【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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2章:同じことはしないけど

反撃は、しっかりと 6話

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 魅了状態が解けたら、フローラの傍にはどのくらいの人が残るのかしら? なんて意地の悪いことを考えて、ちょっと自己嫌悪。

「さて、これからのことですけれど」

 この場に残ったのはフィリベルトさま、アレクシス殿下とフローラ、マダムとローレン、そして私。

 チェルシーは、フローラの『ご友人』たちと一緒に帰ってもらった。

 私の帰宅後の準備をしてもらうの。今日はゆっくりとお風呂に入ってリラックスしたい。切実に!

「私と殿下の婚約は、このまま解消される予定なので、フローラさまにはマダムの王妃教育を受けてもらいます。マダム、彼女をお願いしますね」

 こんなことを私が言うのはおかしいのかもしれないけれど、フローラがまともな王妃になってくれることは祈っているの。

 愛したアレクシス殿下と結ばれて、しっかりと王妃として彼の隣に立つフローラ。

 きっと乙女ゲームのエンディングは、そんなスチルが映るだろう。……彼らがイチャイチャしているところを想像しても、ちっとも胸が痛まない。

 ……『リディア』の気持ちの整理がついたのかもしれないわね。

「本当に婚約を解消されるのですか?」
「ええ。私になにも確認せず、一方の言葉だけを信じる殿下のことを、信頼も信用もできませんもの。マダムにはとてもお世話になりました。これからは、次期王妃のフローラさまを立派に育ててくださいませ」

 にっこりと誰にも本心を悟らせない笑顔を浮かべると、マダムは額に手を当て、はぁ、とため息を吐いた。

 ため息を吐きたい気持ち、すごくわかるわ。

 フローラはぐすぐすと泣いているし、殿下は信じられないとばかりに目を見開いて呆然としている。

 そんなに私の言葉が意外だった?

 フローラは大粒の涙をハンカチでぬぐっている。……いやぁ、泣いている姿を見ても気持ちが全然動かない。

 そもそもなんで泣いているのかもわからない。

「殿下、しっかりと彼女を支えてあげてくださいませね? この選択をしたのは、貴方あなたなのですから」
「……」
「おめでとうございます、フローラさま。王妃教育、がんばってくださいね? まずは、こちらのお勉強からするのはいかがですか?」

 ドサドサドサッと分厚い本を彼女の目の前に置いた。私が行っていた王妃教育で使っていた本だ。

「ヒッ」

 短い悲鳴が聞こえたけれど、聞こえないふりをした。どうぞ、マダムのスパルタ教育に耐えてね。

 ……自業自得って、こういうことをいうのよね。

 まだ呆然としている殿下と、泣きはらすフローラに肩をすくめた。

 殿下にとって、そんなにショックだったのかな? さっきのフローラの発言。

 まぁ、つまり……自分が幸せになるために、アレクシス殿下に近づいたってことだものね。

 おかしいな、殿下にも同情心が湧かないぞ。……湧かなくても問題ないか。

 そして、本当に『私』の恋が終わったことを悟った。百年の恋も冷めるってもんよね、こんな姿を見たら。

「フィリベルトさま、このあとお時間はありまして?」
貴女あなたのためならいくらでも」
「では、一緒に夕食を楽しみませんか?」
「喜んで、マイレディ」
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