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プロポーズ1
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母が亡くなって二年が過ぎた。
時ともに落ち着きを取り戻したエリーは日々パン屋の仕事に、ダンは配達の仕事をするようになっていた。
そしてその頃になると、エリーもダンも、突然いなくなったエリーの初恋相手ロニーはもう戻ってこないのだろうと信じていた。
そろそろ二十歳になるはずのロニーは戻りたければ一人でも街に戻ってくるなりエリーに手紙を出したりできるはずだ。
なのに何の音さたもないという事はロニーにとってはただの口約束だったのだろう、とさすがにエリーもダンも気が付いていた。
ロニーとはあんなに気持ちを通わせあっていたのにこんな形で裏切られたことが悲しかった。
しかしいつまで引きづってもしようがないと、ダンの励ましもありようやく吹っ切れたエリーだった。
成長盛りのエリーは、母親譲りのピンクゴールドのサラサラの髪と、ボンキュボンのナイスバディの超絶美少女になっていた。
但し、小さな時からずっと働き詰めで自分のことに無頓着なエリーは周囲の男の子からの視線には疎く、女の子からの羨望と嫉妬の視線にも気が付かないなんとも残念な少女になっていた。
そんな超絶美少女に成長を遂げた姉に変な虫がつきやしまいかと、いつも弟ダンをハラハラさせていたがいつもそばについていられるわけではなかった。
「あのっ、エリーちゃん。これ良ければ貰ってくれないかな?」
「えっなぜ?そんな高価なもの、頂けません。」
「いや、これはエリーちゃんに絶対に会うと思ってわざわざ買ってきたんだ!」
エリーにご執心の男の子の一人がどうにかエリーの気を引こうと迫っているのを見たマーシャは息子のショーンにいつものように知らせてやった。
「…ちょっと、ショーン!ほらっ、まただよ!行って助けておやり!」
「なんだって?!分かった!」
この頃になると内気だったショーンは、周りの男共からエリーを守るべく逞しく強く成長を遂げていた。
「おい!何やってるんだよ。エリーがいらないって言ってるんだから諦めろよ。しつこいのは嫌われるぞ。」
「っな!しつこいってなんだよショーン!」
バチバチやりあっている男二人をしり目に、プレゼント攻撃から解放されたエリーは暢気なものだった。
「ショーン、ありがとう。なんかいつもショーンに助けてもらってばかりよね。心強いわ。ふふふっ。」
心強いわ、頂きましたー―!と心の中で紙吹雪が散乱するショーンはだらしなく緩む顔を見られまいと顔を両手で覆った。
「はぁ~いいわ。青春だわー。頑張れ息子よ、早くエリーちゃんに気持ちを伝えるんだ!」
陰から若い二人を見守るマーシャはそんなことをぶつぶつ呟きながら店に戻っていった。
「なあ、エリーそういえばエリーの帰り道の近くににさ、新しい植物園が出来たの知ってるか?良ければ、今日は俺がエリーを家まで送るからさ、帰る途中で寄ってみないか?」
「新しい植物園まだ行ったことがないんだけど、確かダンも行ったことがないはずなの。わざわざ送ってもらうのも悪いし、帰りにダンと寄ってみようかな。気を遣ってくれてありがとう、ショーン!」
「いやっ…ちがっ…そうじゃなくて…」
「お疲れ姉ちゃん、じゃあ帰ろうか!」
「あーダン!待ってくれ!エリー…」
「うん?どうしたのショーン?」
「あ…いや…その、ああ、うん。また明日な?」
エリーの仕事帰りはいつもダンが迎えに来る。
さすがにダンもショーンの気持ちに気が付いているが、シスコン気味のダンは決して姉を渡さないといつもガードが堅いのだ。
「ショーン、マーシャさん、ギルさん。お疲れさまでした。また明日―!」
そう元気よく挨拶したエリーは、ほくそ笑む弟と家路について行った。
そしてその翌年、16歳になったダンは、騎士団の入団試験に受かり地元の騎士団に入団した。
その騎士団は最年少で16歳から受け入れが可能だったので、ダンは入団目指して日々独自で訓練を怠らなかった。
学がなく16という年齢でも給金が貰えるというのは、ダンにとってとても魅力的だった。
小さなころからずっと働き詰めの姉に早く楽をさせてやりたい一心の優しい弟の決断だった。
騎士団寮を大勢の騎士が利用しているが、姉を一人家に残すのが不安なダンは寮の使用を固辞し自宅からの通勤を願いそれを押し通した。
小さなころから姉をそこらの悪ガキから守るために腕っぷしだけは磨いていたため、力も強く、常に大人の手伝いを請け負っていたため機転が利き、剣筋も良かったダンは日を追うごとにその頭角をめきめきと表していった。
二人だけの生活で、質素倹約をずっと続けてきた二人だったので、エリーのパン屋からの稼ぎとダンの騎士としての稼ぎは生活するのに十分すぎるほどのものだった。
ダンの強い希望でエリーも内職を辞め、パン屋で働く以外の時間を趣味の料理や読書などに費やす時間の余裕が生まれた。
しかしさすがに、ダンもエリーのパン屋の仕事帰りに迎えに行くことが難しくなってしまったため、苦渋の決断であったがそこをショーンに頼んで送ってもらうことにした。
