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~とある公爵令嬢の門出~
ロンゼ公爵家の一人娘フィリナージェは学園の最終学年の三年生である。半年後には卒業する。
国が後継者制度改正した翌日、後継者事前試験を申し込みその日のうちに筆記試験を受け見事合格した。
制度改正が発表された日はフィリナージェが婚約解消を元第三王子に言われた日にも関わらず、翌日に合格するなど、本当に元第三王子のことは心の傷になっていないようだ。
「わたくしって薄情なのね」
フィリナージェは元第三王子に対して未練は全くないが、口には出せない憐憫の思いはあった。どんなに恵まれた環境であっても覆せない本人の資質というものは存在する。元第三王子はどんなに努力しても人の上に立つことは難しかったであろう。
『彼にとって逃げることが精一杯。きっと反省もなさっていないわ。でも、それが資質。王家としての資質を持ち合わせなかった者が足掻いた結果。きっとご本人はホッとなさっているわね。
とはいえ、重責はなくなったとも決して楽なお仕事でないでしょう』
フィリナージェは窓の向こうの遠くの空を見つめた。
「お相手によりますわ。お嬢様はわたくし共が困っているとすぐに手を差し伸べてくださるではありませんか」
フィリナージェ専属メイドのカリンの声で我に返る。カリンはお茶を淹れながら諭した。
「わたくしが火傷をした翌日には目の下に隈をお作りなり、本当にお優しいお心根に感激いたしました」
「もう、恥ずかしいお話はしないで」
「うふふふ」
フィリナージェはクッキーを口に運びその場を誤魔化した。
合格者一号となったのは必然だが、それを知った両陛下と第一王子の落胆ぶりはフィリナージェの知るところではない。
〰️ 〰️ 〰️
卒業までの半年、フィリナージェには数え切れないほどの釣書とプレゼントが届いた。プレゼントはたとえ生花であろうとも丁寧な手紙とともに返却した。釣書には執事が『まだ傷が癒えておらず新たな婚約は考えられません』と返事をした。
返事を書くのは執事だが、基本的に真面目なフィリナージェは『釣書やプレゼントをくださった方とどこかで会ったときに失礼があってはならない』と、執事が表にした名前書きを毎週末にチェックしていた。
門出を祝う卒業式は主席卒業生として代表挨拶をし、その堂々たる姿に王妃陛下が涙していたことは語り草になった。
〰️ 〰️ 〰️
卒業から半年、女公爵見習いとして父親に指導を受けながら執務を熟すフィリナージェだが、律儀に毎週末名前書きをチェックする。
「あら、この方は三回目ね。次に来たらこの方にはお返事は書かなくていいわ。プレゼントの返却もそのような方にはお手紙を付属する必要はないわ。
公爵家としていつまでも下手でいるわけにはいかないもの」
「かしこまりました」
そうして過ごしていた日々の週末。名前書きを見たフィリナージェは首を傾げた。
「あら? この方は婚約者様がいらっしゃったはずですのに?」
フィリナージェはその名の者に手紙を書きお茶へ招待した。あくまでも同窓生として。
お茶会にはフィリナージェの同窓生で女性が三人、男性が三人招待された。誰もが口が固くフィリナージェを大切に思ってくれている友人である。フィリナージェと同じクラスであった六人は成績も優秀である。
メイドが五人をサロンへ案内し、フィリナージェと釣書の者は応接室で向かい合った。
「ロンゼ嬢。私の父が軽率な行動をしたようでご迷惑をおかけしました」
「エディオ様。お顔を上げてくださいませ。
学園での時間はわたくしにとって宝物のような思い出です。あの頃のように名前でお呼びくださいませ」
「フィリナージェ嬢。ありがとうございます。
父からの釣書には驚いたでしょう?」
「ええ。エディオ様はルーチェ様とご婚約されておりませんでしたか?」
「そうだった……のですけれど」
エディオは悲しげに笑った。
エディオ・レグレントは侯爵家の次男だ。学園の二年生の終わり頃、一つ年下のモーロサリ侯爵家の一人娘ルーチェと婚約しモーロサリ侯爵家へ婿入りすることになった。ルーチェはあまり評判の良くない令嬢であったので、大人しく成績優秀なエディオに矛先が向いたのだ。
「婚約は解消になったのです……」
「……そうでしたの……」
婚約者がいるのに釣書を送ってくるほどレグレント侯爵が非常識人とは思えなかったので、それは予想できていた。
