夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章

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第4話 『本気モード! ロード・トゥ・〝ぜんぶに勝つ〟』

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「俺だぜ」


 と、今度は手が上がった。
 名乗り出たそいつ――竹内兄は、ニヤニヤふまじめな笑いを浮かべている。


「んで、印路は狼だった。これで一つ、危険が減ったな」


 バカにするようなその口ぶりに、ホマレが叫ぶように言った。


「う、ウソだ! 彼は霊媒師じゃない!」

「ほう、ということは東間ホマレくん、君は自身こそがそうであると?」


 うっ、とホマレが俺に視線を向けた。こうなったら仕方がない、と俺はまばたきで合図する。そしてホマレも、意を決して打ち明けた。


「――そうです。本物の霊媒師は、僕だ。そして――ミアはまちがいなく、村人だった!」


 だがホマレの告白を蹴飛ばすように、竹内妹が笑う。


「本物の、なんて、本物は言わなくなーい?」

「それにおまえは印路とダチだったじゃん。ただかばいたいだけなんじゃねぇの?」


 竹内兄が腕を組んでえらそうに言う。ホマレは否定しようとしたが、そのまえにジュースがおうように笑いながら割って入ってきた。


「ふむふむ、さっそく白熱してるねぇ……グレート! 他にもこの霊媒師ロール争奪戦に我こそは参加せんというプレイヤーはいるかな?」


 特に誰も名乗り出ず、ジュースがもっともらしく頷く。


「ならば、どちらが真の霊媒師か……よく考えて、票を入れなきゃならないね。諸君の決断を楽しみにしながら、一時解散! 自由時間スタートだ」



 そして昨日と同じようにジュースの姿はどこかに消え、残された俺たちプレイヤーはそれぞれの行動に移った。

 俺はとりあえず歩き出し、ホマレは肩を落としながらそれに続く。


「ごめん、フウキ……さっそく足ひっぱっちゃった……」

「気にするなって、人狼ゲームじゃよくあることだろ。むしろ、これで可能性が絞れた。竹内兄は8割狼だな」

「ニセのロールをわざわざ名乗るってことは、そうだよね……このゲームじゃ、《狂人》はないし」


 狼が最も恐れるのは、自分の正体が判明することだ。だから、それを掴む可能性のある特殊ロールの村人は、まっさきに排除しなきゃいけない。

 その最たる例が占い師だ。夜が来るたびに、生存しているどのプレイヤーが狼で、村人か、一人ずつだけど確定できる。それと、追放されたプレイヤーが狼か村人だったか判定できる霊媒師も注意すべき相手だ。追放されたのが狼で、そいつと仲良くしていたりしたら、仲間だってバレる可能性がある。

 でもそいつらが名乗り出なければ、狙うこともできない――だから狼は、ニセモノを演じることで揺さぶって、あぶりだそうとするんだ。

 ニセモノが好き勝手に振る舞えば、ウソ情報が広がって、村人どうしのチームワークがうまくいかなくなる……そうなるまえに本物は名乗り出て、相手がニセモノだって訴えなけきゃいけない。もちろん、自分が狙われるリスクとどちらを取るかだけど。

 そして今回竹内兄は、霊媒師を名乗り出た――本物はホマレだから、俺たちにはそれがウソだってわかる。だからこそ、竹内兄は怪しいんだ。狼以外に、そんなことする必要があるロールはこのゲームにはないからな(村人のクセに狼側のロール《狂人》なんかがあったりすると、ややこしいんだけど)。

 でも、それがわかっているのは俺とホマレだけ。

 俺たちは竹内兄が霊媒師として信用されちまうまえに、村人たちと接触して、味方になってもらわなきゃならねぇ。だけどそのためには、誰が村人で、誰が狼か、ある程度見通しを立てなきゃいけない――

 と、辺りを見回して、ふと違和感に気づく。


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