16 / 95
特別な休日⑵
しおりを挟む
とあるマンションのオートロックのインターホンの前に立っている。息を整えても、緊張して部屋番号を押す指が震えてしまう。
〝ピンポーン〟と鳴ってから、ややしばらく間がある。泰輔さんは、寝てるかもしれないから、反応がなかったら何度かインターホンを鳴らしてみてと言っていた。再度、鳴らそうかと手を伸ばした時「え?!まっ……真野?」とビックリした奥田先生の声が聞こえてきた。
泰輔さんの頼みごとは、風邪をひいて寝込んでいる先生にご飯を届けることだった。先生は、風邪をひいて熱を出すことがよくあるらしく、その都度泰輔さんに、買い出しやご飯SOSが入って、お店の合間や終わった後に届けているようだ。
今日は泰輔さんも定休日で休みなのに......もしかしたら、お茶に誘われたのも、この為だったんじゃないかと思ってしまう。だけど、先生のことが心配で、泰輔さんお手製の野菜スープとかポカリとかアイスとかを持って、先生のマンションまで来たのだ。
玄関を開けてくれた先生は、パジャマ姿にメガネといつものピシッとしている姿とは違い、ちょっと素の先生に触れられたようでドキドキしてしまう。
「悪かったな……」
先生は玄関先で、物だけ受け取ろうと手を伸ばしたけど、その手を遮るようにボクは話した。
「あ......あの。泰輔さんから、スープを預かって来たんですけど......お粥も作ろうと思ってて......その......お邪魔してもいいですか?」
「えっっ......じゃあ、ちょっと片付けるから......」
「あっ、熱あるのにいいです。嫌だったらここで帰りますから。気を遣わないで下さい」
「......じゃあ、あんまりキレイじゃないけど......どうぞ」
先生はそう言っていたけど、すっきり完璧に片付いている訳ではなかったけど、それなりにキレイだった。
「キッチンはここだから、好きに使っていいよ」
リビングに入ってすぐに左側に、キッチンがあり、リビングへと繋がっている。その他に部屋が1つあって、多分、先生の寝室だ。
「ありがとうございます。先生は、寝ていてください」
先生が寝室に入っていくのを見届けて、持ってきたものを冷蔵庫にしまう。冷蔵庫には、お水とビールと調味料くらいしか入っていなくて、ボクからしたら、どうやって生活しているのか不思議なくらいだ。それでも、調理道具は一通り揃っていて、驚いてしまう。
寝室のドアをノックするが、何も返事がなく「せんせい……?」と小声で呼びながら、そっとドアを開けてみる。部屋の中は、ベットと机と本棚があって、机の上には山積みの本とノートパソコンが置いてあった。机の上の物を少し避けて、お粥とスープを置く。
先生は、眠っていて、ボクが入ってきたことにも気づいていないようだ。せっかく寝ているのに起こすのもな......と思って寝顔を見つめてしまう。
熱......まだあるのかな......と先生の額に手を伸ばしてみる。
ドキドキドキドキ......
寝てるから、大丈夫だよね.....
額に少し触れると、熱が指を伝ってくる。ゆっくり手を乗せてみたとき、先生が目を覚まして目が合う。
「あっ......ごめんなさい」
慌てて手をどけると、手首を掴まれてまた、額まで引き戻されてしまった。
「真野の手、冷たくて気持ちいい......もうちょっと、こうしてて」
ドクドクドクドク......
時間が止まったみたいだったけど、掴まれている手首と額に置いてある手から、どんどん先生の熱が吸収されていくみたいで、熱くなっていく。手だけでなくて、体全体が先生の熱を奪ってるかの様に熱くなっていった。
「せ......先生。お粥できましたけど......食べれますか?」
やっとそう言いえて、先生が体を起こすと、手首も解放された。
「ちょっと、冷めちゃったかもしれないけど......」
「構わないよ。ありがとう。真野の料理が食べれるなんて、風邪もひくもんだね」
「こんなの、料理のうちに入らないです......今度、もっとちゃんとしたの作ります......」
「おっ。これは言質取っちゃったよ。楽しみだなぁ」
洗いものを終えて、あまり長居するのも良くないと思って、帰ろうと再度寝室を覗いて先生の側までいく。
「先生。じゃあ、ボクはそろそろ帰りますね」
「帰っちゃうの......?」
さっきよりも熱が上がっているのか、やや虚ろな目で、ボクの服の裾をつかんできた。
「えっっ......」
だけど、ボクの驚いた顔を見てハッとして「うそうそ。もう大丈夫だから、ホントありがとう」と一気にいつもの先生の顔に戻る。
一瞬垣間見れた、心細そうに甘える先生を残して帰るのは忍びなくて、何か理由を探す。
「あ、先生、この本持ってるんですね。ボクすごく読みたかったんですよ。静かにしてますから、ちょっとだけ読んでいってもいいですか」
とっさにそう言うと、本棚から1冊の本を抜き取り、先生の返事を待たず椅子に座って読み始める。
「ありがとう......」
そう聞こえた気がしたけど、どんな顔して先生の方を向いたらいいのかわからなくて、聞こえなかったフリをして本に集中することにした。
