12 / 354
2章
12、遭難者レッド
しおりを挟む
「ちょっと早くしなさいよグズ!」
鍔の広いトンガリ帽子を左右に振りながら偉そうに悪態をつくのは女冒険者シルニカ。雷を扱う超攻撃型の魔術師で、チーム”クラウドサイン”のリーダー。
ジャラジャラと光る金や宝石などのアクセサリーを付けた真っ白なトンガリ帽子に、真っ赤なマント、胸元の開いたフリフリのシャツにベルトを巻いて身体のラインを出している。短パンでスラリとした足を出して膝上のソックス、歩き辛そうな上げ底ブーツを履いている。
とても魔術師とは思えないほど派手な衣装を身に纏っている。汚れても良い衣装というわけでもないので冒険者にも不向きと言える。
「グズは無いだろ?グズはさぁ……これでも急いだんだぜ?」
ぶつくさと文句を言うのは魔獣使いの男。今回の依頼に適した魔獣を、迅速に手に入れてきたというのにあんまりな言い草だ。
シルニカの生意気な態度と吐き捨てるような物言いには嫌気が差している。それでも見限らずについていくのは並々ならぬ仲間意識のためか、それとも金か。
「荒れてんなぁお嬢。ゴールデンビートルに先を越されたのが相当キてんだなぁ」
頭にバンダナを巻いた盗賊は肩を竦めながら鼻で笑う。遠巻きでこそこそと話しているところから彼女に聞かれるのは不味い会話のようだ。
チームの中で最も体格の良い司祭は腕を組みながら唸る。
「冒険者の中でも選りすぐりの優良チームですよ?格下相手ならともかく、ゴールデンビートルなら諦めもつくと思うのですが……」
「はぁ?諦めつくわけないだろうが」
司祭の言葉に被せるように槍士は叱責する。
「ゴールデンビートルは俺たちのチームとほぼ互角の能力だと分析している。もしベルク遺跡の攻略をあのチーム1つでこなしたのなら、俺たちだってやれてたはずだ。お嬢はそこが気に食わないんだと思うぜ」
槍士の言葉に見識の浅さを感じて反省する司祭。それを盗賊は鼻で笑った。
「誰ってわけでも無いと思うがねぇ。もっと単純に自分が最初じゃなかったのが癪に障っただけじゃないかなぁ?」
ベルク遺跡の攻略。前人未到の30階制覇。これをベテランのゴールデンビートルが達成した。
そこで手に入れた様々なお宝をひけらかし、魔獣から得られる素材を換金した事実は覆しようがない。
クラウドサインのメンバーはベルク遺跡攻略を目指してあの地に留まっていたのだが、先を越された以上武勲は得られない。未解明のダンジョンがまだまだ多くある現状、他を開拓するべきだ。との思いから街を飛び出し現在に至る。
「あんたたち何してんの!?とっとと魔物を見つけて!!」
シルニカは怒声を浴びせてチームを集め、魔獣使いが捕まえてきた猿のような魔獣にも叫び散らしている。急いでるシルニカたちとは裏腹に猿の魔獣は鼻をほじりながらのんびりと歩き出した。
「こ、この……早く歩きなさいよ!このノロマ!!」
魔獣の性格がおとなしめだった為か何を言われてもマイペースを貫く。呆れ返る仲間を余所に、苛立つシルニカは地団駄を踏む。
ガサッ
森林に囲まれた植物だらけのこの場所で突然の物音。魔獣に違いない。
クラウドサインの面々は腰を落として戦闘態勢に入る。先程までのおちゃらけた空気が一瞬にしてピリついた。
「あ、どうも」
そこに居たのはレッド。木の陰からひょこっと顔を出して、シルニカたちにペコリと頭を下げた。
「は?レッド?何でこんなところに……」
シルニカは訝しみながらレッドを睨む。
前の街「プリナード」で受付嬢ルナの計らいにより、その日に会えそうな冒険者チームの代表を片っ端から連れてきて「レッドをチームに入れてくれ」と懇願されたのを思い出した。
彼女にとってはただただ面倒で無駄なことだったが、レッドは名前を呼ばれたことに歓喜し「覚えてくれてた」と晴れ晴れとした笑顔で呟く。
シルニカはそんなレッドの顔に薄気味悪さを感じながらメンバーに目で助けを求める。
「いやいやお嬢……何でってこいつも同じでしょうよ。ギルド総出でダンジョンから逃げ出したっつー魔獣の捜索にあたってんだから。そうだろレッド?」
「……あ、そっか。そりゃそうね……ふんっ!それで?私たちに声を掛けたのは例の魔獣を見つけたってこと?」
シルニカは腕を組んで見下すように顎を上げる。背が低い彼女はその分プライドが肥大化し、さらにレッドのような底辺冒険者はいくら下に見ても良いと考えている節がある。
精一杯見下そうとする彼女に、レッドは目をパチクリさせながら首を捻った。
「……えーっと……すまない。何の話だ?」
ギルドに顔の一つも出していないレッドは例の魔獣とやらを一切知らない。そのことを素直に告げるとクラウドサインの面々に疲れが出た。「嘘だろ……」や「マジかこいつ……」など呆れ返っている。
ギルドに寄らなかったがために情報を仕入れられなかった焦るレッドに司祭が優しく答える。
「この辺りで危険な魔獣を見たと報告が上がったんですよ。ギルドの見立てではブラックサラマンダーの可能性があるとか……」
ブラックサラマンダー。
黒くヌラヌラとテカる巨体。四つ足で平べったいフォルム。洞窟に住んでいるため目が退化しているのだが、聴力と触覚が発達していて、音を立てる物を捕食しようとする魔獣。
目が見えていないので取り敢えず口に入れてみようという生態をしているために人が飲まれた例は数多く、冒険者の死因が多いことでも有名である。
普通のダンジョンでは10階層付近でウロウロしている魔獣だが、どうして地上に出てきてしまったのか不明。原因はともかく町の住民に危険が及ばないように冒険者総出で捜索しているとのことだった。
「え?ああ、ブラックサラマンダーならあっちに……」
「何処だ!?」
レッドの指の先を確認して槍士が駆け出す。盗賊と猛獣使いも後に続く。
出遅れた司祭とシルニカだったが、後方支援の彼らは魔力を溜めつつ、付かず離れずの距離感で会敵すれば良いので焦らない。
「ふんっ!良くやったわレッド。後は私たちに任せて町に戻りなさい」
「それが宜しいですね。ギルドにも顔を出すのですよ」
一応褒められたレッドは心がほっこりしつつ、慌てて2人を引き止める。
「あ、すまない。町はどっちに行けば良いんだ?実は遭難してて……」
冒険者としてあるまじきことだが、山や森を初見で難なく踏破できる野伏や、それに類する職業を持ち合わせていない戦士系ならではの弊害だと言える。
こういったところからも単独行動は危ないので、早死したくなければチームを組む必要があるのだ。
「……そこ真っ直ぐ行ったら拓けた道に出るわよマヌケ。これ以上邪魔する気ならあんたから先に黒焦げにするから」
シルニカは振り向くことなくズンズンと森の奥に進んでいく。司祭は「町までお気をつけて」と苦笑いで去っていった。
『は?!ちょっ……何ですか!?さっきの態度!ちょっと聞いただけじゃないですか!』
女神ミルレースはぷりぷりと怒りながらレッドを見やる。
「いや、これに関して俺は文句を言えない。シルニカさんたちの言いたいことは分かる。それに今は町に戻れることを喜ぼう……」
レッド自身どこかの冒険者が山や森で遭難しているのを見たら、なにか一言言いたくなるかもしれない。シルニカの反応は普通だ。
レッドは自分の不甲斐なさを呪う。うなだれながら町へ向けてトボトボと歩き出した。
レッドと離れたシルニカはニヤリと笑いながら得意の電撃魔法を使うために魔力を練り始める。
「ブラックサラマンダー如き一瞬で黒焦げにしてやるわ!」
「油断は禁物ですよシルニカさん。ブラックサラマンダーには僅かながら魔法耐性が付いているのですから」
「なら丸ごと貫通させてやるわ!」
意気込んで仲間たちが突っ込んでいった場所に到着すると、そこには凄惨な現場が待ち構えていた。
サラマンダーの炎で炭化した倒れた木々、無数のサラマンダーと思しき死骸。辺り一面に肉片が所狭しと散乱していた。
「……お嬢」
先に接敵した槍士と盗賊、猛獣使いだけでこの状況を作り出したのか。いや、違う。それならここまで動揺した顔を向けるだろうか。先ほど使役された猿の魔獣たちも困惑しながらブラックサラマンダーの死骸を触っているようだ。
それにしてもブラックサラマンダーの数が多すぎる。数十匹、もしくは数百匹。黒い皮膚がまるで絨毯のようにひしめき合っている。この世の終わりを連想させるレベルの絶望的な数が全て撃破されている光景。
田舎町「タング」のギルドが総力を挙げる程度では間に合わない人類の危機が、理解の範疇を超えた何かで回避された事実。
整理しきれないシルニカの口からすべり出たのは単なる疑問。
「……どう言うこと?」
何があったのか、誰がやったのか。疑問が恐怖を呼び、状況が焦燥を呼ぶ。
そんなクラウドサイン全員の疑問を余所に淡々と歩くレッド。
『レッド。私は何だか夢を見ているようです。ゴブリン程度に警戒していたのは何だったのかと考えてしまいます』
どこか遠い目をするミルレース。レッドは周りを見渡して人がいないことを確認するとようやく口を開いた。
「警戒は常に必要だ。ミルレースだって言ってただろ?敵を侮るのは間違ってるってな。俺はその通りだって思ってるし、自分の力に過信する油断こそが本当の敵だと考えている。自分の身は自分で守らなきゃだからな」
『それは……確かにそうですね』
「俺はミルレースの言葉に感謝してる。今後もそうやって俺に危険を知らせて欲しい。よく考えもせずに暴走しちまうこともあるだろうからな」
『……分かりましたレッド。そこまで言うならやるだけやってみます。……あっ、見て下さい。町ですよ』
女神とレッドは町を見て安堵した。ようやくベッドで寝られると数日彷徨った体を労うために安宿に向けて歩き出す。
「……おっと違った。先ずはギルドだ」
疲労を押してギルドの館を目指す。レッドのもう一踏ん張り。
鍔の広いトンガリ帽子を左右に振りながら偉そうに悪態をつくのは女冒険者シルニカ。雷を扱う超攻撃型の魔術師で、チーム”クラウドサイン”のリーダー。
ジャラジャラと光る金や宝石などのアクセサリーを付けた真っ白なトンガリ帽子に、真っ赤なマント、胸元の開いたフリフリのシャツにベルトを巻いて身体のラインを出している。短パンでスラリとした足を出して膝上のソックス、歩き辛そうな上げ底ブーツを履いている。
とても魔術師とは思えないほど派手な衣装を身に纏っている。汚れても良い衣装というわけでもないので冒険者にも不向きと言える。
「グズは無いだろ?グズはさぁ……これでも急いだんだぜ?」
ぶつくさと文句を言うのは魔獣使いの男。今回の依頼に適した魔獣を、迅速に手に入れてきたというのにあんまりな言い草だ。
シルニカの生意気な態度と吐き捨てるような物言いには嫌気が差している。それでも見限らずについていくのは並々ならぬ仲間意識のためか、それとも金か。
「荒れてんなぁお嬢。ゴールデンビートルに先を越されたのが相当キてんだなぁ」
頭にバンダナを巻いた盗賊は肩を竦めながら鼻で笑う。遠巻きでこそこそと話しているところから彼女に聞かれるのは不味い会話のようだ。
チームの中で最も体格の良い司祭は腕を組みながら唸る。
「冒険者の中でも選りすぐりの優良チームですよ?格下相手ならともかく、ゴールデンビートルなら諦めもつくと思うのですが……」
「はぁ?諦めつくわけないだろうが」
司祭の言葉に被せるように槍士は叱責する。
「ゴールデンビートルは俺たちのチームとほぼ互角の能力だと分析している。もしベルク遺跡の攻略をあのチーム1つでこなしたのなら、俺たちだってやれてたはずだ。お嬢はそこが気に食わないんだと思うぜ」
槍士の言葉に見識の浅さを感じて反省する司祭。それを盗賊は鼻で笑った。
「誰ってわけでも無いと思うがねぇ。もっと単純に自分が最初じゃなかったのが癪に障っただけじゃないかなぁ?」
ベルク遺跡の攻略。前人未到の30階制覇。これをベテランのゴールデンビートルが達成した。
そこで手に入れた様々なお宝をひけらかし、魔獣から得られる素材を換金した事実は覆しようがない。
クラウドサインのメンバーはベルク遺跡攻略を目指してあの地に留まっていたのだが、先を越された以上武勲は得られない。未解明のダンジョンがまだまだ多くある現状、他を開拓するべきだ。との思いから街を飛び出し現在に至る。
「あんたたち何してんの!?とっとと魔物を見つけて!!」
シルニカは怒声を浴びせてチームを集め、魔獣使いが捕まえてきた猿のような魔獣にも叫び散らしている。急いでるシルニカたちとは裏腹に猿の魔獣は鼻をほじりながらのんびりと歩き出した。
「こ、この……早く歩きなさいよ!このノロマ!!」
魔獣の性格がおとなしめだった為か何を言われてもマイペースを貫く。呆れ返る仲間を余所に、苛立つシルニカは地団駄を踏む。
