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夜桜・不可思議カフェ百鬼夜行の業務“外”日誌
桜吹雪
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買い出しに行かないと朝食になるようなものはないだろうと高を括っていた。昨夜だってカフェ百鬼夜行から作って持ってきたものを中心に夕食をしたので、食材になるようなものはこの部屋に持ち運んでいない。
なので俺は食材の調達に出るつもりでいたが、店長が向かったのはパントリーだった。
居室としても使えそうな広さのパントリーには、水の入ったペットボトルや缶詰、乾物などが見やすく収納されている。一人で生活するとしたら、ゆうに一ヶ月は保ちそうな量だ。
「君はどのくらい食べるかな?」
「そうだな……」
昨夜のお酒はしっかりと抜けているので、比較的食欲はあるほうだ。だが、少し悩ましい。
俺が返答に迷っていると、店長は言葉を続ける。
「食欲があるなら、多めに作ってブランチにしてしまおうと思うのだが」
さっき時計を見たら九時前だった。朝食にしては遅い時間だし、昼食ならば早すぎる時間である。休みでもないのに、すっかり寝坊してしまったらしかった。
「メニュー次第だな」
「ふむ。……ならば」
口元に軽く握った手を当てて考え込みながら、店長はパントリーの中を歩く。乾物の棚からスパゲッティーを取り出し、缶詰の棚からトマト缶とミックスビーンズ缶を取り出した。
「トマトソースのパスタに、豆のサラダにしようか」
「いいと思う」
俺が頷くと、店長は嬉しそうに笑った。
「では、こちらを運んでもらえるかな?」
「お安い御用だ」
店長から缶とスパゲッティーを受け取って、俺はキッチンに運ぶのだった。
予め考えていたわけではないだろうに、手際よく調理が進んでいく。
俺は指示されたとおりに、サラダ油とお酢と塩胡椒でドレッシングを作って、缶から取り出したミックスビーンズと和える。そこに、レーズンを足して混ぜ合わせてできたのが豆のサラダだ。
「――君はコンビーフよりも鯖のほうが好みかと思ったが、昨夜もサバサンドだったね」
トマト缶をフライパンにあけて水を足し、サラダ油を大さじ一ほどさす。そこにスパゲッティを入れて火にかける。火加減は中火だ。
流れるように動いていた調理が、鯖の水煮缶を手に取ったところで止まってしまった。鯖缶を開ける前に、鯖のメニューが続いてしまったことが引っかかったのだろう。
「三食鯖が出ても俺は構わねえよ」
「じゃあ期限も近いようだし鯖を使おうか」
鯖の水煮を温まり始めたトマトスープの中に入れて軽く混ぜる。やがてグツグツと沸いてきた。スープを吸わせながらパスタを茹でるようだ。
「店長は料理が得意だよな」
保存食を見てメニューを決めたとは思えない手際のよさだ。調理器具や調味料を把握したうえで、食材を見てすぐに作るものを決められるのは一種の才能だと思っている。
よく考えてみれば、カフェ百鬼夜行には固定のメニューがない。ドリンクメニューはほぼ固定と言えるだろうが、モーニングもランチも日替わりとは名ばかりなシェフの気まぐれメニューである。どうも仕入れ先からお得な食材を聞いて購入しているようで、その時々、季節に応じたメニューが登場するらしかった。
「どうかな。興味があって作っているうちに習得しただけなのだが」
「興味、か。食事が必須というわけでもないんだろ?」
店長の様子を見ていると、肉体を維持するのに食事を必要としていないのではないかと思えた。昼休みに食事をしているのを見たことがなく、彼が口にするのは水分ばかりだ。
「そうだね。僕は邪気や妖気、神気などと呼ばれている物を定期的に摂取することができれば、物を食べる必要はない」
「へえ」
俺の指摘のとおりだったらしい。それ以上の情報も思いがけず得られて、俺はちょっと驚いた。
店長は人差し指だけ立てて、自身の口元にそっと当てた。
「怪異を祓う行為も、食事の延長にある」
「その話、してもいいやつなのか?」
内緒だとでも言いたげな彼の仕草に、俺は緊張する。
ふだんから俺の問いにはなんかしらの返答を用意してくれる店長ではあるのだが、今日はとりわけ饒舌だ。こちらがお喋りのしすぎなのではないかと不安になるくらいに。
俺の気持ちを知ってか知らずか、店長はウインクを飛ばしてくる。
「隠していたら君の信用を得られないだろう?」
「まあ、な」
ほどほどの距離感を保つためにも、お互いのことに踏み込みすぎないようにと俺は注意を払ってきたつもりなのだが。
昨日よりも、距離を縮めてもいいのだろうか。
あまり期待させないでほしい。
彼の手がフライパンと菜箸に戻る。フライパンを軽く揺すって焦げつきがないことを確認しているらしい。
「――僕を僕として維持していくのには、獅子野くんの協力が必要だ」
本当に?
