魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百二十六話 相手が勝ち誇ったとき そいつは すでに敗北している

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「という訳で、ホウリは1週間この世界を留守にすることになった」


 1階のリビングでみっちゃんとの相談結果を皆に報告する。すると、皆は三者三葉の反応を見せた。


「て、天界って神様がいる所ですか?そんな所に人間が行って本当に大丈夫なんですか?」
「遂に天界に行ったか。今度は地獄にでも旅行に行きそうだな」
「天界ってどんな所なんだろ?ノエルも行ってみたい!」
「……皆さんホウリさんが心配じゃないんですか?」


 ロワ以外は心配しておらんみたいじゃ。かく言うわしもあまり心配はしておらん。


「そんな事より今はこやつの事じゃ」


 わしは親指でリンタロウを指し示す。


「1週間だけとはいえ、ホウリの知り合いを預かったんじゃ。何もせん訳にはいかないじゃろ?」
「それもそうですね。リンタロウさんは何かしたいことはありますか?」
「そうでござるな……」


 ロワの質問にリンタロウが考え込む。いきなり別の世界に来てやりたい事を聞かれても困るじゃろうな。
 リンタロウは数分考えこむと、何か思いついたように手を叩いた。


「強い者と戦いたいでござる。そういった場所はあるでござるか?」
「ほう?お主は戦いを好むのか?」


 以外じゃ、戦闘はあまり好まぬタイプじゃと思っておったがのう?
 

「そんなに強い人と戦いたいのであればフランと戦えばいいのではないか?」
「い、いや、フラン殿は強すぎるでござらぬか。雰囲気から分かるでござるよ」
「見る目があるのう?」
「鳳梨殿に仕込まれたでござるからな。相手の力量を計るのは基本の能力でござる」
「ホウリの仕業か」


 奴の考えそうな事じゃな。というか、相手の力量を計るのが基本技術とはかなり過酷な環境じゃな。


「では、ミエルさんと戦いますか?それともノエルちゃんと?僕とでもいいですよ?」


 ロワの言葉にリンタロウは困ったように眉を顰める。
 なんだかきな臭いのう?何か裏があるのではないか?


「何か不満か?皆、わしには劣るがかなり強いぞ?」
「その……女性と戦うのはなんだか気が引けるのでござるよ」
「僕は男ですから心配ないですよ?」
「そうではなくて……もっとギャラリーがいる所で戦いたいのでござるよ」
「ギャラリーがいる所?なぜだ?」
「その……」


 ミエルの質問にリンタロウは口ごもる。もしかして……


「リンタロウ、お主もしかして自分が活躍してモテたいとか思っておるのではないか?」
「ソ、ソンナコトナイヨー」


 目をイルカのように泳がせながらリンタロウが答える。こいつは本当にブレぬのう……。


「そんなに戦いたいのであれば、わしがロワとの戦いをセッティングしてやろうか?」
「いいのでござるか?」
「僕は良いですよ。むしろ、リンタロウさんは僕なんかで良いんですか?」
「勿論でござるよ。ホウリ殿が選んだ男でござる。不足はないでござろう?」
「そう言ってもらえると嬉しいです。いい試合にしましょうね」
「勿論でござる」


 ロワが差し出した手をリンタロウが掴む。恐らく、ロワが思っている良い試合とリンタロウの思っているいい試合は違うじゃろうが、良い雰囲気じゃし黙っておくか。


☆   ☆   ☆   ☆


「これより、ロワ・タタンとカドヤ・リンタロウの勝負を始める。ルールは3回攻撃が当たるか降参した方が負け。フィールドはこの庭の中で出たら反則負けじゃ」
「いけいけロワー!」
「ロワ君がんばってー!」


 庭に集まったギャラリーがロワに声援を送る。当たり前じゃが、リンタロウに対する声援は一切ない。
 やる気が失せてはおらんかとリンタロウの方へ視線を向けると、やる気満々で腕を振り回していた。


