一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
492 / 718
第十二章 協議

エピローグ

しおりを挟む
「いやぁ……危なかったわい……あそこで撤退の合図が無ければ死んでおったのは儂だったのぅ」

 ペルタルク丘陵から全力で逃げ出した八大地獄の面々。丘から遠く離れた海が一望出来る崖に陣取り、体力回復に勤しむ。トドットはロングマンに治癒魔法をかけていた。

「ノーンまで死んだとか嘘だろ?あいつまたどっかで道草食ってるとかじゃねぇのかよ?」

 ジニオンのぶっきらぼうな疑問をロングマンが否定する。

「ジョーカーが確認した。仰向けに倒れ、腹に穴が開いていたそうだ」

「マジか……」

 ショックで言葉がない。ノーン、ティファル、テノスの三人が死に、残りは五人となっていた。随分と寂しくなった。
 先の戦いを思い出しながらジニオンは口を開く。

「なぁ……おい、ジョーカー。オメーのとこに行った魔王はどんなだった?」

 ジョーカーはじっと黙って別の方角を見ている。完全に無視された形だが、ジニオンは気にせずに口を開く。

「俺が戦ったのは金属を操りやがった。ただし自分の体から分泌したものだけらしいがな……」

「分泌?って、金属をか?」

 全く反応しないジョーカーの代わりにトドットが応えた。ジニオンは頷く。

「ああ……全身鎧の魔王だ。正直よく分かんねぇ野郎だが、面倒臭ぇのは確かだぜ」

 トドットは「そうか」の一言でこの話を切る。消化不良も良いところだ。こんな時、馬鹿にしたりされたりで言い争ってた奴らが軒並み死んでしまったのだ。ジニオンはこの世はつまらなくなったと外方そっぽを向く。
 ロングマンはそんなジニオンの機微を窺い、パルスとジョーカーの居る場所を確認してから少し大きな声で伝える。

「この世界で危険なのは三つ。白の騎士団のゼアル、魔王ミーシャ、そして神の気まぐれ。これらを越えねば自由は永久に来ぬ。そこで出来ることに着手する。まず、神の気まぐれは放っておく。アレらと正面から喧嘩するには戦力が足らん。そこで、ゼアルとミーシャだが……正直我らにはこの二つを殺すことは出来ん」

「ん?おいおい、出来ねぇことだらけじゃねぇか。藤堂も逃しちまうし、結局俺たちには何も成せなかったってことだろ?これもうバックれちまう方が早くねぇか?全部捨ててよぉ」

「何処に?奴らは神だぞ?それに我が言いたかったのはここからだ。藤堂の鎖は神が用意した物。その効力を司っているのも連中だ。ならば奴らにその効力を切ってもらえば良い。そこは何とかしよう」

「じゃあ、ゼアルとミーシャは?」

「互いに潰しあうように誘導するしかあるまい。手始めにいくつか人間の国を襲い、ミーシャに罪を被せるのはどうか?」

 ジニオンは鼻で笑う。

「裏方か……俺たちにそんな器用なことが出来るかよ。単なる暴力装置だぜ?んなことより、連中を呼び出して三人を復活させよう。話はそれからだぜ」

「ふむ……もちろんそのつもりだが、今回は勝手が違う。前回は藤堂の封じ込めに成功していたからお前を生き返せたが、今回はそれこそ何もない。最悪復活は断られるだろう。そのつもりでいて欲しい」

 これには全員の顔が渋くなる。何とも面倒な時代に起こしたものだと苛立ちを隠せない。

「……今後の方針は?」

 それはパルスから放たれた。見た目とは裏腹に大人びた印象を受ける。

「復活か拒否か。奴らの判断で決めようとも思っていたが、身を潜めて長期戦に移行するのが良いかもしれん。少なくともゼアルがどうにかならんと話にならん」

「ちょっと良いか?ラルフはどうする?藤堂とミーシャは無理でもただの人間なら何とかなるんじゃねぇの?」

「いや、ミーシャに守られている以上、それは夢物語だ。何より先ずは……」

「ラルフなら死んだ」

 パルスの口からとんでもないことが飛び出した。

「……お前がやったのか?」

「違う、あの女が殺した。ミーシャ、だった」

 パルスの虚言とも思える言葉に真剣な顔を見せる。

「パルスが言うのだ。間違いあるまい。しかし、これは……どう判断すべきか?」

「考えるまでもなかろうて。先ずは一人と言うべきじゃろう。儂らの成果でなくとも、それはそれ。これを機に一人でも多く戦力を確保し、力を蓄えるのじゃ。出来ることを一から順にやっていこうぞ」

 トドットの言葉は至極最もだ。これをダシに仲間の復活を要求すれば良い。しかし、ロングマンの顔は残念極まりないと行った顔だった。

「あの男は我が殺したかった……」

 その呟きは空中に消えていった。



 空中浮遊要塞スカイウォーカー。ラルフ一行の要塞。
 要塞内はお通夜ムードだった。それはベルフィアから放たれている。椅子に座ってガックリと落ち込んでいるのが痛々しかった。