俺は言葉どおりには受け取れなくて、小さく舌打ちをした。
「俺よりも都合のいい相手ができたら乗り換えんだろ?」
「数十年先の話をされても」
「俺の寿命がそのくらいってことか?」
「僕の見立てではね」
「ふぅん……」
水分量が減ってくる。そのタイミングでハーブの入った特製塩をかけて味を調整する。パスタを一本取り出して店長は口に含む。様子を見るに、納得の味のようだ。
「君が猫舌じゃなければここで味見をしてもらうところなんだが」
「悪かったな」
「体質だから仕方がないよ。次の夏は冷製パスタのバリエーションを増やしてみようか」
出来上がったパスタをお皿に取り分ける。いい匂いがする。美味しそうだ。
「さあ、食べようか」
「運ぶぞ」
食事は不要だから俺のために作ったと言いながら、店長の分もちゃんと用意されている。
俺は二つの皿を持ってダイニングに向かう。
「いただきます」
鯖とトマトのパスタをテーブルに置くと、店長が水の入ったグラスとカトラリーを並べてくれた。向かい合って座り、食事がはじまる。
「……美味しい」
「熱くはないかい?」
「このくらいなら」
思ったよりもニンニクの味が強い。特製塩の中に入っていたのだろうか。
「君の口にあったようでなによりだ」
店長もパスタを口にする。うねった長い黒髪を押さえて食べる仕草にときめいてしまう自分に戸惑った。料理している姿にときめくほうがまだ納得できるのだが。
ああ、そっか。店長が料理している姿は俺にとっては日常なんだよな。
俺が見つめていることに気づいたのか、店長は首を傾げた。
「おや、ソースがはねてしまったかな?」
「あ、いや。確かにこの料理、シミになりそうだが……」
店長はエプロンをしたまま食べているが、俺は寝間着のままだ。真っ白なそのシャツは、トマトソースの餌食になりやすいだろう。
「そのときはそのときだ。気にせず食べたまえ」
「おう」
はねることを気にせず、自分なりに上品さを意識して食べる。熱いこともあってがっついて食べることはない。落ち着いて食べれば問題はないのだが。
「――こちらの生活は長いようだね」
「まあな」
「これまで就いた職業について詳細を聞いたことはなかったが、その様子だと多岐にわたるようだ」
店長の問いに俺は頷く。
「ああ。表に出ない仕事を選んでいたとはいえ、外見年齢が変わらねえからな。長期間働くことが困難で」
十年程度はごまかせなくはないが、幼く見られがちなことから不要な嫉妬を向けられることも多く、数年で転職を繰り返していた。店長に拾われる前に働いていた不動産屋が一番長く勤めていたような気がする。履歴書はいつも一つ前の職業しか記入してこなかったので、もう職歴の詳細は思い出せない。
「今の世は情報を共有されやすくて困ってしまうね」
豆のサラダを食べる。簡単に作れたものなのに美味しい。
俺は店長を見やる。
「店長は美人だから、余計に困るだろう?」
「美人かどうかは僕にはわからないが、記憶に残り過ぎないように術を使う努力はしているね」
「前にそう説明していたな」
怪異に取り憑かれた人間はカフェ百鬼夜行に引き寄せられるが、その怪異を祓ってしまえばカフェでの出来事は記憶に残らない。
常連は憑かれやすい体質の人間だったり、そもそも怪異である連中なのだ。
店長がすっと目を細める。
「だから、君がもう一度訪ねてきた時、君には僕の術が効きにくいのだろうと判断した」
「あー」
ここで種明かしされるとは思わなかった。
俺はあのとき、選ばれたのだ。
「僕の術は怪異にも有効だ。相性はあるが、概ね効く」
「ふぅん」
「術が効かない相手は厄介だからね」
相性の悪い相手を敵にまわしたくないのだろう。
ひょっとしたら店長は何かに追われているのだろうか――と新たな疑問が湧くが、今は聞くタイミングではない。
俺は話を続ける。
「なるほど、俺を手元に置いて監視したいわけだ」
「監視というよりも、僕は単純に興味が湧いた」
「自分の弱点を潰すため、が正しいか」
「そうだね」
はぐらかされると思ったのに、店長は隠すことなく頷いた。
俺は水を飲む。
「で、結論は?」
「僕が君に好意を抱いているのは間違いなさそうだ」
噴き出しそうになって、俺は少し咽せた。
「……食ってるときに言うなよ」
「聞いたのは獅子野くんだろう?」
心外だという顔をされた。こっちこそ心外である。
「好意……愛情というものかな。君に料理を振る舞い、ともに食べるのはなかなか心躍る行為だね」
「そうかよ」
なんか照れる。
俺はパスタをフォークの先に巻きつけながら耳を傾ける。
「それまでは興味がなかったんだ、料理をすること自体には」
「カフェの料理人を兼ねているのに?」
意外だった。
店長は頷く。
「ああ。客は美味しいと言ってくれるからそれでいいと割り切っていたが、その程度さ。レシピには興味があったものの、僕には食べる習慣がなかったからね」
「ふぅん……」
「君は本当に美味しそうに食べる」
「そうかよ」
食べるのは好きである。未知の食べ物に挑戦するのは気がひけるが、美味しいと誰かが紹介したものはできるだけ食べておくように決めていた。熱いものが苦手だと知ったのも、いろいろと食べてみた結果である。
うっとりとした視線を向けられて、俺はあることに気づく。
「おい。俺が肥えるのを期待しているのだとしたら、無意味だぞ。体質というか、これ、呪いに近いから」
「そのようだね。朝の君の姿を見て納得したよ」
「あれも本当の姿というわけじゃねえんだけどな」
うっかり猫の姿を晒すことになったが、一緒にいたタイミングでよかったのかもしれない。猫の姿のままでは携帯電話で連絡を取ることは困難だったからだ。
俺が返すと、店長のまるい眼鏡が光った。
「そうだね。君は猫ではないのだから当然だ」
やっと俺が猫ではないと理解してくれたらしかった。なにかあるたびに店長から猫扱いされていたが、認識を改めてくれたようで安堵する。
俺は猫ではないのだ。
「説明が面倒で猫みたいなものってことにしているけどな」
「獅子野くんの定義も複雑なようで、そこも僕は好ましく思っている」
「ひょっとすると、そういう部分が俺の耐性に関係しているのかもな」
「実に興味深いよ」
うっとりとした目で俺を見ないでほしい。勘違いを起こすぞ。
「さて、食事が済んだらカフェに出るかな。君の耳と尻尾は消えかかっているようだからね」
「了解」
シャツを汚すのを阻止して、俺は無事に食べ終えたのだった。
俺は一度家に帰ることにした。着替えたかったのだ。
風が強く吹く。中心を赤く染めた桜の花から順に風に乗ってひらひらと舞う。
「――散るのは一瞬だね」
途中までは一緒に行こうと言われて、別に断る理由もなかったから店長が隣にいる。桜の花びらが彼のインバネスコートに柄を添えた。
「美しい時間が短いから好まれるんじゃねえの?」
「今年の桜は盛りが長かったよ」
「それはそうだな」
店長の癖のある長い髪に桜の花びらが乗ったので、俺はさっと手で取ってふぅっと飛ばす。飛ばした桜の花びらはすぐに他の花びらに紛れて判別がつかなくなった。
「ふふ。ありがとう」
「このまま歩いていたら、桜まみれになりそうだな」
すでに体のあちこちに花びらがついて、店長が桜柄になりつつある。濃紺のインバネスコートに淡い色の花びらは目立つのだ。
「僕の服も髪も桜がつくと目立ってしまうね」
「さながら、夜桜だ」
俺が例えると、店長は穏やかに微笑んだ。
「君と一晩過ごせてよかったよ」
「誤解を生みそうな発言はやめろ」
「誰も聞いていないさ」
公園は昨夜と違って、小さな子どもを連れた女性や学生らしき人たちで賑わっている。男ふたりで歩く俺たちは浮いているだろう。
俺は小さく舌打ちをした。
「……からかってくれるな」
「僕は君のことをもっと知りたいと思っているよ」
「観察対象としてだろ」
「そういう面もあるが、君が想定するような関係もやぶさかではない」
「朝のことは忘れろ」
迫ったのは悪かったと思っている。百目鬼店長が大人の対応をしてくれたことについては感謝こそすれ、恨んではいない。
「僕は獅子野くんが好きだよ」
「なんで外で言うんだよ」
顔が熱い。どんな顔をすればいいのかわからなくて、俺はそっぽを向いた。これは発情期のせいだ。
「告白をするなら、桜の木の下かと」
