魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百五十六話 集いし願い

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 ホウリさんとノエルちゃんの疾風迅雷は終わった。それに加えてMPも目標の1万を下回る6000しか溜まっていない。今のままだとカスケットを倒すことができない。


「……マズイ、もう打つ手がない」


 この調子だとMPが溜まり切るまで10分はかかる。それまでには必ずカスケットの攻撃が来るはずだ。


「あの雷はどうしたの?」
「どうやら打ち止めみたいですよ」
「じゃあ、カスケットは……」
「攻撃してくると思います」


 動きを抑えていた疾風迅雷が無くなったんだ。これで攻撃しない理由はないだろう。


『はっはっは!これで邪魔な蝿はいなくなったな!』


 そう言ってカスケットは高らかに笑った。そして、遥か上空からこの時計塔を見つめている。目が無いけど何故かそう感じた。


『そこのお前、その大砲みたいのが切札か?』


 どうやらMP発射装置が兵器だということが分かっているみたいだ。


『それを壊せばもう抵抗はできないってことだな?』
「くっ……」


 カスケットが猛然と時計台に向かってくる。
 溜まっているMPだけでも発射するべきか?でも、6000くらいじゃ倒せないだろうし、あの腕が時計台に振り下ろされたら助からない。
 だったら、ここから退避するべきか?でも、逃げたらオダリムの街は蹂躙されるだろう。そうなったら誰も助からない。


「それだけは嫌だ」


 考えろ、どうすればカスケットを倒せる?必ず方法があるはずだ。考えろ、考えろ……


「ロワ君」
「なんですか?」
「逃げるわよ」
「え?」


 一瞬、ラミスさんの言っていることが理解できずに返事が遅れてしまう。


「逃げる?この状況でですか?」
「ええ。一度引いて、他にカスケットを倒す方法が無いかを探すの」
「そんな!」


 ここで逃げたら街への被害は甚大になる!それを分かっていて逃げるだなんて!


「出来る訳が───」


 思わず振り返った僕は思わず言葉を失った。そこには目に涙を浮かべながら、服を握りしめているラミスさんがいた。


「お願い、ロワ君が死んだら、勝てる可能性が減っちゃうの。だから、ここは逃げて」


 目から涙を流しながら、ラミスさん頭を下げる。
 ラミスさんだって逃げると被害が大きくなるのは分かっているんだ。けど、勝つために、非情にならないといけないことも分かっている。だからこそ、悲しくて、悔しくて、怖いんだろう。


「だけど、僕は……」
「もう私とロワ君だけの力じゃどうしようもないの!だから、ここは逃げましょう!」


 ラミスさんが僕の両肩に手を置いて、涙目で僕を見つめて来る。確かに僕たちとラミスさんじゃどうしようも……ん?


「それですよ!」
「え?それって何が?」
「『僕とラミスさんの力じゃどうしようもない』って奴です!」


 僕は再びカスケットを向いて、MP発射装置のレバーを握る。


「このMP発射装置ってすぐに撃てるんですか?」
「1000につき1秒のチャージ時間が必要よ」
「だったら6秒は必要なんですね」


 カスケットの体が大きすぎて距離感が分かりにくいけど、時計台に到着するまでに最低でも20秒は掛かるはずだ。


「だったら勝機はある!」
「え!?本当!?」
「はい!」


 ギリギリだけど何とかなるかもしれない。
 僕は右の取っ手についているスイッチを押し込む。すると、大砲の中から光が出始めた。


「どのくらいチャージが出来ているかって何処で分かりますか?」
「このメーターで分かるわよ」


 ラミスさんがさっきと似たようなメーターを突き付けてくる。さっきとは違って針が緑色のメーターだ。
 メーターはどんどんと動いていき数字を指していく。これでチャージが完了しているのかは分かる。


「えーっと、何処だったかな?」


 次に僕はとある場所を確認する。確か右に曲がった後に100mくらい進んで、次は左に曲がって…………あの辺かな?
 メーターを横目に場所を割り出してみる。


「多分あそこかな」
「ねえ、ロワ君、一体何をするつもりなの?」
「説明している時間は無いです。それにカスケットに聞かれているかもしれません」
『その通りだぜ!まあ、何をしようとも俺を倒す事なんて出来ないけどな!』


