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2章:同じことはしないけど
反撃は、しっかりと 4話
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「フィリベルトさま……」
「ところで、アレクシス殿下。リディア嬢に謝罪の一つもないのですか?」
今度はフィリベルトさまが切り込んでいった。ちょっと待って、ねぇ。
まだ私、全然彼らに攻撃できていないのだけど――!?
「俺が、リディアに?」
アレクシス殿下は怪訝そうに眉根を寄せた。
「そこの令嬢の言葉を鵜呑みにして、彼女を紛糾しましたよね。なぜです? オレの調べでは、殿下はなんの調査もなくあの場で婚約破棄を宣言していました。少し調べれば、リディア嬢の冤罪はすぐに晴れたのに」
……おそらく、フローラの『ご友人』たちと口裏を合わせていたんでしょうね。呆れたような表情を浮かべてしまい、マダムに咳払いをされた。
慌てて扇子を広げて口元を隠す。フローラはまだ、カタカタと震えている。
「この前、殿下も聞いたでしょう? そこの令嬢がリディア嬢になにをされたと言ったのかを。しかし、彼女にそんなことをする暇があったと、本当にお思いなのですか?」
「そ、それは――……」
殿下が唇を噛み締めた。
そんな姿の殿下に、フローラは「信じられない!」とばかりに目を見開いている。
あれはなんの表情なのかな? 口裏を合わせてよってことなのかしら?
「わ、私たちはこの目でフローラさまがずぶ濡れになったところを見ましたわ!」
おや、フローラの『ご友人』の一人が声を荒げたぞ。
マダムの鋭い視線に射貫かれて、「ひっ」と短い悲鳴を上げた。
……なにもそこまで恐れなくても……。マダムは大きくため息を吐く。
「では、お聞きしますが……フローラさまに水をかけた私の姿を、きちんと確認しましたか?」
「貴女は足早にその場を去ったのでしょう!?」
「あら、私の姿を見ていないのに、どうして私がやったと?」
「フローラさまがそうおっしゃって……! ……あら? どうして私、ここにいるのかしら?」
私に食ってかかったうちの一人が、今の状況を理解できないように目を瞬かせた。
フローラがぎょっとしたように口を開けた。そして、彼女の『ご友人』と殿下は頭を抱えて唸り出す。
マダムは首を傾げ、フローラは唇を噛み締めて私を睨みつけた。
「殿下たちに毒を持ったのですね!」
「貴女の思考回路って、本当に面白いわね……」
パンッ、と私は扇子を手に叩きつける。
すると、フローラはびくっと肩を震わせた。
「宮廷魔術師たちの協力を得ましたの。あの一時間のあいだに彼女たちにかけられた魔法を解いてほしい、と」
「なっ! わ、私がいつ、殿下たちに魔法をかけたと!?」
「あら、うふふ。あまり舐めないでいただける? 貴女が魅了の魔法をずーっとかけていたことに気付かない私ではなくてよ?」
高らかにそう宣言する。
いや、魅了の魔法の可能性に気づいたのはチェルシーなんだけどね!
昨日、今日のことをどうやって穏便に済まそうかとこれまでのことを話していたら、チェルシーがぽつりと『まるで魅了の魔法にもかかっているみたいですね』という言葉がきっかけなのよ。
そこから慌ててお父さまのところに行って、宮廷魔術師たちの協力を得たの。おかげで徹夜だったのよ、こちらは!
うーん、魅了の魔法のことに気づくなんて、私の侍女、すごくない?
「フローラさま。貴女が王妃になりたいのならば、努力してなればよろしいわ。私はそのとき、この国にはいないでしょうし……ああ、そうだ。聞くのを忘れていましたわ。貴女にとって、『王妃』とはどんなものですか?」
「リディア・フローレンス……! 貴女さえいなければ、この国は私のものになったのに――!」
ヒロインの考えが怖いんですけれど! そして逆恨みにもほどがある!
