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第二章 氷狼騎士団長の秘密
<2>模様替え
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いったん部屋から出ると扉の前に立つ。
(色はやっぱり、この色しかないだろ)
両開きの扉の取っ手に触れて目を閉じて頭の中で色をイメージする。目を開けると扉は漆黒に変わっていた。
「よし! 成功!」
扉を開けて室内に戻ると、扉の内側も綺麗な黒にしっかり変化している。久しぶりに使ったが、うまくいって嬉しくなる。
「え、エリス様! 急に扉が真っ黒に変わりました!!」
そんな俺とは対象的に真っ青になったリアムが俺に縋りついてきた。
「当たり前だろ、俺がやったんだから」
「えっ!? エリス様そんなことができるんですか!? 今までほとんどまともに魔力を使えたことなんかないじゃないですか!!」
「うるせえな」
指を鳴らすと大きな棒付きキャンディーが手の中に現れる。それを見てさらに目を丸くしたリアムの口にキャンディを突っ込んだ。
「今までは、だろ。いいから黙って見とけって」
そうして次に床に敷き詰められた絨毯の色を真紅に変える。ベッドの天蓋のカーテンも同じ紅に変えて、カーテン、ソファや本棚はすべて黒にする。ゴテゴテとした装飾も極力消して、色の組み合わせが派手な分、デザインはシンプルを心がける。
ところどころポイントにゴールドを取り入れていくと、あっという間に前世の俺の部屋に限りなく近くなった。
昔のこととはいえ生まれてから死ぬまで寝起きしていた部屋のことは細部まで思い出せる。調子に乗って暖炉の上に、俺の紋章だった赤い目をした黒い虎のタペストリーも掛けてみた。
「うん。我ながらいい部屋になった」
自分の髪と目の色でもあった黒と赤は一番好きな色だった。もちろん今でもそうだ。
「すごいです……! けど、派手じゃないですか? なんだか落ち着かないです」
リアムは大人しくキャンディを舐めながら部屋を見回している。
「はぁ? どう考えてもこの上なく落ち着くだろ」
「赤と黒って、インパクトありますよね」
「そこがいいんだろ。俺の一番好きな色なんだから」
「知りませんでした!」
「そういうことだから、この部屋には慣れろ」
やっと落ち着く色とレイアウトになった部屋に満足してベッドに寝そべってみる。ベッドは特にうまく再現できた気がする。
久しぶりに上質なベッドに寝転がっているせいだろうか。体から余計な力が抜けていくような感覚を味わう。祖国とはいえ、23年ぶりの帰還で緊張していたのかもしれない。いや、久しぶりに魔力をまともに使ったせいだろうか。とにかく自然と瞼が降りてくる。
「悪い、ちょっと寝るわ。適当な時間になったら起こして……」
俺はそのまま意識を失うようにして眠ってしまった。
(色はやっぱり、この色しかないだろ)
両開きの扉の取っ手に触れて目を閉じて頭の中で色をイメージする。目を開けると扉は漆黒に変わっていた。
「よし! 成功!」
扉を開けて室内に戻ると、扉の内側も綺麗な黒にしっかり変化している。久しぶりに使ったが、うまくいって嬉しくなる。
「え、エリス様! 急に扉が真っ黒に変わりました!!」
そんな俺とは対象的に真っ青になったリアムが俺に縋りついてきた。
「当たり前だろ、俺がやったんだから」
「えっ!? エリス様そんなことができるんですか!? 今までほとんどまともに魔力を使えたことなんかないじゃないですか!!」
「うるせえな」
指を鳴らすと大きな棒付きキャンディーが手の中に現れる。それを見てさらに目を丸くしたリアムの口にキャンディを突っ込んだ。
「今までは、だろ。いいから黙って見とけって」
そうして次に床に敷き詰められた絨毯の色を真紅に変える。ベッドの天蓋のカーテンも同じ紅に変えて、カーテン、ソファや本棚はすべて黒にする。ゴテゴテとした装飾も極力消して、色の組み合わせが派手な分、デザインはシンプルを心がける。
ところどころポイントにゴールドを取り入れていくと、あっという間に前世の俺の部屋に限りなく近くなった。
昔のこととはいえ生まれてから死ぬまで寝起きしていた部屋のことは細部まで思い出せる。調子に乗って暖炉の上に、俺の紋章だった赤い目をした黒い虎のタペストリーも掛けてみた。
「うん。我ながらいい部屋になった」
自分の髪と目の色でもあった黒と赤は一番好きな色だった。もちろん今でもそうだ。
「すごいです……! けど、派手じゃないですか? なんだか落ち着かないです」
リアムは大人しくキャンディを舐めながら部屋を見回している。
「はぁ? どう考えてもこの上なく落ち着くだろ」
「赤と黒って、インパクトありますよね」
「そこがいいんだろ。俺の一番好きな色なんだから」
「知りませんでした!」
「そういうことだから、この部屋には慣れろ」
やっと落ち着く色とレイアウトになった部屋に満足してベッドに寝そべってみる。ベッドは特にうまく再現できた気がする。
久しぶりに上質なベッドに寝転がっているせいだろうか。体から余計な力が抜けていくような感覚を味わう。祖国とはいえ、23年ぶりの帰還で緊張していたのかもしれない。いや、久しぶりに魔力をまともに使ったせいだろうか。とにかく自然と瞼が降りてくる。
「悪い、ちょっと寝るわ。適当な時間になったら起こして……」
俺はそのまま意識を失うようにして眠ってしまった。
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