魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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外伝 来年の事を言うと鬼が笑う

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※今回は倫太郎が去った後の話になります。


 大晦日の11時、俺達5人はリビングでトランプをしていた。種目は大富豪、大貧民とも呼ばれているゲームだ。
 簡単に言えば手札から強いカードを出していって手札が先に無くなった奴が勝ちだ。地域によって色々とローカルルールがあるみたいだが、長くなるのでそこは割愛する。
 今は俺とフランが残っている状況だ。


「はっはっは!2を2枚じゃ!これでわしの勝ちじゃ!」
「はいジョーカー」
「な!?」


 勝ち誇ったようにカードを出したフランにジョーカーで対抗する。
 俺はそのまま残りのカードを出して上がる。


「わあああ、わしの負けかあああ」
「中々良い勝負だったな」
「お主、イカサマしておらぬか?」
「こんな所でイカサマなんてする訳ないだろ」
「……嘘はついておらぬみたいじゃな」


 スキルまで使って嘘を見破って来るのか。どんだけ負けを認めたくないんだ。


「あと数分か」


 ミエルが壁に掛かっている時計を見て呟く。後数分で年が明けるのか。なんだか感慨深いな。


「今年も色々とありましたね」
「ここにいる全員にとって転機になった年だったな」
「俺はこの世界に来て、フランは俺と共に旅を始め、ノエルはサンドから解放され、ロワは神級スキルを手に入れて、ミエルはロワに出会った」
「これが1年以内に起きたのか。濃いな」
「忙しかったよね」
「危ない橋も何回も渡ったな」
「サンドに追われていた時は生きた心地がしませんでしたよ」


 ロワが話しながら体を震わせる。思い出して怖くなったんだろう。確かに結構危ない状況ではあったな。


「じゃが、なんとかなったんじゃし別に良いじゃろ」
「そういう問題じゃないんですよ」
「あんな目は二度と御免だ」
「後悔してるか?」
「してませんけど……」
「ノエルの事を考えると公開はしていない。だが、国から追われるのはもう御免だ」
「……今年も似たような事があるけどな」(ボソッ)
「ホウリさん、何か言いましたか?」
「何でも無い。でもよ、あの経験があったおかげで強くなれただろ?」
「そうですけど……」


 ノエルを守るという口実の下、特訓をかなり厳しくしていた。何回か死ぬ思いもさせたと思うから申し訳なく思っている。
 まあ、来年も同じような事になるんだがな。


「フランは今年の出来事で何か心に残っている事はあるか?」
「そんなの決まっておろう。ノエルに会えた事じゃ」
「俺と会った事じゃないのかよ」
「あー、それもあるぞ?」
「明らかに忘れてただろ?」
「そんなこと無い……多分」
「もっと自信を持ってくれ」


 フランのノエル好きには困ったものだ。いつか痛い目に会いそうだな。


「ノエルは今年一年で心に残った出来事はあるか?わしと出会った事か?」
「勿論、ホウリお兄ちゃんとフランお姉ちゃんに会った事だよ!」
「わしと同じじゃな」
「えへへ」


 フランが満面な笑みのノエルを抱きしめる。本当の姉妹のように仲が良いな。


「そう言えば、ノエルちゃんはゴールドウルフに襲われていた所をお二人に助けられたんですよね?」
「そうだな。フランがノエルを庇って、俺がゴールドウルフを仕留めた」
「へー、この世界に来たばかりだって聞きましたけど、どうやって倒したんですか?」
「泉に叩き落してMPを枯らした後に爆弾を投げまくって倒した」
「貴様らしい姑息な戦い方だ」
「誉め言葉として受け取っておこう」


 その後はノエルを連れてグランガンに行ってロワと知り合ったんだったな。


「そう言えば、なんで僕に声をかけてくれたんですか?」
「別にロワだけ目を付けてた訳じゃない。目を付けてた奴らで一番有望だったのがロワだっただけだ」
「それは嬉しいですね」
「調子に乗る癖さえ無ければな~」
「き、気を付けます」


 ユミリンピックでロワの伸びしろを見た俺はロワを仲間にした。
 その後、とある村に優秀な騎士がいると聞いた俺は向かってみることにした。


「それがミエルだった訳だ」
「いきなり家に入り込んできて仲間になれと言われた時の私の気持ちが分かるか?」
「その後に戦って、だまし討ちのような形で負けたしのう」
「あれしか勝つ手段は無かったからな」
「だが悪いとは思っていないだろう?」
「まあな」
「お主な……」


 その後に発明品を回収し、王都でノエルを救うための準備を進める事になった。


「本当に厳しい戦いだったな」
「そうか?結構余裕そうに見えたが?」
「瞬殺の試合もあったしな」
「苦戦=敗北のパターンが多いからな。余裕をもって倒す事がマストなんだよ。対戦相手全員と戦う事を想定して、持ち物を全部身に着けて戦うんだぞ?大変じゃない訳ないだろ?」
「そう考えると良く勝てましたね?」
「裁判も含めて危ない橋を渡りまくってたな」


 優勝後は裁判の準備をして確実にサンドを追い詰めた。だが、想定外の事が起こってしまった。


「ホウリさんが死んだ時は本当にびっくりしましたよ」
「あれは本当に想定外だった。皆がいなければ本当に危なかった」
「役に立てて良かったよー」


 まさか親父に会うとは思わなかったが、結果オーライだったな。


「今年も色々とありましたね」
「むしろ、色々とあり過ぎただろう。こんなに濃い一年は早々に無いぞ?」
「それはどうかのう?そう言えば、お主らは来年の目標はあるか?」
「僕はもっと強くなりたいです」
「お主はいつもそれじゃな。なぜそこまで強さにこだわる?」


