魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百十九話 スリーとフリーが掛けてあります

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※今回の話はノエルがサルミの家に泊まっている時の話です。

 満月がお空のてっぺんに上った頃、ノエルはサルミちゃんのお家の廊下にいた。


「そろそろおつかいをしないとね」


 いつもの鉄仮面とローブを持って窓から、お庭に。このお家に来てから警備の場所とか時間とかは把握してる。こっそりと抜け出すことはできそうだ。


「今日のおつかいは闇取引の阻止。スターダストの皆がオダリムに行ってから、こういうおつかいが増えた気がするや」


 ホウリお兄ちゃんが戻ってきた時に、おつかいのリストを更新してもらっている。
 もうパンプ君の手術費用を稼ぐ必要は無くなった。けど、ホウリお兄ちゃんには特別なナイフとかオカルト研究クラブの顧問とかでお世話になっているから、定期的におつかいをしている。


「早く行かないと取引が始まっちゃう」


 鉄仮面とローブを持って、窓から庭に飛び降りようとする。すると、後ろに気配を感じて思わず振り返った。


「何やってんのよ」


 そこにはパジャマ姿のサルミちゃんがいた。


「あ、サルミちゃん。こんな夜中にどうしたの?」
「それはこっちが聞いているんだけど?こんな夜中にどこに行くつもりなのかしら?」
「えっと……その……」


 今から闇取引を潰してくるって言えるわけない。けど、夜中に窓を開けて庭に飛び出ようとしている言い訳は思いつかない。
 ノエルは何も言えずにまごまごしていると、サルミちゃんがため息を吐いた。


「その表情を見るに、事情を言う事は出来ないみたいね」
「えっと……」
「皆まで言わなくていいわ。私が止めても行くんでしょ?」
「……うん」
「なら、これ以上の詮索は必要ないわね。私から言う事は1つ、必ず帰って来なさい」



 サルミちゃんの言葉にノエルは無言で頷く。
 その仕草にサルミちゃんは満足したのか、欠伸をしながら自分の部屋に戻っていった。


「……よし、行こう」


 鉄仮面とフードを付けて、ノエルは夜の街へと駆け出すのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 情報があった廃倉庫についたノエルは天井に張り付いて、取引の時間まで待っていた。廃倉庫は光が弱い蛍光灯だけしかなく、薄暗くて視界が悪い。だから、多分、ノエルの事は見られることは無いとは思う。


「……来た」


 黒いスーツとサングラスを付けた人達が数人、廃倉庫に入ってきた。銀色に輝くアタッシュケースを持って、誰かを待っているみたいだ。
 まだ捕まえる訳には行かない。取引する人が来てから捕まえよう。
 待つこと数分、今度は白いスーツを着た男の人がやって来た。黒いスーツの人達とはと違って1人だけだけど、アタッシュケースは持っている。


「時間に遅れるとは良い度胸だな?」


 白いスーツの男の人に、黒いスーツの人が怒ったように言う。そしたら、白いスーツの人はおちゃらけたように答える。


「数分くらいだろ?細かいこと言うなって」
「その数分で誰かに見られるリスクが跳ね上がることを忘れるな。違法な取引なんだぞ?」
「へいへい。分かりましたよ」
「これが例のブツだ」


 黒いスーツの人が白いスーツの男の人にアタッシュケースを渡す。


「中を確かめるぞ」
「好きにしろ」


 白いスーツの男の人がアタッシュケースを開けると、中には沢山の瓶が詰まっていた。
 多分、何かのお薬が入っているんだろう。あれが今回のおつかいの目的なんだろう。
 白いスーツの男の人は瓶を開けると、中身をジッと見つめる。


「……問題無いみたいだな」
「確認が終わったのなら、そちらのブツを渡して貰おうか」
「はいはい」


 今度は白いスーツの男の人がアタッシュケースを渡す。


「これで取引は終了だな」
「そうだな。これからもご贔屓に」
「それはどうかな!」
「誰だ!」


 チャンスと思ったノエルは、黒いスーツの人達と白いスーツの男の人の間に飛び降りる。
 黒いスーツの人達はノエルにビックリしている、けど、白いスーツの男の人は杖を取り出して、ノエルに向けていた。
 そっか、白いスーツの男の人が1人なのは強いからなのか。多分だけど、黒いスーツの人達が束になっても、白いスーツの男の人には敵わないんじゃないかな。


「何者だ?」


 白いスーツの男の人が、怖い顔をしてノエルに杖を突きつけてくる。黒いスーツの人達も、ビックリから立ち直って、剣を取り出した。
 ノエルはいつものホウリお兄ちゃんの口調とフランお姉ちゃんの声質で答える。


「俺はこの取引を妨害しにきた」
「答えになってないが、敵だっていうことは分かったぜ!」
「うおおおおお!」


 黒いスーツの人が1人ノエルに切りかかってくる。ノエルはナイフで剣を受け止めて、空いている拳を黒いスーツの人のお腹にめり込ませる。


「うぐっ……」
「どうやら腕に覚えがあるみたいだな。お前らに叶う相手じゃないな。さっさと逃げろ」
「あ、ああ」


 白いスーツの男の人の言葉に黒いスーツの人達が廃倉庫の出口に向かって走り出す。


「させない!」


 魔装を使って黒いスーツの人達との距離を一気に詰めようと試みる。


「俺を忘れるなよ?チェーンロック!」


 白いスーツの男の人のチェーンロックが足元から伸びて来る。ノエルは速度を緩めずにナイフでチェーンロックを破壊する。


「うおっ、これを破壊するか」


 ノエルは黒いスーツの人達に回り込んでナイフを構える。


「ひい……」
「怯むな!押しとおるぞ!最悪、アタッシュケースも置いてけ!」
「うおおおおおお!」


 剣を構えて黒いスーツの人達が一斉に襲い掛かってくる。時間をかけると白いスーツの男の人が妨害してくるかも。
 つまり、力押しが正解!


