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第一章 王国編第二部(中等部)
エピソード138 トランジション
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「何言ってんだよオマエ! オレ達を黙らす? 笑わせんじゃねぇーよ!」
ペップ先輩がかなり苛立っていて真っ赤な顔でモーガンに怒鳴っていた。対称的にモーガンは涼しい顔で言葉を続けた。
「忠告はしましたよ。それでは皆さんどうぞ」
モーガンの掛け声とともにカーン達の愚行等を知る生徒が十名程度集まっていた。
「なっ! そんな奴らに証言? それがどうしたって言うんだ!」
ペップ先輩も最初は証言する生徒数の多さに戸惑ったが、平民相手なら何とか揉み消す事ができるのだろう少し自信を取り戻していた。
「だそうですよ? みんな、それにエルザさん、ルーシー先輩」
「「「えっ?」」」
十名程度の生徒の後ろからフィーネ達とエルザ様とルーシー様が現れた。
(えー! モーガンなにしてんの! 大ごとにし過ぎだろ! 何が昨日、証言者もいるから安心して大丈夫だよって言ったんだよ! ルーシー様を巻き込んだらダメ絶対! 何でお姉ちゃんに相談しないのとか言われて後でオレ大変な目に合うから)
「あっ……言い忘れてたけど、他の証人もいて手紙で預かっているよ。王族の印のあるアーサー殿下からの手紙だけど」
「「「ひぇ!」」」
モーガンの一言に面白いように反応するカーン達、さっきまでの威勢はどこへやら…………
今は真っ青な顔で震えていて、逆にモーガンは証言者の前に立ち黒い笑みを浮かべている。
証言者達にこの表情を見せない為にもモーガンはこの立ち位置なのだろう。
(何このオセロで負けていたのに途中から逆転して、更にずっとオレのターン状態は……それによくアーサー殿下の元まで行けたなぁ)
「どうか穏便に手を引いてくれないかなぁ。これ以上クライヴに構わないで欲しいんだけど」
「「「はい!」」」
カーン達は直立不動で良い返事とともに壊れた人形のように何度も頷いていた。
(アーサー殿下の手紙は時代劇の印籠かよ)
オレは前世の時代劇のドラマを思い出して何だがクスリと笑ってしまった。
そんなオレの表情に、両手を横に広げてやれやれといったポーズで何か言いたげなモーガンと目が合った。
(多分だけど今オレとモーガンはお互いに何故言わなかったって気分なんだろうなぁ。オレのイジメられてた事と、モーガンのこの用意周到さと……
にしてもこんな早く解決するなら今までの努力は一体なんだったんだろう)
考えれば考えるほど腑に落ちない沼からオレを救ってくれたのは唐突なフィーネのビンタだった……
「何一人でカッコつけてんのよ! バカ! アンタなんか! アンタなんか…………嫌われた……のかと……思ったんだからね」
瞳を潤わせて肩を震わせながら怒るフィーネにオレは只々ゴメンしか言えなかった……
「君達のクライヴにしてきた事を考えると、ぼく達の怒りが収まらないよ。
そこで貴族らしく決闘をするのはどうだろうか? 一応貴族であるぼくが相手になるよ。もちろん手加減は出来ないけどね」
リアナも沸々と怒りが込み上がっているようだ。男爵家次男のサッソに対して冗談ではなく真顔で決闘を申し込んでいた……
「許してくれ! それにモースト様には言わないでくれ! オレ達の方で何とかモースト様を説得するから! 頼む! 一生のお願いだ!」
カーン達は声を震わせ、大変美しいお手本のような土下座をして訴えてきた。
オレはその姿を見てこれ以上何もするつもりはなかった。
「あの、別にいいからさ。これからは平穏に過ごさせてくれないか?」
オレの言葉にカーン達は顔を上げて何度も頷いた。
中等部に入学してから今日までの半月程度、やっと平穏な日常になりそうなオレは、次のステップであるハッピースマイルポテイトンの再開に歩み始めた。
「――と言う事でクライヴ君に助けてもらったのにそんな事に合ってたなんて本当にごめんなさい」
「オレの方もみんなに迷惑かけたらいけないと思い込んでしまい、相談もせず一人で解決しようとしてゴメン。結果みんなとギクシャクしちゃったし」
クラリネさんがみんなに事情を説明してオレに謝り、オレがみんなに謝るという不思議な構図となっているが、やっとオレ達は元の仲良しチームに戻れた。
