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「エディオ様は後継者事前試験に合格なさいましたでしょう?」
エディオの学園での成績も、筆記試験の大まかなレベルも知っているフィリナージェは首を傾げた。エディオは侯爵家へ婿入り予定だったから上級試験を受けたはずだ。
筆記試験は上級中級下級に分かれていて侯爵家公爵家の後継者は上級でなければならない。
後継者試験が登用されてから、後継者とならずとも筆記試験だけは受けておくという者が少なからずいた。
後継者となる者は個人でも夫婦でもどちらかが筆記試験に合格していればよいのだ。婿入り予定だったり、嫁ぎ予定の後継者が能力的に不安だったり、次男三男であるため自分を売り込むために資格として取ったり。また、夫婦とも能力が足りない場合、優秀な管理者を雇用してもよい。その管理者は筆記試験に合格していなければならない。
様々な理由で後継者ではないが事前試験を受けている者がいる。面接試験は正式に後継者となる時に行われる。管理者を雇うにしても後継者となる者には面接試験はある。
ルーチェでは合格できないと踏んだモーロサリ侯爵の勧めで早々に上級筆記試験を受け一発合格した。
「ええ。僕は筆記試験に合格できました……でも」
エディオはカップを手にしてお茶を口にする。そして一息ついた。
「まだ公にはなっていないので他言しないでほしいのですが」
「はい」
「ルーチェ嬢が侯爵夫人として不適格だと判断されてしまったのです」
「え?」
エディオが婿入りすれば、モーロサリ侯爵家の領地経営はエディオがすることになるだろう。そのための事前筆記試験なのだ。
だが、社交では、ルーチェも侯爵夫人として動くことは当然である。
「領地経営に携わるわけではないのに不適格と判断されることなどありえますの?」
「ある子爵家からの告発があったらしいです。その子爵家へ嫁ぐ予定だった男爵家のご令嬢が心を病んで婚姻ができなくなったのはルーチェ嬢の責任だと」
「ま……まさか……」
「そのご令嬢は学園でルーチェ嬢と同じクラスで、一年生の後半に自主退学したそうです。
そしてご令嬢の様子を鑑みて社交には出れないと判断し婚約は解消となってしまったと……」
「ですが、高位貴族からの皮肉など社交界では当たり前のこと。お気を崩されたご令嬢には辛いお話かもしれませんが、後継者不適格となるほどとは思えませんわ」
「それが……それで済まなかったのですよ。まず告発があった時点で侯爵家へ調査員が行きました。その翌日、侯爵夫妻とルーチェ嬢は男爵家へ乗り込んで罵詈雑言を……浴びせたらしいです」
「っっ!!」
「あまりに酷い行動に調査員が動きました。領地の調査をしてみると領民からの批判もありましたし、脱税や使い込みまで露見してしまいました」
「では、後継者以前に……」
「ええ、侯爵自身が強制引退させられました。現在侯爵様の弟様が当主の勉強を始められております。後継者試験を受けるために。
暫くは国の管理者が就いてくれるので領地経営の心配はないのです」
「失礼ですが、弟様は大丈夫な方ですの?」
「元々三割ほどの領地の管理をしてくださっていたのです。勉強といっても試験のための復習をしているって程度です。合格には一年もかからないと思います。
そして、弟様には子息がいらっしゃいますので今後はその方が後継者として学んでいくことになりますね」
「……大変でしたわね」
エディオは苦笑いで頷いた。
「ですが、そのような大切なお話をわたくしにしても大丈夫でしたの?」
「ほんの二ヶ月ほど知らないフリをしていただければ。こんな話は噂になるに決まっておりますから」
「そうですわね」
男爵家も子爵家も、そして調査員も知っている話なのだからすぐにでも噂になるだろう。ましてや予定でなかった当主交代は話題のトップを飾るであろう。
「ですが、噂はどんな形で広まるかわからないですからね。フィリナージェ嬢には僕から説明をさせていただきたかったのです。この婚約解消において僕には瑕疵はないと。
父の行動が軽率だと感じたのは、理由もわからずに僕からの釣書が届いたら貴女は僕を心配するだろうと思ったからなのです」
「ええ。確かに驚きましたわ」
「そして、僕のためにこうして茶会まで開いてくださる。相変わらずの心配りがとても嬉しいです」