「なんの話だよ」
「シチュエーションの話さ」
店長のいう『好き』は恋愛や性愛を含むものなのだろうか。
百目鬼店長がどんな怪異なのかもわからないために、人間や動物が持つ繁殖を目的とした行動を彼が理解しているのかわからないのだ。
「とにかく、それ、ユリさんの前で言うな。ぜってえ誤解されるヤツだから」
「誤解もなにも、僕らは相思相愛だと思うのだが、違ったのかね?」
「…………っ」
うまい言葉が浮かばなくて、俺は口をパクパクさせた。
店長は俺の前に回り込んで、俺の顔を覗き込む。
「否定できないのだろう?」
「う、うるせえ」
店長なりに気持ちを伝えておきたかったのだろう。それゆえに、好きだ、なんて言葉を口にする。
店長の言ったことは図星だ。明確に否定する言葉はない。だって、店長が好きだなんて言うから。
「……だいたい、どっちも正常な状態じゃねえんだから、ノーカンだろ」
「君がそうしたいと言うなら、ノーカウントにしておこう」
どうして寂しそうな顔をするんだよ。
離れていく店長になにも言えなくて、俺は雑に頭を掻く。話題を変えよう。
「――店長は家には帰らないのか?」
「真っ直ぐに店に向かうよ。彼女に任せきりにはできないからね」
「そうか」
「獅子野くんは休むかい?」
「いや――」
俺は尻のポケットに入れていたスマホの待ち受けを見て時刻を確認する。おおよそ十時半。
「――ランチには間に合わねえけど、そのあとには顔を出す」
ユリさんに俺の仕事を押し付けるのは気が引ける。彼女に借りは作りたくない。
「そう。無理をするものではないからね。体調が悪くなったら連絡を入れるといい」
「そっちは?」
本調子じゃないのは俺だけじゃなく店長もだ。俺がすかさず問えば、安心させるような笑みを俺に向けた。
「彼女には丸一日いるように伝えてある。僕に何かあったら君に連絡がいくように手配したから、心配はいらないさ」
「お、おう。了解したが、店長も無理してくれるなよ」
「獅子野くんは優しいね」
そう告げて、店長は俺の頭を撫でる。優しく、丁寧に。
と。なにかの術が発動した。
店長の手が離れていく。
「んんん?」
「君を守るおまじないだ。余計なモノを惹き憑けるといけないからね」
俺の全身に店長の気配が乗っている。今の俺の体調的に、こういうのはちょっとまずいのだが。
たぶん、他意はねえんだろうな……。
店長は素だから困る。
「これ、マーキングみたいなもんだろ?」
「獅子野くんは僕のモノだから手をつけたら許さない、という威嚇を込めたモノだ」
「うわぁ……」
想定外である。独占欲強めなのか。
店長はうっとりと笑う。
「もっと君が望むような術を掛けてやりたかったのだけど、僕も不安定だろう? 心が乱れるとうまく発動できないからね。僕の素直な気持ちを込めさせてもらったよ」
「俺は術を扱える怪異じゃねえからその辺のことは感覚でしかわからねえけど……効いている感じはあるからこれ以上は突っ込まねえよ」
桜の花びらが俺にくっついてこないあたりに、店長の嫉妬深さを察してしまう。とんでもない相手に惚れてしまったのだと理解して、俺が想像していた以上に彼に好かれていたことをこうして見せつけられるハメになってなんとも言えない。
喜んだり浮かれたりするところなのだろうか、こういうときって。
妙に冷静になってしまって、それもまた店長の意図なのかもしれないと思った。
「――では、僕は向こうだから。駅に向かうなら君はあっちだろう?」
公園の出入口に着いてしまった。店長が指差す先は駅への近道だ。
「ああ。じゃあ、またあとで」
俺たちは別々の道を進む。ちらりと後方を見たら、店長についていた桜の花びらがひらひらと舞っていた。まるでその場にいたことを示すように。
午後。カフェ百鬼夜行はいつものように賑わっていた。
店長の加護を全身にまとった俺の姿を見てユリさんにいじられた話は、別の業務外日誌に残しておこうと思う。
《終わり》
なので俺は食材の調達に出るつもりでいたが、店長が向かったのはパントリーだった。
居室としても使えそうな広さのパントリーには、水の入ったペットボトルや缶詰、乾物などが見やすく収納されている。一人で生活するとしたら、ゆうに一ヶ月は保ちそうな量だ。
「君はどのくらい食べるかな?」
「そうだな……」
昨夜のお酒はしっかりと抜けているので、比較的食欲はあるほうだ。だが、少し悩ましい。
俺が返答に迷っていると、店長は言葉を続ける。
「食欲があるなら、多めに作ってブランチにしてしまおうと思うのだが」
さっき時計を見たら九時前だった。朝食にしては遅い時間だし、昼食ならば早すぎる時間である。休みでもないのに、すっかり寝坊してしまったらしかった。
「メニュー次第だな」
「ふむ。……ならば」
口元に軽く握った手を当てて考え込みながら、店長はパントリーの中を歩く。乾物の棚からスパゲッティーを取り出し、缶詰の棚からトマト缶とミックスビーンズ缶を取り出した。
「トマトソースのパスタに、豆のサラダにしようか」
「いいと思う」
俺が頷くと、店長は嬉しそうに笑った。
「では、こちらを運んでもらえるかな?」
「お安い御用だ」
店長から缶とスパゲッティーを受け取って、俺はキッチンに運ぶのだった。
予め考えていたわけではないだろうに、手際よく調理が進んでいく。
俺は指示されたとおりに、サラダ油とお酢と塩胡椒でドレッシングを作って、缶から取り出したミックスビーンズと和える。そこに、レーズンを足して混ぜ合わせてできたのが豆のサラダだ。
「――君はコンビーフよりも鯖のほうが好みかと思ったが、昨夜もサバサンドだったね」
トマト缶をフライパンにあけて水を足し、サラダ油を大さじ一ほどさす。そこにスパゲッティを入れて火にかける。火加減は中火だ。
流れるように動いていた調理が、鯖の水煮缶を手に取ったところで止まってしまった。鯖缶を開ける前に、鯖のメニューが続いてしまったことが引っかかったのだろう。
「三食鯖が出ても俺は構わねえよ」
「じゃあ期限も近いようだし鯖を使おうか」
鯖の水煮を温まり始めたトマトスープの中に入れて軽く混ぜる。やがてグツグツと沸いてきた。スープを吸わせながらパスタを茹でるようだ。
「店長は料理が得意だよな」
保存食を見てメニューを決めたとは思えない手際のよさだ。調理器具や調味料を把握したうえで、食材を見てすぐに作るものを決められるのは一種の才能だと思っている。
よく考えてみれば、カフェ百鬼夜行には固定のメニューがない。ドリンクメニューはほぼ固定と言えるだろうが、モーニングもランチも日替わりとは名ばかりなシェフの気まぐれメニューである。どうも仕入れ先からお得な食材を聞いて購入しているようで、その時々、季節に応じたメニューが登場するらしかった。
「どうかな。興味があって作っているうちに習得しただけなのだが」
「興味、か。食事が必須というわけでもないんだろ?」
店長の様子を見ていると、肉体を維持するのに食事を必要としていないのではないかと思えた。昼休みに食事をしているのを見たことがなく、彼が口にするのは水分ばかりだ。
「そうだね。僕は邪気や妖気、神気などと呼ばれている物を定期的に摂取することができれば、物を食べる必要はない」
「へえ」
俺の指摘のとおりだったらしい。それ以上の情報も思いがけず得られて、俺はちょっと驚いた。
店長は人差し指だけ立てて、自身の口元にそっと当てた。
「怪異を祓う行為も、食事の延長にある」
「その話、してもいいやつなのか?」
内緒だとでも言いたげな彼の仕草に、俺は緊張する。
ふだんから俺の問いにはなんかしらの返答を用意してくれる店長ではあるのだが、今日はとりわけ饒舌だ。こちらがお喋りのしすぎなのではないかと不安になるくらいに。
俺の気持ちを知ってか知らずか、店長はウインクを飛ばしてくる。
「隠していたら君の信用を得られないだろう?」
「まあ、な」
ほどほどの距離感を保つためにも、お互いのことに踏み込みすぎないようにと俺は注意を払ってきたつもりなのだが。
昨日よりも、距離を縮めてもいいのだろうか。
あまり期待させないでほしい。
彼の手がフライパンと菜箸に戻る。フライパンを軽く揺すって焦げつきがないことを確認しているらしい。
「――僕を僕として維持していくのには、獅子野くんの協力が必要だ」
本当に?