幸いにも明日は金曜日、そしてみんな王立学院での生活に慣れてきたのでオレはみんなに提案をした。
「明日からハッピースマイルポテイトンを再開しないかい? クラリネさんにも手伝ってもらって」
「ボクは良いと思うよ。みんなは?」
「アッアタシもよ!」
「ぼくもクライヴの意見に賛成だよ」
「おぅ! そろそろ働きたかったんじゃ」
「よ、よろしくお願いします!」
みんな賛成してくれたので、オレは放課後にショッパーニ商会へ報告に行く事にした。
オレがショッパーニ商会の扉をくぐり、受付の従業員さんに挨拶をすると、すぐに応接室に連れて行ってくれる。言わば顔パス状態だ。
「す、すみませんクライヴ殿。遅くなってしまって」
毎回ショッパーニさんは息を切らして応接室に現れた。
「いえいえいえ、こちらこそです。いつもすみません突然押しかけてしまって」
ショッパーニさんが頭を下げたので、オレも慌てて頭を下げて突然アポなしで訪問したことを謝った。
(商会長として忙しいショッパーニさんに迷惑かけてしまったなぁ。と言うか何でいつもショッパーニさんが対応してくれるんだろう……他の従業員の方でも大丈夫な話の内容ですが…………)
「すみませんがショッパーニさんに二点ほどお願いがあり今日突然訪問させてもらいました。一点目はハッピースマイルポテイトンを再開しようと思いますので、また品物を購入させていただければと思い」
「はい! 明日には準備しておりますよクライヴ殿」
(仕事が早ーい! 凄いよ凄すぎるよショッパーニさん!)
ショッパーニさんはオレの申し出を悟っており、食い気味に答えてくれた事にオレに探偵でも使って調査しているのかというぐらい驚いた。
「実はもう一つのお願いがありまして、ご家庭用の洗濯や洗い物なんかの生活用品なんですが……この洗浄水など商店の方でいかがでしょうか? 瓶以外は無料で結構ですので、もしたくさん売れるよならまた教えて下さい。個人的に売れるか知りたくてショッパーニさんにお願いできたらと思いました」
前回あまり手応えが無かったショッパーニさんに、オレは重曹魔道具と水で薄めた重曹水を渡して、使い方の説明をした。
「はぁ……無料でいただけるのは気が引けますので、何とか売れるように頑張りますが、期待はしないで下さいね。とりあえず銅貨一枚程度で値をつけてみます」
あまり乗り気でないショッパーニさんだったが、金曜日のハッピースマイルポテイトン再開日の夕方に急遽呼び出される事となった。
ペップ先輩がかなり苛立っていて真っ赤な顔でモーガンに怒鳴っていた。対称的にモーガンは涼しい顔で言葉を続けた。
「忠告はしましたよ。それでは皆さんどうぞ」
モーガンの掛け声とともにカーン達の愚行等を知る生徒が十名程度集まっていた。
「なっ! そんな奴らに証言? それがどうしたって言うんだ!」
ペップ先輩も最初は証言する生徒数の多さに戸惑ったが、平民相手なら何とか揉み消す事ができるのだろう少し自信を取り戻していた。
「だそうですよ? みんな、それにエルザさん、ルーシー先輩」
「「「えっ?」」」
十名程度の生徒の後ろからフィーネ達とエルザ様とルーシー様が現れた。
(えー! モーガンなにしてんの! 大ごとにし過ぎだろ! 何が昨日、証言者もいるから安心して大丈夫だよって言ったんだよ! ルーシー様を巻き込んだらダメ絶対! 何でお姉ちゃんに相談しないのとか言われて後でオレ大変な目に合うから)
「あっ……言い忘れてたけど、他の証人もいて手紙で預かっているよ。王族の印のあるアーサー殿下からの手紙だけど」
「「「ひぇ!」」」
モーガンの一言に面白いように反応するカーン達、さっきまでの威勢はどこへやら…………
今は真っ青な顔で震えていて、逆にモーガンは証言者の前に立ち黒い笑みを浮かべている。
証言者達にこの表情を見せない為にもモーガンはこの立ち位置なのだろう。
(何このオセロで負けていたのに途中から逆転して、更にずっとオレのターン状態は……それによくアーサー殿下の元まで行けたなぁ)
「どうか穏便に手を引いてくれないかなぁ。これ以上クライヴに構わないで欲しいんだけど」
「「「はい!」」」
カーン達は直立不動で良い返事とともに壊れた人形のように何度も頷いていた。
(アーサー殿下の手紙は時代劇の印籠かよ)
オレは前世の時代劇のドラマを思い出して何だがクスリと笑ってしまった。
そんなオレの表情に、両手を横に広げてやれやれといったポーズで何か言いたげなモーガンと目が合った。
(多分だけど今オレとモーガンはお互いに何故言わなかったって気分なんだろうなぁ。オレのイジメられてた事と、モーガンのこの用意周到さと……
にしてもこんな早く解決するなら今までの努力は一体なんだったんだろう)
考えれば考えるほど腑に落ちない沼からオレを救ってくれたのは唐突なフィーネのビンタだった……
「何一人でカッコつけてんのよ! バカ! アンタなんか! アンタなんか…………嫌われた……のかと……思ったんだからね」
瞳を潤わせて肩を震わせながら怒るフィーネにオレは只々ゴメンしか言えなかった……
「君達のクライヴにしてきた事を考えると、ぼく達の怒りが収まらないよ。
そこで貴族らしく決闘をするのはどうだろうか? 一応貴族であるぼくが相手になるよ。もちろん手加減は出来ないけどね」
リアナも沸々と怒りが込み上がっているようだ。男爵家次男のサッソに対して冗談ではなく真顔で決闘を申し込んでいた……
「許してくれ! それにモースト様には言わないでくれ! オレ達の方で何とかモースト様を説得するから! 頼む! 一生のお願いだ!」
カーン達は声を震わせ、大変美しいお手本のような土下座をして訴えてきた。
オレはその姿を見てこれ以上何もするつもりはなかった。
「あの、別にいいからさ。これからは平穏に過ごさせてくれないか?」
オレの言葉にカーン達は顔を上げて何度も頷いた。
中等部に入学してから今日までの半月程度、やっと平穏な日常になりそうなオレは、次のステップであるハッピースマイルポテイトンの再開に歩み始めた。
「――と言う事でクライヴ君に助けてもらったのにそんな事に合ってたなんて本当にごめんなさい」
「オレの方もみんなに迷惑かけたらいけないと思い込んでしまい、相談もせず一人で解決しようとしてゴメン。結果みんなとギクシャクしちゃったし」
クラリネさんがみんなに事情を説明してオレに謝り、オレがみんなに謝るという不思議な構図となっているが、やっとオレ達は元の仲良しチームに戻れた。
幸いにも明日は金曜日、そしてみんな王立学院での生活に慣れてきたのでオレはみんなに提案をした。
「明日からハッピースマイルポテイトンを再開しないかい? クラリネさんにも手伝ってもらって」
「ボクは良いと思うよ。みんなは?」
「アッアタシもよ!」
「ぼくもクライヴの意見に賛成だよ」
「おぅ! そろそろ働きたかったんじゃ」
「よ、よろしくお願いします!」
みんな賛成してくれたので、オレは放課後にショッパーニ商会へ報告に行く事にした。
オレがショッパーニ商会の扉をくぐり、受付の従業員さんに挨拶をすると、すぐに応接室に連れて行ってくれる。言わば顔パス状態だ。
「す、すみませんクライヴ殿。遅くなってしまって」
毎回ショッパーニさんは息を切らして応接室に現れた。
「いえいえいえ、こちらこそです。いつもすみません突然押しかけてしまって」
ショッパーニさんが頭を下げたので、オレも慌てて頭を下げて突然アポなしで訪問したことを謝った。
(商会長として忙しいショッパーニさんに迷惑かけてしまったなぁ。と言うか何でいつもショッパーニさんが対応してくれるんだろう……他の従業員の方でも大丈夫な話の内容ですが…………)
「すみませんがショッパーニさんに二点ほどお願いがあり今日突然訪問させてもらいました。一点目はハッピースマイルポテイトンを再開しようと思いますので、また品物を購入させていただければと思い」
「はい! 明日には準備しておりますよクライヴ殿」
(仕事が早ーい! 凄いよ凄すぎるよショッパーニさん!)
ショッパーニさんはオレの申し出を悟っており、食い気味に答えてくれた事にオレに探偵でも使って調査しているのかというぐらい驚いた。
「実はもう一つのお願いがありまして、ご家庭用の洗濯や洗い物なんかの生活用品なんですが……この洗浄水など商店の方でいかがでしょうか? 瓶以外は無料で結構ですので、もしたくさん売れるよならまた教えて下さい。個人的に売れるか知りたくてショッパーニさんにお願いできたらと思いました」
前回あまり手応えが無かったショッパーニさんに、オレは重曹魔道具と水で薄めた重曹水を渡して、使い方の説明をした。
「はぁ……無料でいただけるのは気が引けますので、何とか売れるように頑張りますが、期待はしないで下さいね。とりあえず銅貨一枚程度で値をつけてみます」
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