魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百五十七話  天地鳴動の力を見るがいい

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『ぬおおおおおおおおおお!?』


 カスケットが巨大なMPの塊に押し出されて空中へと飛んでいく。
 当初の目標である10000の倍である12000の威力だ。トリシューラの何十倍もの威力だし、ただでは済まないだろう。


『お、俺がこんなことでぇぇぇぇぇ!』


 体を破壊されながらもカスケットはMPの塊に抗おうとする。亜光速で飛んでいる筈のMPの塊を受け止め、防ぎ切ろうとしている。


『神を舐めるなよおぉぉぉぉ!』


 体にひびが入りながらもカスケットは力を込めてMPの塊と拮抗する。


「まさか、あの攻撃を耐えるつもり!?」
「そんなまさか!?」


 あれに耐えられると、こちらに打つ手が無くなってしまう。そうなるとオダリムはおしまいだ。


「と、トリシューラを構えた方が良いのでしょうか?」
「そうね。取れる手段はとらないと」


 僕はMPポーションを取り出して、急いで口に流し込む。


「んぐっ、んぐっ、……げほっ!ごほっ!」
「大丈夫!?ゆっくりね?」


 ポーションが器官に入り、思わずむせてしまう。焦っていても落ち着かないと。
 体中にMPが満ちていくのを感じながら、トリシューラを取り出す。トリシューラへMPを込めるのにも時間がかかる。倒しきれないと判断したらすぐにでもトリシューラにMPを込めよう。
 ついでに袖に縫い付けてあったMP回復剤も口に咥える。MP回復剤は回復のし過ぎ気持ちが悪くなる。けど、回復するたびにMPを消費していけば気分が悪くなるのを軽減できる。
 これでMPを底上げして少しでもダメージを与えられるようにしないと。
 準備を終えた僕は上にいるカスケットを見上げる。
 カスケットは遥か上空で全身にヒビが入りながらも何とか抵抗していた。


『舐めるなよ!』


 瞬間、カスケットの体が黄金に輝き始めた。


「攻撃の通りが悪くなってないかしら?」


 ヒビが入っている速度が今までよりも遅くなった。あの光でステータスが上がっている?
 嫌な予感を感じ取った僕はMP回復剤を飲み込んでMPをトリシューラに込める。


『負けるかぁぁぁぁぁ!』


 カスケットは悲痛とも思える叫びと共にMPの塊を弾き飛ばした。


「ええ!?あの威力のMPを弾いた!?」


 ラミスさんが眼を見開いて驚愕している。上空では弾かれたMPが


『はぁはぁ、やってくれたな!』


 肩で息をしながらカスケットは時計台に視線向けて来る。
 僕はMP回復剤で得たMPを急いでトリシューラに込める。


『だが!今度こそ終わりだ!』


 はるか上空からカスケットが物凄い勢いで急降下してくる。
 焦るな、急いでいるとは言え、急激に込め過ぎると込めたMPが爆発する。早過ぎず遅すぎない速度でMPを込めるんだ。
 今までのMP操作の訓練を思い出すんだ。
 MPを込めるごとにトリシューラが青い輝きを増していく。


「……今だ!」


 MPを込め切った僕はカスケットに向かってトリシューラを放つ。
 青い光となったトリシューラがカスケットに向かって真っすぐと飛んでいく。


『またそれか!』
「さっきと同じと思わないほうがいいよ!」


 さっきよりも何倍もMPを込められた。トリシューラは込めたMPを3倍の威力で攻撃できる。さっきよりも威力は高い!


「くらえ!」
『ぐっ!?』


 カスケットが右腕でトリシューラを受ける。しかし、右腕は火花を散らしながらヒビが大きくなっていく。


『うぐぐぐぐぐぐ……』


 トリシューラに徐々に押し返されるカスケット。これならなんとかなりそう……


「うっ……」
「ロワ君!?」


 体から急激に力が抜けていく。僕は思わず膝を付いてしまった。


「大丈夫!?」
「MPを使い過ぎました。そろそろ限界みたいです……」


 なんとか気絶しそうになるのを堪えながら、顔を上げてカスケットを見上げる。


「けど、まだ倒れる訳にはいかない」


 カスケットの行方を見守るまでは意識を失う訳にはいかない。なんとか気張ってカスケットに意識を向ける。
 カスケットはトリシューラを受けて大きくのけ反ったが、何とか弾き返した。


「ダメ!あれじゃ倒せない!」
『その通りだ!これで俺の勝ちだ!』
「……それはどうですかね?」
『なんだと?』


 僕はニヤリと笑う。トリシューラを放つときにとある者が見られた。だからこそ、僕は勝利を確信しているんだ。


「僕はもう動けない。ミエルさんも同じでしょう」
『その通りだ。俺を阻む者はなにも無い』
「けど、忘れてませんか?」


 瞬間、遥か上空で天を焦がすほどの爆炎が上がった。


「僕たちのリーダーの事を!」
『なんだ!?』


 カスケットが上空を見上げると、炎の塊が迫ってきていた。遠くだけど僕の目にははっきりと見えている。あれは炎装をしているホウリさんとノエルちゃんだ。


『なんだあれは!?』
「僕たちのリーダーですよ」
『キムラ・ホウリだと!?』


 宝利さんとノエルちゃんが爆炎に押されるようにカスケットに向かってくる。


『くそっ!そんな攻撃なんて回避して……うぐっ!』


 避けようとしたカスケットが呻き声を上げる。


「今までのダメージが効いているみたいですね」
『くそ……こんなことが……』


 カスケットが両手をクロスさせてホウリさんとノエルちゃんを迎え撃とうとする。



「セイヤアアアアアアアア!」


 爆炎の勢いそのままにホウリさんとノエルちゃんがカスケットに蹴りを放つ。


『ぬおおおおおおお!?』


 ホウリさんとノエルちゃんをカスケットが防御する。だが、体のヒビが徐々に広がっていきダメージが深くなっていく。


『まだだ!俺達はこんな所で終わる訳には行かない!』


 カスケットの体が再び買輝き始めると、ヒビが入る速度が遅くなった。またステータスを上げたみたいだ。


「やっぱり使ってくるよね」


 だけど、敵もかなり消耗している筈だ。ホウリさんならぶち抜くことが出来るはずだ。
 そう信じて僕はホウリさんとカスケットの戦いを見守る。


「うおおおおおおおおお!」
『はあああああああああ!』


 2人の絶叫が空から木霊する。だが、抵抗もむなしくカスケットのヒビは全身にまで広がっていく。


『まだだ!俺が負けたら皆の未来が!』
「はあああああああああ!」


 カスケットの悲痛な叫びにホウリさんは容赦なく蹴り込んでいく。


『あ、あああああああああ!?』


 遂にカスケットの両腕が砕かれ、蹴りが胸に直撃する、


『くそおおおおお!』
「これで終わりだ!」


 ホウリさんの蹴りがカスケットの胸を貫いた。


『うう……!』



 胸を貫かれたカスケットは全身が砕けていき、その欠片が街へと降り注いでいく。


「お、終わったの?」
「みたいですね」


 ホウリさんはというと、炎を纏ったまま草原へと飛んでいった。
 あれ?誰かを持っている?
 よく見るとホウリさんは誰かを抱えながら草原に飛んでいった。あれって誰なんだろう?
 そんな疑問を抱えていると、ホウリさんが草原に着地した。残った炎で草原が焼けているが、どうやらホウリさんとノエルちゃんは無傷みたいだ。


「ホウリさんも無事みたいですね」
「そっか、皆が無事で良かったぁ」
「そうで……すね」
「ロワ君?」


 張り詰めていた気が完全に切れてしまい、僕は地面に倒れ伏す。


「ロワ君!」
「だ……じょう……」


 大丈夫と言いたかったけど、もう言葉すら出来ないほどに気力が無い。
 けど、もう戦いは終わった。あとは他の皆に任せよう。
 そう思った僕は意識を手放した。何はともあれ、長い戦いは終わった。大きな被害も無かったし良かった良かった。
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