忘れられない思い

yoyo

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キャンプ⑴

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 いつものまんぷく屋に、奥田先生と夕食を食べに来ていた。最近は、週1~2回は、まんぷく屋でご飯を食べている。お店は9時には閉まるけど、そのあとも夕花里さんのコーヒーを飲みながら、泰輔さんや夕花里さんも交えて話をすることが増えた。ボクは夕花里さんのコーヒーにすっかりハマっていて、今日も食後のコーヒーを飲んでいると、片付けを終えた泰輔さんが話しかけてくる。


「お2人さんは、お盆の予定はある?」

 あと、半月ほどでお盆に入り、ボクも5日間仕事は休みだ。特に今のところ、予定はなく首を振ると、どうやら先生も同じようだった。


「それなら、一緒にキャンプはどう?知り合いがコテージのオーナーをやっていてね、割安で貸してくれるって言うからさ。ちょっと遠いけど、レンタカー借りてどう?」

 まんぷく屋もお盆の時期はお休みで、毎年、夕花里さんと旅行に行っているらしい。今年は、キャンプがいいとなって、キャンプなら大勢の方が楽しめるということになったようだ。


「へぇ~。いいですね。もう、何年もキャンプには行ってないです」

「コテージかぁ……。テントより楽だし、いいね」

「お!じゃあ、決まりでいいかい?」


 ボクも先生も二つ返事でOKを出して、今年のお盆はキャンプに行くことが決まった。先生と泊まりで出かけられるなんて……2人きりではないけれど、今からドキドキして、楽しみだ。




 キャンプ当日は、とても良い天気になり、男3人で運転を交代することにして出発した。早めに出発したので渋滞にも巻き込まれずスムーズに進む。途中サービスエリアで休憩したり、買い出しの為にスーパーに寄ることにした。
 ボクと泰輔さんは、食材の調達担当になり、野菜売り場で物色していた。

「今日は、何か作るんですか?」

 キャンプといえば、バーベキューのイメージだけど、泰輔さんなら何か他に、料理が出てくるんじゃないかと期待して聞いてみる。

「チキンティッカって知ってる?鶏肉にスパイスを揉み込んで、ダッチオーブンで焼き上げるの。まあ、簡単にいうと骨付きじゃない、タンドリーチキンかな」

「タンドリーチキンなら知ってます。て、いうかダッチオーブンあるんですね!!あの鍋は何でも美味しくできちゃいますよね!」

 大学生の頃、友達とキャンプに行って、ダッチオーブンで調理したローストチキンがとても美味しくて感動した。

「おぉ!!ダッチオーブンしってるのか。真野くん!!」

「おい、お前らうるさいよ。他のお客さんに迷惑だろ」

 先生が割って入ってくる。

「あ……ごめんなさい」

 ついテンションが上がって、盛り上がってしまったけど、先生に注意されて、一気にテンションが下がる。


「なんだよ。ダッチオーブンの素晴らしさを真野くんと語ってただけなのにさ。オレが真野くんと仲よく話してたからって、そんな妬かなくてもいいじゃん」

「だっ……誰が妬くかよ!!」


 先生はさっきのボクたちの声より、はるかに大きい声になって、最後には「ほら、早く行くぞ」って捨て台詞を吐いて、足早に行ってしまう。泰輔さんと目が合うと、肩をすくめてニヤニヤ笑っている。泰輔さんは、すぐに先生をからかって楽しんでいるところがあるけど、それはボクの方にも矛先を向けられるから、人ごとではない……

 スーパーからキャンプ場までの20分程の距離は、ボクが運転席へと座り、助手席には先生が座った。

「さっきは……すみませんでした」

 ボクは隣の先生に声をかける。

「あ…。いや……別に怒ってたわけでは…」

 先生は、バツが悪そうに尻すぼみで答える。

「キャンプなんて久しぶりだし、それにみんなで出かけるのが嬉しくて、ちょっとテンション高いのかもしれません」

「それはオレもだよ」

 そう言うと先生は笑い、その顔を見てボクもホッとする。
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