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辺境の地で
アランside決意
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前回のアンドレ様への指南は、アンドレ様がローレンス様とそれなりの経験を済ませていた事もあって思いの外進んだ。しかもマリーの指南で、アンドレ様は後ろを使用することにもそんなに抵抗がない様に思える。
とは言え、私の股間を見る度に眉を顰めるところを見ると、最後まで指南を受けることを迷っているのが感じられた。
一方の私は、アンドレ様の思いもしない色っぽさを脳裏に刻まれたせいで落ち着かない日々を過ごしていた。そのせいもあって欲を吐き出す騎士仲間に絶倫ぶりを驚かれた程だ。
私がアンドレ様の指南役をしているのは秘密になっているので、騎士達も詮索して来る訳ではない。けれども仲間が集まれば兎角その手の話になるのは否めない。
「訓練中にアンドレ様が見学にいらっしゃってたろう?久しぶりに見かけたが、随分と大人びて、しかも美しさはますます輝くばかりで驚いた。」
1人がそう言えば、そばに居た騎士もニヤリと笑って頷いた。
「ああそうだな。見習い達を見ていた様だが好みの奴でもいたのか?あの方だったら、男でも望まれればお相手するだろう?」
私はアンドレ様がその手の話のネタになるのは気に入らなかったので、彼らをジロリと睨みつけて咳払いした。彼らは私を見ると肩をすくめて、最近街で人気の娼婦の話に移った。
彼らの夜の武勇伝を聞くともなしに聞きながら、私の方が彼らより何倍もアンドレ様に酷い想像をしていると苦笑した。そう、私はアンドレ様を自分のものにしたいのだ。
身分差もあり決して手に入る方ではないけれど、アンドレ様の初めてのお相手になる絶好の機会を手に入れたのだから、この幸運を逃す事はない。誰もが初めての相手が記憶にある様に、アンドレ様の記憶に私を刻むのだと密かに決意していた。
「アンドレ様、もう湯浴みはお済みでしたか。」
部屋に充満するアンドレ様の好む柑橘系の香りを感じて深呼吸すると、緩んだガウン姿のアンドレ様は裾から腿の上の方が見えているのも気づかずに微笑んで言った。
「まだ髪が濡れているけどね。アラン、乾かしてくれる?」
そんな風に私に甘えて来るのは、閨の指南で他人に見せない一面を見せ合ったせいだと密かに喜びながら、私は椅子に座ったアンドレ様の後ろに立った。
濡れて色が濃くなった金髪の巻毛を絡まない様に乾かすのは少しコツがいる。以前の愛人の一人が巻毛だったせいで、私は無意識に手を動かして居た。
「アランは、僕の髪を上手に乾かすね。この髪結構扱いが難しいのに。僕もバトラにしょっちゅう手直しされてるくらいだ。」
そう鏡の中から私を見上げるアンドレ様は屈託なく笑いかける。そこには何の嫉妬めいた感情もなくて、私は密かにガッカリしてしまった。
けれど柔らかな巻毛を指先で巻き付けながら布で水気を吸い取って行くと、みるみる美しい艶を伴って首に沿っていく。
「今までになく長くなりましたね。伸ばしているのですか?」
ほどほどに乾いた髪をふんわりと拡げるともう少しで肩につきそうだ。アンドレ様は以前から自分の金髪をあまり好きではない様で、貴族の令息の中では短めの耳下で整えるのが常だったので、それはちょっとした変化だった。
しばらく黙って居たアンドレ様は歯切れ悪く話し出した。
「…何となく。今までこの髪が皆と違いすぎるのが嫌だったんだけど、最近はこれも僕の武器になるって気付いたんだ。姑息な手段かもしれないけれどね。アランもこの髪好きでしょう?」
私は鏡越しにアンドレ様と目を合わせて、指先で髪を耳に掛けるとゆっくり首筋を撫で下ろしながら答えた。
「私はこの髪が好きなのではなくて、アンドレ様の髪だから好ましく思うのですよ。もっともアンドレ様の髪は辺境伯夫人譲りで、稀に見る美しい金髪だとは思いますが。」
私の指先を目で追いながら、アンドレ様はボソリと呟いた。
「…今夜の指南はどこまでする予定?正直アランの持ち物は大きくて、僕が受け入れるのは難しい気がしてるんだ。出来ると思う?」
突然アンドレ様からそう振られて、指先がピクリと蠢いた。私は心臓がバクバク鳴るのを感じながら、とりわけ落ち着いた声を出す様に意識しながら囁いた。
「では、アンドレ様が受け入れられそうだったら最後までしてみましょうか。無理でしたら途中で止めましょう。それでいかがですか?」
少し上気したアンドレ様の首筋がドクドク脈打つのを感じて安心させる様に微笑むと、アンドレ様を立たせてベッドまで手を引いて行った。
ここ一年程で身長もぐっと伸びたアンドレ様は、今や私の肩に届く程だ。これからもっと背は高くなるのかもしれないと、そのすんなりした身体をガウンの上から確かめるように撫で下ろした。
その動きに小さく甘いため息をついてから、アンドレ様は私を上目遣いで見つめた。
「…アランもお湯を使って来たんでしょう?もう始めない?」
ランプの灯りのせいか、明るい緑色に見える瞳を光らせたアンドレ様の唇がそう動くのを、私は魅入られたように見下ろしていた。ああ、アンドレ様に挿れて欲しいと強請られる様に、私の持てる手管を全て出し切らなくては。
とは言え、私の股間を見る度に眉を顰めるところを見ると、最後まで指南を受けることを迷っているのが感じられた。
一方の私は、アンドレ様の思いもしない色っぽさを脳裏に刻まれたせいで落ち着かない日々を過ごしていた。そのせいもあって欲を吐き出す騎士仲間に絶倫ぶりを驚かれた程だ。
私がアンドレ様の指南役をしているのは秘密になっているので、騎士達も詮索して来る訳ではない。けれども仲間が集まれば兎角その手の話になるのは否めない。
「訓練中にアンドレ様が見学にいらっしゃってたろう?久しぶりに見かけたが、随分と大人びて、しかも美しさはますます輝くばかりで驚いた。」
1人がそう言えば、そばに居た騎士もニヤリと笑って頷いた。
「ああそうだな。見習い達を見ていた様だが好みの奴でもいたのか?あの方だったら、男でも望まれればお相手するだろう?」
私はアンドレ様がその手の話のネタになるのは気に入らなかったので、彼らをジロリと睨みつけて咳払いした。彼らは私を見ると肩をすくめて、最近街で人気の娼婦の話に移った。
彼らの夜の武勇伝を聞くともなしに聞きながら、私の方が彼らより何倍もアンドレ様に酷い想像をしていると苦笑した。そう、私はアンドレ様を自分のものにしたいのだ。
身分差もあり決して手に入る方ではないけれど、アンドレ様の初めてのお相手になる絶好の機会を手に入れたのだから、この幸運を逃す事はない。誰もが初めての相手が記憶にある様に、アンドレ様の記憶に私を刻むのだと密かに決意していた。
「アンドレ様、もう湯浴みはお済みでしたか。」
部屋に充満するアンドレ様の好む柑橘系の香りを感じて深呼吸すると、緩んだガウン姿のアンドレ様は裾から腿の上の方が見えているのも気づかずに微笑んで言った。
「まだ髪が濡れているけどね。アラン、乾かしてくれる?」
そんな風に私に甘えて来るのは、閨の指南で他人に見せない一面を見せ合ったせいだと密かに喜びながら、私は椅子に座ったアンドレ様の後ろに立った。
濡れて色が濃くなった金髪の巻毛を絡まない様に乾かすのは少しコツがいる。以前の愛人の一人が巻毛だったせいで、私は無意識に手を動かして居た。
「アランは、僕の髪を上手に乾かすね。この髪結構扱いが難しいのに。僕もバトラにしょっちゅう手直しされてるくらいだ。」
そう鏡の中から私を見上げるアンドレ様は屈託なく笑いかける。そこには何の嫉妬めいた感情もなくて、私は密かにガッカリしてしまった。
けれど柔らかな巻毛を指先で巻き付けながら布で水気を吸い取って行くと、みるみる美しい艶を伴って首に沿っていく。
「今までになく長くなりましたね。伸ばしているのですか?」
ほどほどに乾いた髪をふんわりと拡げるともう少しで肩につきそうだ。アンドレ様は以前から自分の金髪をあまり好きではない様で、貴族の令息の中では短めの耳下で整えるのが常だったので、それはちょっとした変化だった。
しばらく黙って居たアンドレ様は歯切れ悪く話し出した。
「…何となく。今までこの髪が皆と違いすぎるのが嫌だったんだけど、最近はこれも僕の武器になるって気付いたんだ。姑息な手段かもしれないけれどね。アランもこの髪好きでしょう?」
私は鏡越しにアンドレ様と目を合わせて、指先で髪を耳に掛けるとゆっくり首筋を撫で下ろしながら答えた。
「私はこの髪が好きなのではなくて、アンドレ様の髪だから好ましく思うのですよ。もっともアンドレ様の髪は辺境伯夫人譲りで、稀に見る美しい金髪だとは思いますが。」
私の指先を目で追いながら、アンドレ様はボソリと呟いた。
「…今夜の指南はどこまでする予定?正直アランの持ち物は大きくて、僕が受け入れるのは難しい気がしてるんだ。出来ると思う?」
突然アンドレ様からそう振られて、指先がピクリと蠢いた。私は心臓がバクバク鳴るのを感じながら、とりわけ落ち着いた声を出す様に意識しながら囁いた。
「では、アンドレ様が受け入れられそうだったら最後までしてみましょうか。無理でしたら途中で止めましょう。それでいかがですか?」
少し上気したアンドレ様の首筋がドクドク脈打つのを感じて安心させる様に微笑むと、アンドレ様を立たせてベッドまで手を引いて行った。
ここ一年程で身長もぐっと伸びたアンドレ様は、今や私の肩に届く程だ。これからもっと背は高くなるのかもしれないと、そのすんなりした身体をガウンの上から確かめるように撫で下ろした。
その動きに小さく甘いため息をついてから、アンドレ様は私を上目遣いで見つめた。
「…アランもお湯を使って来たんでしょう?もう始めない?」
ランプの灯りのせいか、明るい緑色に見える瞳を光らせたアンドレ様の唇がそう動くのを、私は魅入られたように見下ろしていた。ああ、アンドレ様に挿れて欲しいと強請られる様に、私の持てる手管を全て出し切らなくては。
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