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第三百四十話 猫る(動詞)
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「この魔物は炎に弱いのですが、水色は水が弱点になります」
ナマク先生が黒板に魔物の写真を貼って、水という文字に大きく罰を書く。
いつものナマク先生の授業。いつもの皆。いつもの風景だ。ノエルにとっては何も変わらない。
「……あの、ノエルさん」
「はい」
「1つ聞いて良いですか?」
「なんですか」
1つだけ変わっていることは───
「なぜ帽子を被っているのでしょうか?」
ノエルが教室でも通学用の帽子を被っていることだろうか。
「気にしないでください」
「いえ、気にしないでくださいではなく、なぜ帽子を被っているのかを聞いているのですが?」
ナマク先生がチョークを黒板から離してため息を吐く。
「何故ですか?」
「帽子が被りたい気分だからです」
「嘘ですよね?」
「ほ、本当ですよ?」
ナマク先生の視線に耐え切れずに目線を逸らせる。
「……分かりました。そういう事にしておきましょう。特に校則違反というわけでもありませんしね」
そういうと、ナマク先生は授業に戻った。
学校の中では基本的に制服で過ごさないといけない。けど、今被っている帽子は登校の時につけるもので、制服として扱われている。
だから、教室の中でも帽子を被っていても問題無い。あんまり被っている人はいないけどね。
その後、ノエルの帽子は突っ込まれることもなく放課後になったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「何を隠しているのか吐きなさい」
オカルト研究クラブの部室に入った瞬間、サルミちゃんに詰め寄られた。
「な、なんの事かな?」
『そんな嘘で誤魔化されるわけないだろ』
「ノエルちゃんは嘘が下手だもんね」
「そうそう。早く説明した方が良いと思うよ?」
皆、ノエルの嘘を全く信じていないみたいだ。バレてるとかいうレベルじゃないかな。
「……ホウリお兄ちゃんに嘘のつき方を教えて貰おうかな?」
「無駄だと思うけどね」
「ノエルちゃんは他のことを教えて貰った方が良いんじゃない?」
『魚が空を飛ぶのを教わるようなものか?』
「人には向き不向きがあるものよ」
「みんな酷くない!?」
散々な言われようだ。
「それで、何を隠しているのかしら?」
「その帽子の下に何かあるの?」
これ以上は隠し事は出来なさそうだ。皆になら話しても良いかな?
「……他の人には内緒だよ?」
「勿論」
ノエルは部室の窓をカーテンで遮る。
そして、ノエルは被っていた帽子を取った。
「な!?」
『なんだそれ!?』
ノエルの猫耳を見た皆に驚愕の色が見える。
「それって、カチューシャ?」
「本物だよ」
猫耳を左右交互に動かしてみる。これで作り物じゃないことは分かってもらえたと思う。
「何がどうなって、そうなったのよ。というか、家でも帽子を外していなかったのは、そういう理由だったのね」
「ねぇ、ちょっと触っても良い?」
「良いよ」
コアコちゃんが満面の笑みでノエルの猫耳に触れる。
「うわぁ、フワフワだぁ……」
「くすぐったいよぉ」
『………………』
「触りたいなら素直に言えば良いじゃないの」
『そ、そんな事っ!』
「多分、否定しているんでしょうけど、何言ってるか分かんないわね」
あれ?マカダ君の顔が赤い?風邪でもひいたのかな?
「というか、なんで猫耳が生えたの?」
「昨日の夜は普通だったわよね?」
やっぱりそこが気になるよね。でも、説明するとなるとおつかいの事を話す必要があるから避けたいんだよね。どうしようかな?
「その顔、話せないことがあるみたいね?」
「……そんなに分かりやすい?」
「うん。ノエルほど顔に出やすい子はいないと思うよ?」
「そっかー」
もう顔に出てるんなら誤魔化す必要は無いか。
「話せないなら無理に話さなくて良い……って言いたいところだけど、気になるわね?」
「だね。どうすれば猫耳が生えるのか気になるね」
「え?ちょっと?」
サルミちゃんとパンプ君がジリジリと迫ってくる。下がろうにもコアコちゃんに耳をモフモフされているから下がれない。
これって、絶対絶命ってやつ?