「ふっふっふ、拙者がカッコよく勝ってギャラリーの女の子にモテモテになるでござる」


 独り言を聞く限り、どうやら心配はいらんようじゃな。


「ロワ、準備は良いかー」
「僕は大丈夫です」
「リンタロウはどうじゃー」
「拙者も準備完了でござる」


 ロワが弓を構え、リンタロウが刀に手を掛ける。ロワが遠距離じゃし、リンタロウはかなり厳しそうじゃな。


「それじゃ、始め!」
「先手必勝!」


 リンタロウが刀を抜き去り空を切る。ロワは少し驚いたようにしたが、すぐに弓を引き絞って狙いを付ける。瞬間、


「な!?」


 リンタロウがロワの目の前に瞬間移動した。ロワが反射的に放った矢をリンタロウが切り捨てロワに切りかかる。
 ロワは後ろに下がって回避しようとしたが、肩に少し斬撃を受けてしまう。
 ロワはワープアローで距離を取って、ヒールシュートで回復する。



「驚きましたね。一体何をしたんですか?」
「これが拙者の切り札、『距離切り』でござる。相手との距離を切る事によって確実に刀の射程内に入れることが出来るのでござる」
「それは厄介ですね」


 ロワが顔を引きつらせながら、弓を構える。どれだけ距離を取っても一瞬で詰められるのであれば、ロワはかなり厳しいじゃろう。
 じゃが、距離切りを見てもロワは闘志を失っておらん。何か秘策があるみたいじゃな。


「次は僕の番ですよ!」


 ロワは次の矢を番えてリンタロウに向かって放つ。


「何度やっても無駄でござるよ!」


 リンタロウは放たれた矢を再び切り捨てる。じゃが、矢が切られた瞬間、リンタロウの表情が固まった。
 切られた矢から黒い煙が噴き出した。


「うおっ!」


 突然の事に驚いているリンタロウが黒い煙に包まれる。ロワはそのスキを見逃さず立て続けに矢を放つ。
 矢は先端から裂けていき、6本の矢に変わった。クラウドショットじゃ。それが5セット放たれ、黒い煙に向かって殺到する。


「ぐわあああ!」


 黒い煙の中からリンタロウの叫び声が聞こえる。煙が晴れると、肩や腹、足に矢が突き刺さったリンタロウの姿があった。


「勝負あり!ロワ・タタンの勝利!」
「「「わあああああ!」」」


 周りのギャラリーから歓声が上がる。ロワは汗を拭いながらリンタロウに向かって走る。


「大丈夫ですか?」
「いてててて……」


 ロワが矢を抜いてヒールショットでリンタロウを治療する。


「……ロワ殿は強いでござるな」
「そうですか?リンタロウさんに言われると嬉しいです」


 ロワの笑みを見たリンタロウは口を尖らせる。


「あーあ、ロワ殿であれば勝てると思ったのでござるがな」
「調子に乗るでないぞ?」


 後ろから話しかけられたリンタロウは驚いて振り返る。リンタロウの背後にいたわしはリンタロウに顔を近づけながら話す。


「ロワはもちろん強い。しかし、お主の技量が足りんのも事実じゃ」
「そ、そんな事ないでござるよ?ちゃんと鍛錬しているでござるし」
「フランの言う通りだ」


 ミエルも不機嫌そうにリンタロウに近付いてくる。ロワを馬鹿にされたのがかなり頭に来ておるのじゃろう。


「ロワが使ったのは矢のエンチャント。色んな効果がある矢を使えるのだ。そして、ロワは使えるエンチャントの3割も使っていない。貴様が何回ロワと戦っていても勝てる筈がないだろう」
「うう……遠距離相手であれば勝てると思ったのでござるが……」
「うぬぼれ過ぎじゃ。技量を見切れるのではなかったのか?」
「大まかな技量は分かっていたでござるが、いけるかと思って」
「ロワを舐めているのか?」


 ロワ本人よりもミエルの方が怒りが大きい。余程ロワを侮辱されたことがショックだったんじゃろう。


「そんな事言わないで欲しいでござるよ。せっかくの可愛い顔が台無しでござるよ?」
「待ってろ、今すぐその頭をカチ割ってやる」
「ミエルさん落ち着いてください!」


 大剣を取り出したミエルをロワが羽交い絞めにして止める。


「HANASE!今すぐにこの男の頭を割ってやらないと私の気が済まないんだ!」
「僕なら大丈夫ですから!こんな事言われないように強くなりますから!だから落ち着いてください!」
「……ロワがそう言うなら」


 ロワの必死の説得に見えるが大剣を収める。大事にならなくて良かったのう?


「しかし、能力は強いがそれを使う奴が未熟ではのう?」
「ホウリ殿に良く言わるセリフでござる」
「やっぱりか。ホウリが能力を使わせたくない理由が分かるのう」


 思ったよりも危なっかしい奴じゃな。さて、これからどうしたものかのう?
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