臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

文字の大きさ
206 / 228
第一章 王国編第二部(中等部)

エピソード168 戦闘祭り 姑息

しおりを挟む
「うおぉ! こっちじゃ!」

 自分に注意を向けるように、声をあげて突進するショーンは、盾を構えながら槍を振り回す。
 単調な攻撃で躱されているが、囮役としてはまずまずの成果だった。

「クライヴ、君はそちらの先輩を任せたよ。ぼくはこちらを引き受けよう」

 リアナは木剣を両手で握りしめたまま、ショーンに向かって走っていく。
 するとショーンが木の大盾を地面に突き刺して、離さないようにとその大盾を掴んでいた。
 リアナは一度ショーンに頷き、その盾を足場に大きく飛び上がる。
 凛としたリアナが空を駆ける姿は何とも美しく、予想外のその動きに先輩達は見入っていた。
 
「先輩、そいつに気を取られとるとワシにやられるじゃろうが!」

 その隙を逃さず、大盾を手放したショーンが両手で槍を持ち、一撃、二撃と薙ぎ払う。
 一撃目で先輩は木剣を弾かれて、右斜め前にバランスを崩して手が地面に着くと、二撃目でガラ空きの背中にズシリと打撃が入る。

「ウッ!」
 
 先輩の背中の防具から光が放たれて一人脱落した。

「申し訳ないですが、これで終わりにさせていただきます」

 リアナは着地と同時にしゃがみ込んだ姿勢から跳び上がるように木剣を右から左にかけて切り上げた。

「グワッ!」

 何とかリアナの攻撃を受け止めた先輩は木剣を外側に弾かれて胸がガラ空きになる。
 そのガラ空きの胸にリアナの流れるような左袈裟斬りが直撃する。

「うわぁー!」

 そして防具の胸部が光り出し、二人目が脱落した。

「させるかー!」

「…………クッ」

 この組のリーダーと思われる先輩が木槍でトンマージ君を攻め立てる。
 エルザ様もトンマージ君の助太刀に入ろうとするも先輩の槍捌きに間合いを取れず攻めあぐねていた。
 
「くらえ!」

「…………なっ!」
 
 ピカーーン!

 リアナが二人目を撃破して喜んだのも束の間、右サイドの攻防では先輩の攻撃により、トンマージ君の腕の防具が光った……

「よくもやってくれたわね」

 しかし、思っていたよりもトンマージ君に苦戦した先輩は、エルザ様の攻撃に疲労を隠せない。
 エルザ様が木剣の間合いに入り込んで繰り出す攻撃に、先輩はなんとか防御している様子だった。

 だがエルザ様の大振りな横切りを躱されて形勢が逆転した……

「よし! こちらの番だ!」

 先輩は斜め方向の薙ぎ払いを繰り出し、何とか防ぐエルザ様。

「「エルザ!」」

 ショーンとリアナがエルザの元に駆け寄ろうとするが、それを制したのはエルザ様だった。

「大丈夫よ! 私だってやれるわ」

 次に放った先輩の振り下ろしの攻撃を防いだエルザ様だが、腹部がガラ空きだった。
 そこに先輩が身体を駒のように回転させた横切りが加速して襲ってくる。

 しかし、エルザ様は上半身を後方に仰反ってギリギリの所で躱す…………と同時にバク転をしながら槍を蹴り上げる。

「なっ!」

 横切りを放つ先輩の攻撃に見事にピンポイントで合わせたカウンターにより、槍は大きく空に舞い上がっていた。
 そしてすぐにエルザ様は先輩の懐に駆け寄り腹部に一撃を入れて、三人目が脱落した。

(ちょっ! 三組強過ぎだろ! しかもオレ達の二組もトンマージ君がやられて三人になったし、ショーン達と闘うと負けるかもしれないなぁ。それにジェイミー先輩達もいるし……まぁ先輩達の組がどれだけ人数がいるかによって戦況は変わるけど)

 オレは三組トリオを見てそんな事を考えていると、先輩チームの一番後方にいた魔法使いの先輩がファイヤーボールを唱え、何故かオレに向かって放たれていた。

「「「「クライヴ!」」」」
「クライヴ君!」

 みんながオレに声をかけて心配をしてくれた。
 また、ショーンは盾を持ちオレを守ろうと走り出したが、放たれたファイヤーボールはどんどん加速する。

(これ時速何キロぐらいだ? 百キロは出てるんじゃないか?)