「せい!」


 体に全力で魔装をして、振り下ろされてくる剣を回し蹴りで全て叩き折る。


「何!?」
「必殺!牛波濤ぎゅうはとう!」


 ノエルが肩を使って思いっきり体当たりをする。すると、黒いスーツの人達は全員弾き飛ばされて、気を失った。


「よし、後は1人」
「なかなかやるじゃねえか」
「後はお前だけだ!」
「そうだな」


 白いスーツの男の人が杖を構える。この人を捕まえれば今回のおつかいは終わりだ。帰って早く寝よう。


「いくぞ!」
「来い!」


 ノエルが魔装を使って白いスーツの男の人に突っ込む。杖って事は魔法か呪術を使ってくる筈。スキルを使った後の隙を突いていこう。
 ノエルのナイフは白いスーツの男の人の杖で防御される。


「ステータスが高いみたいだな!だが近づきすぎだぜ!」


 ナイフを受け止めている杖にMPが込められて光輝いていく。


「グラビティ!」


 瞬間、ノエルの体が凄く重たくなる。地球で体験したロボットの時と同じだ。つまり……


「重力が強くなってる?」
「ピンポーン。正解だ。俺に近いほどに体が重くなる。密着するほどに近いと動けない筈だ」
「うう……」


 確かに、この重力だと全力での魔装でも満足に戦えない。けど、ここまで近いんだったらまだ戦いようがある。


「ふぃ、フィニッシュアッパー!」


 ノエルのアッパーが白いスーツの男の人の頬を掠める。


「くっ……重くて狙いが付かない……」
「まだそこまで動けるのか。やっぱり、まともに相手するのは危険だな」


 そう言うと白いスーツの男の人は杖を上に向けた。


「チェーンロック!」


 すると、天井からチェーンロックの鎖が降って来た。白いスーツの男の人は鎖を掴むと、天井へと登っていた。


「あんたを相手にすると骨が折れそうだ。ここは逃げさせて貰おう」


 白いスーツの男の人が余裕そうな表情で天井に上っていく。天井に空いている穴から逃げるつもりだとおもう。けど、ナイフや拳の射程外だ。となると拳銃で狙うしかないんだけど、体が重くて狙いが付けられない。
 ……いや、ちょっと待って?


「何も立って打つ必要は無いんじゃないかな?」


 そう思ったノエルは仰向けに倒れて拳銃を取り出す。よし、思った通り、倒れていた方が銃の狙いが付けやすい。
 ノエルは拳銃で慎重に狙いを付ける。鎖は銃では破壊できない可能性が高い。つまり、狙うべきは……
 ノエルは拳銃の引き金を引く。銃声と共に弾が発射されて、白いスーツの男の人の杖に命中する。


「うわっ!」


 白いスーツの男の人は衝撃で杖を落とす。すると、鎖は消え去って白いスーツの男の人が落下してきた。
 それと同時にノエルの体も軽くなった。ノエルはすぐに立ち上がって拳を握る。


「しまっ───」
「フィニッシュアッパー!」


 ノエルのアッパーが白いスーツの男の人のお腹にめり込む。白いスーツの男の人は胃液を噴き出して、白目を剥いて倒れ伏した。


「ふう、これでおしまい。あとは憲兵さんに任せて帰って寝ないと」


 明日も学校なんだし寝ないと授業中に眠くなっちゃう。
 そう思って出口に足を向けた瞬間、何かを忘れているような違和感がある。なんだっけ?


「あ、取引のやつ!」


 思い出した瞬間、ノエルの頭に何かが降って来た。何かが割れる音とと共に、髪が濡れるのを感じる。


「痛……くはないけど、やっちゃったかも?」


 魔装でダメージが無いけど、取引されてた物は割れたみたい。どうやら、白いスーツの男の人が落ちるときに投げ出して、時間差で落ちて来たみたい。


「この薬品ってなんだろ?」


 一応セイントヒールを使っておく。これで毒だったとしても害は無い筈。


「割れてないものは無いかな?」


 周りを見渡してみると、残りの3つはアタッシュケースの中に有って無事だった。割れたのはノエルに振って来た1つだけだったみたい。


「これなら今回のおつかいもコンプリートかな」


 満足感を抱いて外に向かおうとすると、今度は頭に違和感が出て来た。


「ん?何かが頭についているような?」


 頭を触ってみるとモフモフとした感覚がする。ナイフを取り出して、刃の部分を鏡代わりにして頭を見てみる。


「……なにこれ?」


 ノエルの頭に猫耳が生えていた。
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