魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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外伝 何がクリスマスじゃい!

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※今回は倫太郎が帰った後のお話です。


 今日はクリスマス、街にはいつもよりも活気があり、行く人が心なしか浮かれている気がする。
 まだ日が高い昼前、わしとノエルは買った物を持って家に向かっておる。


「ジングルベルが鳴ったらクリスマス~♪太陽も台地も歌いだす~♪」
「これこれ、はしゃぎすぎじゃぞ」


 スキップしながら歌いだすノエルをたしなめる。注意されたノエルは歌うのを止めて大人しくなった。しかし、体をウズウズさせるとすぐにまた歌いだした。


「今日はとっても楽しい日~♪皆も一緒に踊りだす~♪」
「これこれ、少しは落ち着かんか」


 わしが注意してノエルが少しおとなしくなって、また歌いだす。さっきからこれを繰り返しておる。
 わしも強く注意してはおらぬし、もうほっといてもよかろう。というより、歌っているノエルが可愛すぎてもう少し見ておきたい。
 マフラーとベレー帽と言った冬仕様で荷物が沢山入った紙袋を抱えるノエル。控えめに言って天使ではないか?
 写真を撮りまくりたい気持ちをグッと堪えていると、鼻先に冷たい物が当たった。
 空を見上げるとハラハラと雪が降ってきているのが見えた。


「冷えると思ったら雪まで降ってきおったか」
「わーい!」


 ノエルが雪を追いかけて走り回る。転ぶぞ、とわしが言おうとしたその時、ノエルが盛大にすっ転んで地面に額を打ち付けた。


「いったーい!」
「滑りやすいのに走るからじゃ」


 セイントヒールで傷を治しているノエルに手を差し伸べる。


「立てるか?」
「ありがと!」


 わしの手を取ってノエルが立ち上がる。


「また転んではいけんから、家までは手を繋いでおくからな」
「はーい」


 また転ばぬようにノエルと手を繋いだまま道を歩く。
 すると、またノエルがそわそわして歌いだした。


「るるるる~♪」
「楽しそうじゃな?」
「そりゃそうだよ。皆とクリスマスパーティーなんだから。ふふーん、プレゼントは何かな~♪」


 上機嫌でスキップしながら歩くノエル。


「ノエルちゃんフランちゃんこんにちは。楽しそうだね?」
「これから、皆でパーティーの飾り付けなんだ」


 八百屋のおばちゃんがウキウキなノエルに話しかける。
 ハロウィンの飾り付けはホウリが全部やったが、ノエルの希望でクリスマスは皆で飾り付ける事になった。
 飾り付けもパーティーの一環という事だろう。確かに皆でワイワイと飾り付けるのは楽しいじゃろう。


「それは楽しそうだね」
「でしょー?」


 八百屋のおばちゃんと別れて帰路に付く。
 その後は何事もなく家に着き、玄関の扉を開ける。


「ただいまー」
「おかえりなさーい」


 わしらは買ってきた物を持ってリビングに向かう。すると、ホウリ、ロワ、ミエルが既に飾り付けを始めていた。
 脚立に載って壁に文字を張り付けていたホウリが、わしらに気が付いて視線を向ける。


「飾りと食材は買ってきてくれたか?」
「勿論じゃ」
「そうか、なら2人はツリーの飾り付けを頼む」
「りょーかい」


 ノエルが帽子とマフラーを外して、紙袋から飾りを取り出す。わしは買ってきたツリーをアイテムボックスから取り出して部屋の隅に飾る。割といい値段したが、今日くらいは良いじゃろう。
 ノエルが紙袋から飾りを取り出す。


「どれから飾ろうかな?」
「ボールから飾ったらどうじゃ?」
「そうするー」


 丸い飾りを取り出してツリーに飾り始めるノエル。


「ふんふーん、今日は楽しいクリスマス~♪」
「ノエルちゃん、楽しそうだね」
「今日はずっとこの調子じゃ。本当に困ったものじゃな」


 そう言うわしじゃが、きっと顔は綻んでおったじゃろう。
 やはり、ノエルが楽しそうなのを見るとわしも嬉しくなってくる。こっちも歌いたくなってくるわい。いっそ歌うか。


「ジングルベルが鳴ったらクリスマス~♪」
「太陽も台地も歌いだす~♪」
「今日はとっても楽しい日~♪」
「「皆も一緒に踊りだす~♪」」


 ノエルと一緒に歌いながらツリーに飾り付けをする。この時間がいままで一番楽しいかもしれぬのう。
 ツリーがわしとノエルの手によってどんどんと飾られていく。
 ボールを模した飾りや雪を模した飾りでどんどん彩られていくツリー。ノエルと共に世界一のツクリスマスツリーへとなっていく。