「まずは猫耳を調べさせて貰おうかしら?」
「あ、あんまり乱暴なことはして欲しくないかな?」
「前向きに善処するわ」
「そこは確約してほしいかなぁ!?」
こうして、ノエルは皆にいっぱいモフモフされたのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「うーん、何も分からないわね」
「最初から生えているみたいに自然だね。手術してもこうはならないでしょ」
「うーん、モフモフされた損だよぉ……」
皆からひとしきりモフモフされた後、ノエルはようやく解放された。
「これからどうするつもり?」
猫耳をさすっていると、サルミちゃんから質問がきた。
「とりあえず、帽子を被りながら生活しておいて、治す方法が無いか探そうかな?」
「毎日帽子を被るつもり?」
「流石にそれは無理でしょ。体育がある日はどうするのさ」
「それもそうだね?」
明日は体育がある。流石に帽子を被って体育に参加するのは無理だ。体育だけ休むのも不自然だろうしなぁ。
「学校ごと休むとか?」
「あんまり学校は休みたくないかな。皆に会えないのは寂しいし」
『気にしないで全員に話すのはどうだ?』
「それはダメ」
ノエルの猫耳は不思議な薬を被った事で生えて来た。つまり、ノエルに猫耳が生えたということが広まれば、取引を阻止したのがノエルだってバレる。
そうなると、取引をしてた人達はノエルを狙ってくれるかもしれない。皆も危険な目にあるかもしれない。それだけはなんとしても阻止しないと。
『絶対にか?』
『うん』
『なら、神の使い関連か』
『概ね正解』
マカダ君はノエルの事情を知っている数少ない人だ。こういう時は話が早くて助かる。あと、魔語を使えば内緒話ができるのも嬉しい。
「じゃあ、今日中に治さないといけないとね」
「けど、どうするつもりよ。私たちは原因すら分からないのよ?」
「それだよねぇ」
ノエルも薬の影響としか分からない。もう薬も憲兵さんに渡しちゃったし、詳しいことは分からない。
「ホウリさんに相談するのはどうかな?」
『ホウリさんはオダリムにいるんだろ?相談は出来ないんじゃないか?』
「朝に連絡はしたよ?まだ返事はないけど」
『良いのか?』
「うん」
オダリムに気を取られていて、敵がノエルを狙ってくる可能性があるらしい。だから、何かがあったら必ず連絡するように言われている。
猫耳が生えたって連絡をするかは悩んだけど、とりあえず連絡した。暗号で伝えたから、他の人にはバレてない筈だ。
「ホウリって人からの連絡があるまで学校を休むのが一番ね」
「それはどうかな?」
「え?」
意外にもコアコちゃんが口を挟んできた。
「何か考えがあるの?」
「ふふん、これを見てよ!」
コアコちゃんがテンション高くとある本を掲げる。その本には『オカルト全集(本物)』と書かれていた。その題名だと偽物っぽいと思うんだけどね?
「そのパチモン感が強い本は何よ」
「ホウリさんが送ってくれたんだ!」
サルミちゃんも同じ感想だったみたいだ。
本をよく見てみると、作者のところに『キムラ・ホウリ』って書いてある。どうやら、前に言っていたオカルトの本のことなんだろう。
「これでやっとオカルト研究クラブらしい活動ができるね」
『けど、それがなんだって言うんだ?』
「ここのページを見てよ!」
コアコちゃんが本を広げると、皆でそのページを見てみる。
「猫憑き?」
「うん!猫の幽霊がその人に憑いちゃうことなんだって!ノエルちゃんはきっとそれだよ!」
薬の影響なんだけどな?まあ、いいか。
「確かにそれはありそうね?」
『ホウリさんの言う事だし、可能性がありそうだな?』
「なかなか良いじゃないんかな?」
皆は納得していみたいだ。まあ、ホウリお兄ちゃんの本だから説得力があるしね。
「治すにはどうすれば良いのよ?」
「えーっとね、呪文を唱えれば憑いている猫と話せるから、出ていくようにお願いするみたい」
「にゃんこと話せるの?」
「幽霊だけどね」
ちょっとドキドキしてきた。にゃんことお話するの夢だったんだよね。
あ、でも、猫耳は薬の影響だからにゃんこの幽霊は出てこないんだ。ちょっと残念。
「ならすぐに始めなさいよ」
「うん。ノエルちゃん、そこに立ってて」
本棚の前に立たつと、コアコちゃんに視線を向けた。
「私が呪文を唱えるから、動いちゃダメだよ?」
「うん」
「じゃあいくね」
コアコちゃんが本を凝視しながら口を開いた。
「クウリュウキイドヒビデンオウキ!イドガアギトファイズブレキカブトバディケ!」
良く分からない呪文をコアコちゃんが叫ぶ。すると、ノエルの体の中がなんだか熱くなってきた。
「あ、あれ?」
「ルオーズフォードガイイブゴーストエグル!」
ノエルの体の熱がどんどん熱くなっていく。これってまさか、本当に効果があるの?