 ペルタルク丘陵で戦いを終えたブレイドたちは白の騎士団と別れ、危険を察して要塞に戻った。それと言うのも、ミーシャが記憶喪失によって敵側に寝返ってしまったことを聞いたからだ。
 世界最強の魔族と真っ向から戦える存在は魔王くらいのものだろうが、ベルフィアとくろがねは戦いたくないと拒否するし、エレノアを戦わせたくないし、ティアマトは療養中で戦えない。ブレイドや守護者ガーディアンの面々もそれなりに強いが、ミーシャを前にすれば結果は火を見るより明らか。何より、ずっと仲間だったミーシャを敵にするということ自体が考えられなかった。

「いや~、マジ死ぬところだったぜ」

 ハットを被り直したラルフは椅子に腰掛けて一息ついている。ミーシャの魔力砲を前に生きていた。

「あの魔力砲は確実にミーシャさんのものでした。それを真っ向から受けて死ななかったなんて、にわかには信じられませんが……」

「当然だ。受けてないからな」

 種明かしはこうだ。ミーシャの魔力砲が迫る中、ラルフはタイミングを見計らって小さな異次元ポケットディメンションに身を隠した。まさかあれほどの魔力砲を放ってくるとは夢にも思わなかったが、それが功を奏した。
 人が横並びに三人くらい並んでいても消し去れるほどのぶっといビーム。焦ってハットを取りこぼした時は、お気に入りのハットを消滅させたと異次元の中で悲しんだくらいだ。
 しばらくして元の次元に顔を出した時の、ハットが無事だった喜びは筆舌に尽くし難い。あの少女もすっかりいなくなっていたので、自分を狙う連中みんながラルフの死を確信してくれていたら良いなとふと思った。

『流石ですラルフ。私が力を与えた甲斐があるというもの』

 サトリはニコニコ笑ってラルフを賞賛する。それに不快感を示すのはベルフィアだ。

「……おどれは何じゃ?」

『私はサトリ。死神です』

「はっ!随分と扇情的な死神じゃノぅ。じゃがこノ気配……なルほど、ラルフノ言っとっタことは本当だっタヨうじゃな……」

『ふふっ、恐れ入ります』

 突拍子が無さすぎて聞き流していた神からのギフト。本物が現れたとあっては信じざるを得まい。

「じゃが今更出てきてどうなル?ミーシャ様は彼奴ら不届き者共ノ手に落ちタ。それもラルフと出会う以前とくれば、如何とも仕様がない。妾はそれヨり少しばかり出会いが遅いでな……」

 ベルフィアは自嘲気味に笑う。自分の信じていたものを打ち砕かれた絶望が諦めを生んだのだ。ミーシャに跪き、主従関係を結んでから、ミーシャへの敵愾心は霧散している。戦う気は無い。
 鉄はそんなベルフィアの気持ちなど度外視して口を挟む。

「我らはそれよりもっと以前から知り合っている。ここらで貴様らを裏切ると言うのも手ではあるが、蒼玉のやり方はもとより気に食わんと思っていた。ティアマトの考えは知らんが、俺はもう少しここに居ようと思う」

「それは助かる。ミーシャを救い出すのに戦力は多ければ多いほど良い」

 バンッ……バキィッ

 ベルフィアはラルフの言動に腹を立てて机を思いっきり叩いた。ヒビが入るほどに。

「……適当なことを抜かすな。おどれが言っタんじゃぞ?記憶を完全に失っタとな。どうやってミーシャ様に取り入ルつもりか?」

 その目は真剣で、言い方を違えれば待っているのは苛烈な攻撃だ。

「いや、取り入るなんてとんでもない。新しい記憶に俺たちを擦り込むと古い記憶が消えちまうかもだろ?ミーシャの記憶を無理矢理にでも復活させる。それしか方法はないぜ?」

 苛立ちが募る。ラルフの言葉を信じるのは簡単だ。しかし楽観的すぎる上に分からないことがある。「復活?どうやって?」だ。
 ラルフの自信に満ちた顔。隣に侍るサトリの表情。誰もピンと来てない中にあって二人だけが得意げにしている。

『ところでラルフ。次の場所はもう決まっているのでしょうか?』

「え?……ちょっ、白々しいなサトリ。見えてる癖に……まぁ良い。次の行き先は無敵戦艦”カリブティス”だ。行くぞ、白絶の元へ」

 白絶との再開がもたらすものは天国か地獄か。ラルフの考える秘策はミーシャを救い出せるのか。絶対に諦めない。これがラルフの出した答えだ。

 蒼玉とイミーナ、そして八大地獄との決着は持ち越された。
 時間の逆向。蒼玉の神の如き力と神そのものとの争い。今回の戦争は、古代種エンシェンツの介入もあって凄まじい被害をもたらした。今回はラルフを含め、能力と機転によって皆どうにかなったが、次はどうなるのか分かったものではない。
 ミーシャという世界最強の戦力を失ったラルフ一行の行く末や如何に。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...