それが運命というのなら

藤美りゅう

文字の大きさ
15 / 40

それが運命というのなら#15

しおりを挟む

 駐車場に戻ると、将星のバイクに五、六才の男の子と父親らしき男性が少し離れた所から将星のバイクを物珍しそうに眺めていた。
 二人は近付くと、父親は自分たちの存在に気付きハッとしてように子供の肩を叩いた。
「ほら、行くよ! すみません、この子バイクが好きで……」
 父親は強面な将星を前に幾分腰が引けている。
「これ、お兄さんのバイク? かっこいいね!」
 自慢のバイクを褒められて、将星も悪い気分をするはずもなく、
「乗ってみるか?」
 そう言うと少年は目を輝かせ、大きく頷いた。将星は軽々と少年を持ち上げ、自分と共にバイクに座らせ、ハンドルを持たせてやった。
「パパ! 見て!」
「かっこいいぞ、ユウタ」
 父親も嬉しそうに携帯のカメラを向け、少年を連写している。
「僕も大人になったらこのバイク乗る!」
 少年は嬉しそうに将星に言うと、
「これはな、ハーレーってバイクだ。覚えとけ」
 そう言って将星は少年の頭をくしゃりと撫でた。

 理月はそんな二人を離れた所から見つめた。
 (将星もいつか誰かと……)
 将星の子供が産まれ、あんな風に子供と戯れる未来もあるかもしれない、そう思うと理月の心がチクリと痛んだ。
 自分はそれを叶えてやる事はできない。そもそも、そういう関係でもないのは分かっているのだが、将星にそんな未来がある事に理月に複雑な思いが過ぎった。

 親子は何度も頭を下げると砂浜の方へ歩いて行った。
「可愛かったな」
「俺のバイクに目を付けるなんて、分かってるガキだな」
 少しドヤ顔を決めている将星に理月から笑いが溢れた。
「子供相手に何言ってんだよ……おまえもいつか、あんな風に父親になるんだろうな」
「……俺は……子供はいらねえかな」
 ポツリとそう言った。
「なんで?」
「欲しいと思わないから」
 将星は表情を変えず、理月を見る事なく真っ直ぐ前を向いたままだ。
「ふーん……いい父親になりそうな気はするけどな、おまえ」
 自分でそう言って、またチクリと胸が痛む。

「この後どうするか?」
 不意に話題を無理矢理変えられたように理月は思った。
 近くのショッピングモールを少しぶらつくと、理月が夜バイトが入っていた為、帰宅する事となった。

 帰りは夕方の渋滞に少し巻き込まれたが、バイクにはあまり関係がない様だった。将星は器用に車の間を縫って、前へ前と進んで行く。こんな巨体なバイクをよくこうも、軽々と扱えるものだと理月は感心した。
 帰りも一度休憩をいれただけで、ずっと走り続けた。見慣れた景色が広がり、自分たちの地元に戻ってきたのだと実感する。

 将星とお互いの気持ちを曝け出した事で、互いの距離が縮まったような気がした。《アルファとオメガ》という全く異なる性であるが、家庭環境や根底にある思いは近いものだった。
(将星と話せて良かった)
この《デート紛い》な遠出は無駄ではなかったようだ。まだ離れ難いと思うくらい、将星といる時間がとても楽しく思えたのだ。

 バイト先近くの駐輪場に停めると、二人はバイクを降りた。
「ケツの感覚がねえんだけど」
 理月の尻は麻痺したように感覚がなくなっており、思わず理月は自分の尻を摩った。
「慣れねえとな」
 理月からヘルメットを受け取り、サイドに引っ掛けた。
「今日はありがとう。結構楽しかった」
 そう理月は素直に伝えた。
「また、どこか行こうぜ」
「そうだな」
 途中にあるコンビニでタバコを買うという将星も、理月とならんで歩き出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定  累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

処理中です...