「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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2章

13、刺客

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「ベルク遺跡の1フロア毎の強さが大幅に低下したとの報告が上がりました。ダンジョンに入れなかった魔獣も生息域を移したのが要因と見られています」

 ベルク遺跡の攻略。これは多くの情報をもたらす。その情報を共有するためにギルド内で会議を開いていた。

「最下層には玉座が鎮座し、支配者のような魔物が居たものと思われます」

 ダンジョンにおいて常識となっているのは下に降りるほど魔物が強くなるということ。最下層に最強の魔物が居るのは最早当然と言える。30階層も地下があれば王様気取りの魔物が居てもおかしくはない。
 魔道具マジックアイテム”無色の水晶”に映し出された男が一つ頷いた。

『……なるほど。魔物にも崇め奉る存在が居るということか。しかし妙な話よ。今まで19階層までしか進んでいなかったというのに凄まじい進歩だ。これを1組の冒険者が成し遂げたとは思えん』

 真っ白な髭を揺らしながら唸るのはアヴァンティアのギルドマスターだ。
 各地に点在するギルドの館にはそれぞれにギルドマスターと称する館長が就任し、地域に根ざした活動をしている。都心に近いほど偉いとされ、有事の際にはアヴァンティアのギルドマスターがギルド全体を統括することになる。

「確かに今まではそうでした。我々が推測するに皆が皆安全面に配慮し、踏み込まなかったというのが現実ではないでしょうか?」
『つまりはそれほど危険ではなかったと?』

 他のギルドマスターが横から口を出す。誰が喋ったのか曖昧だったので、特定は諦めて取り敢えず頷く。

「ゴールデンビートルのようなベテラン冒険者に1組でダンジョンを何とかしろというのはあり得ないことではありますが、例えばこのレベルの冒険者が5組いれば充分最下層に到達可能であるのではないかと考えます」

 ざわざわと騒がしくなる会議場内。アヴァンティアのギルドマスターは腕を組んで唸る。

『難しい問題だな。ゴールデンビートルの1組でダンジョンを攻略した実績がある以上、観客はそれ以上を求めるだろう……』

 冒険者は自分たちの有名を広め、ギルドの名声を高めることを求めている。現在最高峰の冒険者チーム「ビフレスト」が持て囃されているのは、7人の実力者が経験と技を活かしてダンジョンの強者を倒していくロマンにこそある。
 ならば冒険者チームが寄り集まってダンジョンを仲良く攻略していく様を見ればどうなるか。大抵のファンはそれを喜ぶ可能性があるが、一部のファンは冒険者チームが日和ったと揶揄するだろう。今すぐにもクリア必至な状況でない限りこの案は破棄すべきだ。

『とりあえずは今のままを維持しつつ、観客を飽きさせない努力を惜しまないことだ。いてはビフレストなどの有名な冒険者チームを焚きつけ、仕事をより多くこなしてもらうのが良いだろう。ダンジョンに限らず、イベントを開催して集客を狙うのも一つの案だ』
『それは中々名案ですな!せっかくですのでゴールデンビートルも呼んでみてはいかがでしょう?彼らの労をねぎらうと言う名目なら何処へだって喜んで馳せ参じるでしょうからな!』

 わいわいと先の懐疑的な空気から一転、明るい雰囲気に早変わり。冒険者チームなど端から道具でしかなく、わざわざ使ってやってるのだという傲慢さが滲み出ている。

『お待ちください』

 その時、田舎町のギルドから声が上がった。せっかくの穏やかな空気を切り裂く重い声に皆の顔が訝しんだ。

『昨今、我らの町の近くのダンジョンでブラックサラマンダーが異常発生する事態に陥りました。幸いクラウドサインを筆頭とした冒険者チームの活躍でことなきを得ましたが由々しき事態です。万が一この手の天変地異が起こった場合、人類の脅威となりましょう。このことからダンジョンの攻略は調査という一点において急務であると打診致します。事件の詳細に付いては未だ調査段階となるので発表には至りませんが、どのような小さなことでも分かり次第情報を共有します。どうかご協力のほどよろしくお願い致します』

