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第四章 レヴィの想い
<3>アラン様と僕3※レヴィ視点
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「アラン、さま……?」
僕の声に振り返ったアラン様は、いつもみたいに片眉を下げて困ったように笑う。
「ったく……なんでおまえがここにいるんだよ。説教は後でな。俺から離れるなよ」
そう言って再び前を向く。
「国王自ら最前線に出向くとはな。しかもご丁寧に変装までしやがって。大したもんだぜ」
その言葉に馬上の老人の姿がゆらゆらと揺れて次第に変化していく。
現れたのは壮年の屈強な男性だった。
「さすがだな、アラン王子。ベリンガムの次期国王と評されるだけはある」
ウィンダミア王が再び剣を構える。
「そりゃどーも。あいにく王座に興味はねえ。だがウィンダミアはベリンガムの従属国になるべきだ。ウィンダミアの国民のためにも」
「ほう。我が国民のためだと? 随分と傲慢な口を聞く」
王は眉を跳ね上げる。
「アンタら王族が交易に重税を課して、その金で派手に遊び暮らしてることは、ほとんどの隣国が知ってんだよ。ベリンガムは国民から税を搾り取ったりしない。ウィンダミアの民をバカな王侯貴族から解放してやる。それに俺たちのほうが絶対に商才あるし」
「勝手なことを言うな! この若造が!!」
「痛いとこつかれからって怒鳴るなよ。ていうか、そろそろおしゃべりは終わりにしようぜ、おっさん……かかってこいよ」
「生意気な……! 殺してやる!!」
二人の鬼気迫る様子に2つの国の兵士たちがどんどん集まってくる。だがアラン様は厳しい声で叫んだ。
「手出し無用! これはウィンダミア国王とベリンガムの王子の戦いだ!!」
ウィンダミア国王もそれに呼応するように声を張り上げる。
「一騎打ちでどちらかが死ねば、この戦いは終わりだ!!」
そうして一息の間を置いて、二人の剣から放たれる魔力がぶつかり合った。赤い炎のようなアラン様の魔力は、いつ見ても強く美しい。だがウィンダミア王の灰色の魔力も負けてはいなかった。
二人の力は拮抗しているように見える。それまで僕はアラン様と互角にやり合う人間を見たことがなかった。めったなことでは汗をかかないアラン様の額には大粒の汗の玉がいくつも浮いている。
そんな姿を前にしても、祈ることしかできない。アラン様の魔力がウィンダミア王に傷をつければ、今度はすぐにウィンダミア王がアラン様に傷をつける。
やがて、決着はついた。
互いに同時に一撃を放った直後、ウィンダミア王が馬から落下した。心臓の辺りから血が噴き出す。そうして王はぴくりとも動かなくなった。
ウィンダミアの騎士が一人、馬から降りると王へと近づいていく。王の手首に手を当てた後、虚ろな目で空中を見つめたまま動かない目を撫でるようにして閉じて立ち上がる。
「ウィンダミア王、崩御!! 我が国は敗北した!! ベリンガム帝国の勝利だ!!」
騎士は絶叫に近い声で叫ぶと、魔力で自らの胸を打ち抜き、王のそばに寄り添うようにして倒れた。
やがて怒号のような勝どきの声が鳴り響き、大地を揺する。アラン様は振り返って笑った。
「ほら、帰るぞレヴィ。おまえも乗れ」
僕は頷いて魔力でアラン様の愛馬に飛び乗った。やっぱりアラン様は無敵だと思った。この人に一生ついていくんだ、とも。
だがしばらくして異変が起きた。
いつも背筋を伸ばしているはずのアラン様が、僕の右肩に顎を乗せるようにして体を預けている。最初は密着していることに緊張しつつ胸を躍らせていた僕は、アラン様の息遣いが異常に荒いことに気がついた。
「アラン、さま……?」
片手を後ろに伸ばしてアラン様の胸や腹部にそっと触れる。
