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不可思議カフェ百鬼夜行の業務日誌・2【短編集】
異変と月蝕
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「今夜は月蝕が起こるが、身体に異変はないかね?」
最後の客がこの喫茶店から出て行ったタイミングで、不意に店長が声を掛けてきた。
「異変は起こらねえな。そういう類の怪異ではないんで」
珍しい心配事だと思いながら俺は返す。
「直接的な影響が出るタイプでなくとも、間接的に影響を受ける者もいるからね」
「まあ、満月で乱される怪異もいるから、月蝕ともなれば特別な変化が見られるもんもいるだろうな」
そう応えて、俺はテーブルの片づけに戻る。
「で、そういう店長はなんか変化はあるのか?」
店長がなんの怪異なのかはよく知らない。怪異や都市伝説に興味があって、奇妙な噂話を集めているのは知っているが、それだけだ。興味があるからそうしているのか、はたまた自身の存在に直結する理由があるのか、その辺のことも詳しくはなかった。
俺が尋ねると、店長のまるい眼鏡が光る。
「僕自身にはないが、僕の近くではまあまあ影響があるみたいでね」
「何か協力したほうがいいことでもあるなら、言ってくれて構わねえぞ」
期待はされていないだろうが、できることがあるなら手を貸したい。俺には店長に返す恩がある。
「いや、今日はないよ」
「……そうか」
この話の流れなら誘われると思ったのだが、俺の勘違いだったらしい。がっかりしたことは内緒だ。
「ただ、帰り道は気をつけて。月蝕は日付が変わったあとだから、家に入ってしまえば問題ないはずだ。寄り道はしないように」
「了解」
「できれば、今夜は振り向かないほうがいい」
「ん? 月に関係した何か、か?」
俺が店長を見やると、彼は長い指を唇にそっと当てて首を横に振った。
「ふふ。どうだろう」
「……なんの忠告なんだよ」
「不貞腐れないでくれ。余計なものに魅入られないおまじないのようなものだ。獅子野くんは僕だけに魅入られていればそれで充分だからね」
「ほかのもんに目移りしたりしねえよ」
なんの心配をしているんだとため息をついて、俺は仕事に戻るのだった。
《終わり》
最後の客がこの喫茶店から出て行ったタイミングで、不意に店長が声を掛けてきた。
「異変は起こらねえな。そういう類の怪異ではないんで」
珍しい心配事だと思いながら俺は返す。
「直接的な影響が出るタイプでなくとも、間接的に影響を受ける者もいるからね」
「まあ、満月で乱される怪異もいるから、月蝕ともなれば特別な変化が見られるもんもいるだろうな」
そう応えて、俺はテーブルの片づけに戻る。
「で、そういう店長はなんか変化はあるのか?」
店長がなんの怪異なのかはよく知らない。怪異や都市伝説に興味があって、奇妙な噂話を集めているのは知っているが、それだけだ。興味があるからそうしているのか、はたまた自身の存在に直結する理由があるのか、その辺のことも詳しくはなかった。
俺が尋ねると、店長のまるい眼鏡が光る。
「僕自身にはないが、僕の近くではまあまあ影響があるみたいでね」
「何か協力したほうがいいことでもあるなら、言ってくれて構わねえぞ」
期待はされていないだろうが、できることがあるなら手を貸したい。俺には店長に返す恩がある。
「いや、今日はないよ」
「……そうか」
この話の流れなら誘われると思ったのだが、俺の勘違いだったらしい。がっかりしたことは内緒だ。
「ただ、帰り道は気をつけて。月蝕は日付が変わったあとだから、家に入ってしまえば問題ないはずだ。寄り道はしないように」
「了解」
「できれば、今夜は振り向かないほうがいい」
「ん? 月に関係した何か、か?」
俺が店長を見やると、彼は長い指を唇にそっと当てて首を横に振った。
「ふふ。どうだろう」
「……なんの忠告なんだよ」
「不貞腐れないでくれ。余計なものに魅入られないおまじないのようなものだ。獅子野くんは僕だけに魅入られていればそれで充分だからね」
「ほかのもんに目移りしたりしねえよ」
なんの心配をしているんだとため息をついて、俺は仕事に戻るのだった。
《終わり》
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