 ダンジョンの攻略と共に巻き起こった事態。今後も何があるか分からない状況において安易な攻略は間違っているとの見解が一部から飛ぶ。とはいえ、これがただの田舎町だけの異変で済むはずもなく、他の街の近辺でも起こり得ることから、ダンジョンの出入り口の監視や封鎖などの話まで出てきた。日和見主義のギルドマスターも白熱する議論。
 会議が佳境に入ったその頃、ベルク遺跡の側にある街「プリナード」のギルド会館に謎の人物が訪ねてきた。全員がその異様さに目を見張る。全身黒尽くめで仮面を被った2m20cmはあろうかという巨体。ゴツリゴツリと重そうな足音を立てながら受付嬢ルナの前に立った。

「あ……あの?何か御用でしょうか?」

 受付の机を挟んで困惑するルナに、男と思われる低音の掠れ声を出し始めた。

「レッド……カーマインは……何処にいる?」

 聞き取りづらい声が脳に浸透するまで一拍の猶予が必要だった。ようやくハッとしたルナは言葉に詰まりながら返答する。

「あ、ああ。えっと……レッド=カーマインは数日前にこの街を出ていきました。もし急ぎのお仕事でしたら別の方、もしくは冒険者チームをご紹介致しますが?」

 仮面の男は首をゆっくり横に振った。

「レッド……カーマインに……依頼がある。他は……必要ない」
「……かしこまりました。それでは各地に問い合わせてみますので、どうぞお座りになってお待ちくださいませ。ちなみにあなた様のお名前は?」
「バトラー……」
「バトラー様ですね。かしこまりました。それではあちらでお待ちくださいませ」

 ルナが指し示したのは食堂兼待合席。バトラーは逆らうことなくゆっくりと椅子に向かって歩き出した。

「だぁれ?あの人」

 同僚のヘレナがこそっと尋ねてきた。ルナは無色の水晶にサラサラと文字を書きながらチラッとヘレナを見た。

「分からないです。レッドさんをお探しのようですが、得体が知れないです。気配が人と違うように思えます」
「さっすが道場の娘。常人じゃなさそうだとは思ってたけど、もしかしたら何かの因縁でもあるのかしらね~」

 無色の水晶に文字を書き終えたルナは特に何も考えずに送信した後、ヘレナの言葉にハッとした顔で振り向いた。

「因縁……あっ!そうですよ!どうしましょう……?このままお伝えしても良いのでしょうか?」
「う~ん……過去何かあったにせよ彼らの事情に首を突っ込むわけにはいかないし、仕事である以上は伝えないわけにもいかないわね。得体が知れないのが一番厄介だわ……」

 反社会勢力やギルドに恨みを持つであろう害悪ならこの場で冒険者に拘束してもらうことも出来ただろうが、未知の一般人を取り押さえるなどそれこそギルドの信用問題だ。
 ヘレナが顎に手を当てて考えている時に無色の水晶に変化があった。黄色く光り輝いている。先の質問への返信だ。

「早い……」

 ルナはヘレナに助けを求めるように困り顔で見た。ヘレナは肩を竦め、したり顔を向ける。

「ん~……ここは一つ、レッドと言う冒険者を信じてみるのはどうかしら?」
「え?で、でも……」
「あの倉庫にあった大量の素材。あれが彼が1人で集めた物なら、あの程度の男は瞬時に制圧出来るでしょ?気を揉んだところで私たちはお手上げだし、彼にお任せするしかないでしょうね」

 ルナはこれ以上考えるのをやめた。ヘレナの意見に従い、レッドの所在をバトラーに知らせる。バトラーはすぐさま踵を返してギルドの館を後にする。
 ルナはバトラーが出てすぐに外を確認する。まだ見えるはずの後ろ姿は見当たらず、あっという間に見失ってしまった。
 またしても何も出来ない歯痒さが彼女を襲ったが、最近では諦めることも学んだためか思ったより精神的ダメージはなかった。気持ちを切り替えてヘレナの言う通りにレッドを信じてみることにした。

「レッドさん……すいません……」

 無力に苛まれるルナは「タング」という田舎町にいるレッドにポツリと謝り、トボトボと受付に戻って行った。
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