魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百八話 もうダメだ……おしまいだぁ……

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 とある戦闘場、僕、ミエルさん、ジル、ロットさん、クラフさんはある人を取り囲んでいた。


「ここまで実力者が揃うと壮観じゃな」


 囲まれてる人物、フランさんは僕らを見て不敵に笑う。
 その様子をみて、ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。数では勝っている筈なのに、これだけの威圧感。魂ごと体が震えるようだ。
 これなら素手でデーモンコマンドの相手をした方がマシだろう。


「どうした?どこからでも掛かってきて良いんじゃぞ?」


 フランさんが不敵な笑みを浮かべながら、僕たちを挑発してくる。動けない理由を知っているのに酷いや。
 というか、なんでフランさんと戦う事になったんだっけ?
 確か今日の朝に皆さんと話して、腕が鈍らないように手合わせしようってことになって、僕が「どうせだったら強い人と戦いましょう」って言って、フランさんを呼んだ。
 うん、僕の性だね。


「……どうする?勝てる気が一切しないぞ?」


 ミエルさんが僕に耳打ちしてくる。よく見ると剣と盾を持っている手が震えている。ミエルさん程の人でも怖いんだ。


「……今回の目的は勝つ事ではなく、戦闘力と精神力の向上です。全力で戦うしかないです」
「……そうだな」


 僕とミエルさんは武器を握りしめなおす。


「こそこそ話はもう良いのか?」
「はい。行きますよ!」
「はああああ!」
「うおおおお!」


 ミエルさんとロットさんがフランさんに向かって突撃していく。


「はあっ!」
「ぜりゃ!」


 ミエルさんが大剣を、ロットさんが大斧を振り下ろす。
 しかし、フランさんは余裕そうな様子で、素手で大剣と大斧を受け止めた。


「愚直に攻撃するだけでは、わしには届かんぞ?」
「ならば別の手を使うまでだ!ロワ!ジル!」


 ミエルさんの号令と共に、僕とジルが複製のトリシューラをフランさんに放つ。
 ジルには強力なエンチャント矢を何本か渡している。有効打になるかは分からないが、ある程度は戦えうだろう。


「なるほどのう、両手を塞いで本命で攻撃か。スタンダードな戦法じゃな。じゃが、」


 フランさんは大剣と大斧を掴んだまま、大きく足を上げる。


「まだ届かぬわい!」


 上げた足で複製トリシューラを蹴り飛ばす。蹴られたトリシューラはガラスが割れたような音と共に粉々になった。


「あれが効かねえのかよ」
「怯むな!次の攻撃だ!」


 ミエルさんの言葉を受けて、僕らは再び複製トリシューラを番えてMPを込め始める。


「同じ手が通用するか!」
「ぬわっ!」


 フランさんが大剣と大斧ごとミエルさんとロットさんを投げ飛ばす。


「あんなのアリかよ!?」
「ミエル!ロット!」


 クラフさんが杖を天に掲げる。


「チェーンロック!」


 黒い鎖が地面と壁から出現し、網の様になってミエルさんとロットさんを優しく受け止める。


「すまないクラフ!」
「お礼は後よ!来るわ!」


 クラフさんの言う通り、フランさんがミエルさんに殴り掛かってくる。
 ミエルさんは間一髪のところで盾で拳を受け止める。


「くぅ……」
「ほう?この一撃を受け止めるか。成長したのう?」
「それはどうも!」


 ミエルさんが脂汗を流しながら、拳を受け止め続ける。
 その隙をついてロットさんが大斧を振り下ろしてくる。


「またか。その程度の攻撃など、効くわけが……」
「ハイアップ!」


 クラフさんがロットさんに杖を向けてスキルを発動させる。すると、ロットさんの体が赤く輝き始めた。


「……これなら!」


 ロットさんが回転しながら大斧をフランさんの腹部に振るう。


「ふむ?」


 ロットさんの大斧がフランさんの腹部に命中し、吹き飛ばす。


「なるほど、さっきの3倍くらいの威力になったか。中々強力な攻撃じゃな」
「……ダメージを受けてないのによく言う」


 フランさんは空中で回転して体勢を立て直して着地する。


「3倍でも効かないのか!?」
「想定内だよ!攻撃を絶やさないで!」


 着地の隙を狙ってスピニングアローを放つ。


「回転する矢か。中々珍しい矢じゃのう?」


 そう言いながら、フランさんは拳を捻る。そして、力を溜めるとスピニングアローに向かって拳を突き出す。


「せい!」


 スピニングアローと拳が激突し火花を散らせる。だが、数秒も経たないうちにスピニングアローの回転が止まった。


「スピニングアローって岩を貫くくらいの威力だよな?なんで素手で相殺できるんだよ」
「こっちの攻撃は大抵効かないよ!分かったら攻撃の手を緩めないで!」
「効かないのに攻撃しないといけないのかよ。何の罰ゲームだ?」


 そんな感じで愚痴りながらもジルはスピニングアローを放つ。僕も負けじとイクスアローを放つ。


「絶えずに攻撃か。中々良いぞ」


 スピニングアローを拳で相殺、イクスアローを素手で握り潰しながらフランさんが褒めてくれる。
 素直に喜べないと思いながらも、僕らは攻撃を続ける。


「じゃが、このまま攻撃しても意味は無い───」
「はああっ!」


 フランさんの言葉を遮るように、ロットさんが大斧を振るう。
 不意打ちぎみの攻撃だったが、フランさんは大斧を難なく受け止める。


「またお主か。お主の攻撃は効かんぞ」
「……それはどうかな?」


 ロットさんが大斧に力を込めていく。その隙を突いて、僕とジルはフランさんの周りにヘビーウェイトを突き刺す。


「ふむ?」


 フランさんの体勢が少しだけ前のめりになる。効果はあるみたいだ。


「ジル!」
「分かってる!」


 効果を確認した僕たちは更にヘビーウェイトを撃ちこむ。すると、フランさんは膝を付いた。


「今です!」


 ロットさんが大きく飛び退いて距離を取る。


「ハイアップ!」
「……行くぞ」


 ハイアップで体が赤く光ったロットさんが、大斧を大きく振りかぶる。そして、遠心力を付けて大斧を振り回して始めた。
 ロットさんは独楽のように回り始める。そして、草原で見たようにロットさんを中心にした竜巻が起こり始める。


「あれ?これって不味くないですか?」
「お、おい!俺たちを巻き込む気か!?」
「今すぐ私の後ろに隠れるんだ!」

 
 言われるがままミエルさんの後ろに隠れる。すると、ミエルさんは大剣を床に突き刺して踏ん張る体勢を取る。


「ヘビーウェイト!」


 ミエルさんが自身の体重を重くする。そのおかげでロットさんの竜巻に僕達は巻き込まれずに済む。


「けど、あれは大群用の技だろ?フラン相手に効くのか?」
「あのロットって人、中々頭が良いみたいだし、何か考えがあるんじゃないかしら?」


 そんな事を話していると、ロットさんが徐々にフランさんに近づいていく。


「……いくぞ!」


 回転が最高潮に達した瞬間、ロットさんが跳んだ。


「……龍断!」


 ロットさんが回転した勢いのまま、大斧をフランさんに叩きつける。


「ぬおっ!?」


 大斧が轟音を立ててフランさんに直撃する。文字通り、当たれば龍すらも断つことが出来るだろう一撃。普通であればこの一撃を耐えるものはいないだろう。


「やったか!?」
「ジル、それってフラグだよ」


 ジルはロットさんに一撃に目を輝かせる。確かにあの一撃を耐える人は普通はいないだろう。


「良い一撃じゃな」


 なお、今相手しているのは全く普通じゃない相手だけど。
 フランさんが服の埃を掃いつつ、余裕そうに立ちあがる。無傷だと思っていなかったのか、その様子を見ていたロットさんは額から汗を流す。