俺は言葉どおりには受け取れなくて、小さく舌打ちをした。
「俺よりも都合のいい相手ができたら乗り換えんだろ?」
「数十年先の話をされても」
「俺の寿命がそのくらいってことか?」
「僕の見立てではね」
「ふぅん……」
水分量が減ってくる。そのタイミングでハーブの入った特製塩をかけて味を調整する。パスタを一本取り出して店長は口に含む。様子を見るに、納得の味のようだ。
「君が猫舌じゃなければここで味見をしてもらうところなんだが」
「悪かったな」
「体質だから仕方がないよ。次の夏は冷製パスタのバリエーションを増やしてみようか」
出来上がったパスタをお皿に取り分ける。いい匂いがする。美味しそうだ。
「さあ、食べようか」
「運ぶぞ」
食事は不要だから俺のために作ったと言いながら、店長の分もちゃんと用意されている。
俺は二つの皿を持ってダイニングに向かう。
「いただきます」
鯖とトマトのパスタをテーブルに置くと、店長が水の入ったグラスとカトラリーを並べてくれた。向かい合って座り、食事がはじまる。
「……美味しい」
「熱くはないかい?」
「このくらいなら」
思ったよりもニンニクの味が強い。特製塩の中に入っていたのだろうか。
「君の口にあったようでなによりだ」
店長もパスタを口にする。うねった長い黒髪を押さえて食べる仕草にときめいてしまう自分に戸惑った。料理している姿にときめくほうがまだ納得できるのだが。
ああ、そっか。店長が料理している姿は俺にとっては日常なんだよな。
俺が見つめていることに気づいたのか、店長は首を傾げた。
「おや、ソースがはねてしまったかな?」
「あ、いや。確かにこの料理、シミになりそうだが……」
店長はエプロンをしたまま食べているが、俺は寝間着のままだ。真っ白なそのシャツは、トマトソースの餌食になりやすいだろう。
「そのときはそのときだ。気にせず食べたまえ」
「おう」
はねることを気にせず、自分なりに上品さを意識して食べる。熱いこともあってがっついて食べることはない。落ち着いて食べれば問題はないのだが。
「――こちらの生活は長いようだね」
「まあな」
「これまで就いた職業について詳細を聞いたことはなかったが、その様子だと多岐にわたるようだ」
店長の問いに俺は頷く。
「ああ。表に出ない仕事を選んでいたとはいえ、外見年齢が変わらねえからな。長期間働くことが困難で」
十年程度はごまかせなくはないが、幼く見られがちなことから不要な嫉妬を向けられることも多く、数年で転職を繰り返していた。店長に拾われる前に働いていた不動産屋が一番長く勤めていたような気がする。履歴書はいつも一つ前の職業しか記入してこなかったので、もう職歴の詳細は思い出せない。
「今の世は情報を共有されやすくて困ってしまうね」
豆のサラダを食べる。簡単に作れたものなのに美味しい。
俺は店長を見やる。
「店長は美人だから、余計に困るだろう?」
「美人かどうかは僕にはわからないが、記憶に残り過ぎないように術を使う努力はしているね」
「前にそう説明していたな」
怪異に取り憑かれた人間はカフェ百鬼夜行に引き寄せられるが、その怪異を祓ってしまえばカフェでの出来事は記憶に残らない。
常連は憑かれやすい体質の人間だったり、そもそも怪異である連中なのだ。
店長がすっと目を細める。
「だから、君がもう一度訪ねてきた時、君には僕の術が効きにくいのだろうと判断した」
「あー」
ここで種明かしされるとは思わなかった。
俺はあのとき、選ばれたのだ。
「僕の術は怪異にも有効だ。相性はあるが、概ね効く」
「ふぅん」
「術が効かない相手は厄介だからね」
相性の悪い相手を敵にまわしたくないのだろう。
ひょっとしたら店長は何かに追われているのだろうか――と新たな疑問が湧くが、今は聞くタイミングではない。
俺は話を続ける。
「なるほど、俺を手元に置いて監視したいわけだ」
「監視というよりも、僕は単純に興味が湧いた」
「自分の弱点を潰すため、が正しいか」
「そうだね」
はぐらかされると思ったのに、店長は隠すことなく頷いた。
俺は水を飲む。
「で、結論は?」