エディオは眩しげにフィリナージェを見つめた。
エディオの学園での成績も、筆記試験の大まかなレベルも知っているフィリナージェは首を傾げた。エディオは侯爵家へ婿入り予定だったから上級試験を受けたはずだ。
筆記試験は上級中級下級に分かれていて侯爵家公爵家の後継者は上級でなければならない。
後継者試験が登用されてから、後継者とならずとも筆記試験だけは受けておくという者が少なからずいた。
後継者となる者は個人でも夫婦でもどちらかが筆記試験に合格していればよいのだ。婿入り予定だったり、嫁ぎ予定の後継者が能力的に不安だったり、次男三男であるため自分を売り込むために資格として取ったり。また、夫婦とも能力が足りない場合、優秀な管理者を雇用してもよい。その管理者は筆記試験に合格していなければならない。
様々な理由で後継者ではないが事前試験を受けている者がいる。面接試験は正式に後継者となる時に行われる。管理者を雇うにしても後継者となる者には面接試験はある。
ルーチェでは合格できないと踏んだモーロサリ侯爵の勧めで早々に上級筆記試験を受け一発合格した。
「ええ。僕は筆記試験に合格できました……でも」
エディオはカップを手にしてお茶を口にする。そして一息ついた。
「まだ公にはなっていないので他言しないでほしいのですが」
「はい」
「ルーチェ嬢が侯爵夫人として不適格だと判断されてしまったのです」
「え?」
エディオが婿入りすれば、モーロサリ侯爵家の領地経営はエディオがすることになるだろう。そのための事前筆記試験なのだ。
だが、社交では、ルーチェも侯爵夫人として動くことは当然である。
「領地経営に携わるわけではないのに不適格と判断されることなどありえますの?」
「ある子爵家からの告発があったらしいです。その子爵家へ嫁ぐ予定だった男爵家のご令嬢が心を病んで婚姻ができなくなったのはルーチェ嬢の責任だと」
「ま……まさか……」
「そのご令嬢は学園でルーチェ嬢と同じクラスで、一年生の後半に自主退学したそうです。
そしてご令嬢の様子を鑑みて社交には出れないと判断し婚約は解消となってしまったと……」
「ですが、高位貴族からの皮肉など社交界では当たり前のこと。お気を崩されたご令嬢には辛いお話かもしれませんが、後継者不適格となるほどとは思えませんわ」
「それが……それで済まなかったのですよ。まず告発があった時点で侯爵家へ調査員が行きました。その翌日、侯爵夫妻とルーチェ嬢は男爵家へ乗り込んで罵詈雑言を……浴びせたらしいです」
「っっ!!」
「あまりに酷い行動に調査員が動きました。領地の調査をしてみると領民からの批判もありましたし、脱税や使い込みまで露見してしまいました」
「では、後継者以前に……」
「ええ、侯爵自身が強制引退させられました。現在侯爵様の弟様が当主の勉強を始められております。後継者試験を受けるために。
暫くは国の管理者が就いてくれるので領地経営の心配はないのです」
「失礼ですが、弟様は大丈夫な方ですの?」
「元々三割ほどの領地の管理をしてくださっていたのです。勉強といっても試験のための復習をしているって程度です。合格には一年もかからないと思います。
そして、弟様には子息がいらっしゃいますので今後はその方が後継者として学んでいくことになりますね」
「……大変でしたわね」
エディオは苦笑いで頷いた。
「ですが、そのような大切なお話をわたくしにしても大丈夫でしたの?」
「ほんの二ヶ月ほど知らないフリをしていただければ。こんな話は噂になるに決まっておりますから」
「そうですわね」
男爵家も子爵家も、そして調査員も知っている話なのだからすぐにでも噂になるだろう。ましてや予定でなかった当主交代は話題のトップを飾るであろう。
「ですが、噂はどんな形で広まるかわからないですからね。フィリナージェ嬢には僕から説明をさせていただきたかったのです。この婚約解消において僕には瑕疵はないと。
父の行動が軽率だと感じたのは、理由もわからずに僕からの釣書が届いたら貴女は僕を心配するだろうと思ったからなのです」
「ええ。確かに驚きましたわ」
「そして、僕のためにこうして茶会まで開いてくださる。相変わらずの心配りがとても嬉しいです」
エディオは眩しげにフィリナージェを見つめた。
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