というか、熱すぎる!体中が沸騰しそうだ!
セイントヒール!って、ダメだ効かない!?物理的な熱さじゃないってこと!?
「ドジオウダブゼウィザームドラゼイドビ!」
「うわああああ!」
ノエルの体の熱が最高潮に達する。
「ノエル!?」
「本当に大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫……」
まだ命の危機を感じるほどじゃない。変化が出ている以上、このまま続けた方がいい気がする。
「ワンセイイツガッガヴゼロチャードバーリバスギー!いでよ亡霊!」
「あがああああ!」
コアコちゃんの言葉に呼応するかのように、中の熱が外に抜けていく感覚に襲われる。
「さあ!猫の亡霊が出てくるよ!」
コアコちゃんが嬉しそうに言う。けど、ノエルの体から幽霊が出ている様子は無い。
「何も変化は無いみたいだけど?」
「あれ?可笑しいね?呪文を間違えたのかな?」
コアコちゃんが不思議そうに本を読み込む。
「けどさ、なんか熱くなるような感覚はあったよ?」
「なら何かしらの効果はあったってこと?」
『体に異常は無いのか?』
「うん。大丈夫」
ステータスを見てもダメージを受けてはいない。熱も無いし大丈夫だろう。
「あーあ、喉が渇いちゃった。ジュース飲もうっと」
部室の棚からジュースと栓抜きを取り出す。栓を栓抜きで抜いて、瓶の口を咥える・
「そうだ、コアコちゃん。その本、ノエルにも見せてくれない?」
「うん。良いよ」
コアコちゃんから本を受け取って開いてみる。本はタイトル通りオカルトについて書かれてある。幽霊だとか妖怪だとか、前にホウリお兄ちゃんが言っていた陰陽術も書いてある。ページをめくるのが止まらない。
コアコちゃんじゃないにせよ、こういう本を見るのは面白い。試してみたいことも多い。
「んぐっんぐっ。この本面白いね」
ジュースを飲みながら本を見ていると、周りの様子が可笑しいことに気が付く。
「あれ?皆どうしたの?」
「……あんた、気付いてないの?」
「なにが?」
『マジかよ……』
なんだか、皆が絶句している気がする。何か変なこと言ったかな?
「あのね、あんたは右手には何を持っているのかしら?」
「本だよ?」
『どの手でページをめくっている?』
「左手だね」
「ジュースは何で持っているのかな?」
「それは……あれ?」
右手と左手を使っているのに、ジュースを飲んでいる?
ジュースの瓶に視線を向けると、白いモフモフが巻き付いていた。モフモフの出所を辿ってみると、ノエルの腰に行きつく。これって尻尾?
「……何これ?」
「こっちが聞きたいんだけど!?」
「なんで自覚も無く使いこなしているのさ!?」
「やっぱり、猫の幽霊の祟りだ!」
『嬉しそうに言ってる場合か!どうするんだよコレ!?』
結局、その後、ホウリお兄ちゃんからノエルの猫耳と尻尾を無くす方法の返事がきた。どうやら、呪文が違ったらしく、正しい呪文でノエルは元に戻った。
というか、薬が影響してたんじゃなくて、幽霊の仕業だったんだ。
ナマク先生が黒板に魔物の写真を貼って、水という文字に大きく罰を書く。
いつものナマク先生の授業。いつもの皆。いつもの風景だ。ノエルにとっては何も変わらない。
「……あの、ノエルさん」
「はい」
「1つ聞いて良いですか?」
「なんですか」
1つだけ変わっていることは───
「なぜ帽子を被っているのでしょうか?」
ノエルが教室でも通学用の帽子を被っていることだろうか。
「気にしないでください」
「いえ、気にしないでくださいではなく、なぜ帽子を被っているのかを聞いているのですが?」
ナマク先生がチョークを黒板から離してため息を吐く。
「何故ですか?」
「帽子が被りたい気分だからです」
「嘘ですよね?」
「ほ、本当ですよ?」
ナマク先生の視線に耐え切れずに目線を逸らせる。
「……分かりました。そういう事にしておきましょう。特に校則違反というわけでもありませんしね」
そういうと、ナマク先生は授業に戻った。
学校の中では基本的に制服で過ごさないといけない。けど、今被っている帽子は登校の時につけるもので、制服として扱われている。
だから、教室の中でも帽子を被っていても問題無い。あんまり被っている人はいないけどね。
その後、ノエルの帽子は突っ込まれることもなく放課後になったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「何を隠しているのか吐きなさい」
オカルト研究クラブの部室に入った瞬間、サルミちゃんに詰め寄られた。
「な、なんの事かな?」
『そんな嘘で誤魔化されるわけないだろ』
「ノエルちゃんは嘘が下手だもんね」
「そうそう。早く説明した方が良いと思うよ?」
皆、ノエルの嘘を全く信じていないみたいだ。バレてるとかいうレベルじゃないかな。
「……ホウリお兄ちゃんに嘘のつき方を教えて貰おうかな?」
「無駄だと思うけどね」
「ノエルちゃんは他のことを教えて貰った方が良いんじゃない?」
『魚が空を飛ぶのを教わるようなものか?』
「人には向き不向きがあるものよ」
「みんな酷くない!?」
散々な言われようだ。
「それで、何を隠しているのかしら?」
「その帽子の下に何かあるの?」
これ以上は隠し事は出来なさそうだ。皆になら話しても良いかな?
「……他の人には内緒だよ?」
「勿論」
ノエルは部室の窓をカーテンで遮る。
そして、ノエルは被っていた帽子を取った。
「な!?」
『なんだそれ!?』
ノエルの猫耳を見た皆に驚愕の色が見える。
「それって、カチューシャ?」
「本物だよ」
猫耳を左右交互に動かしてみる。これで作り物じゃないことは分かってもらえたと思う。
「何がどうなって、そうなったのよ。というか、家でも帽子を外していなかったのは、そういう理由だったのね」
「ねぇ、ちょっと触っても良い?」
「良いよ」
コアコちゃんが満面の笑みでノエルの猫耳に触れる。
「うわぁ、フワフワだぁ……」
「くすぐったいよぉ」
『………………』
「触りたいなら素直に言えば良いじゃないの」
『そ、そんな事っ!』
「多分、否定しているんでしょうけど、何言ってるか分かんないわね」
あれ?マカダ君の顔が赤い?風邪でもひいたのかな?
「というか、なんで猫耳が生えたの?」
「昨日の夜は普通だったわよね?」
やっぱりそこが気になるよね。でも、説明するとなるとおつかいの事を話す必要があるから避けたいんだよね。どうしようかな?
「その顔、話せないことがあるみたいね?」
「……そんなに分かりやすい?」
「うん。ノエルほど顔に出やすい子はいないと思うよ?」
「そっかー」
もう顔に出てるんなら誤魔化す必要は無いか。
「話せないなら無理に話さなくて良い……って言いたいところだけど、気になるわね?」
「だね。どうすれば猫耳が生えるのか気になるね」
「え?ちょっと?」
サルミちゃんとパンプ君がジリジリと迫ってくる。下がろうにもコアコちゃんに耳をモフモフされているから下がれない。
これって、絶対絶命ってやつ?
「まずは猫耳を調べさせて貰おうかしら?」
「あ、あんまり乱暴なことはして欲しくないかな?」
「前向きに善処するわ」
「そこは確約してほしいかなぁ!?」
こうして、ノエルは皆にいっぱいモフモフされたのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
「うーん、何も分からないわね」
「最初から生えているみたいに自然だね。手術してもこうはならないでしょ」
「うーん、モフモフされた損だよぉ……」
皆からひとしきりモフモフされた後、ノエルはようやく解放された。
「これからどうするつもり?」
猫耳をさすっていると、サルミちゃんから質問がきた。
「とりあえず、帽子を被りながら生活しておいて、治す方法が無いか探そうかな?」
「毎日帽子を被るつもり?」
「流石にそれは無理でしょ。体育がある日はどうするのさ」
「それもそうだね?」
明日は体育がある。流石に帽子を被って体育に参加するのは無理だ。体育だけ休むのも不自然だろうしなぁ。
「学校ごと休むとか?」
「あんまり学校は休みたくないかな。皆に会えないのは寂しいし」
『気にしないで全員に話すのはどうだ?』
「それはダメ」
ノエルの猫耳は不思議な薬を被った事で生えて来た。つまり、ノエルに猫耳が生えたということが広まれば、取引を阻止したのがノエルだってバレる。
そうなると、取引をしてた人達はノエルを狙ってくれるかもしれない。皆も危険な目にあるかもしれない。それだけはなんとしても阻止しないと。
『絶対にか?』
『うん』
『なら、神の使い関連か』
『概ね正解』
マカダ君はノエルの事情を知っている数少ない人だ。こういう時は話が早くて助かる。あと、魔語を使えば内緒話ができるのも嬉しい。
「じゃあ、今日中に治さないといけないとね」
「けど、どうするつもりよ。私たちは原因すら分からないのよ?」
「それだよねぇ」
ノエルも薬の影響としか分からない。もう薬も憲兵さんに渡しちゃったし、詳しいことは分からない。
「ホウリさんに相談するのはどうかな?」
『ホウリさんはオダリムにいるんだろ?相談は出来ないんじゃないか?』
「朝に連絡はしたよ?まだ返事はないけど」
『良いのか?』
「うん」
オダリムに気を取られていて、敵がノエルを狙ってくる可能性があるらしい。だから、何かがあったら必ず連絡するように言われている。
猫耳が生えたって連絡をするかは悩んだけど、とりあえず連絡した。暗号で伝えたから、他の人にはバレてない筈だ。
「ホウリって人からの連絡があるまで学校を休むのが一番ね」
「それはどうかな?」
「え?」
意外にもコアコちゃんが口を挟んできた。
「何か考えがあるの?」
「ふふん、これを見てよ!」
コアコちゃんがテンション高くとある本を掲げる。その本には『オカルト全集(本物)』と書かれていた。その題名だと偽物っぽいと思うんだけどね?
「そのパチモン感が強い本は何よ」
「ホウリさんが送ってくれたんだ!」
サルミちゃんも同じ感想だったみたいだ。
本をよく見てみると、作者のところに『キムラ・ホウリ』って書いてある。どうやら、前に言っていたオカルトの本のことなんだろう。
「これでやっとオカルト研究クラブらしい活動ができるね」
『けど、それがなんだって言うんだ?』
「ここのページを見てよ!」
コアコちゃんが本を広げると、皆でそのページを見てみる。
「猫憑き?」
「うん!猫の幽霊がその人に憑いちゃうことなんだって!ノエルちゃんはきっとそれだよ!」
薬の影響なんだけどな?まあ、いいか。
「確かにそれはありそうね?」
『ホウリさんの言う事だし、可能性がありそうだな?』
「なかなか良いじゃないんかな?」
皆は納得していみたいだ。まあ、ホウリお兄ちゃんの本だから説得力があるしね。
「治すにはどうすれば良いのよ?」
「えーっとね、呪文を唱えれば憑いている猫と話せるから、出ていくようにお願いするみたい」
「にゃんこと話せるの?」
「幽霊だけどね」
ちょっとドキドキしてきた。にゃんことお話するの夢だったんだよね。
あ、でも、猫耳は薬の影響だからにゃんこの幽霊は出てこないんだ。ちょっと残念。
「ならすぐに始めなさいよ」
「うん。ノエルちゃん、そこに立ってて」
本棚の前に立たつと、コアコちゃんに視線を向けた。
「私が呪文を唱えるから、動いちゃダメだよ?」
「うん」
「じゃあいくね」
コアコちゃんが本を凝視しながら口を開いた。
「クウリュウキイドヒビデンオウキ!イドガアギトファイズブレキカブトバディケ!」
良く分からない呪文をコアコちゃんが叫ぶ。すると、ノエルの体の中がなんだか熱くなってきた。
「あ、あれ?」
「ルオーズフォードガイイブゴーストエグル!」
ノエルの体の熱がどんどん熱くなっていく。これってまさか、本当に効果があるの?
