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ミルクの優しさ
06 ー スイール村
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この村では冬の訪れが早いとレビに聞いたので、明日のメニューはホワイトシチューに決めた。肉屋で大量に鶏肉を買わなければならないと誠が考えていた頃、客室のドアがノックされた。
ドアを開けると、アレクセイだった。
もしかして来るかなと思っていただけに、予想が当たって嬉しいが、アレクセイの表情は曇っている。夕食前の会話が、まだ尾を引いているのかもしれなかった。
誠はソファを勧め、自分もその隣に座った。
「酒でも呑むか?」
「いや、ありがたいが、今日はやめておこう。酔うと君に何をするか、分からないからな」
「どんだけ呑むんだよ。お前、夕食の時にワイン呑んでるけど、酔ったことないだろ?」
「酒には強い方だが、念のためだ。うっかり酔って、マコトに襲いかかりでもしたら困るのは君だろう?」
「まぁ、そうだけどさ」
そう言いつつも、誠はアレクセイに体を寄せた。そして自分よりも長い指をいじる。
「マコト…誘っているのか?」
「そうとも言うし、違うとも言うかな」
「そうか。悪い男だな」
「初めて言われたよ、そんな言葉」
誠は笑いながら、アレクセイにキスをした。
確かにこの状況だけ見れば、自分は悪い男かもしれない。きっと先を望んでいるアレクセイに、期待だけ持たせて言外に拒絶しているのだから。
「アレクセイは、いい男だ」
「まさか。君に嫌われたくなくて、必死なだけさ」
言いながらアレクセイは誠を自分の膝に乗せ、キスを繰り返した。
ひとしきり唇を合わせて満足した後、アレクセイは本題を切り出した。
「マコト、相談なんだが…夜は客室ではなく、俺の部屋で寝ないか?」
「は?」
「何もしないと誓う。ただ、君をこの腕に閉じ込めてしまいたいだけだ。マコト、君も覚えているだろう?あの朝のことを」
アレクセイの言うあの朝と言うのは、きっと先日のことだろう。
誠は頬を染めた。
あの後、いつの間にか寝落ちをしていて、気付いたら早朝になっていた。しかも目の前にはこの美丈夫の、どアップだ。二度寝をかましてしまって、起きたらアレクセイにしっかりと抱き込まれていた。
俺は抱き枕じゃねえと思ったが、その腕の中の心地良さはとっくに知っていたので、許容できたが、それとこれとは話が違う。ただのハグならば良い。問題は、その場所だ。ベッドでだなんて、自分の心臓は保つのだろうかと誠は心配になった。
それに、一緒に居る時間が長くなると、それだけアレクセイに余計な物を見られる可能性が高くなる。今でも段々とボロを出しているのだ。そのうち、何か決定的な物が見つかりそうで、少し不安になった。
「マコト…頼む」
アレクセイは誠の頬を擽る。懇願しているように聞こえるが、その手は何だと誠はアレクセイを睨んだ。
こうしてアレクセイは時々、持つ者としての傲慢さを見せる時がある。イタリア貴族かと思わせる誠への傾向っぷりだが、その振る舞いは確かに高位貴族なのだろう。
普段から貴族なぞ目ではない客を相手にしている誠は、どうしてもそれを感じ取ってしまう。本来なら厭うはずのソレは、アレクセイにかかるとただの甘えに見えてしまい、ずるずると彼のペースにハマってしまっている。
誠はそれを自覚していた。
アレクセイもそれを分かっているのか、下手に出つつも少々強引にことを進めている。
「お前さぁ…」
誠が口を開こうとした時、アレクセイの指によって邪魔をされてしまった。フニフニと自分の唇の感触を楽しんでいる犯人は、ふんわりと笑っている。
誠は怒りのまま、アレクセイの耳を少しだけ引っ張ってやった。
「痛いぞマコト」
「痛くしてんだよ。っつーか、俺で遊ぶな」
「遊んではいない。君の感触を確かめているんだ」
真面目な顔で言う狼に、誠は更に怒った。
「そんな顔で言ってもダメだっつーの。ったく…お前のその顔は、反則だろうが」
「俺の顔か?マコトに気に入って貰えているのなら、僥倖だな」
「……」
愉快そうに揺れる尾を目にした誠は、目を細めた。
狼の巣穴は、客室とそう変わらない大きさだった。さっさと風呂に入ってゆるい部屋着に着替えた誠は、自ら寝床に潜り込む。
それを見ていたアレクセイは我に返ると急いで隊服のジャケットを脱いでスクエアポーチをベッドサイドに置くと、誠の隣に潜り込んだ。
「着替えねぇの?」
「ん?ああ。遠征中は何が起こるか分からないから、基本的にいつでも隊服のままだ」
「そうなんだ。気が抜けない仕事だな」
「そうだな。遠征中は特にな」
そうは言いつつも、アレクセイは早速その腕に誠を囲っている。そのどこが気が抜けない仕事だと思いながら、誠はその腕をペチリと叩いた。
「まあ、せいぜい気ぃ抜いとけよ。いざとなったら、ここに戦力が居るんだからな」
「何とも頼もしいが、君は俺に守らせてはくれないんだろうな」
「もちろん。それが遠野だよ。売られた喧嘩はもれなく買うし、懐に入れた奴に助けを求められたら、全力で力を貸すんだ…」
誠は喋りながら、段々と瞼が重くなっていっていた。アレクセイの声が聞こえていたが、分かるのはその声の響きと、彼からする、ミントとジャスミンのほんのりとした香りだけだった。
ドアを開けると、アレクセイだった。
もしかして来るかなと思っていただけに、予想が当たって嬉しいが、アレクセイの表情は曇っている。夕食前の会話が、まだ尾を引いているのかもしれなかった。
誠はソファを勧め、自分もその隣に座った。
「酒でも呑むか?」
「いや、ありがたいが、今日はやめておこう。酔うと君に何をするか、分からないからな」
「どんだけ呑むんだよ。お前、夕食の時にワイン呑んでるけど、酔ったことないだろ?」
「酒には強い方だが、念のためだ。うっかり酔って、マコトに襲いかかりでもしたら困るのは君だろう?」
「まぁ、そうだけどさ」
そう言いつつも、誠はアレクセイに体を寄せた。そして自分よりも長い指をいじる。
「マコト…誘っているのか?」
「そうとも言うし、違うとも言うかな」
「そうか。悪い男だな」
「初めて言われたよ、そんな言葉」
誠は笑いながら、アレクセイにキスをした。
確かにこの状況だけ見れば、自分は悪い男かもしれない。きっと先を望んでいるアレクセイに、期待だけ持たせて言外に拒絶しているのだから。
「アレクセイは、いい男だ」
「まさか。君に嫌われたくなくて、必死なだけさ」
言いながらアレクセイは誠を自分の膝に乗せ、キスを繰り返した。
ひとしきり唇を合わせて満足した後、アレクセイは本題を切り出した。
「マコト、相談なんだが…夜は客室ではなく、俺の部屋で寝ないか?」
「は?」
「何もしないと誓う。ただ、君をこの腕に閉じ込めてしまいたいだけだ。マコト、君も覚えているだろう?あの朝のことを」
アレクセイの言うあの朝と言うのは、きっと先日のことだろう。
誠は頬を染めた。
あの後、いつの間にか寝落ちをしていて、気付いたら早朝になっていた。しかも目の前にはこの美丈夫の、どアップだ。二度寝をかましてしまって、起きたらアレクセイにしっかりと抱き込まれていた。
俺は抱き枕じゃねえと思ったが、その腕の中の心地良さはとっくに知っていたので、許容できたが、それとこれとは話が違う。ただのハグならば良い。問題は、その場所だ。ベッドでだなんて、自分の心臓は保つのだろうかと誠は心配になった。
それに、一緒に居る時間が長くなると、それだけアレクセイに余計な物を見られる可能性が高くなる。今でも段々とボロを出しているのだ。そのうち、何か決定的な物が見つかりそうで、少し不安になった。
「マコト…頼む」
アレクセイは誠の頬を擽る。懇願しているように聞こえるが、その手は何だと誠はアレクセイを睨んだ。
こうしてアレクセイは時々、持つ者としての傲慢さを見せる時がある。イタリア貴族かと思わせる誠への傾向っぷりだが、その振る舞いは確かに高位貴族なのだろう。
普段から貴族なぞ目ではない客を相手にしている誠は、どうしてもそれを感じ取ってしまう。本来なら厭うはずのソレは、アレクセイにかかるとただの甘えに見えてしまい、ずるずると彼のペースにハマってしまっている。
誠はそれを自覚していた。
アレクセイもそれを分かっているのか、下手に出つつも少々強引にことを進めている。
「お前さぁ…」
誠が口を開こうとした時、アレクセイの指によって邪魔をされてしまった。フニフニと自分の唇の感触を楽しんでいる犯人は、ふんわりと笑っている。
誠は怒りのまま、アレクセイの耳を少しだけ引っ張ってやった。
「痛いぞマコト」
「痛くしてんだよ。っつーか、俺で遊ぶな」
「遊んではいない。君の感触を確かめているんだ」
真面目な顔で言う狼に、誠は更に怒った。
「そんな顔で言ってもダメだっつーの。ったく…お前のその顔は、反則だろうが」
「俺の顔か?マコトに気に入って貰えているのなら、僥倖だな」
「……」
愉快そうに揺れる尾を目にした誠は、目を細めた。
狼の巣穴は、客室とそう変わらない大きさだった。さっさと風呂に入ってゆるい部屋着に着替えた誠は、自ら寝床に潜り込む。
それを見ていたアレクセイは我に返ると急いで隊服のジャケットを脱いでスクエアポーチをベッドサイドに置くと、誠の隣に潜り込んだ。
「着替えねぇの?」
「ん?ああ。遠征中は何が起こるか分からないから、基本的にいつでも隊服のままだ」
「そうなんだ。気が抜けない仕事だな」
「そうだな。遠征中は特にな」
そうは言いつつも、アレクセイは早速その腕に誠を囲っている。そのどこが気が抜けない仕事だと思いながら、誠はその腕をペチリと叩いた。
「まあ、せいぜい気ぃ抜いとけよ。いざとなったら、ここに戦力が居るんだからな」
「何とも頼もしいが、君は俺に守らせてはくれないんだろうな」
「もちろん。それが遠野だよ。売られた喧嘩はもれなく買うし、懐に入れた奴に助けを求められたら、全力で力を貸すんだ…」
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