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2章:同じことはしないけど
フィリベルトさまと 2話
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この学園、どの席に座るかは自由だから……私はいつも、後ろ側の窓際に座っていたの。
もしかしたら、私のことだから覚えていてくれていたのかも……?
彼は私を気遣ってか、隣に座った。
なんだか、フィリベルトさまのほうが目立っている気がするわ。
婚約破棄を宣言されたあとだから、いろんな視線を感じるとは思っていたけれど……まさか、好奇心いっぱいの視線を向けられるとは思わなかった。
きっと昨日学園にきていたら、同情やら蔑みやら、とにかくマイナスな視線を受けていたんじゃないかな。
フィリベルトさまは、それを見越して私に求婚をしたのかもしれない……なんて、考え過ぎかしら?
アレクシス殿下とフローラも教室にきて、私たちが隣同士で座っていることに、一瞬表情を歪めた。
だけど、反対側に座ってくれたから、少しだけホッとしたわ。
またなにか言われたらたまらない。フィリベルトさまの名誉を傷つけるようなことも口走りそうだしなぁ、あの様子では。
国際問題なんて私の手に負えないんだから、そこら辺をしっかりと考えて行動を起こしてほしいところね。
「なにを考えているのですか、リディア嬢?」
「……今日の昼食はどこでいただこうか、かしら。天気が良いので食べるのも楽しそうですが、学食の今日のお勧めも気になりますわ」
一人悶々と考え込んでいたら、その思考を断ち切るようにフィリベルトさまが声をかけてきた。
なので、考えていたこととはまったく別のことを口にする。
きっと、彼も気づいているでしょうね……その証拠に、ちらりと殿下たちに視線を移してから、肩をすくめてみせた。
そして、顔を近づけて耳元でささやく。
「心配しないでください、オレがいますから」
あれ、今、『オレ』って言った?
そういえば、最初に声をかけてきたときも、一人称を途中で変えたようだった。
素のフィリベルトさまの一人称は、『オレ』なのかな?
「フィリベルトさま、もしかして……わざと丁寧な口調にしていますか?」
「さて、どうでしょう?」
「もしも、それが私のためなら、やめてくださいませね。私も猫を被るの、やめますから」
にこり、と微笑んでみえると、彼は「そうこなくっちゃ」とばかりに口角が上げた。
「ですが、今日はこのままの口調でいきますよ。衆目もありますからね」
「そうですわね。授業も始まりますし」
ちょうど、先生がきたので、私たちは口を閉じる。
先生は私の存在に気づいて、一瞬目を瞠ったけれど、どこか安堵したように息を吐き、出席を取り始めた。
フィリベルトさまから、昨日の授業の内容を書き写した紙を差し出されたので、ありがたくそれを受け取る。
授業中にこういうやりとりができる友だちが、いなかったのよね、私。
リディア的にはそれどころではなかったわけだし、私に声をかける人も友情を育むためではなく、下心があったし、そりゃあ業務報告的なことは伝えられたけど。
――アレクシス殿下と並んでも見劣りしないようにって、意気込み過ぎていたのよね、きっと。
その結果が友だちゼロとは、泣けるわ……
いっそ心機一転、新しい場所でやり直したいわ、私の人生。
本当、留学を考えちゃう。でも、そうなるといろいろ面倒なことになっちゃうかな?
今から留学できる学園を探すのも、お父さまに苦労をかけてしまいそう。
誰も私を知らない場所で、ひっそりと生きていくのも悪くないわね……どんどんと妄想が膨らんでいく。だって、今の私は自由だもの。
もしかしたら、私のことだから覚えていてくれていたのかも……?
彼は私を気遣ってか、隣に座った。
なんだか、フィリベルトさまのほうが目立っている気がするわ。
婚約破棄を宣言されたあとだから、いろんな視線を感じるとは思っていたけれど……まさか、好奇心いっぱいの視線を向けられるとは思わなかった。
きっと昨日学園にきていたら、同情やら蔑みやら、とにかくマイナスな視線を受けていたんじゃないかな。
フィリベルトさまは、それを見越して私に求婚をしたのかもしれない……なんて、考え過ぎかしら?
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だけど、反対側に座ってくれたから、少しだけホッとしたわ。
またなにか言われたらたまらない。フィリベルトさまの名誉を傷つけるようなことも口走りそうだしなぁ、あの様子では。
国際問題なんて私の手に負えないんだから、そこら辺をしっかりと考えて行動を起こしてほしいところね。
「なにを考えているのですか、リディア嬢?」
「……今日の昼食はどこでいただこうか、かしら。天気が良いので食べるのも楽しそうですが、学食の今日のお勧めも気になりますわ」
一人悶々と考え込んでいたら、その思考を断ち切るようにフィリベルトさまが声をかけてきた。
なので、考えていたこととはまったく別のことを口にする。
きっと、彼も気づいているでしょうね……その証拠に、ちらりと殿下たちに視線を移してから、肩をすくめてみせた。
そして、顔を近づけて耳元でささやく。
「心配しないでください、オレがいますから」
あれ、今、『オレ』って言った?
そういえば、最初に声をかけてきたときも、一人称を途中で変えたようだった。
素のフィリベルトさまの一人称は、『オレ』なのかな?
「フィリベルトさま、もしかして……わざと丁寧な口調にしていますか?」
「さて、どうでしょう?」
「もしも、それが私のためなら、やめてくださいませね。私も猫を被るの、やめますから」
にこり、と微笑んでみえると、彼は「そうこなくっちゃ」とばかりに口角が上げた。
「ですが、今日はこのままの口調でいきますよ。衆目もありますからね」
「そうですわね。授業も始まりますし」
ちょうど、先生がきたので、私たちは口を閉じる。
先生は私の存在に気づいて、一瞬目を瞠ったけれど、どこか安堵したように息を吐き、出席を取り始めた。
フィリベルトさまから、昨日の授業の内容を書き写した紙を差し出されたので、ありがたくそれを受け取る。
授業中にこういうやりとりができる友だちが、いなかったのよね、私。
リディア的にはそれどころではなかったわけだし、私に声をかける人も友情を育むためではなく、下心があったし、そりゃあ業務報告的なことは伝えられたけど。
――アレクシス殿下と並んでも見劣りしないようにって、意気込み過ぎていたのよね、きっと。
その結果が友だちゼロとは、泣けるわ……
いっそ心機一転、新しい場所でやり直したいわ、私の人生。
本当、留学を考えちゃう。でも、そうなるといろいろ面倒なことになっちゃうかな?
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