「ふむ、こんなものか」
「キレイに飾り付けられたね」


 赤や白と言ったカラフルに飾り付けられたツリーを見て、ノエルと腕を組む。しかし、ツリーには重要なある部品が付いておらん。


「てっぺんにお星さまが無いと寂しいね」
「そうじゃな」


 確かにツリーはカラフルじゃが頂点には星の飾りが付いておらん。
 と言うのも、別に売り切れていたという訳ではない。売り物ではなく、もっといい物を飾ろうという訳じゃ。そんな訳でツリーの飾りはひと先ずは終わりじゃな。
 他の者を手伝おうと部屋の内装を見てみると、少しずつ飾り付けがされていた。


「ツリーの飾り付けは終わったぞ」
「だったら壁の飾り付けをしてくれ。飾りはテーブルの上に置いてある」
「りょーかい!」


 上機嫌なノエルがそのまま壁の飾り付けを始める。


「このサンタさんはどこに飾った方がいいかな?」
「文字の周りに飾れば可愛いと思うぞ?」
「確かに!」


 協力してポインセチアのリースやサンタの人形と次々と飾り付ける。


「できたー!」
「こっちも出来ましたよ」
「俺の方も出来た」


 全員の飾り付けが終わりリビングがすっかりとクリスマスに染まる。


「中々良いですね」
「そうだな。皆で話し合ってきめたにしては中々オシャレだよな」
「だが、まだ全部のかざりが揃っている訳ではないな?」


 ミエルがツリーのてっぺんに目を向けながら言う。やはり星が無いのは違和感があるのう。


「星はこれから取りに行くんじゃったか?」
「そう言う事。パーティーは帰って来てからだな」
「時間も良いしそろそろ準備して行くとしよう」
「武器は忘れるなよ」
「はーい」


 こうして久しぶりに武装したわしらは、街の外へと向かったのじゃった。


☆   ☆   ☆   ☆


 王都から外への門をくぐると目の前には森が広がっておった。周りにはわしらと同じように武装した冒険者たちが集まっておる。皆わしらと同じように厚着をしておるが、剣や槍といった近接武器を持っている物は少ない。皆、弓や杖と言った遠距離の武器を持っておる。
 全員表情が真剣じゃし雰囲気が本気じゃ。皆も今日という日にかけているのじゃろう。
 今までに見たことが無い程の人の数を見て、ノエルが感嘆の声を上げる。


「おー、こんなに人がいるんだね」
「クリスマスの名物だからな」
「やっぱり、皆さんもアレが欲しいんですね」
「この日しか手に入らないレアな物だからな。俺でも正規の手段で確実に手に入れる方法はない」


 そう、皆の狙いはこの日だけしか手に入らないアイテム『希望の星』。とあるモンスターを倒した時に低確率でドロップするのじゃが、不思議な事に1つドロップすると他のモンスターからはドロップしなくなる。要は1年に1つだけの特別なアイテムなんじゃな。
 それだけレアなアイテムじゃ。狙う物も多い訳じゃな。
 して、そんなレアなアイテムの効果とは……クリスマスが終わったら消える事じゃ。それ以外に効果はない。
 それだけかと思うかもしれぬが、このアイテムにはとある伝説がある。このアイテムに願いを込めると、消えた後に叶うという伝説じゃ。本当に願いが叶う効果はないんじゃが、願掛けみたいなものじゃな。


「して、まだ管理者はまだか?」
「もうそろそろ来るはずだ」


 わしらが話しておると、森の奥からコートを着て黒い帽子をかぶった初老の男が現れた。この男が例の魔物が出る区域の管理を国から任されてる奴じゃ。今から始まる魔物狩りを仕切ってもおる。
 国で魔物狩りを管理する前は何でもありの無法地帯じゃったみたいじゃ。そこで、国は魔物狩りのイベントを行う事によって勝手な狩りを禁止した。今は管理者がいない所での狩りは禁止されている。


「ちょっとこの人と話してくる。フランも付いてきてくれ」
「分かった」
「いってらっしゃーい」


 わしとホウリは初老の男と共に森の中へと移動する。初老の男は帽子を取ってホウリに深々とお辞儀をする。


「これはこれはホウリさん、協力いただきありがとうございます」
「いえいえ、身内も参加するのついでですよ」
「そうでしたか。そのお嬢さんがもう一人の協力者ですかな?」
「フランじゃ。よろしく頼む」
「私はパフと言います。よろしくお願いします」


