56 / 135
外国へ遊びに行こう
平穏を謳歌しよう
しおりを挟む「ふわ~、イイ目覚めだな」
夢の中でいくつか情報を確かめたが、そこまで急ぐような内容は無かった。
どこもかしこも異世界人に巻き込まれ、変なイベントを起こしているだけだ。
……そういう小さいことは、ユウキがどうせ対処してくれるだろう。
なんせ、クラスメイトがやらかしたトラブルなのだからな。
責任感を無駄に感じ、実行することは間違いなしだ。
「おーい、誰か──」
「お呼びでしょうか」
スッと現れるメイド服の奴隷。
名札には『チーリン』と書かれた、黄色い鱗が首筋から見える少女だ。
「反応が速いな。……えっと、昨日持ってきたあの娘はどうなった?」
「神聖国で密偵を行っていた『アートル』であれば、未だに休養中です」
「……ついでに、名札を作って渡しておいてくれ。起きたら次に何をしたいか考えておくように指示も」
「畏まりました」
チーリンはそう答えると、一瞬で消える。
前に一度だけ、どうして手早く動けるかを聞いたんだが……『メイドだから』の一言で納得させられた。
「メイドのスキルに、そんなもの無かったんだけどな……職業の補正か?」
俺の(解晰夢)が通用するのは、あくまでスキルだけでしかない。
職業として統合された唯一スキルや職業補正はコピーすることができず、集めたスキルで誤魔化すように補うしかない。
「まあ、さっさと支度をするか」
すぐさま瞬間着装スキルで服を着替え、寝室の扉を開く。
そこにはメイドが待機しており……なんて面倒なことはさせず、全員仕事中だ。
「──いただきます」
屋敷には食堂がある。
メイドも主も関係なく、そこで食事をするようにしていた。
……家の改築も、メイドに任せればだいたいすぐにできる。
メイドという存在の異常性は、異世界に来て俺を驚かせたことの一つだ。
朝食セットを料理担当のメイドから受け取ると、空いた席に座って食事を始める。
「もぐもぐ……旨いな」
まあ、味なんてあんまり分からないので、俺の味判定は『食えない』か『不味い』か『食える』か『旨い』しかないんだけどな。
そう呟き、見つけさせたジャポニカ米モドキを掻き込んでいく。
場所を訊きだすのは忘れたが、一定量を常時確保できるようにしたと言っていたのでそれで充分だった。
日本人といえば米、いくら面倒であろうと確保だけは忘れはしない。
「──ごちそうさまでした」
焼き魚やスープを食べ終わると、トレイを洗い場へ持っていく。
メイドが居るとはいえ、こういったところまでやらせるのはどうかと思う。
俺は面倒臭がりで他者に仕事を任せる。
だがそれとは別に、これまで日本人として生きてきた常識というものがあるだろう。
「うん、これこそが普通。面倒と言って息をしない奴なんて、死ぬのと同じだ」
と、いうよりも。
わざわざこれまでやってきたことを、他者にやらせるというのも……面倒だ。
ホテルや宿に来た、と考えて一部作業は容認できたが、さすがに身近な作業には忌避感がある。
「ここで催眠をかければ、どうにでもなりそうなんだけどな……そんなことを考える方が面倒だ」
そんなわけで現状維持。
トレイを片付けたあとは、ふらふらと屋敷の中を彷徨い歩くだけだ。
外では、戦闘訓練を行っている。
奴隷たちはメイド服をそれでも着用し続けているのだが、なんでもあらゆる場所で着続けることに意味があるらしい。
……さすがにこれは、事情を聴取しておいた方がいいのだろうか。
面倒とか言っているよりも、不思議な現象への疑問が上だ。
「まあ、またの機会でいっか」
それよりも、奴隷たちの戦闘訓練を見ておくことの方が重要だ。
俺の戦闘技術なんて見様見真似の仮物なので、しっかりとした体系の武術を会得している奴隷の動きは参考になる。
「(神聖武具術)って、なんか小狡い闘い方をさせてくれないんだよな。勇者とかが正当な戦い方をするのを強要してるのか」
スキルの補正で動こうとすれば、の話だけれども。
手動であれば行動は自由だが、自動で戦おうとすればそうなってしまう。
なので対人戦闘と対魔物戦闘、その二種類において少し卑怯でも戦える奴隷を昔購入した気がする。
……あのときは便利であれば適当に買ったので、細かいことは覚えていない。
「それに、奴隷の数は増え続けてるからな」
王様との交渉の果てに、非合法な奴隷集めに関するあれこれを許可してもらっている。
もちろん強奪などはしないが、優秀な人材が必要なのはお相子様なのだ。
外部で働く者たちが、使えそうなヤツらを適当に拾ってくる。
それを一時的に安定な状態に落ち着かせ、どうしたいかを尋ねて未来を選ばせる。
まあ、それがどうなっているかは……面倒だし、説明しなくていっか。
王様も仕事が楽になったと零していたな。
「……にしてもまあ、こうやってゆっくりするのは最高だな」
地球の頃であれば、休日であろうとのんびりとはできなかった。
──妹からの命令を受け、外へ出るから。
平日は当然学校へ向かい、特に受ける気もない授業を念仏のように聞くだけ。
なんとなく学校に通い続けたが、今さら考えると行く必要ってあったのか?
「その点、こっちは自由だよな。何もしないのって、最高だよ」
なんとなく、フラグだと感じたこの台詞。
……予想通り、その通りだった。
1
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる