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3章:竜の国 ユミルトゥス
スターリング領 6話
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でも、『運命』ってもしかしたら、努力してなっていくものかもしれない。
ふと、そんなことを思ったの。
「この国の人たちは愛情深いから、もしも愛された覚悟してくださいね」
ぴっと人差し指を立てるのは、おそらく夫婦で朝市にきていた奥方。
その人は観光に来ていたら見初められたらしく、熱心なアプローチに負けてしまったと、幸せそうに微笑んでいた。
竜の国、ユミルトゥスの人々が愛情深いと国外に伝えられているのは、こういうエピソードで溢れているから、かもしれないわね。
「……ただ、こんなにも私のことを肯定して愛してくれる人は、この人以外いないんじゃないかって思っちゃうんですよね」
顔を真っ赤に染めて、恥じらうように頬を覆う奥方は、とても愛らしかった。
「愛し愛され、が一番ですわよね」
「ええ、本当に」
よく見れば、周りの人たちも恋人や夫婦に見える人たちは幸せそうに笑っていたし、一人きりできていた人たちは、そんな人たちを羨望のまなざしで眺めている。
この国にとって、愛する人の存在は、なくてはならないものなのでしょうね。
「あ、もしかしてデート中でしたか!? すみません、フィリベルトさまが帰ってきたと聞いて、つい声をかけてしまいました」
最初に声をかけてきた女性がハッとしたように顔を上げて、フィリベルトさまを見る。
彼はちらりと私に視線を向けた。
彼女に答えを、ということ?
それなら……と微笑みを浮かべて胸元に手を置いた。
「こんなに歓迎していただけたこと、とても嬉しく思います。貴女が声をかけてくれたから、知ることができました。ありがとうございます」
「リディアさま……!」
彼女は感激したようにうるっと瞳を潤ませる。
そんなに感激されることを言ったつもりはないのだけど……困惑して苦笑を浮かべてしまう。
「この国で暮らすことを、楽しみにしていました。領民の方々とお会いすることも、この領地がどんなところなのかを私の目で見ることも、ワクワクしていましたの」
それについては、ローレンとチェルシーも同じだと思う。
彼女たちがわたしについていくと決めて、嬉々として荷物をまとめていたとき、二人でユミルトゥスのことをたくさん話していたことを知っている。
なぜなら、私も一緒にいたから。
二人は私のためにユミルトゥスのことを調べて、教えてくれていたの。
彼女たちのおかげで、いろいろなことを学んだわ。本に載っていないこともね。
ユミルトゥスの学園については、さすがによくわからないままだけど。
それは仕方ないことだと思う。
とりあえず、貴族の通う学園ということだけは知っている。……エステルさまがいうには、『自由』な場所らしい。
サクリアナ王国で通っていた学園とは、まったく違うのだろうと考えると、不安と期待が半々くらいの気持ちなのよね。
……ううん、期待のほうがちょっと大きいかもしれないわ。
だって、この国には……私のことをちゃんと見てくれる人たちがいる。
そう思うと、今までの苦労も、報われそうな気がするの。
ふと、そんなことを思ったの。
「この国の人たちは愛情深いから、もしも愛された覚悟してくださいね」
ぴっと人差し指を立てるのは、おそらく夫婦で朝市にきていた奥方。
その人は観光に来ていたら見初められたらしく、熱心なアプローチに負けてしまったと、幸せそうに微笑んでいた。
竜の国、ユミルトゥスの人々が愛情深いと国外に伝えられているのは、こういうエピソードで溢れているから、かもしれないわね。
「……ただ、こんなにも私のことを肯定して愛してくれる人は、この人以外いないんじゃないかって思っちゃうんですよね」
顔を真っ赤に染めて、恥じらうように頬を覆う奥方は、とても愛らしかった。
「愛し愛され、が一番ですわよね」
「ええ、本当に」
よく見れば、周りの人たちも恋人や夫婦に見える人たちは幸せそうに笑っていたし、一人きりできていた人たちは、そんな人たちを羨望のまなざしで眺めている。
この国にとって、愛する人の存在は、なくてはならないものなのでしょうね。
「あ、もしかしてデート中でしたか!? すみません、フィリベルトさまが帰ってきたと聞いて、つい声をかけてしまいました」
最初に声をかけてきた女性がハッとしたように顔を上げて、フィリベルトさまを見る。
彼はちらりと私に視線を向けた。
彼女に答えを、ということ?
それなら……と微笑みを浮かべて胸元に手を置いた。
「こんなに歓迎していただけたこと、とても嬉しく思います。貴女が声をかけてくれたから、知ることができました。ありがとうございます」
「リディアさま……!」
彼女は感激したようにうるっと瞳を潤ませる。
そんなに感激されることを言ったつもりはないのだけど……困惑して苦笑を浮かべてしまう。
「この国で暮らすことを、楽しみにしていました。領民の方々とお会いすることも、この領地がどんなところなのかを私の目で見ることも、ワクワクしていましたの」
それについては、ローレンとチェルシーも同じだと思う。
彼女たちがわたしについていくと決めて、嬉々として荷物をまとめていたとき、二人でユミルトゥスのことをたくさん話していたことを知っている。
なぜなら、私も一緒にいたから。
二人は私のためにユミルトゥスのことを調べて、教えてくれていたの。
彼女たちのおかげで、いろいろなことを学んだわ。本に載っていないこともね。
ユミルトゥスの学園については、さすがによくわからないままだけど。
それは仕方ないことだと思う。
とりあえず、貴族の通う学園ということだけは知っている。……エステルさまがいうには、『自由』な場所らしい。
サクリアナ王国で通っていた学園とは、まったく違うのだろうと考えると、不安と期待が半々くらいの気持ちなのよね。
……ううん、期待のほうがちょっと大きいかもしれないわ。
だって、この国には……私のことをちゃんと見てくれる人たちがいる。
そう思うと、今までの苦労も、報われそうな気がするの。
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