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俺から見た君は
朝
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◇
2人で山に登って、海が見えると有名な崖のてっぺんに座る。
俺は少し怖かったけれど、スナが記念にというから、恐る恐る丸くなっている岩に腰掛けた。
風が強くなって、俺はギュッと地面の石を握りしめる。
「もしもさ、ここから落ちたらどうなんだろうな」
ふと、右隣からそんな一言が聞こえてきて、俺は咄嗟に叫んだ。
「そしたらっ!俺も飛び降りる!」
「っ、‥いやなんでだよ‥」
驚いたように目を丸くして、それから呆れたように笑うスナに顔が赤くなって、
だけど嘘だと言いたげに俺を見つめるものだから、俺もムッとして、言い返した。
「絶対に飛び降りる。だって‥スナを助けたいから」
「はぁ?共倒れになんだろ絶対」
「ならない!俺、死ぬ気で思いっきり手を伸ばすから、
だからその時は‥ちゃんと‥て、手を握れよなっ‥こ、こんな風に!」
あの日俺は初めて勇気を出して、スナの手を握った。
ドキドキして体が熱くなって、それでもすぐ近くでスナが噴き出すように笑ったから、俺もつられて笑う。
握った腕は骨張っていて大きくて、冷たい体温が心地よかった。
俺は本当に幸せで、ずっとこのままスナと一緒にいたいって‥そう思ったんだ
◇
「‥ん‥、‥夢‥」
またか。ここのところ多いな。
宝物の様な思い出は、今じゃ切なく締め付けられる悪夢になった。あぁ、朝から憂鬱になる。
「スゥ‥」
「え‥?」
ふと、俺は目の前に広がる彫刻の様な綺麗な顔にギョッとした。
どうして‥スナが目の前にいるんだよ‥てか、近いっ
息がかかる距離に俺は固まる。
いや、なんで俺スナの部屋のベッドで寝てんだ?昨日確かソファで‥
寝起きで頭をフル回転させて状況を理解しようとするが、全く分からない。
俺の手を握ってすやすや眠るスナ。
その手は夢の中と同じ感触で、ぶわりと顔が熱くなるのを感じた。
馬鹿‥落ち着け‥
俺は深呼吸をして、気持ちを整える。だってこんな‥好きなやつのベッドの上で2人きりで寝てて‥全部スナの匂いがして‥くらくらする‥もう最悪だ‥。
「‥、はや‥かわ‥?」
「っ、‥スナ‥」
慌てる俺を横目にスナの目がゆっくりと開いて、少し掠れた声で俺の名を呟く。
俺は何故か恥ずかしくなって、緊張で一瞬声が裏返ったが、そのままスナの不快にならないように、できるだけ優しいトーンで話しかけた。
「‥お、おはよ‥スナ‥ちゃんと眠れたか?」
「‥」
こくりと眠そうに頷くスナはなんだか可愛く思えて、思わず口元が緩む。
「そっか‥」
あんなにも痛かった胸が今じゃポカポカと温かい。朝起きたら目の前にスナがいて、なんだか、夢みたいだ‥。
俺と繋ぐ手を頬に当てて、またスヤスヤと眠りにつくスナ。
まるでカップルの休日の様な穏やかな時間が流れて‥休日‥?