ロンゼ公爵家の一人娘フィリナージェは学園の最終学年の三年生である。半年後には卒業する。
国が後継者制度改正した翌日、後継者事前試験を申し込みその日のうちに筆記試験を受け見事合格した。
制度改正が発表された日はフィリナージェが婚約解消を元第三王子に言われた日にも関わらず、翌日に合格するなど、本当に元第三王子のことは心の傷になっていないようだ。
「わたくしって薄情なのね」
フィリナージェは元第三王子に対して未練は全くないが、口には出せない憐憫の思いはあった。どんなに恵まれた環境であっても覆せない本人の資質というものは存在する。元第三王子はどんなに努力しても人の上に立つことは難しかったであろう。
『彼にとって逃げることが精一杯。きっと反省もなさっていないわ。でも、それが資質。王家としての資質を持ち合わせなかった者が足掻いた結果。きっとご本人はホッとなさっているわね。
とはいえ、重責はなくなったとも決して楽なお仕事でないでしょう』
フィリナージェは窓の向こうの遠くの空を見つめた。
「お相手によりますわ。お嬢様はわたくし共が困っているとすぐに手を差し伸べてくださるではありませんか」
フィリナージェ専属メイドのカリンの声で我に返る。カリンはお茶を淹れながら諭した。
「わたくしが火傷をした翌日には目の下に隈をお作りなり、本当にお優しいお心根に感激いたしました」
「もう、恥ずかしいお話はしないで」
「うふふふ」
フィリナージェはクッキーを口に運びその場を誤魔化した。
合格者一号となったのは必然だが、それを知った両陛下と第一王子の落胆ぶりはフィリナージェの知るところではない。
〰️ 〰️ 〰️
卒業までの半年、フィリナージェには数え切れないほどの釣書とプレゼントが届いた。プレゼントはたとえ生花であろうとも丁寧な手紙とともに返却した。釣書には執事が『まだ傷が癒えておらず新たな婚約は考えられません』と返事をした。
返事を書くのは執事だが、基本的に真面目なフィリナージェは『釣書やプレゼントをくださった方とどこかで会ったときに失礼があってはならない』と、執事が表にした名前書きを毎週末にチェックしていた。
門出を祝う卒業式は主席卒業生として代表挨拶をし、その堂々たる姿に王妃陛下が涙していたことは語り草になった。
〰️ 〰️ 〰️
卒業から半年、女公爵見習いとして父親に指導を受けながら執務を熟すフィリナージェだが、律儀に毎週末名前書きをチェックする。
「あら、この方は三回目ね。次に来たらこの方にはお返事は書かなくていいわ。プレゼントの返却もそのような方にはお手紙を付属する必要はないわ。
公爵家としていつまでも下手でいるわけにはいかないもの」
「かしこまりました」
そうして過ごしていた日々の週末。名前書きを見たフィリナージェは首を傾げた。
「あら? この方は婚約者様がいらっしゃったはずですのに?」
フィリナージェはその名の者に手紙を書きお茶へ招待した。あくまでも同窓生として。
お茶会にはフィリナージェの同窓生で女性が三人、男性が三人招待された。誰もが口が固くフィリナージェを大切に思ってくれている友人である。フィリナージェと同じクラスであった六人は成績も優秀である。
メイドが五人をサロンへ案内し、フィリナージェと釣書の者は応接室で向かい合った。
「ロンゼ嬢。私の父が軽率な行動をしたようでご迷惑をおかけしました」
「エディオ様。お顔を上げてくださいませ。
学園での時間はわたくしにとって宝物のような思い出です。あの頃のように名前でお呼びくださいませ」
「フィリナージェ嬢。ありがとうございます。
父からの釣書には驚いたでしょう?」
「ええ。エディオ様はルーチェ様とご婚約されておりませんでしたか?」
「そうだった……のですけれど」
エディオは悲しげに笑った。
エディオ・レグレントは侯爵家の次男だ。学園の二年生の終わり頃、一つ年下のモーロサリ侯爵家の一人娘ルーチェと婚約しモーロサリ侯爵家へ婿入りすることになった。ルーチェはあまり評判の良くない令嬢であったので、大人しく成績優秀なエディオに矛先が向いたのだ。
「婚約は解消になったのです……」
「……そうでしたの……」
婚約者がいるのに釣書を送ってくるほどレグレント侯爵が非常識人とは思えなかったので、それは予想できていた。
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