忘れられない思い

yoyo

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キャンプ⑶

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 料理の下準備もでき、ビールで乾杯する。こんな明るいうちから飲むのは、背徳感があったけど、乾いた喉に冷たいビールは物凄く美味しい。さっき火をつけた炭火で、お肉や野菜を焼いたり、アルミのお皿にチーズを入れて網の上で溶かす、チーズフォンデュも泰輔さんは用意していた。


「キャンプでチーズフォンデュが食べれるとは思わなかったです」

「今回は、真野くんがいたから準備が早くできたよ。夜はダッチオーブンで、チキンティッカを作るから楽しみにしててよー」

   けっこうお腹はいっぱいだったけど、泰輔さんにそう言われて、ゴクッと唾を飲み込んでしまう。


「よし、じゃあ真野。晩飯のためにも、ちょっと散歩でも行くか」

「おー行ってこい、行ってこい。ちょっと行くと川もあるし、森の散策道もあるし楽しめると思うよ」

「泰輔さん達は行かないんですか?」

「んー。動きたくね~。ここでまったりしてるわ」






   泰輔さんが言っていたように、少し歩くと水が流れる音と子ども達がはしゃぐ声が聞こえてきて、流れが緩やかな川が見えた。川は浅いようで、子ども達が中に入って遊んでいる。ボクも子ども達に混じって川に近づき、手を入れてみると、とっても冷たくて気持ちがいい。水も澄んでいて、チラホラと魚の姿も見える。

「おぉー、気持ちい……」

   先生もすぐ隣に来て、川に手を入れていた。


   パシャ……


   突然、顔に水しぶきが飛んでくる。

「つめたっ……」

「あはっ」

   先生は、いたずらっ子のように笑って、ボクの顔に軽く水をかけてくる。


「もう。何するんですか」

   そう言ってやり返そうとすると、サッと逃げられる。先生とご飯を食べるようになって、意外にも先生はこういう子どもっぽいいたずらをすることがわかった。


「もう!!」

   ボクは屈んで、さっきよりも多く水をすくい、先生にかけようとしたとき、後ろにドンっと何かが思いっきりぶつかって来た。もともと足場が悪かったこともあり、思いっきり態勢を崩してしまう。


「真野!!」

   先生が支えようとしてくれたようだけど、先生も川の砂利に足を取られて、そのまま2人で倒れこむ。


   バチャン!!


   ボクは先生に覆いかぶさる形になり、ボクの顔と先生の胸との距離が10㎝ほどだ。


「ぃっ…た……」

「うわっ。ごめんなさい」


   慌てて、先生から離れる。明らかに先生の方が、被害が大きく、川に思いっきり尻餅をついている形になっているため、先生のハーフパンツはべっちゃり濡れている。


「あーあ。やばいなこれ……。パンツまでぐっしょりだ」

「先生、つかまって!」

   ボクは咄嗟に、先生に手を伸ばして引っ張り上げた。先生は起き上がると、今度は、掴んでいたボクの手を引っ張り引き寄せる。


「大丈夫だから……。だからそんな顔するな」


   え…え…え…え……


   先生の声が耳元で聞こえてくる。
   ボク、そんな変な顔してたかな。
   でもでも、これは反則だー。


   ドキドキドキドキ……



「ご……ごめんなさい……」

   か細い子どもの声に、スッと何事もなかったかのように先生は離れる。小学生くらいの男の子が、オロオロとした顔で謝っている。どうやら、先ほどの衝撃はこの子がぶつかって来たようだった。


「あぁ、大丈夫だ。ただ!今度からはちゃんと周りを見ながら走るんだぞ」

「はい……ごめんなさい」

「このまま戻ると泰輔に何を言われるか、わからんからな。ちょっと休んで乾かしていくか」

   そう言うと、少し大きめな石の上に座り始める。

「真野にちょっといたずらしだけなのに、倍以上になって返ってきたな」

   先生は笑って、隣に座るように隣の石を指差した。
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