いや待て、今日はまだ木曜日だ。
「な、やべえ!?あと30分っ、!?いやスナの家からだから45分はあるんか‥はぁ、俺用意するから、スナちょい手離して」
ふとベッドの脇の時計が見えて俺は焦る。
気づけば登校時間が迫っていて、俺は慌てて飛び起きた。
うちの学校はある程度緩いが、遅刻にだけは厳しくて、恐ろしい体育顧問に怒鳴られては運動場10周の地味に嫌な罰がある。
どこか不満気に俺の手を離したスナ。
俺はベッドから起き上がり、乾燥機の中に入れっぱなしにしていた制服を取りに向かう。
「俺の‥これだよな‥」
制服を取り出して、自分のものと思わしきシャツを探す。俺は大きめの規定のシャツを買っていて、スナのシャツと全く同じサイズで見分けがつかなかったから、なんとなくで選んでそれを着た。
刹那もう一着がふと目に入り、俺は首を傾げる。
「スナ今日は学校行くのかな‥」
「行く‥」
「うわあ!?びっくりした!」
急に背後から声がして、俺は腰が抜けそうになった。勢いで立ち上がって振り返った瞬間、固いものにぶつかって、俺はよろける。
「‥」
「いて、て、‥スナお前なぁ‥」
ぷいっと顔を逸らして、淡々と制服に着替えていくスナ。
気配なく背後に立つなよ‥心臓に悪いなもう‥
てか、行くのか‥昨日は辛そうだったし、もう少し休んだ方が‥いや、スナが決めたならそれでいい‥。
俺は制服を着替え終え、用意を始めたスナを見てもう大丈夫そうだなと、ほっと胸を撫で下ろした。
顔を洗い、少し髪を整えた後、俺はカバンを背負って玄関に向かう。
腹が減った。早めに出て朝飯でも買ってのんびり行こう。八谷と顔合わせても気まずいし‥。
「スナ、じゃあ‥俺先に出るからっ、え、なに‥」
「‥っ」
そう告げながら玄関に向かう途中、
背後からドタドタと音が聞こえてきて、俺はなんだと振り返る。寝癖のついたままのスナが慌てた様子で駆けてきて、また俺の腕を掴んで引き止めた。
「はや、かわっ‥」
震える手。不安気な顔。やっぱりまだしんどいんじゃないか‥。
俺は、スナの額に触れる。熱はない。でもまた顔色が悪くなってる。俺はそっと口を開く。
「大丈夫?‥一緒に‥行くか‥?」
「うん‥」
今度は首だけじゃなく、声を出して返事したスナ。額に触れる俺を見つめながら目を細めた。
なんだかこそばゆい。
優しい目に勘違いしそうになって、俺は顔を背ける。
そのまま戸締りをして、俺達は学校に向かう道を歩いた。
ぎゅっと握りしめられた手を離さぬまま。
2人で山に登って、海が見えると有名な崖のてっぺんに座る。
俺は少し怖かったけれど、スナが記念にというから、恐る恐る丸くなっている岩に腰掛けた。
風が強くなって、俺はギュッと地面の石を握りしめる。
「もしもさ、ここから落ちたらどうなんだろうな」
ふと、右隣からそんな一言が聞こえてきて、俺は咄嗟に叫んだ。
「そしたらっ!俺も飛び降りる!」
「っ、‥いやなんでだよ‥」
驚いたように目を丸くして、それから呆れたように笑うスナに顔が赤くなって、
だけど嘘だと言いたげに俺を見つめるものだから、俺もムッとして、言い返した。
「絶対に飛び降りる。だって‥スナを助けたいから」
「はぁ?共倒れになんだろ絶対」
「ならない!俺、死ぬ気で思いっきり手を伸ばすから、
だからその時は‥ちゃんと‥て、手を握れよなっ‥こ、こんな風に!」
あの日俺は初めて勇気を出して、スナの手を握った。
ドキドキして体が熱くなって、それでもすぐ近くでスナが噴き出すように笑ったから、俺もつられて笑う。
握った腕は骨張っていて大きくて、冷たい体温が心地よかった。
俺は本当に幸せで、ずっとこのままスナと一緒にいたいって‥そう思ったんだ
◇
「‥ん‥、‥夢‥」
またか。ここのところ多いな。
宝物の様な思い出は、今じゃ切なく締め付けられる悪夢になった。あぁ、朝から憂鬱になる。
「スゥ‥」
「え‥?」
ふと、俺は目の前に広がる彫刻の様な綺麗な顔にギョッとした。
どうして‥スナが目の前にいるんだよ‥てか、近いっ
息がかかる距離に俺は固まる。
いや、なんで俺スナの部屋のベッドで寝てんだ?昨日確かソファで‥
寝起きで頭をフル回転させて状況を理解しようとするが、全く分からない。
俺の手を握ってすやすや眠るスナ。
その手は夢の中と同じ感触で、ぶわりと顔が熱くなるのを感じた。
馬鹿‥落ち着け‥
俺は深呼吸をして、気持ちを整える。だってこんな‥好きなやつのベッドの上で2人きりで寝てて‥全部スナの匂いがして‥くらくらする‥もう最悪だ‥。
「‥、はや‥かわ‥?」
「っ、‥スナ‥」
慌てる俺を横目にスナの目がゆっくりと開いて、少し掠れた声で俺の名を呟く。
俺は何故か恥ずかしくなって、緊張で一瞬声が裏返ったが、そのままスナの不快にならないように、できるだけ優しいトーンで話しかけた。
「‥お、おはよ‥スナ‥ちゃんと眠れたか?」
「‥」
こくりと眠そうに頷くスナはなんだか可愛く思えて、思わず口元が緩む。
「そっか‥」
あんなにも痛かった胸が今じゃポカポカと温かい。朝起きたら目の前にスナがいて、なんだか、夢みたいだ‥。
俺と繋ぐ手を頬に当てて、またスヤスヤと眠りにつくスナ。
まるでカップルの休日の様な穏やかな時間が流れて‥休日‥?
