魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

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第七章 真実の愛

<18>レヴィの悪だくみ④

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「それに今日はプリシラが主役でしょう? 先日あなた方がエヴァンズ公爵に費用の負担をお願いしにいらした際、公爵は難色を示されていらっしゃいましたよね。あのとき僕が費用を負担を申し出たのは、妻が大切にしている義妹のためです」
その言葉に広間が一気にざわめき始める。
「な、なにを……」
父上も母上も青褪めて魚のように口をパクパクと開閉している。
「エヴァンズ公爵家でお会いした際、どうにもご様子がおかしかったので心配になりましてね。少し調べさせていただきました」
レヴィは両親を真っすぐ見据えた。いつの間にかその手には紙の束が握られている。
「ラムズデール公爵家はアイルズベリー国内の各地の商人たちから領地や屋敷を担保に大金を借りていらっしゃいますね。義兄上とお呼びすべきか――二人のご子息の始めた事業が上手くいかず、銀行家のへスター伯爵からも5~6%の高利子で追加で借り入れたそうですね」
「で、でたらめを言うなっ!!」
「そうよ! そんなの嘘だわ! なんて方なの。私たちに恥をかかせるために来たのね。今すぐ帰ってちょうだい!」
抗議する両親の声を遮るように、広間の遠くの方から別の声が響いた。
「嘘なものですか! その方が言われたことはすべて真実ですぞ!」
皆が声の主を振り返る。そこに立っていたのはへスター伯爵だった。
伯爵は人波をかき分けて俺たちのところまでやってくる。
「ついでに申し上げますと先月分の返済も未払いです。そんな状況でいったいどこにパーティーを開く資金があるのかと思っていたのですが……」
へスター伯爵は俺たちの方に向き直る。
「失礼ですがあなた方は?」
「僕はベリンガムのレヴィ・ヴァンダービルトと申します。隣にいるのは妻のエリス。旧姓はラムズデールです」
「エリス様? ラムズデール公爵家のご子息はお二人では?」
「エリスお兄様はずっとお父さまやお母さま、それにお兄さまたちにいじめられていたのよ!! 魔力が少ないからこのうちの子じゃないって!!」
乳母に抑えられていたプリシラが力いっぱい叫ぶと、その手を振り払って体当たりするように俺に抱き着いてくる。
「エリスお兄様がお嫁に行くとき、お見送りするのも許してくれなかった! 無能な子どもに使い道があってよかったって、厄介払いできたって笑ってたもの!!」
その言葉に広間中に批難の声が上がる。

「実の子どもになんてひどい仕打ちを……!」
「エリス殿もプリシラ嬢もおかわいそうに」
「豪華な暮らしはすべて見せかけだったっということか」
「借金まみれの公爵家なんて聞いたことがない。国の恥さらしだ!」

自分たちに浴びせかけられる軽蔑と批難の眼差しに耐えきれなくなったのか、母上は広間を出ていこうとする。
「ラムズデール夫人、お待ちください」
レヴィが声をかけると同時に母の動きが止まる。
「あ、あなた何をしたのっ!? 体が動かないじゃない!!」
「ご退出される前に、僕がプリシラ嬢にプレゼントしたものをお返しくださいね」
レヴィは花のように笑うと、母の手に握られていた箱を取り上げた。
その瞬間、身体が動くようになった母はバランスを崩して床に転がってしまう。
反射的に助けようとする俺の腕をレヴィが捉えた。
目で制され、大人しく従う。
母はドレスが豪華で重たすぎるのが災いして、床に転がったまま、手足をバタつかせている。
「誰か! 起こしてちょうだい!! あなた! ハロルド! ウィリアム!」
母の金切り声に父上と兄たちがよたよたと駆け寄って、なんとか起こそうと試みた。
だが両腕を引っ張ってもなかなか起こすことができない。
「痛っ!! 痛いわ!! そんなに強く腕を引っぱらないで!」
「そんなこと言ってもドレスが重くて全然持ち上がらないよ!」
「なんだってこんなに重いんだこのドレスは!!」
兄たちが文句を言いながら真っ赤な顔で手を引っ張る。
今度はなんとか途中まで起こす事に成功したが、なぜか突然足を滑らせて二人ともその場で派手に転倒してしまった。
母上は再び床に倒れ、その姿はまるでひっくり返った亀のように見える。
父上はその周りをおろおろと歩き回っている。
気の毒なのだが、あまりにコミカルな彼らの姿に俺はついに笑いをこらえ切れなくなってしまった。
「ぶっ……くくっ……」
一度笑いだしてしまうと止まらない。
俺の笑い声はさざ波のように広がり、いつしか広間は大爆笑の渦に包まれていた。
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