「どういうことだ、フローラ! きみは、俺を愛していると言ってくれたのに!」
そしてこのタイミングで、魅了が完璧に切れたみたい。
さて、修羅場でも楽しみますかね。
「ところで、アレクシス殿下。リディア嬢に謝罪の一つもないのですか?」
今度はフィリベルトさまが切り込んでいった。ちょっと待って、ねぇ。
まだ私、全然彼らに攻撃できていないのだけど――!?
「俺が、リディアに?」
アレクシス殿下は怪訝そうに眉根を寄せた。
「そこの令嬢の言葉を鵜呑みにして、彼女を紛糾しましたよね。なぜです? オレの調べでは、殿下はなんの調査もなくあの場で婚約破棄を宣言していました。少し調べれば、リディア嬢の冤罪はすぐに晴れたのに」
……おそらく、フローラの『ご友人』たちと口裏を合わせていたんでしょうね。呆れたような表情を浮かべてしまい、マダムに咳払いをされた。
慌てて扇子を広げて口元を隠す。フローラはまだ、カタカタと震えている。
「この前、殿下も聞いたでしょう? そこの令嬢がリディア嬢になにをされたと言ったのかを。しかし、彼女にそんなことをする暇があったと、本当にお思いなのですか?」
「そ、それは――……」
殿下が唇を噛み締めた。
そんな姿の殿下に、フローラは「信じられない!」とばかりに目を見開いている。
あれはなんの表情なのかな? 口裏を合わせてよってことなのかしら?
「わ、私たちはこの目でフローラさまがずぶ濡れになったところを見ましたわ!」
おや、フローラの『ご友人』の一人が声を荒げたぞ。
マダムの鋭い視線に射貫かれて、「ひっ」と短い悲鳴を上げた。
……なにもそこまで恐れなくても……。マダムは大きくため息を吐く。
「では、お聞きしますが……フローラさまに水をかけた私の姿を、きちんと確認しましたか?」
「貴女は足早にその場を去ったのでしょう!?」
「あら、私の姿を見ていないのに、どうして私がやったと?」
「フローラさまがそうおっしゃって……! ……あら? どうして私、ここにいるのかしら?」
私に食ってかかったうちの一人が、今の状況を理解できないように目を瞬かせた。
フローラがぎょっとしたように口を開けた。そして、彼女の『ご友人』と殿下は頭を抱えて唸り出す。
マダムは首を傾げ、フローラは唇を噛み締めて私を睨みつけた。
「殿下たちに毒を持ったのですね!」
「貴女の思考回路って、本当に面白いわね……」
パンッ、と私は扇子を手に叩きつける。
すると、フローラはびくっと肩を震わせた。
「宮廷魔術師たちの協力を得ましたの。あの一時間のあいだに彼女たちにかけられた魔法を解いてほしい、と」
「なっ! わ、私がいつ、殿下たちに魔法をかけたと!?」
「あら、うふふ。あまり舐めないでいただける? 貴女が魅了の魔法をずーっとかけていたことに気付かない私ではなくてよ?」
高らかにそう宣言する。
いや、魅了の魔法の可能性に気づいたのはチェルシーなんだけどね!
昨日、今日のことをどうやって穏便に済まそうかとこれまでのことを話していたら、チェルシーがぽつりと『まるで魅了の魔法にもかかっているみたいですね』という言葉がきっかけなのよ。
そこから慌ててお父さまのところに行って、宮廷魔術師たちの協力を得たの。おかげで徹夜だったのよ、こちらは!
うーん、魅了の魔法のことに気づくなんて、私の侍女、すごくない?
「フローラさま。貴女が王妃になりたいのならば、努力してなればよろしいわ。私はそのとき、この国にはいないでしょうし……ああ、そうだ。聞くのを忘れていましたわ。貴女にとって、『王妃』とはどんなものですか?」
「リディア・フローレンス……! 貴女さえいなければ、この国は私のものになったのに――!」
ヒロインの考えが怖いんですけれど! そして逆恨みにもほどがある!
「どういうことだ、フローラ! きみは、俺を愛していると言ってくれたのに!」
そしてこのタイミングで、魅了が完璧に切れたみたい。
さて、修羅場でも楽しみますかね。
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