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外国へ遊びに行こう

平穏を謳歌しよう

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「ふわ~、イイ目覚めだな」

 夢の中でいくつか情報を確かめたが、そこまで急ぐような内容は無かった。

 どこもかしこも異世界人に巻き込まれ、変なイベントを起こしているだけだ。
 ……そういう小さいことは、ユウキがどうせ対処してくれるだろう。

 なんせ、クラスメイトがやらかしたトラブルなのだからな。
 責任感を無駄に感じ、実行することは間違いなしだ。

「おーい、誰か──」

「お呼びでしょうか」

 スッと現れるメイド服の奴隷。
 名札には『チーリン』と書かれた、黄色い鱗が首筋から見える少女だ。

「反応が速いな。……えっと、昨日持ってきたあの娘はどうなった?」

「神聖国で密偵を行っていた『アートル』であれば、未だに休養中です」

「……ついでに、名札を作って渡しておいてくれ。起きたら次に何をしたいか考えておくように指示も」

「畏まりました」

 チーリンはそう答えると、一瞬で消える。
 前に一度だけ、どうして手早く動けるかを聞いたんだが……『メイドだから』の一言で納得させられた。

「メイドのスキルに、そんなもの無かったんだけどな……職業の補正か?」

 俺の(解晰夢)が通用するのは、あくまでスキルだけでしかない。

 職業として統合された唯一スキルや職業補正はコピーすることができず、集めたスキルで誤魔化すように補うしかない。

「まあ、さっさと支度をするか」

 すぐさま瞬間着装スキルで服を着替え、寝室の扉を開く。
 そこにはメイドが待機しており……なんて面倒なことはさせず、全員仕事中だ。

「──いただきます」

 屋敷には食堂がある。
 メイドも主も関係なく、そこで食事をするようにしていた。

 ……家の改築も、メイドに任せればだいたいすぐにできる。
 メイドという存在の異常性は、異世界に来て俺を驚かせたことの一つだ。



 朝食セットを料理担当のメイドから受け取ると、空いた席に座って食事を始める。

「もぐもぐ……旨いな」

 まあ、味なんてあんまり分からないので、俺の味判定は『食えない』か『不味い』か『食える』か『旨い』しかないんだけどな。

 そう呟き、見つけさせたジャポニカ米モドキを掻き込んでいく。
 場所を訊きだすのは忘れたが、一定量を常時確保できるようにしたと言っていたのでそれで充分だった。

 日本人といえば米、いくら面倒であろうと確保だけは忘れはしない。

「──ごちそうさまでした」

 焼き魚やスープを食べ終わると、トレイを洗い場へ持っていく。
 メイドが居るとはいえ、こういったところまでやらせるのはどうかと思う。

 俺は面倒臭がりで他者に仕事を任せる。
 だがそれとは別に、これまで日本人として生きてきた常識というものがあるだろう。

「うん、これこそが普通。面倒と言って息をしない奴なんて、死ぬのと同じだ」

 と、いうよりも。
 わざわざこれまでやってきたことを、他者にやらせるというのも……面倒だ。

 ホテルや宿に来た、と考えて一部作業は容認できたが、さすがに身近な作業には忌避感がある。

「ここで催眠をかければ、どうにでもなりそうなんだけどな……そんなことを考える方が面倒だ」

 そんなわけで現状維持。
 トレイを片付けたあとは、ふらふらと屋敷の中を彷徨い歩くだけだ。



 外では、戦闘訓練を行っている。
 奴隷たちはメイド服をそれでも着用し続けているのだが、なんでもあらゆる場所で着続けることに意味があるらしい。

 ……さすがにこれは、事情を聴取しておいた方がいいのだろうか。
 面倒とか言っているよりも、不思議な現象への疑問が上だ。

「まあ、またの機会でいっか」

 それよりも、奴隷たちの戦闘訓練を見ておくことの方が重要だ。 

 俺の戦闘技術なんて見様見真似の仮物なので、しっかりとした体系の武術を会得している奴隷の動きは参考になる。

「(神聖武具術)って、なんか小狡い闘い方をさせてくれないんだよな。勇者とかが正当な戦い方をするのを強要してるのか」

 スキルの補正で動こうとすれば、の話だけれども。
 手動であれば行動は自由だが、自動で戦おうとすればそうなってしまう。

 なので対人戦闘と対魔物戦闘、その二種類において少し卑怯でも戦える奴隷を昔購入した気がする。

 ……あのときは便利であれば適当に買ったので、細かいことは覚えていない。

「それに、奴隷の数は増え続けてるからな」

 王様との交渉の果てに、非合法な奴隷集めに関するあれこれを許可してもらっている。
 もちろん強奪などはしないが、優秀な人材が必要なのはお相子様なのだ。

 外部で働く者たちが、使えそうなヤツらを適当に拾ってくる。
 それを一時的に安定な状態に落ち着かせ、どうしたいかを尋ねて未来を選ばせる。

 まあ、それがどうなっているかは……面倒だし、説明しなくていっか。
 王様も仕事が楽になったと零していたな。

「……にしてもまあ、こうやってゆっくりするのは最高だな」

 地球の頃であれば、休日であろうとのんびりとはできなかった。
 ──妹からの命令を受けパシらされ、外へ出るから。

 平日は当然学校へ向かい、特に受ける気もない授業を念仏のように聞くだけ。
 なんとなく学校に通い続けたが、今さら考えると行く必要ってあったのか?

「その点、こっちは自由だよな。何もしないのって、最高だよ」

 なんとなく、フラグだと感じたこの台詞。
 ……予想通り、その通りだった。

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