【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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1章:婚約破棄とプロポーズ

突然の訪問 5話

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 期間限定の恋人、ね。なるほど、それもありかもしれない。

 疑い深い女でごめんね、フィリベルトさま。

 でも、結婚する相手に恋をしたいという、私の気持ちをんでくれているのもわかる。

「フィルベルトさまも、その期間に見極めてくださいませ。貴方あなたが私を知って、それでも望んでくださるのなら――……ぜひ、正式にお付き合いしてください」

 だって、貴方が知っている私は、私であって私ではないから。

 差し出された手を取ると、彼はそっと手の甲に唇を落とした。

 ドキッと鼓動が跳ねたのは、きっと気のせいではないでしょう。

 こうして無事に(?)、期間限定の恋人ができた。

「明日は登校しますか?」
「え? ええと、どうしようか考え中です」
「……では、明日迎えにきますので、一緒にいきましょう」

 え、一緒に? と目を大きく見開くと、彼は悪戯っぽく口角を上げた。

 ……く、そういう顔も格好いいのね……!

 私、こんなに面食いだったっけ? と首をかしげたくなってしまう。

 ううん、もしかしたら、自分の好みを考えられる余裕が生まれたのかもしれないわね。

「それでは、学園までエスコートしていただけますか?」
「喜んで、リディア嬢」

 それなら、明日は気合を入れないといけないわね。

 アレクシス殿下とフローラ。あの二人と顔を合わせることになるでしょうし。

 中庭を歩きながら、フィルベルトさまといろいろな話をした。

 彼はとても話し上手で聞き上手だった。話しているうちに、どんどんと楽しい気持ちが湧きあがって、もっと話したいと願うほど。……不思議な人だわ。

 それにしても、今日も学園の日だし、彼も休んだのかしら?

 まさか昨日、断罪イベントがくるとは思わなかった。だって、昨日は卒業パーティーでもなんでもない、普通のダンスパーティーだったもの。

「それでは、私はこれで失礼します」

 気づけば、中庭から離れてしまっていた。

 フィリベルトさまが立ち止まり、私を見つめてから名残惜しそうに微笑んだ。

「本日は、楽しい時間をありがとうございました」

 すっとカーテシーをすると、「いえ、こちらこそ」と彼の言葉が耳に届く。

 顔を上げると、フィリベルトさまはそっと私の頬に手を添える。まるで、ガラス細工に触れるかのように、柔らかく。

 そして、そのまま顔が近づいて――……反対側の頬に、ちゅっと軽くリップ音を立ててキスをした。すぐに離れたけれど。

 思わずキスされたほうの頬に手を当てると、彼は晴れやかな笑顔で、

「赤くなった貴女あなたも、可愛らしいですね」

 と爽やかに去っていった。

 バクバクと心臓が早鐘を打っている。

 私が恋に落ちるのは、あっという間かもしれない――……!
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