運ばせます。お部屋の中にバスルームも付いておりますので、入浴の際は浴室の呼び鈴を鳴らしていただければ、メイドが準備に参ります」
「ありがとうございます。今日は心細いので、リアムも同じ部屋で過ごさせていただいてもよろしいですか?」
「もちろんです。リアム様のお部屋も明日までにエリス様のお部屋のすぐ近くにご用意させていただきます。では、これにて失礼いたします」
扉が閉まると同時に、リアムが部屋の中を飛び回って観察を始めている。
「すごいですエリス様! 部屋が7つもあります!」
「おー。すげえな」
ベリンガム帝国の高位貴族の家では珍しくない。アイルズベリーとは同じ爵位でもいろんな意味で豊かさが違うのだ。
(特権をほしいままにしていたラムズデール家でも話にならないレベルなんだよな)
はしゃぐリアムの後をゆっくりと歩き、俺も部屋の中を確認してみることにする。
居間の左右には3つづつ扉がある。右の最奥が寝室、その隣が書斎、さらにその隣は私的な客を招くための小さめの客間になっている。左の最奥はバスルーム、その隣は簡易的なキッチンが設置されていた。
どの部屋も白と薄いピンク色でまとめられ、ガーリーというかラブリーというか、正直男の俺が使うにはかなりロマンチックな気がする。
(そもそも女を娶る予定だったんだろうな。まあ、仕方ねえか……でもやっぱり落ち着かねえ。もう俺の部屋だし、いいよな。怒られたら元に戻せばいいし)
「まずは扉からだな。リアム、一瞬部屋の外に出るけど秒で戻るから心配すんなよ」
(どうなってんだよ……これ)
泥水をぶちまけたような曇天のせいか、王都全体が暗く淀んで見える。街や広場を美しく彩っていた草花がほとんどない。
異様にも思える光景の中、俺たちを乗せた馬車は王宮にほど近い場所にあるヴァンダービルト邸に到着した。
馬車を降りると、左右にずらりと揃いの制服を着た使用人たちが並んでいる。その数はラムズデール家の比ではない。
「すごい数ですね」
背後からリアムが囁く。俺は無言で頷くと堂々とした態度に見えるよう、正面をしっかり見据えた。
「ようこそいらっしゃいました、エリス様。わたくしはレヴィ様の補佐官のマーク・ケンジントンと言います」
切れ長の藍色の目をした濃紫の髪の青年が恭しくお辞儀をする。背が高く細身で、いかにも切れ者という印象を受ける。
(こいつは見覚えがないな……)
俺は注意深く観察しながらにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。俺はエリス・ラムズデールです。彼は乳兄弟で腹心の友であり従者のリアムです。これからよろしくお願いしますね」
だがマークはにこりともせず、軽く頭を下げたただけだった。
「では、こちらに」
マークの後をついて屋敷の中に入る。長い廊下を歩き、階段を登って辿り着いたのは白と薄いピンク色で彩られた扉の大きな部屋だった。
「エリス様の私室としてこちらを準備させていただきました。本来であれば、これからレヴィ様にお会いしていただく予定だったのですが、ギルドフォード帝国との国境で小競り合いが起きてしまい、お戻りは明日の夜になられるそうなのです」
「そうですか」
すぐに会えると思っていたせいか少し残念だ。
「明日の夜といっても、おそらくかなり遅い時間になることが予想されます。お会いしていただくのは明後日に昼頃になるでしょう」
「そうですか。残念ですがあと少し楽しみに待つことにします」
マークとリアムが戸惑った表情で俺を見ている。しまった、顔も明かさない恐怖の騎士団長に会うのを楽しみなんて怪しまれてしまう。
「あは、はは……」
かっこ悪すぎる愛想笑いでごまかす。
「……レヴィ様がお戻りになられるまでこちらでゆっくりお過ごしくださいませ。夕食もお部屋に運ばせます。お部屋の中にバスルームも付いておりますので、入浴の際は浴室の呼び鈴を鳴らしていただければ、メイドが準備に参ります」
「ありがとうございます。今日は心細いので、リアムも同じ部屋で過ごさせていただいてもよろしいですか?」
「もちろんです。リアム様のお部屋も明日までにエリス様のお部屋のすぐ近くにご用意させていただきます。では、これにて失礼いたします」
扉が閉まると同時に、リアムが部屋の中を飛び回って観察を始めている。
「すごいですエリス様! 部屋が7つもあります!」
「おー。すげえな」
ベリンガム帝国の高位貴族の家では珍しくない。アイルズベリーとは同じ爵位でもいろんな意味で豊かさが違うのだ。
(特権をほしいままにしていたラムズデール家でも話にならないレベルなんだよな)
はしゃぐリアムの後をゆっくりと歩き、俺も部屋の中を確認してみることにする。
居間の左右には3つづつ扉がある。右の最奥が寝室、その隣が書斎、さらにその隣は私的な客を招くための小さめの客間になっている。左の最奥はバスルーム、その隣は簡易的なキッチンが設置されていた。
どの部屋も白と薄いピンク色でまとめられ、ガーリーというかラブリーというか、正直男の俺が使うにはかなりロマンチックな気がする。
(そもそも女を娶る予定だったんだろうな。まあ、仕方ねえか……でもやっぱり落ち着かねえ。もう俺の部屋だし、いいよな。怒られたら元に戻せばいいし)
「まずは扉からだな。リアム、一瞬部屋の外に出るけど秒で戻るから心配すんなよ」
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