というか、熱すぎる!体中が沸騰しそうだ!
セイントヒール!って、ダメだ効かない!?物理的な熱さじゃないってこと!?
「ドジオウダブゼウィザームドラゼイドビ!」
「うわああああ!」
ノエルの体の熱が最高潮に達する。
「ノエル!?」
「本当に大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫……」
まだ命の危機を感じるほどじゃない。変化が出ている以上、このまま続けた方がいい気がする。
「ワンセイイツガッガヴゼロチャードバーリバスギー!いでよ亡霊!」
「あがああああ!」
コアコちゃんの言葉に呼応するかのように、中の熱が外に抜けていく感覚に襲われる。
「さあ!猫の亡霊が出てくるよ!」
コアコちゃんが嬉しそうに言う。けど、ノエルの体から幽霊が出ている様子は無い。
「何も変化は無いみたいだけど?」
「あれ?可笑しいね?呪文を間違えたのかな?」
コアコちゃんが不思議そうに本を読み込む。
「けどさ、なんか熱くなるような感覚はあったよ?」
「なら何かしらの効果はあったってこと?」
『体に異常は無いのか?』
「うん。大丈夫」
ステータスを見てもダメージを受けてはいない。熱も無いし大丈夫だろう。
「あーあ、喉が渇いちゃった。ジュース飲もうっと」
部室の棚からジュースと栓抜きを取り出す。栓を栓抜きで抜いて、瓶の口を咥える・
「そうだ、コアコちゃん。その本、ノエルにも見せてくれない?」
「うん。良いよ」
コアコちゃんから本を受け取って開いてみる。本はタイトル通りオカルトについて書かれてある。幽霊だとか妖怪だとか、前にホウリお兄ちゃんが言っていた陰陽術も書いてある。ページをめくるのが止まらない。
コアコちゃんじゃないにせよ、こういう本を見るのは面白い。試してみたいことも多い。
「んぐっんぐっ。この本面白いね」
ジュースを飲みながら本を見ていると、周りの様子が可笑しいことに気が付く。
「あれ?皆どうしたの?」
「……あんた、気付いてないの?」
「なにが?」
『マジかよ……』
なんだか、皆が絶句している気がする。何か変なこと言ったかな?
「あのね、あんたは右手には何を持っているのかしら?」
「本だよ?」
『どの手でページをめくっている?』
「左手だね」
「ジュースは何で持っているのかな?」
「それは……あれ?」
右手と左手を使っているのに、ジュースを飲んでいる?
ジュースの瓶に視線を向けると、白いモフモフが巻き付いていた。モフモフの出所を辿ってみると、ノエルの腰に行きつく。これって尻尾?
「……何これ?」
「こっちが聞きたいんだけど!?」
「なんで自覚も無く使いこなしているのさ!?」
「やっぱり、猫の幽霊の祟りだ!」
『嬉しそうに言ってる場合か!どうするんだよコレ!?』
結局、その後、ホウリお兄ちゃんからノエルの猫耳と尻尾を無くす方法の返事がきた。どうやら、呪文が違ったらしく、正しい呪文でノエルは元に戻った。
というか、薬が影響してたんじゃなくて、幽霊の仕業だったんだ。
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