〝ピンポーン〟と鳴ってから、ややしばらく間がある。泰輔さんは、寝てるかもしれないから、反応がなかったら何度かインターホンを鳴らしてみてと言っていた。再度、鳴らそうかと手を伸ばした時「え?!まっ……真野?」とビックリした奥田先生の声が聞こえてきた。
泰輔さんの頼みごとは、風邪をひいて寝込んでいる先生にご飯を届けることだった。先生は、風邪をひいて熱を出すことがよくあるらしく、その都度泰輔さんに、買い出しやご飯SOSが入って、お店の合間や終わった後に届けているようだ。
今日は泰輔さんも定休日で休みなのに......もしかしたら、お茶に誘われたのも、この為だったんじゃないかと思ってしまう。だけど、先生のことが心配で、泰輔さんお手製の野菜スープとかポカリとかアイスとかを持って、先生のマンションまで来たのだ。
玄関を開けてくれた先生は、パジャマ姿にメガネといつものピシッとしている姿とは違い、ちょっと素の先生に触れられたようでドキドキしてしまう。
「悪かったな……」
先生は玄関先で、物だけ受け取ろうと手を伸ばしたけど、その手を遮るようにボクは話した。
「あ......あの。泰輔さんから、スープを預かって来たんですけど......お粥も作ろうと思ってて......その......お邪魔してもいいですか?」
「えっっ......じゃあ、ちょっと片付けるから......」
「あっ、熱あるのにいいです。嫌だったらここで帰りますから。気を遣わないで下さい」
「......じゃあ、あんまりキレイじゃないけど......どうぞ」
先生はそう言っていたけど、すっきり完璧に片付いている訳ではなかったけど、それなりにキレイだった。
「キッチンはここだから、好きに使っていいよ」
リビングに入ってすぐに左側に、キッチンがあり、リビングへと繋がっている。その他に部屋が1つあって、多分、先生の寝室だ。
「ありがとうございます。先生は、寝ていてください」
先生が寝室に入っていくのを見届けて、持ってきたものを冷蔵庫にしまう。冷蔵庫には、お水とビールと調味料くらいしか入っていなくて、ボクからしたら、どうやって生活しているのか不思議なくらいだ。それでも、調理道具は一通り揃っていて、驚いてしまう。
寝室のドアをノックするが、何も返事がなく「せんせい……?」と小声で呼びながら、そっとドアを開けてみる。部屋の中は、ベットと机と本棚があって、机の上には山積みの本とノートパソコンが置いてあった。机の上の物を少し避けて、お粥とスープを置く。
先生は、眠っていて、ボクが入ってきたことにも気づいていないようだ。せっかく寝ているのに起こすのもな......と思って寝顔を見つめてしまう。
熱......まだあるのかな......と先生の額に手を伸ばしてみる。
ドキドキドキドキ......
寝てるから、大丈夫だよね.....
額に少し触れると、熱が指を伝ってくる。ゆっくり手を乗せてみたとき、先生が目を覚まして目が合う。
「あっ......ごめんなさい」
慌てて手をどけると、手首を掴まれてまた、額まで引き戻されてしまった。
「真野の手、冷たくて気持ちいい......もうちょっと、こうしてて」
ドクドクドクドク......
時間が止まったみたいだったけど、掴まれている手首と額に置いてある手から、どんどん先生の熱が吸収されていくみたいで、熱くなっていく。手だけでなくて、体全体が先生の熱を奪ってるかの様に熱くなっていった。
「せ......先生。お粥できましたけど......食べれますか?」
やっとそう言いえて、先生が体を起こすと、手首も解放された。
「ちょっと、冷めちゃったかもしれないけど......」
「構わないよ。ありがとう。真野の料理が食べれるなんて、風邪もひくもんだね」
「こんなの、料理のうちに入らないです......今度、もっとちゃんとしたの作ります......」
「おっ。これは言質取っちゃったよ。楽しみだなぁ」
洗いものを終えて、あまり長居するのも良くないと思って、帰ろうと再度寝室を覗いて先生の側までいく。
「先生。じゃあ、ボクはそろそろ帰りますね」
「帰っちゃうの......?」
さっきよりも熱が上がっているのか、やや虚ろな目で、ボクの服の裾をつかんできた。
「えっっ......」
だけど、ボクの驚いた顔を見てハッとして「うそうそ。もう大丈夫だから、ホントありがとう」と一気にいつもの先生の顔に戻る。
一瞬垣間見れた、心細そうに甘える先生を残して帰るのは忍びなくて、何か理由を探す。
「あ、先生、この本持ってるんですね。ボクすごく読みたかったんですよ。静かにしてますから、ちょっとだけ読んでいってもいいですか」
とっさにそう言うと、本棚から1冊の本を抜き取り、先生の返事を待たず椅子に座って読み始める。
「ありがとう......」
そう聞こえた気がしたけど、どんな顔して先生の方を向いたらいいのかわからなくて、聞こえなかったフリをして本に集中することにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる