11 / 30
11 冗談は顔だけにしろ!
しおりを挟む
爆弾級とも言えるレインの告白にマリアンヌとギスランは思考が一時停止した。
番?番と言ったの?目の前の犬……いや狼だったか?とマリアンヌは頬を染めながらこちらを見つめるレインに頭を抱えた。
突然前触れもなく現れて何言ってるんだこの男は!しかもこの国にきて既に1年も経過している、本当に意味がわからない。
マリアンヌは場違いにも照れ臭そうに赤い顔して下を向いてモジモジしているレインにだんだん腹が立ってきていた。
おそらく人生で初めての怒りの感情であろう。
「陛下!冗談は顔だけにしてくださいませ!確かに番が現れたら即離縁と誓約しましたが輿入れして既に1年も経ってるんですよ!今更私が番だなんてバカにしてるんですか?そんな嘘つかなくても離縁したいなら今すぐして差し上げます。さぁ、ランバート今すぐ離縁の書類を出しなさい!持ってきているんでしょ!」
レインは仮にも一国の王、しかも美男と持て囃されることはあるがその顔を冗談と揶揄されたのは初めてだった、しかも美少女のマリアンヌの憤った顔に残念美男子レインはうっかり見惚れて惚けていた。
そんな主人を横目にレインがまともな思考に戻ってくるのを待ってられないとランバートがマリアンヌに答えた。
「マリアンヌ様、これは冗談ではなく残念ながら事実なんです。マリアンヌ様が番と気がついたのは婚姻の儀の指輪の交換の時なんだそうです。その時今嵌めている指輪を外しましたよね。それは番認識阻害魔道具です、陛下は指輪を外した瞬間に番と気づいたんですよ。」
「え?でもあの時何も言ってこなかったし…特に変わった様子は….ん?あの時キスしようとしたのは…まさか…何それ!手のひら返しのような態度……あ!でもその後普通だったじゃないですか!やっぱり気のせいじゃないの?番衝動ってあんなさっぱりした感じなの?聞いた話と違うから陛下の勘違いじゃないの?」
「いえ、我々獣人が番を間違える事はあり得ません。それを証明するにはマリアンヌ様が指輪を外し陛下がつけているピアス型の魔道具を外せば陛下の態度で自ずとわかりますが…試してみますか?」
「試す?態度?外して何かわかるの?なんか印でも出るの?どう判断するの?」
「陛下の様子ですぐわかりますよ。今でさえコレですから……ただ、この1年不眠になる程抑えてましたから、正直私にも陛下がどういう行動を取るか…ちょっと……保証できかねますが」
ランバートの提案に否を唱えたのはギスランだ!
「だめだ!マリアンヌ様、ここで指輪は外すのは危険です。魔道具をつけている状態でこれですから特に狼獣人の陛下は衝動が他の獣人より強いはずです!私のように制御できるとも思えません非常に危険です」
ギスランが指輪を外すことに猛反対した。
「そ、そう、なの?じゃぁ外さない!不本意ながら番が私だという事はわかりました。それで陛下は誓約に従って番が現れたら離縁するという約束に従うためにいらしたのですか?」
「……いや、できればチャンスがもらえたらと…」
「チャンス?なんのチャンスでしょう?謝罪は受け入れましたよ?他に何かありました?」
「「「………」」」
マリアンヌは何事もそつなくこなし大変優秀だがある意味で大変鈍く大変察しが悪かった。
「マリアンヌ様、陛下は夫になるチャンスが欲しいと仰ってるんですよ」
見かねたランバートが助け舟を出した……のだが、
「やだ、ランバート何言ってるの?しっかりしてよ~いくら私が1年離宮に引っ込んでたからって忘れたの?陛下は既に私の夫でしょ……書類上は」
「「「………」」」
間違いではないが、マリアンヌの言っていることは正しい、…が、…なぜこうも斜め上の思考になってしまうのかランバートはギスランに目配せしたが首を横に振られた。
そんな中今までポンコツだったレインがこの日初めてまともな事を言った。
「マ、マリアンヌ、….わ、私はそなたと交わした誓約を解消して愛し合いたいのだ、最初からやり直し愛のある夫婦として共にありたいのだ、そのチャンスが欲しい。」
