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プロポーズ2
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ダンはショーンのエリーへの気持ちに気が付いていたが、必要以上の近づくなと釘を刺しておいたのだった。
しかしエリーに恋をして長年こじらせてきたショーンにはそんなダンの言葉はいとも簡単に右から左に流れてしまっていた。
「エリー、それ重たいだろ?俺に貸して、運んでやるから。」
「エリー、クリームが口についてたぞ、ほらこんなに。」
「エリー、髪の毛に何かついてるぞ。取ってやるからじっとしてて。」
「エリー、……はぁっ可愛い…。」
と、こんな具合になんだかんだ言い訳をしつつ、ダンがいないことをいいことに、自然にエリーに触れようとする年相応の残念な男ショーンが出来上がってしまった。
すると次第にエリーも、
「ショーン、ありがとう。力が強いのね。助かる!」
「ショーン、私についてたクリーム食べちゃったの?!恥ずかしいわ。」
「ショーン、本当に優しいよね。ありがとう…。」
と、思いがけず二人の間になんだか生暖かい空気が漂い始めていた。
これまでエリーの近くにいた男と言えば、亡くなった父親、弟ダン、元カレのロニーとこのパン屋の息子のショーンくらいである。
家の手伝いと仕事ばかりで家族以外との交流がほぼないエリーにとって、いつもエリーを気にかけてくれるショーンが特別な存在になるのにはそう時間がかからなかった。
店が終わってからの帰り道、エリーを送っていくショーンの距離はどんどん近くなり、次第に互いの手が触れ合うほど急接近していた。
すぐに触れ合いそうな距離にショーンの手があることで、エリーの胸はどんどん高鳴っていった。
ギル譲りの精悍な見た目と長身でしかも鍛えているであろう筋肉質の逞しいショーンが傍にいてくれるだけでドキドキしてしまうのだ。
そして、エリーに気持ちを伝えたいが、もし断られたらと思うと行動に移せないショーンは、エリーがそんなことを想っているとも知らずに今日もマーシャとギルをやきもきさせるのであった。
「お疲れさまでした。また明日もよろしくお願いします。マーシャさん、ギルさん!」
「ああ!お疲れエリーちゃん!また明日ね!ショーン、ちゃんと無事に送り届けるんだよ!」
「わかってるって、母さん!…じゃあ、いこっか、エリー!」
そういって、エリーを家まで送るのが日課になったショーンはだらしなくなりそうな顔をどうにかこうにか引き締めて、至福の時間をすごしていた。
「エリー、市場によってなにか買っていくものある?」
「うーん、今日はダンの好きな牛の煮込みでも作ろうと思ってるから、ちょっと寄っていこうかな。ダンは時間大丈夫なの?」
「俺は暇人だから大丈夫だよ。荷物が重けりゃエリーの代わりに持ってやれるしな。」
「そう?じゃあ、お願いしようかな。ありがとう。」
そういって、二人は方向を少し変えて市場の方へ歩き出した。
市場はいつ来ても大変にぎわっていて、肉、野菜、装飾品、果物、衣類、雑貨何でもそろっている。
質素倹約が基本のエリーはいつもそれらを眺めるだけで、購入するのは必要最低限のものだけだ。それは生活に余裕が産まれてからも変わっていない。
そんなエリーに愛しさが増すショーンは今日こそは自分の気持ちを告げようと意気込んでいた。
そしてそんなタイミングでショーンに災難が降りかかった。
「ショーン?やっぱりショーンだ!元気にしてた?ほら、学園で一緒だったマリリンよ!覚えてるよね?!」
「ああ、マリリンか。久しぶりだな。元気だったか?」
「うん、おかげさまで。今は実家の手伝いをやってるんだ。あれ?そちらの方は?」
「ああ、この子はエリーだ。うちのパン屋で働いてもらってるんだ。すごく気立てがよくてとても助かってるんだぞ。」
「…へぇ。エリーさん、初めまして。マリリンです。よろしくね。そうそう、せっかくあったんだし、カフェでも入ってお茶しましょうよ?」
「初めまして、マリリンさん。よろしくお願いします。あ、じゃあ、私はこの辺で…。ショーン、ここまで一緒に来てくれてありがとう。後は大丈夫だから。じゃあまた明日ね。マリリンさんも。」
そう言い残して、立ち去るエリーは動揺を隠すのでいっぱいいっぱいだった。
学園に少ししか通わなかったエリーはショーンが異性と一緒にいるのを見たこともなかったし、ましてや自分以外の異性の友達がいるなんてこれまで思いつきもしなかったからだ。
この気持ちを好きっていうんだろうと気が付いたのはつい最近のことで、でもそれでどうしたらいいのかなんてエリーにはわからないでいたのだ。
一歩一歩ショーンから離れていくたびに涙が目に滲んできた。
「…大丈夫、大丈夫…だよね?父ちゃん?」
涙声でそう呟きながら歩くエリーは急に大きな暖かい何かに包まれた。
それは記憶の中にある、大きな父に抱きしめられた時のような、心から安心できる暖かさだった。