「……効いていないだと?」
「効いてはおるぞ。薄皮一枚だけ切れた」


 そういう言いつつ、フランさんがロットさんに拍手を送る。


「誇ってよいぞ。単独でわしの薄皮を切ることが出来るなど、世界で5人くらいしかおらんぞ」
「……くっ!」


 フランさんが拍手しながら、反撃をしようとしたロットさんを蹴り飛ばす。


「ぐあっ!」


 ロットさんが蹴り飛ばされ壁に激突し力無く倒れ伏した。


「ロットさん!」
「安心せい、当たり前じゃが殺してはおらん。即興のパーティーにしては、かなり良い連携じゃったぞ」


 フランさんは笑いながら、僕たちのほうへ視線を向けてくる。


「で、わしの薄皮を切れる存在であるお主はどうするんじゃ?」


 ニヤリと笑いながらフランさんは僕に聞いてくる。


「……どうやら、これを使うしかないようですね」


 僕は切り札である純正のトリシューラを取り出す。


「ミエルさん、トリシューラの準備が出来るまで、僕のサポートをしていただけませんか?」
「分かった」
「ジルもお願いできる?」
「了解だ」
「私はロワ君にMPを分け与えるわ」


 ミエルさんとジルがフランさんに武器を向け、クラフさんが僕に手を向けて来る。
 ノエルちゃんが居れば、もっと威力を上げられるんだけどなぁ。
 そんな事を思いつつ、クラフさんから贈られてくるMPをトリシューラに込めていく。


「いくぞ!」
「来い!」


 ミエルさんとジルがフランさんに向かって攻撃を繰り広げる。


「スラッシュ!」
「ヘビーウェイト!」
「そんなのでわしを倒せるか!」


 その様子を見つつ、僕はトリシューラにMPを込めていく。焦るな、早さよりも確実性を重視してMPを込めていくんだ。
 2人がフランさんからの苛烈な攻撃をしのぐのを見つつ、確実にMPを込めていく。


「……溜まりました!」


 僕の言葉を聞くや否や、2人がフランさんから距離を取る。


「くらえ!トリシューラ!」


 僕はMPが溜まり切ったトリシューラを放つ。───フランさんの右端に向かって。


「どこを狙っておる?」


 フランさんが不思議そうに首を傾げた。その様子を見て僕は内心ほくそ笑む。


「ミエルさん!」
「シン・プロフェクションガード!」


 トリシューラが白銀の盾に命中し、フランさんへと方向を変える。


「上手い!攻撃を強化しつつ、相手の虚を突いたわ!」
「ふむ、そういうことか」


 フランさんが感心したように顎を撫でる。
 トリシューラの速度は光のように早い。いくらフランさんでもこの速度なら対処するのは……


「ふんっ!」


 フランさんがトリシューラを殴り飛ばした。


「……へ?」


 殴られたトリシューラは粉々に砕け散り、フランさんの周りに降り注ぐ。


「……なんでアレを殴れるのかしら?」
「殴れたとして、一瞬で砕くなんんて、どんな威力なんだよ?ロワ、手を抜いたんじゃないだろうな?」
「ちょっとした山を消し飛ばせるくらいには威力があったんだけどね?」


 一度に大量のMPを消費した僕は、体の力が抜けて思わず膝を付いてしまう。


「うっ……」
「ロワ!」
「今のは凄かったぞ。HPが1減ったわい」


 フランさんが少しだけ血を流した拳を撫でる。
 今ので届かないなら、もう手が無い。そう思いつつ僕は床に倒れる。


「ロワ!しっかりしろ!」


 ミエルさんに抱きかかえられるけど、意識は徐々に遠くなっていく。
 こんな相手にホウリさんはどうやって勝つつもりなんだろうか。そんな考えを最後に僕の意識は暗闇に落ちていった。
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