「僕が君に好意を抱いているのは間違いなさそうだ」
噴き出しそうになって、俺は少し咽せた。
「……食ってるときに言うなよ」
「聞いたのは獅子野くんだろう?」
心外だという顔をされた。こっちこそ心外である。
「好意……愛情というものかな。君に料理を振る舞い、ともに食べるのはなかなか心躍る行為だね」
「そうかよ」
なんか照れる。
俺はパスタをフォークの先に巻きつけながら耳を傾ける。
「それまでは興味がなかったんだ、料理をすること自体には」
「カフェの料理人を兼ねているのに?」
意外だった。
店長は頷く。
「ああ。客は美味しいと言ってくれるからそれでいいと割り切っていたが、その程度さ。レシピには興味があったものの、僕には食べる習慣がなかったからね」
「ふぅん……」
「君は本当に美味しそうに食べる」
「そうかよ」
食べるのは好きである。未知の食べ物に挑戦するのは気がひけるが、美味しいと誰かが紹介したものはできるだけ食べておくように決めていた。熱いものが苦手だと知ったのも、いろいろと食べてみた結果である。
うっとりとした視線を向けられて、俺はあることに気づく。
「おい。俺が肥えるのを期待しているのだとしたら、無意味だぞ。体質というか、これ、呪いに近いから」
「そのようだね。朝の君の姿を見て納得したよ」
「あれも本当の姿というわけじゃねえんだけどな」
うっかり猫の姿を晒すことになったが、一緒にいたタイミングでよかったのかもしれない。猫の姿のままでは携帯電話で連絡を取ることは困難だったからだ。
俺が返すと、店長のまるい眼鏡が光った。
「そうだね。君は猫ではないのだから当然だ」
やっと俺が猫ではないと理解してくれたらしかった。なにかあるたびに店長から猫扱いされていたが、認識を改めてくれたようで安堵する。
俺は猫ではないのだ。
「説明が面倒で猫みたいなものってことにしているけどな」
「獅子野くんの定義も複雑なようで、そこも僕は好ましく思っている」
「ひょっとすると、そういう部分が俺の耐性に関係しているのかもな」
「実に興味深いよ」
うっとりとした目で俺を見ないでほしい。勘違いを起こすぞ。
「さて、食事が済んだらカフェに出るかな。君の耳と尻尾は消えかかっているようだからね」
「了解」
シャツを汚すのを阻止して、俺は無事に食べ終えたのだった。
俺は一度家に帰ることにした。着替えたかったのだ。
風が強く吹く。中心を赤く染めた桜の花から順に風に乗ってひらひらと舞う。
「――散るのは一瞬だね」
途中までは一緒に行こうと言われて、別に断る理由もなかったから店長が隣にいる。桜の花びらが彼のインバネスコートに柄を添えた。
「美しい時間が短いから好まれるんじゃねえの?」
「今年の桜は盛りが長かったよ」
「それはそうだな」
店長の癖のある長い髪に桜の花びらが乗ったので、俺はさっと手で取ってふぅっと飛ばす。飛ばした桜の花びらはすぐに他の花びらに紛れて判別がつかなくなった。
「ふふ。ありがとう」
「このまま歩いていたら、桜まみれになりそうだな」
すでに体のあちこちに花びらがついて、店長が桜柄になりつつある。濃紺のインバネスコートに淡い色の花びらは目立つのだ。
「僕の服も髪も桜がつくと目立ってしまうね」
「さながら、夜桜だ」
俺が例えると、店長は穏やかに微笑んだ。
「君と一晩過ごせてよかったよ」
「誤解を生みそうな発言はやめろ」
「誰も聞いていないさ」
公園は昨夜と違って、小さな子どもを連れた女性や学生らしき人たちで賑わっている。男ふたりで歩く俺たちは浮いているだろう。
俺は小さく舌打ちをした。
「……からかってくれるな」
「僕は君のことをもっと知りたいと思っているよ」
「観察対象としてだろ」
「そういう面もあるが、君が想定するような関係もやぶさかではない」
「朝のことは忘れろ」
迫ったのは悪かったと思っている。百目鬼店長が大人の対応をしてくれたことについては感謝こそすれ、恨んではいない。
「僕は獅子野くんが好きだよ」
「なんで外で言うんだよ」
顔が熱い。どんな顔をすればいいのかわからなくて、俺はそっぽを向いた。これは発情期のせいだ。
