禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)

文字の大きさ
1 / 13

1: 神の寵愛 ※

しおりを挟む
「カルロ、なんだか浮かれているな」

「そりゃそうさ。聖騎士なら誰もが夢見るアメデア神官長さまの護衛になれたんだからな。念願がかなったんだ」

カルロは嬉しそうに同期の騎士と話していた。

カルロは茶色の短髪に少し幼さの残るそばかす顔をした青年ではあるが、屈指の強者で構成される神殿所属の騎士である。

そんな彼は実力が認められ、誰もが敬慕する神官長のアメデアの護衛になったのだ。

「ずっと言ってたもんな。あの人に救われた命だ、その恩に報いるんだって。言っとくが、ここでは神官長さまに助けられていない人を探す方がこんなんだぞ」

「それほどに偉大で素晴らしい人なんだ。歴代最高の神聖力を持ち人々にその慈愛をわけあたえてくださる」

同期の騎士は、また始まったとうんざりした顔で話を聞き流す。


アメデア神官長の話は誰もが知っている。


アメデアという人物は一介の羊飼いであったが、聖痕があらわれリュアオス神の神官として神殿にあがった。たぐいまれな才と美しい心を持ち、若くして神殿のトップである神官長になった。

美しさは心だけでなく外見にもあらわれていた。

優しげで穏やかな顔つきは中性的な美貌をしている。長く艶やかな青みがかった銀髪を一つに編んで背にたらしている。ミトラをかぶり白を基調とした神官服は清廉さをあらわし、誰もが一目みようとした。



カルロが念願のアメデアの護衛騎士になってそこそこに時間が経過したころ、はじめて禁断の祈祷室と呼ばれる場所での夜間護衛の任にあたった。

事前に先輩であるオルドに「何も聞くな、何も考えるな。決して中をのぞいてはいけないし、誰も通してはいけない。合図があれば速やかに入室し、猊下のお手伝いをしろ」と意味深なことを言われた。

何のことだかわからなかったが、その時になって意味を理解した。


祈祷室の中からは艶やかな声が響き、ときおり苦しそうにゆるしをこうような言葉が紡がれる。

扉を挟むように隣にいるオルドの方をみるが、彼は無表情にただ立っていた。

「あ、あの、先輩」

「何も聞くな、何も考えるな。猊下の護衛騎士でいたいならここでは無でいろ。そうでなければリュアオス神のお怒りをくらうぞ」

オルドはそういうが、カルロは中で何が行われているか気になった。

祈祷室には神像と燭台そして聖典以外は何もない。アメデアは禊をおこなうような真っ白なワンピース状の服を着て1人で入っていった。

それなのに中からは水落が聞こえる。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が。

はじめは荒い息と苦しそうな声だった。

「ん……っ、く……ぅ。はぁ……はぁ……」

それが次第に嬌声へと変わっていく。

「ああっ……、いいです……っ!んぅッ」

ときおり主神であるリュアオス様の名前を呼びながら声をあげる。

「……っ、もぅ……。リュアオス、さま、お慈悲をッ、……はぁんっ、果ててしまいますッ」

いやらしい声と音が祈祷室の中でうまれ、扉をこえて聞こえてくる。

水落や肌と肌がぶつかる音。

中で何がおこなわれているか見えなくても音だけでも理解できる。


どのくらいの時間がたっただろうか、カルロの下半身は固くはりつめ苦しくなっていた。

聞こえてくる声は次第にかすれ、とうとう聞こえなくなった。すると鈴のような音がなる。

おかしな話だ。あの部屋には鈴などはないし、アメデアの服も音のなるような貴金属はついていなかった。

「入るぞ」

オルドがカルロにそう言って扉を開けた。

部屋には神像と倒れた燭台に床に落ちた開きかけた聖典があった。

その乱れた場所で最も乱れていたのは神官長アメデアだった。

彼は中途半端に服を脱いだ状態で床に眠っていた。体には性交のあとがあった。脚の間、厳密にいうと柔らかそうな双丘の谷間から白い液が漏れていた。

それが何なのか、男ならわかる。だがここにはアメデア以外だれもいなかったわけで、誰が彼にそれを注いだというのだろう。

呆然としているとオルドが聖騎士のマントをアメデアに被せた。

「猊下、失礼します」

オルドはそう言って抱き上げると、カルロについてこいと目配せして祈祷室をでた。

だらりと垂れた神官長の手の甲にある聖痕が濃く色を帯びていた。

これがカルロが禁断の祈祷室ではじめて護衛の日におきた出来事だ。

カルロはあの時の神聖でいて優艶な姿を忘れられずにいた。

中で何がおこなわれていたかはわからない。だが禁断の祈祷室を知っている皆はこぞって「神のご寵愛を受けた」という。

翌日にはアメデアは何事もなかったように微笑みながら政務を行い、神聖力によって民に施しを与えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

甘味食して、甘淫に沈む

箕田 はる
BL
時は大正時代。 老舗の和菓子店の次男である井之口 春信は、幼馴染みである笹倉 明臣と恋仲にあった。 だが、母の葬儀を終えた早々に縁談が決まってしまい、悲嘆に暮れていた。そんな最中に、今度は何故か豪商から養子の話が持ち上がってしまう。 没落寸前の家を救う為に、春信はその養子の話を受け入れることに。 そこで再会を果たしたのが、小学校時代に成金と呼ばれ、いじめられていた鳴宮 清次だった。以前とは違う変貌を遂げた彼の姿に驚く春信。 春信の為にと用意された様々な物に心奪われ、尊敬の念を抱く中、彼から告げられたのは兄弟としてではなく、夫婦としての生活だった。

処理中です...