 オレは膝をガクガク震えさせながらファイヤーボールの速度を分析していた。
 
「とりあえず【身体強化】をかけさせてもらいます」

 そう一人呟き、【身体強化】を下半身に部分的にかける。
 イメージはお尻や太ももの付け根から足の裏まで深部に魔法が行き渡るのをイメージする。
 普段は魔力が身体に流れるのをイメージ出来ないが、【身体強化】をかける時だけは筋肉に膜を覆う感覚が感じられる。
 この数年この感覚をトレーニングした事で、こうして部分的に【身体強化】をかける事が上達していった。

(【身体強化】も後少しで十秒の壁を越えれそうだなぁ)

 そしてオレは奥にいる魔法使いの先輩を一旦おいといて、目の前の木剣を持つ先輩に向かっていく。
 フィーネに後は任せて。

「フィーネ! 後方の先輩よろしく!」

「分かったわよ!」

「クライヴ! ボクも忘れないでね。氷の地面アイステール

 モーガンの魔法により、魔法使いの先輩は転びそうになりバランスを崩す。
 その無防備な状態な先輩の腕と胸と腹部に木の矢が当たる。

「うわー!」

 ピカーン!

 四人目が脱落し、残すところ後一人。

 オレは目の前の先輩に居合い切りのような要領で片手で左から右に左胴斬りを放った。
 先輩は、オレが間合いに入り込むスピードに驚きながらも何とか木剣を右腹部の近くで垂直に構えて左胴斬りを防いだ。

「そう簡単にはいかない……ですよね」

「クソー! みんなやられたがお前だけでも道連れだ!」

 オレは【身体強化】を解除して先輩と鍔迫り合いを行う。
 
(あっ多分【身体強化】を解除するタイミング間違えた。すんごい脚がプルプルする……)

 ゆくゆくの事を考えて【身体強化】を解除して温存したオレだが、僅かだが疲労が出ていたようだ……
 お陰で鍔迫り合いでは先輩に分があった。
 オレは鍔迫り合いから後方に弾き飛ばされ、その隙を先輩は見逃さなかった。
 先輩は一歩踏み込み袈裟斬りを放つ。
 オレは何とか防いだが片膝をつく体勢となった。
 
「アンタ! 何やってんのよ!」

「痛ぇ!」

 ピカーン

 まさかのフィーネの援護射撃で先輩の腕の防具が光り出して、オレが活躍する事なく呆気ない幕切となった……

(すいませんフィーネに後方の先輩は任せた! とかカッコつけて…………情けなくて本当にすみません。ありがとうございますフィーネさん……)

 オレは心の中でフィーネに最大限の感謝をしたが、そんな事は口には出せない。

「フィーネ助かったよ」

 オレが笑顔でフィーネにそう言うと、フィーネさんのツンの芽が出てきた。

「はぁー? アンタ本当に手がかかるんだから! アタシが助けないとやられていたわよ! 何であんな先輩にアンタが負けるのよ…………心配だ……たん…………からね」

 最後の方が聞こえないが、途中からほんのりと顔が赤くなるフィーネさんを見て大体お察しがついた。

「アンタ何ニヤニヤしてんのよ! その顔がムカつくわ! こっち見ないで!」

 相変わらずのフィーネ節が炸裂した…………


 そんな事がありながらもオレ達は無事先輩達に勝利して、ショーン達と今後について話し合う事となった。

「クライヴ情けねぇがぁ。ワシも守れんかったけぇなんとも言えんが、男としてそれじゃおえまーいけないだろう

「まぁまぁクライヴは、まだ本気じゃないという事だよ。ぼく達との闘いに向けて力を温存しているという事だよね」

 戦闘祭りにお似合いな二人が熱い熱量でオレに話しかける。

「そんな事よりもボク達の今後について話し合わないかい?」

「そうよ。私達三組もサッソ君がいなくなって……なんかモースト君のところに行くと言ってたし…………何か起こさないか心配なのよ」

 エルザ様は指を顎に触れて首を傾げていた。

「ちょっと待って! 足音が聞こえたわ!」

 フィーネセンサーに誰かが引っかかったようだ。
 そして次の瞬間、オレ達の足元に何かが飛んでくる。
 
 シューー

 それは丸い球体でなにか白い煙を吐いていた。

「クックック……油断は禁物だよ……」

 そこには、赤髪のソフトモヒカンに両腕にタトゥーだらけの血のような赤い目の男性が、クスリでもやっているかのような挙動不審な様子でオレ達を見ていた。

「ヘクター君!」

 エルザ様がそう呼ぶと、ヘクターと呼ばれた人物は身体を震わせながら狂気に満ちた目でオレを睨みつける。

「平民のくせにあの方に近づくヤツは殺してやる……」

(おーい! 物騒だぞ! 戦闘祭りだろ? これは学祭のイベントだろ? ヤバいよあの人!)

 そして数秒時間が経過して徐々に身体が重たくなってきた……というか痺れて身体の感覚がおかしくなり、力が入らない!

「フフフフフフフ…………そろそろ毒が回ってきたかな? ただの痺れ薬だよ……偽ブタが動けなくなるくらいのね……クックック」

「ナイスだよヘクター君。卑しい平民どもに天罰を与えないとね。慈悲深き私が神の代わりに成敗してくれよう」

「おっしゃる通りですモースト様!」

 その場に現れたのは、モーストとサッソだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...