臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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第一章 王国編第二部(中等部)

エピソード139 金曜日はハッピーからの週末地獄

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「ジャガイモ、油オッケーじゃ!」

「クライヴ。ぼくの方もフロアの清掃は終わったよ」

「クライヴ! クラリネと一緒に庭の手入れ終わったわよ!」

「クライヴ。ボクもショパンさんと会計のダブルチェック終わったよ」

「オレと爺ちゃんとショーンは厨房で、ショパンさんとクラリネさんはレジ係で、モーガンとリアナがフロアで、時々庭のフィーネのヘルプをお願い。フィーネはいつもの庭エリアで多分アリア様来るからアリア様対応で! さぁそれではハッピースマイルポテイトン再開だ!」

「了解」
「おう」
「承知した」
「わかったわ」
「こちらこそです」
「はい。わかりました」
「頼もしいのう」

 オレ達は最終チェックを行い、オレの掛け声とともにお店は開店した。
 案の定、家紋入りの一台の馬車がやってきた。
 馬車の中から現れたのは、何とアリア様だけでなく、ウィンディー王女とエルザ様も来て下さった。

「クッ! ショパンさん、モーガン、リアナ! フィーネが暴走しないか見守ってくれ オレ達はしばらく厨房から出て来れなくなると思う。それと新商品の宣伝もお願い」

 そう今日ハッピースマイルポテイトンに到着した際に仁王立ちで待っていた匠からプレゼントを受け取った。

「このすっとことどっこいが! てめぇの言う自動薄切りポテトカッターだ! ちきしょうめ」

「ありがとうございます。それでお代はいくらですか? 最近少し私用で貯金を全て使い込んでしまいまして、もしよろしければ返済を」

「べらんめぃ! こちとら銭を考えて引き受けた訳じゃねぇこの唐変木がぁ! 新しい挑戦で腕を磨かせてもらったんだ銭はいらねぇよ!」

 匠は鼻の下を指でさすりながら少し恥ずかしそうにオレに早口で捲し立てた。

「ありがとうございます……本当にありがとうございます」

 オレは精一杯感謝の気持ちを伝えると匠はオレに背中を向けて立ち去って行った。

「おとといきやがれってんだ」

 匠は江戸っ子調で捨て台詞を吐きながらも、どこか充実していて、とても誇らしげな漢の背中だった……
 毎度のことながら材料代のみで工賃を取らない匠の優しさに、オレは感謝しきれない程の思いで胸が一杯になった。
 ありがとうなんかでは言い表わす事が出来ない程、匠に沢山助けてくれていた。
 オレの理想とする店舗やメニュー、そして人気店となり大盛況なのもオレ達が匠達と一緒に作り上げてきた結果だと思っていた。勿論ショッパーニ商会の助力も大きいが……


――十五時、厨房にて――

「よっしゃ! クライヴついに新商品じゃけぇ気合い入れまー!」

 なんだかショーンは新しい商品にワクワクしているようだ。

 そしてついに匠の力作、自動薄切りポテトカッターの出番がやってきた。

 バタン!

「クライヴ!」

 慌てたようにモーガンが扉を開ける!
 
「新商品の薄切りポテト五十個とフライドポテト五十個の注文がきたよ! それにアリア様だけでなくウィンディー王女が来ていたよ!」

(おいぃ! アリア様! それは無理ですよ! こちらのマンパワーを把握されているでしょうが)

「モーガン! すまないけどクラリネさん呼んでくれる? 袋詰めのお願いがしたいんだ」

「わかったよ!」

 そしてモーガンは急いでクラリネさんの元へ走った。

「よっしゃ! クライヴ! ワシはこっちじゃ!」

 そしてこちらの厨房では、ショーンはジャガイモの皮抜きが必要な大変なフライドポテト側の作業を開始した。

「クライヴよ。わしでもコレなら使えそうじゃ」

 ヒューゴはジャガイモを置くと薄切りになり容器まで落ちてくる自動薄切りポテトカッターを選んだ。

 後はオレの揚げ捌きの見せ所だ。
 
「遅くなりました! 何をすればよいでしょうか!」

 モーガンが呼びに行って数分でクラリネさんはやってきた。ちょうど第一便のポテトが出来上がったところだ。

「熱いから気を付けてほしいんだけど、そこ紙袋にポテトを入れる作業をしてくれないか? フライドポテトはこれぐらいで、薄切りポテトはこれくらいの量でお願い!」

 オレは大きなトレイ二つにそれぞれのポテトを入れて、クラリネさんに袋詰めを依頼した。
 クラリネさんもまだまだ先が見えない大量のジャガイモが視界に入る中、覚悟を決めて頷いた。

「うおおお! これがワシの生き様じゃー!」

 ショーンがゾーンに入ったようで高速でジャガイモの皮剥きを行なっている。

(フッさすがだぜ厨房の相棒! オレも任せな!)

 ショーンに触発されるようにオレも狂ったようにジャガイモを揚げた。
 そんなオレ達の姿にヒューゴは達観した眼差しを向けていた…………


――約二時間半後――

「もうワシは無理じゃけぇ……」
「年寄りには立ち仕事はキツイのぉ……」
「みなさん凄いですね! 私こんなに大変だと思っていなかったです。指の指紋がなくなるかと思いました」

 ショーン達は滝のような汗を流しながらも充実した表情をしていた。

(ジャガイモは終了したし、店内と言うか、アリア様達を観察してみようかなぁ。ウィンディー王女も来てるので……)

 オレは店内を覗いてみたが、アリア様達の姿は見当たらなかった……悪い予感がしたのでテラスの方に行ってみると、噴水の奥の方で護衛達の姿が見えた。

(フィーネがいない! もしかしたら……)

「フィーネ? 手入れの方は終わったか?」

「はいは~い。終わってアリア達と一緒にいるの」

 少し緊張しながらフィーネを呼ぶと能天気な返事が返ってきた。しかもアリア様達といるらしい。
 オレは護衛達を振り切り、急いでフィーネ達の元に駆けつけた。フィーネがウィンディー王女に何か失礼な事をやらかす前に!
 しかしそこには…………美少女三人がスカートを膝下まで捲り上げてベンチに腰掛けバシャバシャと足を動かして足湯を楽しんでいた…………

「きゃー!」

 ウィンディー王女の叫び声でオレは全てを失う予感がした…………

(あっオレ死んじゃうの? 打首ですか?)

「クライヴくん…………声掛けひとつもなく王女の御御足を盗み見するのは人としてどうかと思いますが……同じ学生でなければ投獄されるわよ」

 今にも殺されそうなさっきを放つアリア様の前でオレは蛇に睨まれたカエル状態で立ち尽くすことしかできなかったが。なんとか絞って返事だけは返すことができた。

「はい…………」

 そして意気消沈したオレに追い討ちをかけるよう真っ赤な顔をしたフィーネが言葉のナイフで口撃してきた。

「アンタ何覗いてんのよ! この変態! ウィンディー王女の脚ばかり見て本当に気持ち悪い変態よね!」

(そんなつもりはないのだが、やけにフィーネがご立腹だ…………そりゃ好きな男の子が変態だとこうなりますわなぁ)

 オレは華麗なる土下座と黙秘権を行使してただただ地面におでこを擦り付けているだけだった。
 ウィンディー王女の許しを得るまで……

 そしてアリア様御一行が帰られた後にみんなで店内で清掃をして本日の売り上げを確認しようとした時!

「どうしたのクライヴ? 大量の蜂にでも刺されたの? ほっぺがパンパンに腫れているよ」

 絶対原因を知っているモーガンが少し嬉しそうにオレに問いかけてきた。

「ヴィ、ヴィーベェが……ボレの顔をボゴボゴぢまじだ」

 オレは何を喋っているのか聞き取れないくらいのビンタを受けてフラフラになりながらも何とかこの場に立っている。

 それはさておき、オレは新商品の薄切りポテトが百八十個分も注文があった事に驚いた。
 今日の売上を確認するとジャガイモ四百個分とレモネード三十杯、その他飲料等、材料費引くと小金貨一枚、小銀貨三枚の利益をあげた。
 最初の三日は家賃や修繕費に回す事になっているので、オレ達の給料は四日目から貰える事となる。

(それまで稼ぐとしたら……明日から土曜日だし……やっぱり冒険者協会に依頼を探す事になりそうだな)

 そして次の日の朝食時にリアナとショーンから討伐依頼を見に行こうと言う話になった。
 流石にクラリネさんは全くの素人で、本人に戦う意思も無いので実家の手伝いをするとの事だった。

 そして土曜日…………リアナとショーンは尻尾を振っているかのように嬉しそうに討伐依頼を持ってきた。

「クライヴ! ほらオオトカゲの大量発生だよ。これはぼく達の出番じゃないのかな。大勢の人が困っているのを見過ごすことはできない! 騎士道精神にかけて!」

 その騎士道なんちゃらによりオレ以外全員賛成で可決となった………………
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