「……っ!」
手を前に戻すと、僕の手のひらには大量の血がべったりとついていた。
僕の声に振り返ったアラン様は、いつもみたいに片眉を下げて困ったように笑う。
「ったく……なんでおまえがここにいるんだよ。説教は後でな。俺から離れるなよ」
そう言って再び前を向く。
「国王自ら最前線に出向くとはな。しかもご丁寧に変装までしやがって。大したもんだぜ」
その言葉に馬上の老人の姿がゆらゆらと揺れて次第に変化していく。
現れたのは壮年の屈強な男性だった。
「さすがだな、アラン王子。ベリンガムの次期国王と評されるだけはある」
ウィンダミア王が再び剣を構える。
「そりゃどーも。あいにく王座に興味はねえ。だがウィンダミアはベリンガムの従属国になるべきだ。ウィンダミアの国民のためにも」
「ほう。我が国民のためだと? 随分と傲慢な口を聞く」
王は眉を跳ね上げる。
「アンタら王族が交易に重税を課して、その金で派手に遊び暮らしてることは、ほとんどの隣国が知ってんだよ。ベリンガムは国民から税を搾り取ったりしない。ウィンダミアの民をバカな王侯貴族から解放してやる。それに俺たちのほうが絶対に商才あるし」
「勝手なことを言うな! この若造が!!」
「痛いとこつかれからって怒鳴るなよ。ていうか、そろそろおしゃべりは終わりにしようぜ、おっさん……かかってこいよ」
「生意気な……! 殺してやる!!」
二人の鬼気迫る様子に2つの国の兵士たちがどんどん集まってくる。だがアラン様は厳しい声で叫んだ。
「手出し無用! これはウィンダミア国王とベリンガムの王子の戦いだ!!」
ウィンダミア国王もそれに呼応するように声を張り上げる。
「一騎打ちでどちらかが死ねば、この戦いは終わりだ!!」
そうして一息の間を置いて、二人の剣から放たれる魔力がぶつかり合った。赤い炎のようなアラン様の魔力は、いつ見ても強く美しい。だがウィンダミア王の灰色の魔力も負けてはいなかった。
二人の力は拮抗しているように見える。それまで僕はアラン様と互角にやり合う人間を見たことがなかった。めったなことでは汗をかかないアラン様の額には大粒の汗の玉がいくつも浮いている。
そんな姿を前にしても、祈ることしかできない。アラン様の魔力がウィンダミア王に傷をつければ、今度はすぐにウィンダミア王がアラン様に傷をつける。
やがて、決着はついた。
互いに同時に一撃を放った直後、ウィンダミア王が馬から落下した。心臓の辺りから血が噴き出す。そうして王はぴくりとも動かなくなった。
ウィンダミアの騎士が一人、馬から降りると王へと近づいていく。王の手首に手を当てた後、虚ろな目で空中を見つめたまま動かない目を撫でるようにして閉じて立ち上がる。
「ウィンダミア王、崩御!! 我が国は敗北した!! ベリンガム帝国の勝利だ!!」
騎士は絶叫に近い声で叫ぶと、魔力で自らの胸を打ち抜き、王のそばに寄り添うようにして倒れた。
やがて怒号のような勝どきの声が鳴り響き、大地を揺する。アラン様は振り返って笑った。
「ほら、帰るぞレヴィ。おまえも乗れ」
僕は頷いて魔力でアラン様の愛馬に飛び乗った。やっぱりアラン様は無敵だと思った。この人に一生ついていくんだ、とも。
だがしばらくして異変が起きた。
いつも背筋を伸ばしているはずのアラン様が、僕の右肩に顎を乗せるようにして体を預けている。最初は密着していることに緊張しつつ胸を躍らせていた僕は、アラン様の息遣いが異常に荒いことに気がついた。
「アラン、さま……?」
片手を後ろに伸ばしてアラン様の胸や腹部にそっと触れる。
「……っ!」
手を前に戻すと、僕の手のひらには大量の血がべったりとついていた。
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