「告白をするなら、桜の木の下かと」
「なんの話だよ」
「シチュエーションの話さ」
店長のいう『好き』は恋愛や性愛を含むものなのだろうか。
百目鬼店長がどんな怪異なのかもわからないために、人間や動物が持つ繁殖を目的とした行動を彼が理解しているのかわからないのだ。
「とにかく、それ、ユリさんの前で言うな。ぜってえ誤解されるヤツだから」
「誤解もなにも、僕らは相思相愛だと思うのだが、違ったのかね?」
「…………っ」
うまい言葉が浮かばなくて、俺は口をパクパクさせた。
店長は俺の前に回り込んで、俺の顔を覗き込む。
「否定できないのだろう?」
「う、うるせえ」
店長なりに気持ちを伝えておきたかったのだろう。それゆえに、好きだ、なんて言葉を口にする。
店長の言ったことは図星だ。明確に否定する言葉はない。だって、店長が好きだなんて言うから。
「……だいたい、どっちも正常な状態じゃねえんだから、ノーカンだろ」
「君がそうしたいと言うなら、ノーカウントにしておこう」
どうして寂しそうな顔をするんだよ。
離れていく店長になにも言えなくて、俺は雑に頭を掻く。話題を変えよう。
「――店長は家には帰らないのか?」
「真っ直ぐに店に向かうよ。彼女に任せきりにはできないからね」
「そうか」
「獅子野くんは休むかい?」
「いや――」
俺は尻のポケットに入れていたスマホの待ち受けを見て時刻を確認する。おおよそ十時半。
「――ランチには間に合わねえけど、そのあとには顔を出す」
ユリさんに俺の仕事を押し付けるのは気が引ける。彼女に借りは作りたくない。
「そう。無理をするものではないからね。体調が悪くなったら連絡を入れるといい」
「そっちは?」
本調子じゃないのは俺だけじゃなく店長もだ。俺がすかさず問えば、安心させるような笑みを俺に向けた。
「彼女には丸一日いるように伝えてある。僕に何かあったら君に連絡がいくように手配したから、心配はいらないさ」
「お、おう。了解したが、店長も無理してくれるなよ」
「獅子野くんは優しいね」
そう告げて、店長は俺の頭を撫でる。優しく、丁寧に。
と。なにかの術が発動した。
店長の手が離れていく。
「んんん?」
「君を守るおまじないだ。余計なモノを惹き憑けるといけないからね」
俺の全身に店長の気配が乗っている。今の俺の体調的に、こういうのはちょっとまずいのだが。
たぶん、他意はねえんだろうな……。
店長は素だから困る。
「これ、マーキングみたいなもんだろ?」
「獅子野くんは僕のモノだから手をつけたら許さない、という威嚇を込めたモノだ」
「うわぁ……」
想定外である。独占欲強めなのか。
店長はうっとりと笑う。
「もっと君が望むような術を掛けてやりたかったのだけど、僕も不安定だろう? 心が乱れるとうまく発動できないからね。僕の素直な気持ちを込めさせてもらったよ」
「俺は術を扱える怪異じゃねえからその辺のことは感覚でしかわからねえけど……効いている感じはあるからこれ以上は突っ込まねえよ」
桜の花びらが俺にくっついてこないあたりに、店長の嫉妬深さを察してしまう。とんでもない相手に惚れてしまったのだと理解して、俺が想像していた以上に彼に好かれていたことをこうして見せつけられるハメになってなんとも言えない。
喜んだり浮かれたりするところなのだろうか、こういうときって。
妙に冷静になってしまって、それもまた店長の意図なのかもしれないと思った。
「――では、僕は向こうだから。駅に向かうなら君はあっちだろう?」
公園の出入口に着いてしまった。店長が指差す先は駅への近道だ。
「ああ。じゃあ、またあとで」
俺たちは別々の道を進む。ちらりと後方を見たら、店長についていた桜の花びらがひらひらと舞っていた。まるでその場にいたことを示すように。
午後。カフェ百鬼夜行はいつものように賑わっていた。
店長の加護を全身にまとった俺の姿を見てユリさんにいじられた話は、別の業務外日誌に残しておこうと思う。
《終わり》
10
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