【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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2章:同じことはしないけど

フィリベルトさまと 1話

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 ◆◆◆

 翌日。とても晴れていい天気だった。

 私は気合を入れて、ローレンとチェルシーに制服姿を整えてもらった。

 髪をサラサラつやつやのストレートにして、きれいに化粧をして、薄桃色の唇を塗る。

 ちょっときつめの目元は、メイクでなんとか柔らかい印象にしてもらった。

 いままでずっとキリッとした目元にしてもらっていたから、きつめの美人に見えていたかもしれない。

 このメイクなら、少しきつめの美人、ってところかしら?

 自分で美人っていうのもなんだけど、リディアの見た目はいいのだ。

 前世と比べると、月とスッポン過ぎて泣けてきちゃう。

 まぁ、この美貌びぼうを有効活用しましょう。

 そろそろフィリベルトさまが迎えにくる時間だろうから、先に玄関に向かっちゃおうっと。

 昨日、屋敷に戻ってきたお父さまが言うには、婚約を白紙にするのはまだ時間がかかるみたい。

 婚約を正式に白紙にする前に、フィリベルトさまと仲良く登校するなんて、どんな噂が流れることやら。

 アレクシス殿下とフローラがどういう反応をしてくれるのか、それが今から楽しみだわ。

「お嬢さま、いらっしゃったようですよ」
「ええ」

 学園はこの屋敷から馬車で三十分くらいの場所。結構近いのよね。

 思っていた通りの時間に迎えにきてもらった。私の勘もなかなか当たるじゃない?

 玄関をノックする音が聞こえて、ローレンが扉を開ける。

 制服姿のフィリベルトさまが、私を視界に入れると少し驚いたように目を見開き、それから胸元に手を添えて頭を下げた。

「おはようございます。今日もお美しいですね、リディア嬢」

「おはようございます。貴方も格好良いですわ、フィリベルトさま」

 にこやかに挨拶を交わして、馬車に乗り込む。

 そして、昨日の言葉通り、彼は本当に学園までエスコートしてくれた。

 学園の前で馬車を止めて、先に降りてから私に手を差し伸べる。

 その手を取って馬車を降りると、彼を見上げてにっこりと微笑む。

 周囲には学生たちがいて、私たちのことをじっと凝視していたことに気づいた。

 ざわざわと騒ぎ出す学生たちの視線が刺さるけれど、気にしない。

 昨日は婚約破棄宣言にショックを受けて学園を休んだと思われているでしょうから、こうしてフィリベルトさまと一緒に登校するなんて、誰も考えていなかったでしょうね。

「婚約破棄を宣言されて、すぐに他の男性にエスコートをされるなんて、リディアさまはなにをお考えなのかしら?」

 おっと、いきなり攻撃を受けたわ。しかも、その声の主はフローラだ。

 隣にはアレクシス殿下がいた。なんというブーメラン。

 ……主人公って、こんな性格だったかなぁ?

「ごきげんよう、アレクシス殿下とフローラさま。それでは、失礼します。いきましょう、フィリベルトさま」

 ま、こういうのは相手にしないほうがいいわよね。

 フィリベルトさまに笑顔を見せると、彼は一度、二人を睨みつけるように眼光を鋭くするも、すぐに私にとろけるような甘い笑顔を向けて口を開く。

「はい、私の愛しい貴女あなた

 イケメンオーラ、ほんっとうにすごいわ!

 彼の後ろにお花が飛んでいるように見える!

 それもバラ。真っ赤なバラ!

 似合いすぎて、ちょっと面白い。

 ここまでやってくれたのだもの、私も応えなくちゃ。

 ぽっと頬を赤らめて、彼のことしか眼中にありません、とばかりに甘く微笑んだ。

 ――そう、アレクシス殿下との婚約破棄なんて気にしていないのよ、と――……

 呆然としている二人を残して、私たちは歩き出す。

 それにしても……昨日から思っていたんだけどね、フィリベルトさま、私の歩幅に合わせてくれているみたいで、とても歩きやすいわ。

 アレクシス殿下と歩くときは、こちらのペースなんて考えない殿下がスタスタといっちゃうから、早足にならないといけなかったのよね。

 結構高いヒールのときもそうだったから、歩きづらかった記憶があるわ。

 でも、彼は違う。

「私の顔に、なにかついていますか?」

「いいえ。ただ――……フィリベルトさまは、エスコートに慣れているみたい、と」
「私の国の貴族は慣れているでしょうね。騎士の国なので」

 ひそひそと話しながら歩く。

 騎士の国だから慣れている……って、どういう意味かしら?

 あとで聞いてみましょう。ちょっと気になるな、竜の国ユミルトゥス。

 そんなに騎士が多い国だったかな……?

「ユミルトゥスが気になりますか?」
「ええ、いつか見てみたいですわ」
「いつかと言わず、今すぐでも構いませんよ?」

 今すぐでも……? と目をまたたかせていると、彼は上機嫌そうに口角を上げていた。

 教室までエスコートしてもらい、さらに私の席までついてきて、椅子まで引いてもらった。本当、完璧なエスコートだったわ。
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