 パフは上品に微笑み手を差し出してくる。わしはその手を掴んで握手をした。


「それで、俺たちは何をすれば?」
「他の参加者の動向を見張って欲しいのです。具体的には───」
「そこにいるのはホウリか!?」


 パフの話を聞いていると後ろから聞きなれた喧しい声が聞こえてきた。
 わしとホウリがうんざりしながら振り向くと、顔をゆがめているナップの姿があった。こやつも希望の星を狙っておるのか。
 わしらの顔を見たナップがもの凄い勢いで詰め寄って来る。


「なんでお前らがいる!まさか、希望の星を独り占めする気だな!」
「1つしか無いんだから、どうあがいても独り占めになるだろうが」
「他の銀の閃光のメンバーはどうした?」
「ミルはシースとデート、筋肉バカ共は嫁と子供と過ごすんだとよ」
「コレトはオダリムにいるだろうし、お前だけ手持無沙汰な訳か」
「うるせえ!そんな事よりもお前らがいるなら勝ち目がないだろうが!さっさと帰れ!」


 わしらの話を聞こうともせず、一方的にまくしたてるナップ。わしらは顔を見合わせて溜息を吐き、わしは口を開く。


「なあ、ホウリや。初めてオダリムに行った時を覚えておるか?」
「勿論だ。とある冒険者に絡まれたっけな」


 わしたちの言葉に喚いていたナップの言葉が止まる。
 そんなナップをよそにわしらはお喋りを楽しむ。


「いきなりプロポーズされてびっくりしたよな」
「その後、海でも似たような事されたしのう。しかも、風呂を覗かれそうになったしのう」
「その事は俺の知り合いの神殿長は知ってるのか、気にならないか?」
「気になるのう。今度聞いてみるかのう?」
「……へへへ、冗談は止してくださいよお二人さん。あ、肩を揉みましょうか?」


 どこぞの魔剣のような身の変わりようじゃ。どれだけ過去の自分を知られたくないんじゃ。


「心配せんでもよい。わしらはこのイベントには運営側として参加する」
「あ、そうなのか?」
「俺らが参加したらブーイングの嵐だろ。そんなリスク犯せるか」
「ならいいんだ。邪魔したな」


 わしらが参加しないと知るや否や、さっさと向こうにいってしまうナップ。相変わらずせわしない奴じゃ。
 パフは腕時計を見ると帽子を目深にかぶり直す。


「時間です。そろそろ始めましょうか」
「そうですね」


 わしらは皆が待つ広場へと向かう。
 皆の話し声で騒がしかった広場がパフが現れた途端に静けさを取り戻す。


「皆さまお待たせしました。ただいまより今年の『スノーマンハント』を行います。ルールは例年通り、スノーマンから希望の星がドロップしたら終了。希望の星の横取りは行ってはいけません。今年はホウリさんとフランさんにも協力していただきます」


 名前が呼ばれたわしは一歩前に出て軽く頭を下げる。
 ホウリも同じように頭を下げるとどこからかメガホンを取り出して口に当てた。


「紹介に預かったホウリだ。俺たちは他の参加者への妨害が無いか見張らせてもらう。万が一不正が発覚したら……」


 ホウリは一度言葉を区切ると、満面の笑みで言葉を続けた。


「覚悟しろよ?」


 ホウリの言葉に辺りに異様な雰囲気が漂う。絶対に不正をする訳にはいかない。全員の気持ちが一つになった瞬間じゃった。
 ホウリが一歩後ろに下がるとパフが再び前に出る。


「今からスノーマンハントを始めます。皆さん、怪我だけには気を付けてくださいね。では、始め!」


 パフがそう言うと皆が一斉に森に突撃していった。毎度思うが凄い熱量じゃな。


「フランはあっちを頼む。俺はこっちを見張る」
「了解じゃ」


 ホウリと別れて森の中に入る。
 森の中では魔物を探すために周りを見渡している参加者がおった。中にはミエルやノエルの姿もあった。ミエルはいつもの大剣ではなく杖を握っておる。それもその筈、今から相手をする奴との接近戦はかなり分が悪い。
 皆が血眼になってスノーマンを探していると、木の陰から何かが現れた。
 手は木の枝、鼻はニンジンで出来ている3段の雪だるまじゃった。頭にはバケツを被って首にはマフラーを掛けておる。一般的な雪だるまに見えるが、ぴょんぴょんと跳ねながらこちらに向かってきており、一目で普通でないことが分かる。