 フランの質問にロワは頭を掻く。


「大した理由ではないですよ。父さんを超えたい、それだけです」
「今のままではダメなのか?ロワはかなり強くなったと思うが?」
「まだ父さんにはかなわないでしょうね」
「ロワお兄ちゃんのお父さんってそんなに強いの?」
「一人でデーモンを倒せるくらいには強いみたいです」
「強力なスキルでも持っているのか?」
「いえ、スキルを使わずに倒したみたいです」
「眉唾だな」


 ロワの話を聞いた皆の視線が俺に向く。デーモンは最低でもA級のパーティを10組は用意しないといけない程に強い。それを一人で倒したと聞いたら疑うのも無理はないだろう。


「俺が調べた限りだと事実だ。ロワの父親は弓と矢だけでデーモンを倒している」
「ロワの父親は化け物か?」
「それに近いな。スキルが強いだけの奴はなんとでもなるが、技術や判断力が強い奴はかなり厄介だ」


 ロワがあこがれるのも無理はない。それほどにロワの父親は弓使いとして一流だ。


「ロワの目標は当分変わらなそうじゃな」
「そうだな」
「悔しいですがおっしゃる通りです。それで、ノエルちゃんの抱負は何かな?」
「ノエルの抱負?うーんと……」


 ノエルがストローを咥えながら考え込む。
 ノエルは何か目標を持って生きていた訳じゃなく、サンドに追われながら必死に生きてた。一年が終わる時に抱負を考えるのはいい機会かもしれない。


「抱負ってどうやって考えたらいいの?」
「自分が今年に頑張れなかった事を目標にするのが普通じゃな」
「何か頑張りたいと思った事でも良いぞ。そう言った事は無いのか?」
「そうだなぁ……」


 皆の言葉を聞いたノエルが首を傾げる。急に決めるのは難しかったか?
 唸っていたノエルだったが、急に立ち上がると手を叩いた。


「そうだ!ノエルも抱負あったよ!」
「なんじゃ?」
「ノエルも強くなる!」
「ほう?以外な抱負だな?」
「具体的な目標はあるのか?」
「うん!」


 ノエルは満面の笑みで口を開いた。


「フランお姉ちゃんを倒せる位には強くなりたい!」


 理由を聞いて俺は納得する。なるほど、そう言う事ならある意味ノエルらしいとも言えるのか。


「……は?」


 ノエルの言葉にフランが固まる。溺愛していた妹分に倒す宣言されたんだ。かなりショックだろうよ。
 フランは顔を引きつらせながらノエルの方へ顔を向ける。その動きは油が切れたロボットみたいにぎこちない。


「あ、あれじゃな?あくまで目標じゃよな?壁は大きい方が越えがいがあるしな?」
「違うよ?いつかフランお姉ちゃんを倒す事がノエルの目標なんだ」
「……ホウリぃ」


 今まで聞いたことが無いような弱々しい声ですり寄って来る。


「わしはノエルに何かしたか?ノエルはわしの事嫌いなのか?写真を撮りまくっていたのが嫌じゃったのか?」
「そんなに気になるんなら本人に聞けよ」
「無理じゃ、ノエルの口から嫌いと言われたらもう立ち直れん……」
「そうか。ちなみに、フランの抱負は?」
「ノエルに嫌われんようにする事じゃ」
「だろうな」


 頭を抱えながら顔を青くするフラン。この世の終わりみたいな顔してやがるな。まあ、どうせ時間が解決するだろうからほっとくか。


「ミエルは来年の抱負はあるか?」
「やはり家事をもっと上手くなりたい。特に料理はもっと上達したいな」
「その向上心が美徳だが、ミエルの場合は失敗した時の被害がでかすぎる。俺がいない時には絶対に料理はするなよ?」
「思ったのだが、そろそろサラダ位は一人で料理しても良いのではないか?」
「絶対にダメだ。破ったら紙の内容を公開するからな?」
「……分かった」


 不満そうではあるが、素直に頷くミエル。
 ミエルの料理の腕は確かに上達はしてきたが、それでもまだ危険だ。サラダみたいな簡単な料理でも一人で作らせる訳にはいかない。


「そう言うホウリは何か抱負はあるのか?」
「俺か?俺の抱負は年がら年中同じだ。『出来る事を一つずつやっていく』」
「お主らしいのう」
「近道しようとすると痛い目にあうからな。確実に出来る事をやっていくのが一番の近道だ」
「そうですね、僕も出来ることを確実にやっていきたいです」
「出来る事を増やしていく事も重要だからな?」
「はい、来年もご指導お願いします」


 ロワが俺に向かって頭を下げる。ロワにも強くなって貰わないとな。
 俺がそこまで話した瞬間、壁に掛かった時計が鳴り響く。新年を告げる合図だ。


「あけましておめでとうございまーす」
「あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
「おめでとうじゃ」
「おめでとさん」


 皆と新年のあいさつを交わす。今年もいい年になると良いが、順風満帆とはいかないだろう。だが、俺達は進み続ける。どんな困難が待っていようともな!





「良い事言ってる風じゃが、困難を持ってくるのはお主じゃよな?」
「それは言わないお約束だ」
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