「エリーッ!行かないで。ダメだ!俺はエリーの傍にいるって決めてるんだから置いていくなよ!」
それは、さっきおいてきたショーンだった。
しかしエリーに恋をして長年こじらせてきたショーンにはそんなダンの言葉はいとも簡単に右から左に流れてしまっていた。
「エリー、それ重たいだろ?俺に貸して、運んでやるから。」
「エリー、クリームが口についてたぞ、ほらこんなに。」
「エリー、髪の毛に何かついてるぞ。取ってやるからじっとしてて。」
「エリー、……はぁっ可愛い…。」
と、こんな具合になんだかんだ言い訳をしつつ、ダンがいないことをいいことに、自然にエリーに触れようとする年相応の残念な男ショーンが出来上がってしまった。
すると次第にエリーも、
「ショーン、ありがとう。力が強いのね。助かる!」
「ショーン、私についてたクリーム食べちゃったの?!恥ずかしいわ。」
「ショーン、本当に優しいよね。ありがとう…。」
と、思いがけず二人の間になんだか生暖かい空気が漂い始めていた。
これまでエリーの近くにいた男と言えば、亡くなった父親、弟ダン、元カレのロニーとこのパン屋の息子のショーンくらいである。
家の手伝いと仕事ばかりで家族以外との交流がほぼないエリーにとって、いつもエリーを気にかけてくれるショーンが特別な存在になるのにはそう時間がかからなかった。
店が終わってからの帰り道、エリーを送っていくショーンの距離はどんどん近くなり、次第に互いの手が触れ合うほど急接近していた。
すぐに触れ合いそうな距離にショーンの手があることで、エリーの胸はどんどん高鳴っていった。
ギル譲りの精悍な見た目と長身でしかも鍛えているであろう筋肉質の逞しいショーンが傍にいてくれるだけでドキドキしてしまうのだ。
そして、エリーに気持ちを伝えたいが、もし断られたらと思うと行動に移せないショーンは、エリーがそんなことを想っているとも知らずに今日もマーシャとギルをやきもきさせるのであった。
「お疲れさまでした。また明日もよろしくお願いします。マーシャさん、ギルさん!」
「ああ!お疲れエリーちゃん!また明日ね!ショーン、ちゃんと無事に送り届けるんだよ!」
「わかってるって、母さん!…じゃあ、いこっか、エリー!」
そういって、エリーを家まで送るのが日課になったショーンはだらしなくなりそうな顔をどうにかこうにか引き締めて、至福の時間をすごしていた。
「エリー、市場によってなにか買っていくものある?」
「うーん、今日はダンの好きな牛の煮込みでも作ろうと思ってるから、ちょっと寄っていこうかな。ダンは時間大丈夫なの?」
「俺は暇人だから大丈夫だよ。荷物が重けりゃエリーの代わりに持ってやれるしな。」
「そう?じゃあ、お願いしようかな。ありがとう。」
そういって、二人は方向を少し変えて市場の方へ歩き出した。
市場はいつ来ても大変にぎわっていて、肉、野菜、装飾品、果物、衣類、雑貨何でもそろっている。
質素倹約が基本のエリーはいつもそれらを眺めるだけで、購入するのは必要最低限のものだけだ。それは生活に余裕が産まれてからも変わっていない。
そんなエリーに愛しさが増すショーンは今日こそは自分の気持ちを告げようと意気込んでいた。
そしてそんなタイミングでショーンに災難が降りかかった。
「ショーン?やっぱりショーンだ!元気にしてた?ほら、学園で一緒だったマリリンよ!覚えてるよね?!」
「ああ、マリリンか。久しぶりだな。元気だったか?」
「うん、おかげさまで。今は実家の手伝いをやってるんだ。あれ?そちらの方は?」
「ああ、この子はエリーだ。うちのパン屋で働いてもらってるんだ。すごく気立てがよくてとても助かってるんだぞ。」
「…へぇ。エリーさん、初めまして。マリリンです。よろしくね。そうそう、せっかくあったんだし、カフェでも入ってお茶しましょうよ?」
「初めまして、マリリンさん。よろしくお願いします。あ、じゃあ、私はこの辺で…。ショーン、ここまで一緒に来てくれてありがとう。後は大丈夫だから。じゃあまた明日ね。マリリンさんも。」
そう言い残して、立ち去るエリーは動揺を隠すのでいっぱいいっぱいだった。
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この気持ちを好きっていうんだろうと気が付いたのはつい最近のことで、でもそれでどうしたらいいのかなんてエリーにはわからないでいたのだ。
一歩一歩ショーンから離れていくたびに涙が目に滲んできた。
「…大丈夫、大丈夫…だよね?父ちゃん?」
涙声でそう呟きながら歩くエリーは急に大きな暖かい何かに包まれた。
それは記憶の中にある、大きな父に抱きしめられた時のような、心から安心できる暖かさだった。
「エリーッ!行かないで。ダメだ!俺はエリーの傍にいるって決めてるんだから置いていくなよ!」
それは、さっきおいてきたショーンだった。
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