魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第六十九話 豚は出荷よー

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───イトウ・コンペ───
イトウ・コンペは鍛冶屋である。鍛冶屋としての腕は良く、多くの武具の依頼が舞い込んでいた。しかし、本人はそれを良しとせず、おしゃれなbarを経営することを夢見ている。経営資金で困っていたところでホウリと出会い、資金援助の代わりに武具や拠点の提供をしてもらう事を約束している。また、素材の調達や完成した武具の良し悪しも自分で戦って確かめていたため、冒険者としても一流である。──────Maoupediaより抜粋



☆  ☆  ☆  ☆ 



「そこであたしは言ってやったのよ。『30年早いわ坊や』ってね」
「HAHAHAHAHAHA!」


 二日後、クラン家とのアポを取ったり情報を集め終えた俺は地下への階段を下る。地下室に戻ると、トリシューラの面々とイトウが楽しそうに話していた。出る前は少し心配していたが、この様子だと問題なかったみたいだな。


「おーい、帰ったぞー」
「お、帰ってきたか。エンゼおじいちゃんは何と言っていた?」
「快く承諾してくれた。それはもう笑顔でな」
「何も条件は出されなかったのか?」
「何も出されなかった」
「……そうか」


 俺の言葉にソファに寄りかかっていたミエルが頭を抱える。容易にその時の様子が想像できたんだろう。
 すると、俺とミエルの会話を聞いていたロワが首を傾げる。


「どうしてミエルさんは頭を抱えているんですか?条件がないなら別にいいじゃないですか」
「違う。エンゼおじいちゃんの狙いは私が屋敷に泊まりに来ることだ」
「ミエルが屋敷に泊まっている間に篭絡しようって魂胆だろう」
「……ミエルさん、がんばってくださいね」


 ロワが憐みの視線を向け、ミエルが更に頭を抱える。


「あ、ホウリお兄ちゃんだー」


 俺に気が付いたノエルがトテトテと走り寄ってきて足にしがみついてくる。


「おかえりなさーい」
「ただいま」

 
俺はノエルの頭を撫でながらイトウに視線を向ける。


「イトウ、こいつらの相手してもらってありがとうな」
「いいのよ~、あたしも楽しかったし」
「わしらも楽しかったぞ。こやつの話は中々面白い」
「特に3日3晩、山に籠って魔物と戦った話は聞きごたえがあったな」
「ラストの親玉との一騎打ちは最高に燃えました」
「イトウは冒険者としても一流だしな」


 イトウは自分の武器の良し悪しを自分で確かめる。その過程で自分が強くなり、様々な武器も扱えるようになったらしい。正直、今のロワでは勝てないくらいには強い。


「イトウさんが作るご飯も美味しかったですよ。僕はカルボナーラがお気に入りです」
「うふふ、ありがと。お店が完成したらメニューに載せるから食べに来てね」
「はい、よろこんで」


 余程気に入ったのか、ロワがイトウと握手をする。
 こいつらの様子を見るに退屈はしなかったんだろう。イトウに頼んで正解だったな。


「で、結局どうなったんじゃ?」
「クラン家には今日行くことになった。準備が出来たら出発する」
「あら、もう行くの?もう何日か居てもいいのよ?」
「他に行く所が出来たからな。また今度遊びにくる」
「残念だけどそれじゃあ仕方ないわね」
「そういう訳だから、30分以内で準備してくれ」
「「「「はーい」」」」


☆  ☆  ☆  ☆ 


 そんなこんなで準備を終えた俺達は乗り物に乗ってクラン家に向かっていた。振動がガタガタと伝わっている中、俺は皆にこれからの予定を話していた。


「まずクラン家に着いたらエンゼさんに挨拶する。その後に別館の部屋に荷物を置いて広場で特訓してくれ」
「そんなの言われるまでもないだろ?」
「ここからが大切なことだ。ロワは絶対に別館から出るな」
「なんでですか?」


 ロワの言葉に全員があきれ果てた視線を向ける。そんな視線を受けたロワは気まずそうに頭を掻く。


「えっと、また僕何かまずい事言いましたか?」
「前に屋敷で起こった事を忘れたのか?」
「前に屋敷で?……あ」


 屋敷での出来事を思い出したのか、ロワの顔が引きつっていく。


「思い出したか」
「……いまから別の所に変更出来ませんか?」
「無理言うな」
「ですよね」


 地下室でのミエルに続き、今度はロワが頭を抱える。


「しかし、別館に籠るだけでは十分とも言えぬのでないか?」
「エンゼに頼んで別館には男だけ出入り出来るようにしてもらうか」
「そういえば、前にロワにちょっかい出したメイドはどうなった?ロワが居ると分かったら無理にでも押し入りではないか?」
「既にクビになっているから大丈夫だ」


 ちなみに、俺がクビになるように仕向けた訳じゃなく、普通にクビになったらしい。ロワにとってはラッキーと言ったところか。


「注意点は以上だ。何かあったらエンゼを通して俺に連絡してくれ」
「む?お主はどこかに行くのか?」
「大半の出場者の対策は取れているが、取れている奴もいるからギリギリまで情報を集めておきたくてな」
「皆との食事はどうなる?屋敷には気軽に戻れぬぞ?」
「……ノエルは平気だよ」


 フランの言葉にノエルがポツリと呟く。心配を掛けまいと言葉では強がっているが、口調から寂しさや不安が見て取れる。


「そうだな、定期的にフランと連絡を取って、飯の時間にワープでコッソリ戻ってくるか」
「いいのか?貴様がどれだけエンゼおじいちゃんから信用されているか知らない。だが、流石にワープで屋敷に忍び込んだことがバレたら行方不明にされるぞ?」
「数日ならなんとかなるだろ」
「……まあいいか。貴様が行方不明になった所で支障はない」
「もっと俺の扱いを見直すべきだと思うぞ?」


 寝る間も惜しんで働いている俺に掛ける言葉じゃないと思う。まあ、今までの行動で差し引きマイナスだろうけど。


「そういう事だ。何か質問はあるか?」


 俺の言葉にフランがおもむろに手を挙げる。


「なんだフラン?」
「恐らく皆が気になっていると思うんじゃが────」


 フランは言葉を一度止めてハッキリとした口調で続けた。











「なんでわしらは木箱に入って移動しておるんじゃ?」


 フランの言葉通り、俺達は荷馬車の上に載っている木箱の中に入って移動していた。ちなみに、箱は2つに分かれており、男組と女組で別れて箱に入っている。


「そうですよ、いきなり箱の中に入れって意味が分かりませんよ」
「結構息苦しいしな」
「でもちょっと楽しいよ?」


 ノエル以外から抗議の言葉がぶつけられる。


「まったく、近頃の若い者は我慢をしらん」
「わしよりお主の方が若者じゃろうが」


 歳の差およそ500歳。


「とにかく、なんで箱の中に押し込まれたのかは教えてくれませんか?」
「え?何となく」
「その箱をお主らの棺桶にしてやろうか?」
「僕もですか!?」
「はっ!そんなの覚悟の上だ。俺達は生まれた時は違えども死ぬ日は同じだからな!」
「僕は覚悟出来てないですよ!?というか、そんな誓いはしてませんからね!?」
「良い覚悟じゃ。せめてもの情けとして苦しむように殺してやろう」
「僕は無関係です!あと、普通は苦しまないようにするんじゃないんですか!?」


 漫才が終わった後にロワは肩で息をしながら話を続ける。


「はぁはぁ……、それで、どうして箱の中に入って移動しているんですか?」
「簡単に言えば俺達の動向を極力隠すためだ」
「バレても特に問題ないとは思うのだがな」


 確かに俺達がクラン家にいることが敵にバレたとしても手だしが出来るとは思えない。だが、万が一でも敵に計画が妨害されないとも限らない。そういう可能性は極力排除しておきたい。


「そんな訳だから、可能な限り外部には出るな。大会中も拠点はクラン家になるからそのつもりで」
「うむ、了解じゃ」
「他に質問は?」
「ないぞー」
「僕も大丈夫です」
「ノエルも無いよー」
「私もない」
「了解だ。あと少しで反撃できる。少し不便だとは思うがみんなで頑張ろう」
「「「「おおー!」」」」
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