ガサッ
森林に囲まれた植物だらけのこの場所で突然の物音。魔獣に違いない。
クラウドサインの面々は腰を落として戦闘態勢に入る。先程までのおちゃらけた空気が一瞬にしてピリついた。
「あ、どうも」
そこに居たのはレッド。木の陰からひょこっと顔を出して、シルニカたちにペコリと頭を下げた。
「は?レッド?何でこんなところに……」
シルニカは訝しみながらレッドを睨む。
前の街「プリナード」で受付嬢ルナの計らいにより、その日に会えそうな冒険者チームの代表を片っ端から連れてきて「レッドをチームに入れてくれ」と懇願されたのを思い出した。
彼女にとってはただただ面倒で無駄なことだったが、レッドは名前を呼ばれたことに歓喜し「覚えてくれてた」と晴れ晴れとした笑顔で呟く。
シルニカはそんなレッドの顔に薄気味悪さを感じながらメンバーに目で助けを求める。
「いやいやお嬢……何でってこいつも同じでしょうよ。ギルド総出でダンジョンから逃げ出したっつー魔獣の捜索にあたってんだから。そうだろレッド?」
「……あ、そっか。そりゃそうね……ふんっ!それで?私たちに声を掛けたのは例の魔獣を見つけたってこと?」
シルニカは腕を組んで見下すように顎を上げる。背が低い彼女はその分プライドが肥大化し、さらにレッドのような底辺冒険者はいくら下に見ても良いと考えている節がある。
精一杯見下そうとする彼女に、レッドは目をパチクリさせながら首を捻った。
「……えーっと……すまない。何の話だ?」
ギルドに顔の一つも出していないレッドは例の魔獣とやらを一切知らない。そのことを素直に告げるとクラウドサインの面々に疲れが出た。「嘘だろ……」や「マジかこいつ……」など呆れ返っている。
ギルドに寄らなかったがために情報を仕入れられなかった焦るレッドに司祭が優しく答える。
「この辺りで危険な魔獣を見たと報告が上がったんですよ。ギルドの見立てではブラックサラマンダーの可能性があるとか……」
ブラックサラマンダー。
黒くヌラヌラとテカる巨体。四つ足で平べったいフォルム。洞窟に住んでいるため目が退化しているのだが、聴力と触覚が発達していて、音を立てる物を捕食しようとする魔獣。
目が見えていないので取り敢えず口に入れてみようという生態をしているために人が飲まれた例は数多く、冒険者の死因が多いことでも有名である。
普通のダンジョンでは10階層付近でウロウロしている魔獣だが、どうして地上に出てきてしまったのか不明。原因はともかく町の住民に危険が及ばないように冒険者総出で捜索しているとのことだった。
「え?ああ、ブラックサラマンダーならあっちに……」
「何処だ!?」
レッドの指の先を確認して槍士が駆け出す。盗賊と猛獣使いも後に続く。
出遅れた司祭とシルニカだったが、後方支援の彼らは魔力を溜めつつ、付かず離れずの距離感で会敵すれば良いので焦らない。
「ふんっ!良くやったわレッド。後は私たちに任せて町に戻りなさい」
「それが宜しいですね。ギルドにも顔を出すのですよ」
一応褒められたレッドは心がほっこりしつつ、慌てて2人を引き止める。
「あ、すまない。町はどっちに行けば良いんだ?実は遭難してて……」
冒険者としてあるまじきことだが、山や森を初見で難なく踏破できる野伏や、それに類する職業を持ち合わせていない戦士系ならではの弊害だと言える。
こういったところからも単独行動は危ないので、早死したくなければチームを組む必要があるのだ。
「……そこ真っ直ぐ行ったら拓けた道に出るわよマヌケ。これ以上邪魔する気ならあんたから先に黒焦げにするから」
シルニカは振り向くことなくズンズンと森の奥に進んでいく。司祭は「町までお気をつけて」と苦笑いで去っていった。
『は?!ちょっ……何ですか!?さっきの態度!ちょっと聞いただけじゃないですか!』
女神ミルレースはぷりぷりと怒りながらレッドを見やる。
「いや、これに関して俺は文句を言えない。シルニカさんたちの言いたいことは分かる。それに今は町に戻れることを喜ぼう……」
レッド自身どこかの冒険者が山や森で遭難しているのを見たら、なにか一言言いたくなるかもしれない。シルニカの反応は普通だ。