いや待て、今日はまだ木曜日だ。
「な、やべえ!?あと30分っ、!?いやスナの家からだから45分はあるんか‥はぁ、俺用意するから、スナちょい手離して」
ふとベッドの脇の時計が見えて俺は焦る。
気づけば登校時間が迫っていて、俺は慌てて飛び起きた。
うちの学校はある程度緩いが、遅刻にだけは厳しくて、恐ろしい体育顧問に怒鳴られては運動場10周の地味に嫌な罰がある。
どこか不満気に俺の手を離したスナ。
俺はベッドから起き上がり、乾燥機の中に入れっぱなしにしていた制服を取りに向かう。
「俺の‥これだよな‥」
制服を取り出して、自分のものと思わしきシャツを探す。俺は大きめの規定のシャツを買っていて、スナのシャツと全く同じサイズで見分けがつかなかったから、なんとなくで選んでそれを着た。
刹那もう一着がふと目に入り、俺は首を傾げる。
「スナ今日は学校行くのかな‥」
「行く‥」
「うわあ!?びっくりした!」
急に背後から声がして、俺は腰が抜けそうになった。勢いで立ち上がって振り返った瞬間、固いものにぶつかって、俺はよろける。
「‥」
「いて、て、‥スナお前なぁ‥」
ぷいっと顔を逸らして、淡々と制服に着替えていくスナ。
気配なく背後に立つなよ‥心臓に悪いなもう‥
てか、行くのか‥昨日は辛そうだったし、もう少し休んだ方が‥いや、スナが決めたならそれでいい‥。
俺は制服を着替え終え、用意を始めたスナを見てもう大丈夫そうだなと、ほっと胸を撫で下ろした。
顔を洗い、少し髪を整えた後、俺はカバンを背負って玄関に向かう。
腹が減った。早めに出て朝飯でも買ってのんびり行こう。八谷と顔合わせても気まずいし‥。
「スナ、じゃあ‥俺先に出るからっ、え、なに‥」
「‥っ」
そう告げながら玄関に向かう途中、
背後からドタドタと音が聞こえてきて、俺はなんだと振り返る。寝癖のついたままのスナが慌てた様子で駆けてきて、また俺の腕を掴んで引き止めた。
「はや、かわっ‥」
震える手。不安気な顔。やっぱりまだしんどいんじゃないか‥。
俺は、スナの額に触れる。熱はない。でもまた顔色が悪くなってる。俺はそっと口を開く。
「大丈夫?‥一緒に‥行くか‥?」
「うん‥」
今度は首だけじゃなく、声を出して返事したスナ。額に触れる俺を見つめながら目を細めた。
なんだかこそばゆい。
優しい目に勘違いしそうになって、俺は顔を背ける。
そのまま戸締りをして、俺達は学校に向かう道を歩いた。
ぎゅっと握りしめられた手を離さぬまま。
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