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それが運命というのなら#14
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これから将星に、自分がオメガという性に産まれた事に対する、ずっと抱えていた思いを初めて口にする。この事は、死ぬまで一生誰にも話す事はないと思っていた。その相手が、唯一体を繋げた将星である事に複雑な気持ちではあったが、自分と将星が《アルファとオメガ》である以上、話しておくべきだとも思った。
オメガである自分を否定し続ける理由が、ただ単にプライドが高いだけではない事を、将星に知って欲しかった。
「俺の叔父……父親の弟なんだけど、俺と同じような容姿をしていたんだ。両親共に日本人なのに急に外人の子供が産まれたって、大騒ぎだったらしい。ばあちゃんは、浮気を疑われて心が病むまで周囲から責められたって。けど、よくよく調べたらどうやら昔、先祖にスウェーデン人と結婚した人がいたみたいで当然その子供もいたわけだけど……所謂、先祖返りってやつだな。俺と叔父はその先祖返りだった」
「先祖返り……」
将星は聞きなれない言葉だからなのか、無意識に繰り返していた。
「ばあちゃんは結局、心を病んだまま死んでしまった。叔父は叔父で、自分のせいで母親が死んだあげくオメガで……自分の居場所はここじゃないって思ったみたいで、急に留学しちまった。その留学先がスウェーデンだった」
一つ言葉を切り、頭の中で一度話を整理する。
「叔父も自分に似てる俺を可愛がってくれたし、俺も大好きだった。だから留学した時は悲しかったな……けど、叔父は十年程すると急に帰国してきてすぐ……自殺しちまった」
将星は目を見開き、悲しそうな目を理月に向けた。
「向こうで番ができたんだけど、その相手が別の番を作ったらしくて、それで日本に帰ってきたって。叔父は、死ぬ為に日本に帰ってきた……それ聞いて俺、無性に腹が立ったよ。そんな事で死ぬなんてバカげてるって。でも……」
一つ言葉を切ると、
「今は少しその気持ちが分かる気がする」
そう言って真っ直ぐ将星を見つめた。
「オメガとしての自分と向き合うのが、死にたくなるくらい苦痛だった。オメガとして産まれた以上、生きていく限り嫌でもそれを受け入れて、向き合っていかないといけないんだ、って。性は変えられないからな……自分なりにオメガとしての自分とどう向き合って行くべきか、今もその答えは出ていないけど……」
将星は「そうか……」とポツリと呟き、
「頑なに番を作らないって言ってたのは、叔父さんの死がきっかけだったんだな」
言葉を続けた。
「ああ……叔父の二の舞には絶対なりたくない。だったら一人で生きていく方がマシだ。だからって叔父が嫌いなわけじゃないし、叔父の事は大好きだった」
「叔父さんが大好きだったからこそ、そう思うんだろうな」
将星の言葉がストンと理月の心に落ちた気がした。
「そうだな……悔しかったんだと思う」
理月は膝に肘をつき掌に顎を乗せた格好をすると、遠く沖にいるサーファーを暫し見つめた。
「叔父は向こうで絵本作家目指してたみたいで、死ぬ前の日に突然叔父が訪ねてきて、その時、未発表の絵本の原稿を俺に全部託してきたんだ。だけど、それは全部スウェーデン語で書かれてて、託されたはいいけど、全然読めなくて……だから、今の大学入ってそれを翻訳して、叔父の本を世の中に出すのが俺の夢なんだ。だから……」
将星がその後に続く理月の言葉をジッと待っているのを感じる。
「それまで、死ぬわけにはいかない」
そう言って理月は将星に微笑んだ。
「そうか……」
将星の掠れた声が漏れる。
「家族とは俺もほぼ絶縁状態。家族も親戚も皆んなベータだけど、オメガで産まれた俺を汚らわしい物を見る目で見てくる。大学卒業するまでは金の援助は必要だから、卒業までは絞り取ってやるけどな」
そう軽口を叩いた理月を将星は笑った。
「留学先をスウェーデンにする辺り、その叔父さんの気の強さが伺えて、理月との血の繋がりを感じるな」
将星の言葉に理月は、
「あ?なんだと、こらっ」
と、柄の悪い声を出し将星を睨みつけた。
だが、今思えば将星の言う通り、叔父には気の強いところがあったように思える。
「将星は? 何か夢とかあるのか?」
「俺か? 俺はやっぱり自分の店を持ちたいな。バイクの販売や整備だけじゃなくて、オリジナルのドレスアップ用のパーツを作ったり、あと服とか小物とかも作ってみてえと思ってる」
目を輝かせながら言う将星の目は、夢見る子供の様だ。
将星ならばきっと、将星らしいセンスの良い店を構えるのだろうと理月は思う。
「オメガばかりが大変だと思ってたけど、アルファはアルファで大変なんだな」
口に出して言うと、改めて自分だけが不幸になった気でいたのだと、少し恥ずかしい気持ちになる。
「まぁ、オメガみたいに身体面での苦労はないけど、苦労している奴は多いと思う。でも、今はアルファで良かったとは少し思う」
「?」
小首を傾げ将星を見ると、
「おまえと出会えたからな」
そう言った。
「なんとなく…… 俺と理月はアルファとオメガだからなのか、理月との出会いは偶然じゃなくて、必然じゃないかって思う時がある」
まるで愛の告白のような、そんなセリフを言い放った将星を前に理月の顔が一気に熱くなるのを感じた。言葉だけを聞けば、熱烈な愛の告白にも聞こえてしまう。
一体将星はどういう意味で言った言葉なのか、理月は混乱し、