「よっしゃ!一番乗りだぜ!」


 斧を持った男がスノーマンに切りかかる。あのバカ、事前に調べんかったのか?
 男の斧がスノーマンに命中しスノーマンの体が崩れ落ちる。


「はっ!大したこと無いな!」


 男は調子に乗って斧でスノーマンを倒しまくる。


「オラオラ!かかってこいや!……へ?」


 ここまで順調にスノーマンを倒していた男が急に斧を落とす。その手は細かく震えており、斧を持てそうにない。
 そんな男に多くのスノーマンが迫ってくる。表情が無機質な分かなり不気味じゃな。


「うわああああ!」
「頃合いじゃな」


 わしはスノーマンの群れを縫って男の元へと走り、首根っこを掴んで森を抜ける。
 細かく震えている男を木の根元にもたれさせる。


「ああああ、あれは一体なんなんだ……」


 歯をガチガチと鳴らしながら男は震える。本当に何も知らぬのじゃな。


「あの魔物はスノーマン。見ての通り、雪で出来た魔物じゃ。斧等の近接攻撃で倒すと、体温が奪われる厄介な敵じゃ」
「そ、そんなに厄介な敵だったのか……」


 体を震わせながら男は呟く。震えておるのは寒さからか、それとも死にかけた恐怖からか。どちらにせよ、もう戦うことは出来ぬのう。
 わしは男にカイロを渡して毛布を掛ける。


「体温が戻ったら街に帰るがよい。これ以上は危険じゃ」
「わ、分かった」


 男が無事そうなのを確認して森の中へと戻る。森の中では色々な遠距離攻撃で戦う参加者の姿があった。


「火球!」


 ミエルが杖の先から火球を飛ばしスノーマンの体を溶かす。そういえば、ミエルは魔法が使えるんじゃったな。いつも剣を使っておったから忘れてたわい。
 次にノエルを見てみると、銃でスノーマン達を撃ちまくっておった。流石の命中率で既に10体のスノーマンを倒しておる。順調じゃな。


「へっへーん、楽勝楽勝」
「戦闘中は気を抜くな。痛い目を見るぞ」
「はーい」


 ミエルに注意されてノエルが口を尖らせながら銃を構える。
 周りの参加者も同じように遠距離攻撃でスノーマンを倒していく。スノーマンもかなりの数がいるが、それ以上に参加者が撃破する方が早い。これなら早めに希望の星が出るかもしれぬのう?


「うわああああああ!」


 そう思っていると森の奥から誰かの叫び声が聞こえてきた。わしは急いで声がする方へと向かう。
 スノーマンは接近戦だと苦戦くる相手じゃが、遠距離だとそこまで脅威ではない。動きは遅いし体も大きいから遠距離攻撃が当てやすいんじゃな。その分数は多いが、参加者が多い分倒し切れずに接近されるという事もない。一体何が起こったというんじゃ?
 不思議に思いながら声が聞こえた方へ到着すると、驚くべき光景が広がっておった。
 そこには頭には兜、手には大きな太刀を持ったスノーマンが参加者の一人に切りかかっていた。こんなスノーマンは見たことが無いぞ!?


「フラン!何があった!」
「ホウリ!あれを見るんじゃ!」
「見た事の無いスノーマン、変異体か!」


 普通の魔物が何かの事情で強くなる変異体。よりにもよって今現れおったか!


「くそ!来るな!」


 参加者の一人が下がりながら火球を放つ。しかし、太刀スノーマンは獣のように素早く動いて火球を回避すると、そのまま参加者に切りかかった。足も付いておらんのに素早い動きじゃな!
 わしは咄嗟に飛び出すと、参加者を掴んで太刀スノーマンから距離を取った。


「はよう逃げんか!」
「は、はい!」


 参加者を逃がすと、わしはスノーマンに見つからないようにホウリの元へと戻った。


「ホウリ、流石にわしが出るぞ。このままだと死人が出る」
「……いや、あの程度なら参加者で大丈夫だ。フランはもしもの為にあいつを見張っていてくれ」
「しかし……」
「俺とあいつらを信じろ」
「……分かった。じゃが、危険だと思ったらすぐに出るからな?」
「ああ、任せたぞ」


