魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
357 / 472

第三百二話 これが最後の祭りだぁぁぁぁ!

しおりを挟む
 お祭り二日目、わしはノエルと一緒に手を繋いでオダリムの街を歩いていた。


「お祭り~♪楽しいな~♪」


 二日目だというのにノエルのテンションは一日目と変わらん。わしと繋いでいる手を思いっきり前後に振るう。


「そんなに楽しいのか?」
「うん!」
「そうか、それは良かったのう」
「フランお姉ちゃんは楽しくないの?」
「勿論、楽しいぞ」


 何せノエルと一緒じゃからな。ノエルとなら地獄でも楽しいと言い切ることができるじゃろう。


「そういえばさ、ホウリお兄ちゃんは?」
「約束の時間まであと1分じゃからな。もうすぐ来るじゃろ」


 スキルで時間を確認しつつ答える。特に待ち合わせ場所は決めておらんが、ホウリなら問題無く合流するじゃろう。
 そんな事を考えておると、人混みに紛れて歩いてくるホウリの姿が見えた。軽く手を上げると、ホウリも手を上げ返して、わしらの方までやってきた。
 

「よお、待たせたな」
「時間ピッタリじゃがな」
「ホウリお兄ちゃん!」


 ノエルが満面の笑みでホウリの足にしがみつく。ホウリはそんなノエルの頭を撫でながら笑顔を浮かべる。


「お祭りは楽しんでるか?」
「うん!とっても楽しいよ!」
「それは良かった」


 笑いあう二人を邪魔しないように、ホウリに念話を送る。


『それで?魔物の群は問題無いのか?』
『ああ。あの調子なら二回り強くなっても問題無く守り通せるだろうな』
『祭りの日に防衛を引き受ける奴がおって助かったのう?』
『給料を2倍にしたからな。むしろ、申し込みが殺到したくらいだ』
『破格じゃのう』


 魔物の心配が無いのであれば心置きなく祭りを楽しめるわけじゃな。安心したわい。


「ねぇねぇ、ホウリお兄ちゃんとはどのくらい遊べるの?」
「3時間だな」
「えー、もっと遊びたーい」
「我儘を言うでない。ホウリが忙しいのはノエルも知っておるじゃろ?」
「むう」


 ノエルは可愛らしく頬を膨らませるが、それ以上は何も言ってこなかった。内心は無茶を言ってることが分かっておるんじゃろうな。


「じゃあ行くか」
「うん!」


 ノエルの右手をわし、左手をホウリが繋いでオダリムの街を歩く。


「何か行きたい所とかあるのか?」
「昨日はオカルト研究クラブでアクティビティエリアは回ったからのう。他のエリアが良いのではないか?」
「だったら物販エリアが良いかもな。人国中の珍しいものが売ってるから、見ているだけでもあのしいと思うぞ?」
「面白そう!ノエル、そこに行きたい!」
「決まりじゃな」


 わしらが今いるのはフードエリア。物販エリアは中央広場を経由した方が早いじゃろう。
 人の流れに沿いつつ中央広場に歩く。


「昨日はどんなことをしたんだ?」
「最初にね、どのカップにボールが入っているかを当てるゲームをやったよ」
「ああ。あのイカサマゲームか」
「その言い方は知っておったな?」
「全ての屋台の情報は把握している。敵のスパイが紛れているかもしれないからな」


 つまり、あのイカサマゲームを知ってて見逃したわけか。まあ、こやつのことじゃし引っかかる方が悪いとか考えておったんじゃろうな。


「スパイはおったのか?」
「10人いた」
「調べておいてよ良かったのう」


 昨日、わしもお祭りを満喫中にスパイを見つけた。目立たずに牢屋の中に叩き込んでおいたとはいえ、もしかしたら他にもスパイは紛れ込んでいるかもしれんな。


「ねぇねぇ、他にもスパイさんはいるの?」


 ノエルもわしと同じ考えをしていたのか、ホウリに疑問をぶつける。


「もしかしたら、いるかもな」
「ふむ?お主なら全て見つけ出していると思ったんじゃがな?」
「可能な限り見つけているが、この人数では見つけられない奴も出てくるだろうよ」


 ホウリとは思えん言葉じゃ。こやつなら昨日の内に全てのスパイを見つけておっても不思議ではない。しかも、見つけられぬという発言までしておる。


「お主、本当にホウリか?」
「本物だよ。ほら」


 そう言ってホウリは新月を取り出す。鑑定してみるが本物のようじゃ。
 じゃが、新月を確認しても疑念が拭いきれん。


「ホウリお兄ちゃん、魔学の教科書の32ページの5問目の答えってなんだっけ?」
「そのページは解説ページだから問題はないだろうが」
「せいかーい。やっぱり本物のホウリお兄ちゃんかな?」
「分かったなら、足の魔装を解いてくれ。この体制で蹴られたら躱すのにも苦労する」
「はーい」


 ホウリが本物か疑わしかったら、問題を出して外したら攻撃する。本物なら問題に答えるか、攻撃を捌くことが出来る。それがノエルのホウリの見分け方じゃ。
 正解したということは本物か。


「お主が本物なら解せんな。いつから弱気になった?」
「弱気というか事実だ。今回は準備する時間が少なかったからな。敵を見つけるところまでリソースが割けていないんだよ」
「そんなものかのう?」
「誰だって可能な範囲で対策を練るだろ?俺の場合はその範囲が人より広いだけだ。範囲外のことはできない」


 ホウリが当たり前のように宣言する。ホウリにも出来ん事があったとは意外じゃな。


「そんなんでは街中でテロでも起こされかねんぞ?」
「それは問題無い。そんな派手なことしようものなら、計画の段階で潰してる」
「そうか」


 やはり、ホウリはホウリじゃな。この様子なら心配はないじゃろう。
 そんな事を考えておると、中央広場が目前に迫っていた。


「あれ?何かやってるみたいだよ?」


 ノエルが指さす方を見てみると、中央広場の噴水の前に人だかりができていた。
 噴水の前にはステージが出来ており、上にはスタンドマイクがあった。


「あれはのど自慢大会か?」
「のど自慢大会って何?」
「歌が上手い奴を決める大会じゃよ」
「見ていくか?」
「うん!」


 人だかりの後ろでステージを眺める。


「うーん、見えないよー」


 ノエルは必死に背伸びをしてステージを見ようとしている。じゃが、背が足りぬしステージを見るのは厳しそうじゃ。
 そんなノエルにホウリがしゃがんで視線を合わせる。


「見えないんだったら、肩車してやろうか?」
「いいの!?」
「ああ。ステージが見えないのはつまらないだろ?」
「ありがと!」
「待て待て、肩車なら姉であるわしの方が適任じゃろ」


 ホウリの方に足を掛けようとしたノエルの肩を抱く。そんなわしにホウリがジトっとした視線を向けてくる。


「俺はどっちでもいいぞ」
「ならば決まりじゃな。ほれ、ノエルや。わしが肩車してやろう」
「えー、フランお姉ちゃんより大きいから、ホウリお兄ちゃんがいいー」
「な……!?」


 わしが絶句しておると、ノエルがホウリの肩に跨った。ホウリはやれやれと言った様子でノエルを肩車する。
 わしが敗北感で立ち上がれずにおると、ステージから女性の声が響いてきた。


「お待たせしました!これよりのど自慢大会を開催します!」


 声を聞いた瞬間、とある顔が頭に浮かんだ。
 この声は一昨日に会った奴の声か。そういえばのど自慢大会の準備をしておると言っておったか。
 なんとか立ち上がると、思った通りの奴がステージ上でマイクを握っていた。


「参加者の方が順番に歌います。全ての参加者が歌い終わった後に、観客の皆さんにはどなたの歌が良かったのかを投票してもらい、順位を決定します。順位によって豪華な賞品がもらえますよ」


 掲げられた商品が掲げられたボードを見ながら、一昨日のことを思い出す。


「そういえば、お主も参加すると聞いておったのじゃが?行かんで良いのか?」
「俺が出たのは昨日ののど自慢大会だ」
「そうじゃったのか。結果は?」


 わしの問いにホウリは無言で3枚の金色のチケットを取り出した。そこには『ディフェンド スペシャルチケット』と書いてあった。
 どうやら、3位に入賞できたみたいじゃな。


「狙って3位を取るとは流石じゃな」
「まあな。良かったらこの後に3人で行くか?」
「良いのか?」
「1人で3枚使う訳にもいかないからな」
「それは願ってもいないことじゃな」


 もう食えんと思っておったからかなり嬉しいのう。


「何そのチケット?」
「美味いケーキ屋のチケットじゃよ」
「のど自慢大会の後に行こうな」
「ほんと!?やったー!」


 肩の上でテンション高く暴れるノエル。ホウリはなんとかバランスをとりつつ、倒れない様に踏ん張る。
 そうこうしている内にステージ上に最初の参加者が現れた。


「一番、カレル・シュトルン。曲は一番星です」


 蓄音機から曲が流れ、カレルが歌い始める。のど自慢大会に出るだけあって、普通の者よりも上手い。じゃが、中の上といった感じじゃな。


「ふむ、あの程度ならわしの方が上手いな」
「自信があるなら飛び入り参加するか?フランなら1位を狙えるぞ?」
「いや、それは大人げないじゃろ。わしじゃって一応プロじゃぞ?」


 ホウリに鍛えられて、わしの歌唱力はかなり上がった。ここで参加するのは他の参加者のやる気をなくしかねん。


「え?飛び入り参加できるの?」


 そう思っていたら、意外にもノエルが食いついた。


「ノエルも参加したいのか?」
「うん!」
「ならば良いぞ。何を歌いたい?」
「タンパンマンの歌!」
「ノエルらしいのう」


 タンパンマンの歌はレコードがあった筈じゃ。これで問題無くノエルも参加できるじゃろう。


「飛び入り参加はステージの脇で受け付けている筈だ。行って来い」
「はーい」


 ノエルがホウリの肩から飛び降りる。


「ではいくか」
「うん!」


 満面の笑みのノエルと共にステージの脇に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党
ファンタジー
人類が滅亡した後の世界に、俺はバンパイアとして蘇った。 常識外れの怪力と不死身の肉体を持った俺だが、戦闘にはあまり興味がない。 俺は狼の魔物たちを従えて、安全圏を拡大していく。 好奇心旺盛なホビットたち、技術屋のドワーフたち、脳筋女騎士に魔術師の少女も仲間に加わった。 迷惑なエルフに悩まされつつも、俺たちは便利で快適な生活を目指して奮闘するのだった。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...