【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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2章:同じことはしないけど

反撃は、しっかりと 5話

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 紅茶をこくりと飲み込み、少しワクワクした瞳を隠さずに、アレクシス殿下とフローラのやり取りを眺めることにした。

 この世界ってテレビがないから、ドラマが見られないのよね。小説はたくさんあるから、あとでたくさん読もうっと。

 そんな私の様子に気づいたのか、フィリベルトさまが意外そうにこちらに視線をやる。

 彼に顔を向けてにこりと微笑んでみせると、ふっと笑みを返された。

 マダムは厳しい視線で殿下たちを睨んでいる。

 フローラの『ご友人』たちは、魅了の効果が切れたから、頭に『?』マークをたくさんつけていた。

 ローレンとチェルシーも、冷めた目で様子を眺めている。

「もちろん愛していますわ! だって、アレクシス殿下は私を幸せにしてくれる攻略対象だもの!」
「攻略対象? フローラ、なにを言っているんだ……?」
「どうして? リディア・フローレンス! 貴女あなたが原作通りに私をいじめてくれたら、こんなことにはならなかったのに!」

 思わずむせるところだった。飲み込んでいたからセーフ!

 もしかして、フローラも転生者? 目を丸くして彼女を凝視していると、フィリベルトさまが心底不思議そうに首をかしげた。

「攻略対象とはなんだ?」
「ここはね、『花の乙女 ~永遠を誓う~』っていう乙女ゲームの世界なの! 私はちゃんと主人公として、ゲーム通りに動いたもん! こんなの、ゲームのシナリオになかったもん!」

 ……精神年齢、いくつかしら?

 じゃなくて。……彼女はずっと、ゲームのシナリオ通りに動いていたの?

 殿下ルートって、本当……どういうラストだったんだろう。

 断罪イベントにしては中途半端な時期なのよね。卒業パーティーでも学園祭でもない、ただの平日のダンスパーティーで始まるイベント……そんなわけ、ない、わよね……?

「このまま悪役令嬢が国外追放される予定だったのに~!」

 あ、殿下ルートの『リディア』って、国外追放されるんだ。へぇ。

 殿下ルート、本当に中途半端にしか知らないから、リディアがどうなったのかきになっていたのよね。

 どのルートでも国外追放なのか、私。

 それにいてもみんな、痛い子を見る目でフローラを眺めるのはやめてあげて……私も一歩間違えればああなるのか……誰にも言わないで、自分だけの秘密にしよう。

 人は誰しも秘密を持っているもの、だからね!

「このまま国に残るつもりはありませんので、そこは安心なさって? まぁ、里帰りはしますけれど」
「ふぇ?」
「フィリベルトさま、私、貴方あなたの国がとても気になりますわ」
「ぜひ、ユミルトゥスに留学してください。オレの留学もここまでにしようかな、目的は達成したし」

 パチンとウインクするフィリベルトさま。

 目的? とキョトンとすると、彼はにっと白い歯を見せた。

「好きな子を見つけるっていうね」

 口調がとてもラフになっているのは、きっとわざとね。

 でも……なぜかしら。なんだかこちらのほうが彼らしいような……そんな気がして、思わず口角が上がる。

 呆然としたようなアレクシス殿下は、縋るように私を見つめている。バッと扇子巣を広げて、目元だけで彼を見る。

(アレクシス殿下、貴方はフローラのことを愛しているのでしょう?)

 ――そう、目で語った。

 困惑しているフローラの『ご友人』たちには、最高級の香油を持たせてこの場から去ってもらう。

 現状を理解できていない人たちが多かったけれど……あの香油には対魔力が込められているから、フローラの魅了も効かなくなるはずよ。
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