 そう言うと、ホウリは森の向こうへと消えていった。わしはホウリに言われた通りに太刀スノーマンを見張る。
 太刀スノーマンは逃げた奴へと視線を向けたが、そのまま別の獲物を探すように辺りを見渡した。そして、標的を見つけたのかもの凄い勢いで走り始めた。


「……あの位置はマズい」


 わしはすぐに太刀スノーマンを追いかける。あの位置にはノエルとミエルがおる。ミエルがおるから大事には至らんじゃろうが、それでも心配じゃ。
 そう思っていたら向こうからミエルの叫び声が聞こえてきた。


「なんだこいつ!」
「ミエルお姉ちゃん!」


 ミエルとノエルの叫び声と共に金属のぶつかる音が聞こえる。
 わしが駆け付けると、ノエルを庇うようにミエルがスノーマンの太刀を受け止めていた。ミエルはスノーマンの太刀を受け止めながら細かく震えている。見るからに体温が奪われてきておる。


「ミエルお姉ちゃん!」


 ノエルがミエルの後ろから太刀スノーマンに向かって発砲する。
 しかし、太刀スノーマンは弾丸を物ともせずミエルに太刀を押し付ける。


「銃が効かない!?」
「くっ……」


 ミエルが唇を紫色にしながら太刀を受け止める。しかし、足に力が入らないのかミエルは膝を付いてしまう。


「このぉぉぉ!」


 ノエルが魔装をして太刀スノーマンに殴りかかる。ノエルに殴られた太刀スノーマンは後ろに吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がり向かってきた。ノエルも体温を奪われたのか、寒そうに震えてミエルの元に向かう。


「ミエルお姉ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だ……ノエル、下がっていてくれ」


 ミエルが立ち上がって杖を太刀スノーマンに向ける。


「火球!」


 ミエルの苦し紛れの火球を太刀スノーマンが切り払って、もの凄い速度で接近してくる。
 それを見たノエルは太刀スノーマンの後ろの回り込むように走り出した。


「ミエルお姉ちゃん!こっちに火球を撃って!」
「な、何を?」
「良いから!」


 ノエルの迫力に負けたミエルがノエルに向かって火球を撃ちこむ。
 ノエルは火球を手袋で受けると、燃え盛る手袋と共に太刀スノーマンの背後に迫る。


「うりゃあああ!」


 ノエルは燃え盛る拳を太刀スノーマンに叩き込む。太刀スノーマンは背後のノエルに向かって太刀を振るおうとする。しかし、ミエルはそうはさせまいと、太刀を抑え込む。



「やあああ!」


 ノエルの拳が太刀スノーマンの背中を貫く。
 背中を貫かれた太刀スノーマンはそのまま体が崩れていった。


「ふぃ~、なんとかなった~」


 ノエルが雪の上に倒れ込む。すると、雪の中にキラリと光る物を見つけた。
 首を捻りながら光っている物を取ると、それは星の形をしたアイテムじゃった。


「みっけ!」


 ノエルが手に取ったアイテムを天に掲げる。それは、ここにいる皆が欲しがっている物、希望の星じゃった。


☆   ☆   ☆   ☆


「これでよし」


 ノエルがツリーの上に希望の星を飾る。


「とても綺麗じゃな」
「それしかメリットが無いからな。手に入れにくいのに綺麗なだけ、しかもクリスマスが終わった消えると来たものだ。100年前まではゴミ扱いだったみたいだぜ?」
「この100年間で何があったんですかね?」


 ミエルにホットココアを渡しながら首を捻る。しかし、ミエルもノエルも大事に至らなくてよかったのう。


「そ、それで……ノエルは何をお願いしたんだ?」


 毛布をかぶりながらココアを啜るミエル。
 ミエルの質問にノエルが満面の笑みで答える。


「勿論、皆とずっと一緒にいられますようにってお願いしたよ!」
「……そうか」


 ノエルの言葉にわしは曖昧に答える。
 わしとホウリの戦いは必ずどちらかが死ぬ。つまり、この5人が一緒にいられるのはそう長くはない。ノエルにはそれが分かっておらんのじゃろう。


「その願いは願うだけじゃダメだぞ?ちゃんと努力もしないとな?」
「はーい、分かってまーす」


 ホウリもその事を知っておる筈じゃが、あえてノエルに明るく話しかける。……ここで指摘するのは野暮か。


「そんな事より、僕お腹空きました」
「そろそろご飯にするか。ローストチキンに鮭のマリネ、ピザにブッシュドノエル。色々あるぞ」
「やったー!」


 皆がいつものように席に付く。今はわしもこの時を楽しむとするか。
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