「な、何言ってんだ……」
それを誤魔化すように理月は立ち上がった。これ以上、この話題は避けた方が無難だと思った。
「喉乾いたな」
将星も理月に続いて立ち上がると、先程言った言葉など既に忘れたかの様に、そんな事を言っている。
オメガである自分を否定し続ける理由が、ただ単にプライドが高いだけではない事を、将星に知って欲しかった。
「俺の叔父……父親の弟なんだけど、俺と同じような容姿をしていたんだ。両親共に日本人なのに急に外人の子供が産まれたって、大騒ぎだったらしい。ばあちゃんは、浮気を疑われて心が病むまで周囲から責められたって。けど、よくよく調べたらどうやら昔、先祖にスウェーデン人と結婚した人がいたみたいで当然その子供もいたわけだけど……所謂、先祖返りってやつだな。俺と叔父はその先祖返りだった」
「先祖返り……」
将星は聞きなれない言葉だからなのか、無意識に繰り返していた。
「ばあちゃんは結局、心を病んだまま死んでしまった。叔父は叔父で、自分のせいで母親が死んだあげくオメガで……自分の居場所はここじゃないって思ったみたいで、急に留学しちまった。その留学先がスウェーデンだった」
一つ言葉を切り、頭の中で一度話を整理する。
「叔父も自分に似てる俺を可愛がってくれたし、俺も大好きだった。だから留学した時は悲しかったな……けど、叔父は十年程すると急に帰国してきてすぐ……自殺しちまった」
将星は目を見開き、悲しそうな目を理月に向けた。
「向こうで番ができたんだけど、その相手が別の番を作ったらしくて、それで日本に帰ってきたって。叔父は、死ぬ為に日本に帰ってきた……それ聞いて俺、無性に腹が立ったよ。そんな事で死ぬなんてバカげてるって。でも……」
一つ言葉を切ると、
「今は少しその気持ちが分かる気がする」
そう言って真っ直ぐ将星を見つめた。
「オメガとしての自分と向き合うのが、死にたくなるくらい苦痛だった。オメガとして産まれた以上、生きていく限り嫌でもそれを受け入れて、向き合っていかないといけないんだ、って。性は変えられないからな……自分なりにオメガとしての自分とどう向き合って行くべきか、今もその答えは出ていないけど……」
将星は「そうか……」とポツリと呟き、
「頑なに番を作らないって言ってたのは、叔父さんの死がきっかけだったんだな」
言葉を続けた。
「ああ……叔父の二の舞には絶対なりたくない。だったら一人で生きていく方がマシだ。だからって叔父が嫌いなわけじゃないし、叔父の事は大好きだった」
「叔父さんが大好きだったからこそ、そう思うんだろうな」
将星の言葉がストンと理月の心に落ちた気がした。
「そうだな……悔しかったんだと思う」
理月は膝に肘をつき掌に顎を乗せた格好をすると、遠く沖にいるサーファーを暫し見つめた。
「叔父は向こうで絵本作家目指してたみたいで、死ぬ前の日に突然叔父が訪ねてきて、その時、未発表の絵本の原稿を俺に全部託してきたんだ。だけど、それは全部スウェーデン語で書かれてて、託されたはいいけど、全然読めなくて……だから、今の大学入ってそれを翻訳して、叔父の本を世の中に出すのが俺の夢なんだ。だから……」
将星がその後に続く理月の言葉をジッと待っているのを感じる。
「それまで、死ぬわけにはいかない」
そう言って理月は将星に微笑んだ。
「そうか……」
将星の掠れた声が漏れる。
「家族とは俺もほぼ絶縁状態。家族も親戚も皆んなベータだけど、オメガで産まれた俺を汚らわしい物を見る目で見てくる。大学卒業するまでは金の援助は必要だから、卒業までは絞り取ってやるけどな」
そう軽口を叩いた理月を将星は笑った。
「留学先をスウェーデンにする辺り、その叔父さんの気の強さが伺えて、理月との血の繋がりを感じるな」
将星の言葉に理月は、
「あ?なんだと、こらっ」
と、柄の悪い声を出し将星を睨みつけた。
だが、今思えば将星の言う通り、叔父には気の強いところがあったように思える。
「将星は? 何か夢とかあるのか?」
「俺か? 俺はやっぱり自分の店を持ちたいな。バイクの販売や整備だけじゃなくて、オリジナルのドレスアップ用のパーツを作ったり、あと服とか小物とかも作ってみてえと思ってる」
目を輝かせながら言う将星の目は、夢見る子供の様だ。
将星ならばきっと、将星らしいセンスの良い店を構えるのだろうと理月は思う。
「オメガばかりが大変だと思ってたけど、アルファはアルファで大変なんだな」
口に出して言うと、改めて自分だけが不幸になった気でいたのだと、少し恥ずかしい気持ちになる。
「まぁ、オメガみたいに身体面での苦労はないけど、苦労している奴は多いと思う。でも、今はアルファで良かったとは少し思う」
「?」
小首を傾げ将星を見ると、
「おまえと出会えたからな」
そう言った。
「なんとなく…… 俺と理月はアルファとオメガだからなのか、理月との出会いは偶然じゃなくて、必然じゃないかって思う時がある」
まるで愛の告白のような、そんなセリフを言い放った将星を前に理月の顔が一気に熱くなるのを感じた。言葉だけを聞けば、熱烈な愛の告白にも聞こえてしまう。
一体将星はどういう意味で言った言葉なのか、理月は混乱し、
「な、何言ってんだ……」
それを誤魔化すように理月は立ち上がった。これ以上、この話題は避けた方が無難だと思った。
「喉乾いたな」
将星も理月に続いて立ち上がると、先程言った言葉など既に忘れたかの様に、そんな事を言っている。
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