【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

秋月一花

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1章:踊り子 アナベル

踊り子 アナベル 11-1

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「……昨日のことは考えてくれたか?」
「え、本気だったの?」
「本気ではなかったら、あんなことは言わない」
「……あたしに寵姫が出来ると思っているのかい?」
「いろいろと教え込むさ。私には、絶対的な味方が必要なんだ。共に、アレと戦ってくれる味方がね」

 ――王妃イレインが、本当に黒幕なのだとしたら……。あの日誓った復讐も叶えられるかもしれない。それは危険な賭けでもあるが……。アナベルはふっと自嘲気味に笑みを浮かべる。

「……捨て駒になるか、ならないかの選択?」

 掠れるくらいの声だった。その声に、エルヴィスは首を左右に振る。

「違う。私のパートナーになって欲しいというお願いだ」
「……なんで、あたしを?」
「君は、私のことを守ろうとしてくれただろう」

 昨夜のことを言っているのかとエルヴィスをマジマジと見る。エルヴィスは頬を赤らめていた。

「それに……昨日の君の涙は、美しかった」
「……なんなんだい、その理由は……。せめて、一目惚れしたとか言ってくれないの?」
「…………そうか、確かに、一目惚れだったのかもしれない」

 しばらく無言が続いていたが、どこか納得したようなエルヴィスにアナベルが困惑の視線を投げた。自分の冗談を真に受けたのだろうかと心配するように彼を見ていると、ぴたりと足を止めてアナベルの手首を掴む。

「……陛下?」
「こんな気持ちになったのは、君が初めてなんだ。欲しいと思ったのも」
「……それ、ここで言っちゃう?」

 呆れたようにアナベルが周りを見渡す。ヒューヒューと口笛が聞こえて来た。エルヴィスはようやく、自分の言った言葉の意味が周囲に正しく聞き取られていたことを知った。

「……と言うわけで、クレマン。この子をくれないか」
「えっ、あたしの意志は?」
「だって君は、私と共に来るだろう?」

 どこからその自信が出ているのだろうとアナベルが目を見開く。……だが、確かにアナベルは彼に協力したいとも考えていた。だからこそ、驚いたのだ。

「おいおい、うちのスターを抜き取るつもりですかぁ?」
「ダメか?」
「……ま、そこは本人次第だが……。どうする、アナベル?」
「……ちょっと、考えを纏めさせて欲しいんだけど……?」

 怒涛の展開過ぎて、正直に言えば混乱しているアナベルは、一旦落ち着いて考えたいと願い出た。クレマンも、エルヴィスもそれを了承し、アナベルに時間を与えることになった。期間は王都ティオールに到着する一日前。もしも引き受けるなら、ティオールに到着したと同時に、寵姫が住まう宮殿へと向かうことになる。

(……人生、なにが起こるかわからないもんだねぇ……)
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