時ともに落ち着きを取り戻したエリーは日々パン屋の仕事に、ダンは配達の仕事をするようになっていた。
そしてその頃になると、エリーもダンも、突然いなくなったエリーの初恋相手ロニーはもう戻ってこないのだろうと信じていた。
そろそろ二十歳になるはずのロニーは戻りたければ一人でも街に戻ってくるなりエリーに手紙を出したりできるはずだ。
なのに何の音さたもないという事はロニーにとってはただの口約束だったのだろう、とさすがにエリーもダンも気が付いていた。
ロニーとはあんなに気持ちを通わせあっていたのにこんな形で裏切られたことが悲しかった。
しかしいつまで引きづってもしようがないと、ダンの励ましもありようやく吹っ切れたエリーだった。
成長盛りのエリーは、母親譲りのピンクゴールドのサラサラの髪と、ボンキュボンのナイスバディの超絶美少女になっていた。
但し、小さな時からずっと働き詰めで自分のことに無頓着なエリーは周囲の男の子からの視線には疎く、女の子からの羨望と嫉妬の視線にも気が付かないなんとも残念な少女になっていた。
そんな超絶美少女に成長を遂げた姉に変な虫がつきやしまいかと、いつも弟ダンをハラハラさせていたがいつもそばについていられるわけではなかった。
「あのっ、エリーちゃん。これ良ければ貰ってくれないかな?」
「えっなぜ?そんな高価なもの、頂けません。」
「いや、これはエリーちゃんに絶対に会うと思ってわざわざ買ってきたんだ!」
エリーにご執心の男の子の一人がどうにかエリーの気を引こうと迫っているのを見たマーシャは息子のショーンにいつものように知らせてやった。
「…ちょっと、ショーン!ほらっ、まただよ!行って助けておやり!」
「なんだって?!分かった!」
この頃になると内気だったショーンは、周りの男共からエリーを守るべく逞しく強く成長を遂げていた。
「おい!何やってるんだよ。エリーがいらないって言ってるんだから諦めろよ。しつこいのは嫌われるぞ。」
「っな!しつこいってなんだよショーン!」
バチバチやりあっている男二人をしり目に、プレゼント攻撃から解放されたエリーは暢気なものだった。
「ショーン、ありがとう。なんかいつもショーンに助けてもらってばかりよね。心強いわ。ふふふっ。」
心強いわ、頂きましたー―!と心の中で紙吹雪が散乱するショーンはだらしなく緩む顔を見られまいと顔を両手で覆った。
「はぁ~いいわ。青春だわー。頑張れ息子よ、早くエリーちゃんに気持ちを伝えるんだ!」
陰から若い二人を見守るマーシャはそんなことをぶつぶつ呟きながら店に戻っていった。
「なあ、エリーそういえばエリーの帰り道の近くににさ、新しい植物園が出来たの知ってるか?良ければ、今日は俺がエリーを家まで送るからさ、帰る途中で寄ってみないか?」
「新しい植物園まだ行ったことがないんだけど、確かダンも行ったことがないはずなの。わざわざ送ってもらうのも悪いし、帰りにダンと寄ってみようかな。気を遣ってくれてありがとう、ショーン!」
「いやっ…ちがっ…そうじゃなくて…」
「お疲れ姉ちゃん、じゃあ帰ろうか!」
「あーダン!待ってくれ!エリー…」
「うん?どうしたのショーン?」
「あ…いや…その、ああ、うん。また明日な?」
エリーの仕事帰りはいつもダンが迎えに来る。
さすがにダンもショーンの気持ちに気が付いているが、シスコン気味のダンは決して姉を渡さないといつもガードが堅いのだ。
「ショーン、マーシャさん、ギルさん。お疲れさまでした。また明日―!」
そう元気よく挨拶したエリーは、ほくそ笑む弟と家路について行った。
そしてその翌年、16歳になったダンは、騎士団の入団試験に受かり地元の騎士団に入団した。
その騎士団は最年少で16歳から受け入れが可能だったので、ダンは入団目指して日々独自で訓練を怠らなかった。
学がなく16という年齢でも給金が貰えるというのは、ダンにとってとても魅力的だった。
小さなころからずっと働き詰めの姉に早く楽をさせてやりたい一心の優しい弟の決断だった。
騎士団寮を大勢の騎士が利用しているが、姉を一人家に残すのが不安なダンは寮の使用を固辞し自宅からの通勤を願いそれを押し通した。
小さなころから姉をそこらの悪ガキから守るために腕っぷしだけは磨いていたため、力も強く、常に大人の手伝いを請け負っていたため機転が利き、剣筋も良かったダンは日を追うごとにその頭角をめきめきと表していった。
二人だけの生活で、質素倹約をずっと続けてきた二人だったので、エリーのパン屋からの稼ぎとダンの騎士としての稼ぎは生活するのに十分すぎるほどのものだった。
ダンの強い希望でエリーも内職を辞め、パン屋で働く以外の時間を趣味の料理や読書などに費やす時間の余裕が生まれた。
しかしさすがに、ダンもエリーのパン屋の仕事帰りに迎えに行くことが難しくなってしまったため、苦渋の決断であったがそこをショーンに頼んで送ってもらうことにした。
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