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特別は休日⑴
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今日は、先週休日出勤した代休だ。平日休みは、何だか得した気分でちゃんと時間をかけて、料理をしたくなる。天気も良く、散歩がてらスーパーに行って野菜を物色していると「あれ?真野くん?」と聞き覚えのある声がして、振り向くと 後ろに泰輔さんがいた。
今日は、まんぷく屋も定休日で頼まれごとの買い物に来ていたと話す。
「真野くん、このあと時間ある?良かったら、ちょっとお茶しない?」
急にそう誘われて、料理をしようと思ってはいたけど、泰輔さんともゆっくり話をしてみたいとも思っていて、二つ返事で了承する。
「いつものオレの店でごめんね~。ちょっと仕込みもしたくて……」
まんぷく屋は、日曜日が定休日だけど、月1回平日の定休日があるらしい。泰輔さんは、銀行や役所など、平日にしか行けない場所に行くには、貴重な休みなんだと話す。
「コーヒーでいい?」
「あ、はい。大丈夫です」
出されたコーヒーに少し砂糖を入れる。ブラックでも飲めるけど、少しだけ甘みを入れて飲むのが好きだった。
「あっ、おいしい。そういえば、ここでコーヒーを飲むのは初めてです。確かメニューにもありますよね」
「うん。オレは、あんまりコーヒーは詳しくないだけど、夕花里が好きでね。お気に入りの豆を自分でブレンドして出してるんだ。コーヒーは、夕花里に全部任せてるんだ」
「へー、すごいですね。このブレンドは、すごく好きです」
泰輔さんとは、料理の話とか先生の話とかして、気づいたらコーヒーもなくなっていた。
「そういえば、この間、春人とB級グルメ祭に行ってきたんだろ?どうだった?」
この間の心臓の高鳴りを思い出して、一瞬ドキッとする。
「あ、写真、撮ってきたんですよ。見ますか?」
ケータイを出して、この間撮った写真を見せる。
「へー。あ、ちくわパン。これ、うまいよな~。他の写真も見ていい?」
ボクの承諾を得て、泰輔さんは指をスライドさせながら、次々と写真を見ていく。一定のリズムでスライドさせていた指が、ある写真で止まる。
「あっ......」
唯一、先生と自撮りした写真だ。ボクが食べ物ばかり撮っていると「食べ物ばかりじゃなくて、一緒にも撮ろうか」とボクのケータイを素早く奪って、あれよあれよと言う間に撮られてしまった。
「へーぇー。いいツーショットじゃん」
「あっ......いや......これは......先生がふざけて撮って......」
必死に説明するも、しどろもどろになって、うまく喋れない。
「真野くんはさぁ、春人のことどう思っているの?」
ビックリして、泰輔さんの顔をジッと見てしまった。でも、からかってるとかふざけているとかではなさそうで、ボクも必死に言葉を探す。
「えっと......先生のことは......尊敬しています。自分にはないものいっぱい持っていて、でもボクみたいな生徒ともちゃんと接してくれて......す......すてきな先生です」
喋っているうちに、ポロッと好きですと言いそうになるのを、慌てて引っ込める。
「ほんとうに、尊敬だけ?」
ドキッ......
泰輔さんに、まっすぐ見つめられて聞かれると、ボクの心が見透かされているようだ。もしかしたら、ボクが先生のことを好きなことがバレているのかなと思いつつ、何も言えなくて伏してしまう。
今、顔を上げたらバレそうだ。
「あはっ。ごめん、ごめん。ちょっと困らせちゃったかな。でもオレは、真野くんの味方になれると思うから、何かあったら相談してよ。今日は付き合って貰ってありがとうね。で、最後にもう1つ、頼まれて欲しいんだけどいいかな......」
泰輔さんが続けた言葉に思わず「えっ......」と顔を上げてしまう。
今日は、まんぷく屋も定休日で頼まれごとの買い物に来ていたと話す。
「真野くん、このあと時間ある?良かったら、ちょっとお茶しない?」
急にそう誘われて、料理をしようと思ってはいたけど、泰輔さんともゆっくり話をしてみたいとも思っていて、二つ返事で了承する。
「いつものオレの店でごめんね~。ちょっと仕込みもしたくて……」
まんぷく屋は、日曜日が定休日だけど、月1回平日の定休日があるらしい。泰輔さんは、銀行や役所など、平日にしか行けない場所に行くには、貴重な休みなんだと話す。
「コーヒーでいい?」
「あ、はい。大丈夫です」
出されたコーヒーに少し砂糖を入れる。ブラックでも飲めるけど、少しだけ甘みを入れて飲むのが好きだった。
「あっ、おいしい。そういえば、ここでコーヒーを飲むのは初めてです。確かメニューにもありますよね」
「うん。オレは、あんまりコーヒーは詳しくないだけど、夕花里が好きでね。お気に入りの豆を自分でブレンドして出してるんだ。コーヒーは、夕花里に全部任せてるんだ」
「へー、すごいですね。このブレンドは、すごく好きです」
泰輔さんとは、料理の話とか先生の話とかして、気づいたらコーヒーもなくなっていた。
「そういえば、この間、春人とB級グルメ祭に行ってきたんだろ?どうだった?」
この間の心臓の高鳴りを思い出して、一瞬ドキッとする。
「あ、写真、撮ってきたんですよ。見ますか?」
ケータイを出して、この間撮った写真を見せる。
「へー。あ、ちくわパン。これ、うまいよな~。他の写真も見ていい?」
ボクの承諾を得て、泰輔さんは指をスライドさせながら、次々と写真を見ていく。一定のリズムでスライドさせていた指が、ある写真で止まる。
「あっ......」
唯一、先生と自撮りした写真だ。ボクが食べ物ばかり撮っていると「食べ物ばかりじゃなくて、一緒にも撮ろうか」とボクのケータイを素早く奪って、あれよあれよと言う間に撮られてしまった。
「へーぇー。いいツーショットじゃん」
「あっ......いや......これは......先生がふざけて撮って......」
必死に説明するも、しどろもどろになって、うまく喋れない。
「真野くんはさぁ、春人のことどう思っているの?」
ビックリして、泰輔さんの顔をジッと見てしまった。でも、からかってるとかふざけているとかではなさそうで、ボクも必死に言葉を探す。
「えっと......先生のことは......尊敬しています。自分にはないものいっぱい持っていて、でもボクみたいな生徒ともちゃんと接してくれて......す......すてきな先生です」
喋っているうちに、ポロッと好きですと言いそうになるのを、慌てて引っ込める。
「ほんとうに、尊敬だけ?」
ドキッ......
泰輔さんに、まっすぐ見つめられて聞かれると、ボクの心が見透かされているようだ。もしかしたら、ボクが先生のことを好きなことがバレているのかなと思いつつ、何も言えなくて伏してしまう。
今、顔を上げたらバレそうだ。
「あはっ。ごめん、ごめん。ちょっと困らせちゃったかな。でもオレは、真野くんの味方になれると思うから、何かあったら相談してよ。今日は付き合って貰ってありがとうね。で、最後にもう1つ、頼まれて欲しいんだけどいいかな......」
泰輔さんが続けた言葉に思わず「えっ......」と顔を上げてしまう。
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