 思っていた通り、ここの会話はカスケットに聞かれているみたいだ。神を自称しているんだし
それくらいは出来るかなって思ってたけど、予想通りだった。


「勝負だ!」
『来い!』


 メーターでMPが溜まり切ったのを確認して、カスケットにMP発射装置を向ける。
 そして僕は左手の取っ手にあるスイッチを押してMPを発射───


「なんてね」


 する前にMP発射装置を大きく右に向けた。


「ちょちょちょ!?ロワ君なにやってるの!?」
「発射!」


 僕は今度こそ左手の取っ手にあるスイッチを押す。すると、圧縮されたMPの玉が轟音を上げながらカスケットとは明後日の方向に飛んでいった。


『何か分からないが、外したようだな!』
「ロワ君!?」


 僕は無言で弓とトリシューラを取り出して引き絞る。


『考えってそれのことか?その程度の攻撃が効くわけないだろ!』


 カスケットの言葉を聞きながら、僕はトリシューラにMPを込め始める。
 確かに今のカスケットにはバリアは無いけど、全力のトリシューラでも倒せるとは思えない。だけど、僕の目的はダメージを与えることじゃない。


『死ね!』


 カスケットが腕を振りかぶりながら近づいてくる。
 まだだ、まだ我慢して……ここだ!
 僕はMPを込めたトリシューラを放つ。トリシューラは一筋の青い光となり、カスケットの胴体へと命中する。


『うぐっ!?』


 トリシューラはカスケットの胴体に命中して、少しだけのけ反る。


「ダメージは少しだけみたいですね」
『万策尽きたか!』


 カスケットが再び僕達に向かって突進してくる。


「どどどどどどうしよう!?今からでも逃げた方が良いんじゃ!?」


 慌てているラミスさんの手を握って微笑みかける。


「大丈夫です。僕達を信じてください」
「……僕達?」


 少し落ち着いたラミスさんは、僕の言葉に引っ掛かりを覚えたみたいだ。


『死ね!』


 迫ってくるカスケットは腕を振り上げる。このままだと僕達が時計台ごと粉々にされる、そう思った瞬間、


『な!?』


 カスケットのわき腹に巨大なMPの塊が直撃して、上空に吹き飛ばされていく。


『な、なんだこれは!?』


 MPの塊を受けながらカスケットの叫びが木霊する。


「い、一体何が起こったの?」


 ラミスさんもなんだか分からないのか、目を点にしている。
 僕はMPを発射した方角を指さす。


「あれが見えますか?」


 僕が指した方向には白銀の盾が浮いていた。


「え?何あれ?」
「ミエルさんのシン・プロフェクションガードです。あれで僕が撃ったMPを反射して威力を倍にしてもらいました」
「は!?どういうこと!?」


 僕はMPが足りないことをどうするか考えていた。だから、ミエルさんに威力を上げることを思い付いた。


「なので、MPを発射した後に僕が足止めと気を引くために、トリシューラを使いました」
「聞きたいのはそこじゃないわよ!?なんでミエルちゃんがシン・プロフェクションガードを使うって分かったの!?一つ間違えれば無駄撃ちになるのよ!?」
「え?でもラミスさんも言ってましたよね?『信じるのよ』って。なので僕もミエルさんがタイミングを合わせてくれると思ってました」


 反射には少しだけ時間が掛かったはずだ。だから、僕はトリシューラで時間を稼いだ。


「亜光速の玉を反射?見てからじゃ間に合わないわよ!?」
「ミエルさんなら出来るかなって」
「根拠があったの?」
「ミエルさんは頭が良いですし」
「薄い根拠ね!?」


 多分、僕がMP発射装置の方向を変えた瞬間にシン・プロフェクションガードを使ったんだと思う。ミエルさんならそれくらいは出来そうだしね。


「とにかく!」


 僕は吹き飛んでいくカスケットにビシッと指を突き付ける。


「6000の倍の12000のMPだ!耐えられるなら耐えてみろ!」
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