催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
57 / 135
外国へ遊びに行こう

袖触れ合おう

しおりを挟む


「はっ……呼びだし?」

「そのようです。なんでも、『急であるためすぐに来るように』と」

「……あの人任せめ。俺の至福の時間を奪いに来やがったな」

 どうされますか? と訊いてくるメイドには行くとだけ答え、再び瞬間着装スキルで衣装を整える。

「面倒だし、乗り物は必要ない。……一気に突っ込んでくる」

「行ってらっしゃいませ」

 なぜだろう、俺の脳は『行く』を『逝く』と変換しているよ。

 ある意味じゃ正解だからなんとも言えないが、この国に寄生をしようとするからには支払う家賃も必要になる。

「カモン! タークシー!」

 空に向けて大声で叫ぶ。
 一瞬沈黙が場を包み込むが、しばらくすると変化が起きる。

『ギャーーーーッス!』

 遠くから、小柄な竜が飛んできた。
 ただ、腕と翼が一体となっているため、それは亜竜ワイバーンに属する魔物だ。

 亜竜はトショク邸の上空まで移動すると、ゆっくりと羽ばたきながら降りてくる。

『グギャーッス』

「……いつまでただの亜竜のふりをする? ただの亜竜なら、今日の晩御飯のおかずとして、ステーキを──」

『はいはいはい! はい、イム様の忠実なる僕、アシがやって来たッス!』

 ちなみに、雌なので声は高めだ。
 奴隷を探してたら闘技場に売りだす前のコイツを見つけたので、放し飼いすることにしてみた。

 ……首輪は外してあるので、いつ逃げ出すのかな? と若干気になっている。
 逃げたら逃げたで放置する予定だが、俺の秘密を吐いたら呪殺すると脅してあるのだ。

「はいはい、アッシー君。今日は王城に突っ込んでくれ。マチスじゃなく、獰猛で至る所に突っ込みそうなバカっぽいお前を選んだんだから……分かってるよな?」

『嫌っすヨ! 殺されるじゃないっすカ!』

「チッ、ならいいや。じゃあ逆に、どれだけ優雅に飛べるかやってみろ。……マチス以下だったら尻尾のステーキだからな」

『無理っすヨ! マチスの旦那に勝つなんて愚か者のセリフじゃないっすカ!』

 それを言って、ボコボコにされた奴が何をほざいてるんだか。
 この会話の間に、メイドたちがテキパキとアシの背中に鞍を用意している。

 マチスは地龍で飛べないが、鱗を椅子にしてくれるなどのサービスができたはずだ。

 だがコイツは頭がアレなので、その程度のこともできないようだな(龍に進化しないと無理とか言ってたっけ)。

「……問い詰めるのも面倒だし、そろそろ働いてもらうか。アッシーとして足として、キビキビ働けよ」 

『了解ッス!』

 周りに結界を張ってから、アシに跨って離陸を促す。
 猛烈な風が翼のはためきによって生みだされ、結界の中で荒れ狂う。

 それはふわりと亜竜を持ち上げる浮力へ変換され、大空へ向かう足がかりとなる。

『行くっすヨ! しっかり掴まっててくださいっス!』

「何言ってんだ、俺を落としたら晩飯は尻尾のステーキだ」

『……ゆ、ゆっくりでいいっすカ?』

「全速力、それ以外はすべてステーキだ」

『理不尽ッス!!』

 浮力を魔力で推進力に変換し、アシは物凄い勢いで移動を開始する。

 眼下を見下ろすとメイドたちが、白いハンカチを振っている……なんで?

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──それで、急用とはいったい」

「悪いが、いつものボケをやっている暇もない。本音で言わせてもらうぞ」

 アシは王城の兵士に任せて、可能な限り急ぎ足で王の間へ向かった。
 そこで何やら汗を零す王との会話、その最初がこれである。

「まあ、別にいいか。そっちがそこまで慌ててるってことなら、本当に不味いんだろう。寄生させてもらってるんだし、宿主の問題を解消する手伝いぐらいならするぞ」

「ありがたい。今は、どんな助言だろうと神のお告げぐらい価値がある」

 ……お前、神はクソ的なセリフを言ってたような気がするんだが。
 とりあえずスルーして、事情を訊いてみることに。

「実はな、娘が──」

「家庭の事情にとやかく口を出す気はないから、俺はこれで失礼する」

「逃がすか……捕まえろ!」

 面倒な話だったのでバックレようとしたのだが……そうもいかないようだ。

 大抵の相手ならすぐに倒して逃げていたのだが──今回の相手には、敵わないと本能が警鐘を鳴らす。

「お久しぶりですね、イム様」

「ええ、もう一生会わないかと」

「『袖触れ合うも多生の縁』、といった言葉があるらしいですね。私たちの出会いも、そうすぐに切れるようなものではないと思われますよ」

 かつてこの国に来た際、俺の能力チェックのためにダンジョンへ共に潜ったメイド。
 彼女が今、俺の目の前へ立ちはだかった。

「話は最後まで聞け。たしかにお前のせいでフレイアの態度が冷たくなったということもあるにはあるが、今はそれではない」

「アイツはもともと隠していただけだ──」

「ゴホンッ! 実はな、今回はフレイアとは別の娘のことだ」

 そこまで聞いて、とりあえず逃げる動きを中断する……どうせ、逃げられないし。

「そういえば忘れてたな。お前の娘ってだけあって、どうせどいつも腹黒い……ぐらいのことは予想していたが」

「そ、そんなことないぞ……たぶん」

「第三王女であるフレイア様は、王の性格をもっとも継いだと言っても過言ではないのですが、たしかにそういった気性は時々感じられますね」

 メイド兼密偵のその言葉で納得する。
 まあ、アレは唯一スキルで精神の病み度が加速してたからな。

「それで、どっちの王女が問題なんだよ」

 どちらにせよ、家庭の問題は理解に苦しむだけなんだが……。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...