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3章:竜の国 ユミルトゥス
スターリング領 5話
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こぼれた言葉は、フィリベルトさま以外にも聞かれていたみたいで、再びキャァァアアッ! と黄色い悲鳴が上がった。
「フィリベルトさま、本当によかったですねぇ」
「リディアさま、スターリング領をよろしくお願いいたします!」
領民たちからは、祝福や歓迎の言葉がぽんぽんと出てくる。
なんだか、感無量だわ。
婚約破棄された令嬢がこんなに歓迎されるなんて……
「あ、そうだ。フィリベルトさま、これを持っていってください。うちで採れた野菜です!」
「あ、それならうちも!」
「このパンも!」
と、おそらく朝市で売る商品をどんどんとテーブルの上に積み重ねた。
「ありがとう。ジェレミー、デリック、馬車まで運んでくれるか?」
「かしこまりました」
「いつもたくさん、ありがとうございます」
ジェレミーとデリックが領民たちに頭を下げて、いただいたものをひょいひょいと持ち上げる。
いつも、ということは領の視察のときに、こんなふうにたくさんいただいているのかしら?
「みなさんの分は大丈夫なのでしょうか」
こそっとフィリベルトさまに尋ねると、彼は「大丈夫だと思うよ」と微笑んだ。
それなら、いただいても良いのかな? でも、いただくだけなのは少し気が引けるわね。
私の考えを読んだかのように、フィリベルトさまはポンッと私の肩に手を置いて、口を開いた。
「これは、オレらの婚約祝いだよ。みんな喜んでくれているんだ。オレの初恋が叶ったこと」
――え?
……初恋?
幼い頃に私たちが出会ったことがある、とは聞いていたけれど……
フィリベルトさまが私を探していた理由も知ったけれど……
きっぱりと初恋と伝えられるのは、気恥ずかしい。
でも、なんでこんなに心の中が温かくなるのかな。
彼の言葉一つ一つに、私への愛情をひしひしと感じて、心が満ちていく感覚があるの。
「フィリベルトさまの初恋の話は、スターリング領ならず、国中に伝わっていますからね」
果物をくれた人が、不思議そうな表情を浮かべているローレンとチェルシーに声をかけた。
彼女たちには幼い頃のことを話していなかったから、目を丸くしてこちらに視線を向ける。
というか、フィリベルトさまが私のことを探していたって、国中に伝わっているの!? とそちらにびっくりよ。
「そんなに有名なのですか?」
「ええ、国中知らない人はいないほどに。きっと、フィリベルトさまの『運命』なのだろうと話していたんですよ」
「『運命』……?」
キョトンとした表情を浮かべる彼女たちに、領民たちがこぞって『運命』の話をする。
その内容にふたりの目が大きく見開かれ、ローレンがぽつりと「ロマンチックですね」とつぶやいた。
「ユミルトゥスの人たちは、『運命』を信じていますからね」
「素敵なことだと思います!」
チェルシーは目をキラキラと輝かせていた。ローレンもうなずいていたし、やっぱり『運命』という言葉に惹かれているのはわかる。
「私たちにもいるのかなぁ?」
「どうなのかしら……?」
彼女たちがひそひそと話している内容が聞こえて、小さく口角を上げた。
ジェレミーとデリックが彼女たちの『運命』なら、私たち三人はある意味運命共同体ね。
……ああ、でも、『運命』がいるのは王族の血筋だから、どうなのかしら?
「フィリベルトさま、本当によかったですねぇ」
「リディアさま、スターリング領をよろしくお願いいたします!」
領民たちからは、祝福や歓迎の言葉がぽんぽんと出てくる。
なんだか、感無量だわ。
婚約破棄された令嬢がこんなに歓迎されるなんて……
「あ、そうだ。フィリベルトさま、これを持っていってください。うちで採れた野菜です!」
「あ、それならうちも!」
「このパンも!」
と、おそらく朝市で売る商品をどんどんとテーブルの上に積み重ねた。
「ありがとう。ジェレミー、デリック、馬車まで運んでくれるか?」
「かしこまりました」
「いつもたくさん、ありがとうございます」
ジェレミーとデリックが領民たちに頭を下げて、いただいたものをひょいひょいと持ち上げる。
いつも、ということは領の視察のときに、こんなふうにたくさんいただいているのかしら?
「みなさんの分は大丈夫なのでしょうか」
こそっとフィリベルトさまに尋ねると、彼は「大丈夫だと思うよ」と微笑んだ。
それなら、いただいても良いのかな? でも、いただくだけなのは少し気が引けるわね。
私の考えを読んだかのように、フィリベルトさまはポンッと私の肩に手を置いて、口を開いた。
「これは、オレらの婚約祝いだよ。みんな喜んでくれているんだ。オレの初恋が叶ったこと」
――え?
……初恋?
幼い頃に私たちが出会ったことがある、とは聞いていたけれど……
フィリベルトさまが私を探していた理由も知ったけれど……
きっぱりと初恋と伝えられるのは、気恥ずかしい。
でも、なんでこんなに心の中が温かくなるのかな。
彼の言葉一つ一つに、私への愛情をひしひしと感じて、心が満ちていく感覚があるの。
「フィリベルトさまの初恋の話は、スターリング領ならず、国中に伝わっていますからね」
果物をくれた人が、不思議そうな表情を浮かべているローレンとチェルシーに声をかけた。
彼女たちには幼い頃のことを話していなかったから、目を丸くしてこちらに視線を向ける。
というか、フィリベルトさまが私のことを探していたって、国中に伝わっているの!? とそちらにびっくりよ。
「そんなに有名なのですか?」
「ええ、国中知らない人はいないほどに。きっと、フィリベルトさまの『運命』なのだろうと話していたんですよ」
「『運命』……?」
キョトンとした表情を浮かべる彼女たちに、領民たちがこぞって『運命』の話をする。
その内容にふたりの目が大きく見開かれ、ローレンがぽつりと「ロマンチックですね」とつぶやいた。
「ユミルトゥスの人たちは、『運命』を信じていますからね」
「素敵なことだと思います!」
チェルシーは目をキラキラと輝かせていた。ローレンもうなずいていたし、やっぱり『運命』という言葉に惹かれているのはわかる。
「私たちにもいるのかなぁ?」
「どうなのかしら……?」
彼女たちがひそひそと話している内容が聞こえて、小さく口角を上げた。
ジェレミーとデリックが彼女たちの『運命』なら、私たち三人はある意味運命共同体ね。
……ああ、でも、『運命』がいるのは王族の血筋だから、どうなのかしら?
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