レッドは自分の不甲斐なさを呪う。うなだれながら町へ向けてトボトボと歩き出した。
レッドと離れたシルニカはニヤリと笑いながら得意の電撃魔法を使うために魔力を練り始める。
「ブラックサラマンダー如き一瞬で黒焦げにしてやるわ!」
「油断は禁物ですよシルニカさん。ブラックサラマンダーには僅かながら魔法耐性が付いているのですから」
「なら丸ごと貫通させてやるわ!」
意気込んで仲間たちが突っ込んでいった場所に到着すると、そこには凄惨な現場が待ち構えていた。
サラマンダーの炎で炭化した倒れた木々、無数のサラマンダーと思しき死骸。辺り一面に肉片が所狭しと散乱していた。
「……お嬢」
先に接敵した槍士と盗賊、猛獣使いだけでこの状況を作り出したのか。いや、違う。それならここまで動揺した顔を向けるだろうか。先ほど使役された猿の魔獣たちも困惑しながらブラックサラマンダーの死骸を触っているようだ。
それにしてもブラックサラマンダーの数が多すぎる。数十匹、もしくは数百匹。黒い皮膚がまるで絨毯のようにひしめき合っている。この世の終わりを連想させるレベルの絶望的な数が全て撃破されている光景。
田舎町「タング」のギルドが総力を挙げる程度では間に合わない人類の危機が、理解の範疇を超えた何かで回避された事実。
整理しきれないシルニカの口からすべり出たのは単なる疑問。
「……どう言うこと?」
何があったのか、誰がやったのか。疑問が恐怖を呼び、状況が焦燥を呼ぶ。
そんなクラウドサイン全員の疑問を余所に淡々と歩くレッド。
『レッド。私は何だか夢を見ているようです。ゴブリン程度に警戒していたのは何だったのかと考えてしまいます』
どこか遠い目をするミルレース。レッドは周りを見渡して人がいないことを確認するとようやく口を開いた。
「警戒は常に必要だ。ミルレースだって言ってただろ?敵を侮るのは間違ってるってな。俺はその通りだって思ってるし、自分の力に過信する油断こそが本当の敵だと考えている。自分の身は自分で守らなきゃだからな」
『それは……確かにそうですね』
「俺はミルレースの言葉に感謝してる。今後もそうやって俺に危険を知らせて欲しい。よく考えもせずに暴走しちまうこともあるだろうからな」
『……分かりましたレッド。そこまで言うならやるだけやってみます。……あっ、見て下さい。町ですよ』
女神とレッドは町を見て安堵した。ようやくベッドで寝られると数日彷徨った体を労うために安宿に向けて歩き出す。
「……おっと違った。先ずはギルドだ」
疲労を押してギルドの館を目指す。レッドのもう一踏ん張り。
33
あなたにおすすめの小説
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。
永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。
17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。
その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。
その本こそ、『真魔術式総覧』。
かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。
伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、
自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。
彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。
魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。
【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜
大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!?
どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる