異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第5部 第13話 神殿強硬派の襲来――三者、同じ旗の下で

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幕舎を包む白き刃
 夜霧の中、足音が増えていく。
 白い法衣に鎧を重ねた聖騎士たちが、半円を描くように幕舎を包囲していた。
 松明の火が揺れ、聖紋が歪んで影を落とす。
「司祭エルディア。
 その場から離れ、武装を解除せよ」
 先頭に立つのは、神殿強硬派の長――聖務執行官バルディオ。
 その声は冷たく、疑いを許さない。
「あなたは禁を破り、異界の者に与した。
 これは“浄化”の案件だ」
 エルディアは一歩前に出た。
 杖を地に突き、静かに告げる。
「――私は神殿の司祭として、世界を守る選択をした。
 それが禁なら、私はこの場で受けて立とう」
________________________________________
🔥 陽介、前へ
 陽介は剣を抜かず、あえて鞘に収めたまま一歩進む。
「バルディオ。
 お前たちは“封印”を正義だと言う。だが――」
 視線は逸らさない。
「封じるだけで世界は守れない。
 恐れを理由に、人を切り捨てる行為こそ、災厄を呼ぶ」
 騎士たちがざわめく。
 その間に、紬は静かに魔力を巡らせ、周囲の空気を鎮めた。
 攻撃ではない。“制止”のための術式。
「争う気はないわ」
 紬の声は柔らかく、しかし届く。
「ここで血を流せば、あなたたちが守りたい“信仰”こそ傷つく」
________________________________________
⚖️ 真実の提示――禁断の公開
 エルディアが合図を送る。
 紬が懐から水晶板を取り出し、光を放った。
 空中に映し出されるのは、《水ノ書》と神殿《聖記》の対照記録。
 門が暴走しなかった観測、代償が発生しなかった測定、
 そして“二つの魂が一致した時のみ門は安定する”という解析結果。
「……虚偽だ」
 バルディオが吐き捨てる。
「なら、検証しろ」
 陽介は静かに言った。
「今すぐここで。
 お前たちの学僧と、俺たちの研究者で」
 その瞬間、背後から別の声が上がる。
「――検証に賛成する」
 現れたのは、神殿学派の長老の一人。
 強硬派に距離を置く穏健派だ。
「司祭エルディアの提案は理に適う。
 血を流す前に、真実を量るべきだ」
 騎士列が揺れる。
 迷いが生じた。
________________________________________
⚔️ 強硬派の暴走
 だが、バルディオは剣を抜いた。
「迷うな!
 “疑い”は信仰を腐らせる!」
 刃が振り下ろされる瞬間――
 陽介が一歩踏み込み、鞘で受け止めた。
 金属音が夜に響く。
「止まれ!」
 陽介の声が雷のように轟く。
 同時に、紬の術が発動。
 松明の火が一斉に小さくなり、眩しさが消えた。
 闇の中で、剣だけが浮かぶ。
「ここで一線を越えれば、
 お前たちは“守護者”ではなく“破壊者”になる」
________________________________________
🕊️ 司祭の宣言
 エルディアが前に出る。
「神殿の名において命ずる。
 武装解除。検証に移行する」
 沈黙。
 そして、重い音を立てて、数本の剣が地に落ちた。
 バルディオは歯を食いしばり、退いた。
「……だが忘れるな。
 もし門が再び揺らげば、その責はお前たちが負う」
「受けて立つ」
 陽介は即答した。
________________________________________
🌄 夜明け――三者の合意
 夜が明ける頃、臨時の検証が始まった。
 神殿学僧、分水国研究者、そして司祭団。
 三者が同じ卓につく。
 結果は明確だった。
 門は安定している。代償の兆候はない。
 むしろ、“共同観測”により安定度は上がった。
 エルディアは深く息を吐いた。
「……これで、強硬派を抑えられる」
 紬は微笑む。
「一緒にやりましょう。
 “恐れ”を“理解”に変えるために」
 陽介は空を見上げた。
 朝日が、白と青の旗を同時に照らしている。
「戦わずに、守れたな」
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