レインの真剣な様子に流石のマリアンヌも理解したようでしばらく考えていたが、すっと顔をあげ真っ直ぐレインに視線をむけ気持ちを告げた。
「……陛下、申し訳ありませんができません。それこそ今更です。私は誓約通り離縁を望みます。」
「……、やはり、どうあっても離縁しなければならないのか?私にチャンスをくれないか?」
「陛下、私が番でなければ予定通り離縁したのでしょう?番でない私に対して愛のある夫婦になりたいと仰るのなら私も歩み寄れたかもしれません。ですが陛下は番の私が欲しいけど番じゃない私はいらないのでしょう?番でも番じゃなくても私は私なんです。私自身を愛してくれる方と共にいたいのです。
陛下、…番である私が強欲で争い事を好む女だったらどうします?私がやり直すなら国1つ下さいませと言ったらどうします。下さいますか?それとも国王としてそんなバカな事をと番のおねだりを諫める事ができますか?獣人にとって番とは大切な存在なのは理解します。ですが、陛下は一国の主なんです。私のようなただの国の駒とは違うんですよ。どうか良き伴侶をお選び下さい、」
「そなたほど王妃として相応しい女性はいる気がしないのだが…、」
「無理ですよ、1年前の私は王族として国のためにこの結婚を受け入れていましたが、私は変わってしまいましたよ。今の私にはどうしても欲しいものがあるんです。それが手に入るなら身分も地位も名誉も全て捨ててもいいと思うほどそれが欲しいんですよ!この上なく強欲な女になってしまいましたから、そんな女に王妃は務まりません。」
「…そうか、欲しいもの…それが…(私であったなら、どんなによかったか)…そうだな今更だな。だが、今は離縁しない!」
「「「は?」」」
なぜ?
番?番と言ったの?目の前の犬……いや狼だったか?とマリアンヌは頬を染めながらこちらを見つめるレインに頭を抱えた。
突然前触れもなく現れて何言ってるんだこの男は!しかもこの国にきて既に1年も経過している、本当に意味がわからない。
マリアンヌは場違いにも照れ臭そうに赤い顔して下を向いてモジモジしているレインにだんだん腹が立ってきていた。
おそらく人生で初めての怒りの感情であろう。
「陛下!冗談は顔だけにしてくださいませ!確かに番が現れたら即離縁と誓約しましたが輿入れして既に1年も経ってるんですよ!今更私が番だなんてバカにしてるんですか?そんな嘘つかなくても離縁したいなら今すぐして差し上げます。さぁ、ランバート今すぐ離縁の書類を出しなさい!持ってきているんでしょ!」
レインは仮にも一国の王、しかも美男と持て囃されることはあるがその顔を冗談と揶揄されたのは初めてだった、しかも美少女のマリアンヌの憤った顔に残念美男子レインはうっかり見惚れて惚けていた。
そんな主人を横目にレインがまともな思考に戻ってくるのを待ってられないとランバートがマリアンヌに答えた。
「マリアンヌ様、これは冗談ではなく残念ながら事実なんです。マリアンヌ様が番と気がついたのは婚姻の儀の指輪の交換の時なんだそうです。その時今嵌めている指輪を外しましたよね。それは番認識阻害魔道具です、陛下は指輪を外した瞬間に番と気づいたんですよ。」
「え?でもあの時何も言ってこなかったし…特に変わった様子は….ん?あの時キスしようとしたのは…まさか…何それ!手のひら返しのような態度……あ!でもその後普通だったじゃないですか!やっぱり気のせいじゃないの?番衝動ってあんなさっぱりした感じなの?聞いた話と違うから陛下の勘違いじゃないの?」
「いえ、我々獣人が番を間違える事はあり得ません。それを証明するにはマリアンヌ様が指輪を外し陛下がつけているピアス型の魔道具を外せば陛下の態度で自ずとわかりますが…試してみますか?」
「試す?態度?外して何かわかるの?なんか印でも出るの?どう判断するの?」
「陛下の様子ですぐわかりますよ。今でさえコレですから……ただ、この1年不眠になる程抑えてましたから、正直私にも陛下がどういう行動を取るか…ちょっと……保証できかねますが」
ランバートの提案に否を唱えたのはギスランだ!
「だめだ!マリアンヌ様、ここで指輪は外すのは危険です。魔道具をつけている状態でこれですから特に狼獣人の陛下は衝動が他の獣人より強いはずです!私のように制御できるとも思えません非常に危険です」
ギスランが指輪を外すことに猛反対した。
「そ、そう、なの?じゃぁ外さない!不本意ながら番が私だという事はわかりました。それで陛下は誓約に従って番が現れたら離縁するという約束に従うためにいらしたのですか?」
「……いや、できればチャンスがもらえたらと…」
「チャンス?なんのチャンスでしょう?謝罪は受け入れましたよ?他に何かありました?」
「「「………」」」
マリアンヌは何事もそつなくこなし大変優秀だがある意味で大変鈍く大変察しが悪かった。
「マリアンヌ様、陛下は夫になるチャンスが欲しいと仰ってるんですよ」
見かねたランバートが助け舟を出した……のだが、
「やだ、ランバート何言ってるの?しっかりしてよ~いくら私が1年離宮に引っ込んでたからって忘れたの?陛下は既に私の夫でしょ……書類上は」
「「「………」」」
間違いではないが、マリアンヌの言っていることは正しい、…が、…なぜこうも斜め上の思考になってしまうのかランバートはギスランに目配せしたが首を横に振られた。
そんな中今までポンコツだったレインがこの日初めてまともな事を言った。
「マ、マリアンヌ、….わ、私はそなたと交わした誓約を解消して愛し合いたいのだ、最初からやり直し愛のある夫婦として共にありたいのだ、そのチャンスが欲しい。」
レインの真剣な様子に流石のマリアンヌも理解したようでしばらく考えていたが、すっと顔をあげ真っ直ぐレインに視線をむけ気持ちを告げた。
「……陛下、申し訳ありませんができません。それこそ今更です。私は誓約通り離縁を望みます。」
「……、やはり、どうあっても離縁しなければならないのか?私にチャンスをくれないか?」
「陛下、私が番でなければ予定通り離縁したのでしょう?番でない私に対して愛のある夫婦になりたいと仰るのなら私も歩み寄れたかもしれません。ですが陛下は番の私が欲しいけど番じゃない私はいらないのでしょう?番でも番じゃなくても私は私なんです。私自身を愛してくれる方と共にいたいのです。
陛下、…番である私が強欲で争い事を好む女だったらどうします?私がやり直すなら国1つ下さいませと言ったらどうします。下さいますか?それとも国王としてそんなバカな事をと番のおねだりを諫める事ができますか?獣人にとって番とは大切な存在なのは理解します。ですが、陛下は一国の主なんです。私のようなただの国の駒とは違うんですよ。どうか良き伴侶をお選び下さい、」
「そなたほど王妃として相応しい女性はいる気がしないのだが…、」
「無理ですよ、1年前の私は王族として国のためにこの結婚を受け入れていましたが、私は変わってしまいましたよ。今の私にはどうしても欲しいものがあるんです。それが手に入るなら身分も地位も名誉も全て捨ててもいいと思うほどそれが欲しいんですよ!この上なく強欲な女になってしまいましたから、そんな女に王妃は務まりません。」
「…そうか、欲しいもの…それが…(私であったなら、どんなによかったか)…そうだな今更だな。だが、今は離縁しない!」
「「「は?」」」
なぜ?
38
あなたにおすすめの小説
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】
との
恋愛
「彼が亡くなった?」
突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。
「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて!
家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」
次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。
家と会社の不正、生徒会での横領事件。
「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」
『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。
人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
聖女に選ばれた令嬢は我が儘だと言われて苦笑する
しゃーりん
恋愛
聖女がいる国で子爵令嬢として暮らすアイビー。
聖女が亡くなると治癒魔法を使える女性の中から女神が次の聖女を選ぶと言われている。
その聖女に選ばれてしまったアイビーは、慣例で王太子殿下の婚約者にされそうになった。
だが、相思相愛の婚約者がいる王太子殿下の正妃になるのは避けたい。王太子妃教育も受けたくない。
アイビーは思った。王都に居ればいいのであれば王族と結婚する必要はないのでは?と。
65年ぶりの新聖女なのに対応がグダグダで放置され気味だし。
ならばと思い、言いたいことを言うと新聖女は我が儘だと言われるお話です。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています
柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。
領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。
しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。
幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。
「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」
「お、畏れ多いので結構です!」
「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」
「もっと重い提案がきた?!」
果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。
さくっとお読みいただけますと嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる